アクセスFSA 第105号(2012年3月)

【特集】

国際コンファレンス「アジア市場の統合と金融革新」の開催について
(2012年2月10日 開催)

金融庁は、日本証券業協会及び株式会社東京証券取引所グループの協力を得て、国際コンファレンス「アジア市場の統合と金融革新」を、平成24年2月10日(金)に開催しました。当日は、国内外の金融当局等政府関係者、中央銀行、金融機関、研究者、在京各国大使館関係者等、総勢500名弱の参加があり、活発な議論が展開されました。

冒頭の中塚一宏 内閣府副大臣(金融担当)の開会挨拶に引き続き、畑中龍太郎 金融庁長官により、アジアの金融市場の今後の発展に参考となる、これまでの我が国の金融危機対応や中小企業金融の円滑化等についての基調講演が行われました。コンファレンス中には、ジュンス・キム 韓国銀行総裁による、金融市場統合の意義とシステミックリスク管理のためのマクロプルーデンス政策の重要性に関する基調講演、及び、ゼティ・アクタール・アジズ マレーシア中央銀行総裁による、アジア域内における金融経済統合への柔軟性のある、段階的なアプローチについての基調講演(ビデオ上映による)が行われました。

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開会挨拶を行う中塚副大臣

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総勢500名弱の聴衆

また、「アジア市場の統合と金融革新」に関する4つの課題についてそれぞれのセッションに分かれて議論が行われました。各セッションの主な内容は下記のとおりです。

セッション1:世界金融危機後の金融市場改革とアジアへのインプリケーション

セッション1(モデレーター:ジェーン・ディプロック シンガポール取引所(SGX)社外取締役(前証券監督者国際機構(IOSCO)理事会議長))では、金融危機後の規制改革の現状を、グローバルな視点並びにアジアからの視点で把握した上でアジアの金融市場での課題を抽出し、今後の金融危機防止策及びアジア諸国に対するインプリケーションについての議論が行われました。

欧州における域内統合の課題や、金融危機後に欧州が行った金融規制・監督体制の整備のほか、IOSCO等の国際機関における規制に関する議論が紹介されると共に、アジアについては、金融システムの相対的な健全性が指摘されました。一方で、複雑な金融商品が十分なリスクの説明なしに個人投資家に販売されている問題や、店頭(OTC)デリバティブ規制を始めとする国際的な規制の整合性確保、財政・金融両面における規律の重要性等、アジアにおいても金融危機を教訓として検討すべき課題があるとの認識が共有されました。

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セッション2:アジア金融市場における適切な資金供給のあり方について

セッション2(モデレーター:吉野直行 金融庁金融研究センター長、慶應義塾大学経済学部教授)では、アジア金融市場におけるリスク資金供給を巡る課題に対処するため、マイクロファイナンスを含めた中小事業者向け金融の現状を分析し、アジア金融市場の今後の発展のための方策について、適切な規制の枠組みを含めた議論を行いました。

マクロでみて貯蓄超過のアジアでなぜ中小企業に資金が回らないのかという問題提起がなされ、社債や株式市場が主に大企業の資金調達手段として発展してきた点や、借り手である中小企業の財務情報の透明性の問題、抵当権実行が困難な場合があること等が指摘された後、韓国等の事例を提示しつつ、公的金融機関による信用補完や投資信託を始めとする資本市場の活用、長期の資金提供者としての年金基金・保険の育成等、より円滑な資金供給の実現に向けた提言等が行われました。

セッション3:アジアの市場統合~競争か、協調か~

セッション3(モデレーター:ザリナ・アンワー マレーシア証券委員会委員長)では、アジア金融市場の統合という観点から、競争と協調をどのように進めていくかについて具体的な課題を検討した上で、アジアの金融市場の活性化に向けた連携、競争のあり方や課題について議論が行われました。

世界的な合従連衡の流れの中、国内に多数の取引所が存在し、競争が活発であるインドや、韓国が精力的に進める取引所の国際的な連携策等の事例が紹介され、アジア各国はそれぞれが独自の歴史や文化を持っており、規制の枠組みや経済の開放度の違いが競争や協調に対する姿勢に影響しているとの認識が示されました。また、国際的な取引所の合併の認否について、国益の観点から最終投資家の便益が軽視されがちであるという意見が出た一方、取引所の担う決済機能等の公的な役割のために公正性の観点から慎重にならざるを得ないという意見も示されるなどの議論が行われました。

セッション4:アジア金融インフラの革新~新しい決済システムのあり方について~

セッション4(モデレーター:カニット・サングスバーン タイ財務省財政政策研究所所長)では、各国の市場を維持・発展させるためには、資金を経済全体に安全かつ円滑に流通させる金融市場インフラが重要な役割を担っているとの認識を踏まえ、金融インフラの礎としての証券及び資金決済システムのあり方に加え、決済システムのイノベーションの現状とアジア諸国におけるさらなる発展の可能性についての議論が行われました。

決済システムの効率性・安全性の向上に向け、アジア域内における中央清算機関(CCP)等の金融市場インフラの育成や適切な競争の重要性が指摘されたほか、日本の資金決済システムの安全性向上に向けた最近の取組みや、IOSCO等の国際機関における金融市場インフラ強化に向けたイニシアチブが紹介され、今後金融市場の拡大が見込まれるアジアにおいては、決済システムの利便性や頑健性、信頼性の向上が重要となっていく旨の認識が共有されたほか、我が国の電子記録債権のアジア諸国への導入の可能性及び課題という、決済システムの金融ビジネスとしての側面についても議論が展開されました。

※ 本コンファレンスのプログラム、結果概要及びパネリスト等のプレゼンテーション資料等については、国際コンファレンス「アジア市場の統合と金融革新」のウェブサイトにアクセスして下さい。


【トピックス】

総合的な取引所検討チーム取りまとめについて

新成長戦略(平成22年6月18日閣議決定)において、「総合的な取引所(証券・金融・商品)の創設の推進」が21の「国家戦略プロジェクト」の一つとして位置付けられたことを受け、利用者・投資家、内外の市場関係者の利便やニーズに合致した形での規制のあり方等を検討すべく、平成22年10月28日に、金融庁・農林水産省・経済産業省の副大臣・大臣政務官をメンバーとする「総合的な取引所検討チーム」が発足しました。

今般、検討チームによる検討が進められ、平成24年2月24日にその「取りまとめ」が公表されました。

この取りまとめの主な内容は、以下の通りです。

  • 1.証券・金融と商品を一体として取り扱う「総合的な取引所」については、金融商品取引法に基づき、内閣総理大臣(金融庁)が一元的に監督する。

  • 2.仲介業者、清算機関等についても、証券・金融、商品を横断して取り扱うことができる制度を整備する。

  • 3.商品デリバティブ取引に係る一定の監督権限の行使について、農林水産大臣・経済産業大臣との事前協議等の規定を整備し、相互連携を確保する。

そして、取りまとめの内容を盛り込んだ、金融商品取引法等の一部を改正する法律案が本年3月9日に閣議決定され、国会に提出されました。

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「報道関係資料」から「総合的な取引所検討チーム取りまとめについて」(2月24日)にアクセスして下さい。
また上記取りまとめや過去の議事録等、検討チームの詳細については、金融庁ウェブサイトの「審議会・研究会等」から「総合的な取引所検討チーム」にアクセスしてください。


平成23年金融商品取引法等改正(1年以内施行)に係る政令・内閣府令案等に対するパブリックコメントの結果等について

金融庁では、平成23年金融商品取引法等改正(1年以内施行)に係る政令・内閣府令案等につきまして、平成23年11月4日(金)から平成23年12月5日(月)にかけて公表し、広く意見の募集を行い、その結果等を平成24年2月10日(金)に公表しました。

本件の政令は、平成24年2月10日(金)に閣議決定され、内閣府令等と併せて、平成24年2月15日(水)に公布されました。本件の政令・内閣府令等は、平成24年4月1日(日)から施行されます。

本件の政令・内閣府令等の概要は以下のとおりです。

  • 1.ライツ・オファリングに係る制度整備

    • (1)目論見書の作成・交付義務免除の要件として日刊新聞紙に掲載する事項を規定しました。

    • (2)割当て時ではなく行使時に公開買付規制・大量保有報告規制の適用を受ける新株予約権を規定しました。

    • (3)引受証券会社が未行使分の新株予約権を取得する際の株券等所有(保有)割合を規定しました。

    • (4)ライツ・オファリングにおけるインサイダー取引規制の軽微基準(重要事実に該当しない基準)等を整備しました。

    • (5)引受証券会社による新株予約権の行使勧誘について、虚偽告知の禁止等の行為規制を適用することとしました。

  • 2.銀行・保険会社等金融機関本体によるファイナンス・リースの活用の解禁

    • (1)銀行・保険会社等金融機関本体に解禁するファイナンス・リースの要件のうち、中途解約禁止に準ずるもの及び付随費用を規定しました。

    • (2)銀行・保険会社等金融機関グループが行うファイナンス・リースを大口信用供与等規制の対象に規定しました。

  • 3.プロ等に限定した投資運用業の規制緩和

    • (1)対象となる投資運用業について、顧客であるプロ等(適格投資家)の範囲や運用財産に係る総額の上限を規定しました。

    • (2)最低資本金等の登録要件を緩和しました。

  • 4.英文開示の範囲拡大

    • (1)外国会社届出書の補足書類のうち「日本語による要約」の記載項目を規定しました。

    • (2)外国会社臨時報告書の「提出理由」は日本語によることを規定しました。

  • 5.その他

    • (1)適格機関投資家等特例業務(届出制)に係る届出記載事項等の追加

      届出記載事項に適格機関投資家の名称等を追加しました。

    • (2)株式等のブロックトレードの円滑化

      証券会社による仲介のための買付けをインサイダー取引規制の適用対象から除外しました。

    • (3)学校法人向けシンジケートローンの金商法の適用除外

      銀行等が行う学校法人向けシンジケートローンを金商法上の「みなし有価証券」から除外しました。


「金融検査結果事例集」の公表について

金融庁は、平成24年2月23日に、「金融検査結果事例集(平成23検査事務年度前期版)」を公表しました。

金融庁は、平成17年より、金融行政の透明性・予測可能性を更に向上させるなどの観点から、指摘の内容・頻度を勘案して、金融機関が適切な管理態勢を構築する上で参考となる事例を取りまとめ、公表してきています。

また、情報発信の充実・強化を推進する観点から、タイムリーに金融検査結果の事例集を公表することが重要と考えており、昨事務年度に引き続き、本事務年度においても、預金等受入金融機関に対する検査結果について前期版として公表することとしました。(注1)

なお、預金等受入金融機関以外の金融機関については、7月に公表を予定している次回の事例集に掲載することとしています。

今回の事例集の主な特徴は、以下のとおりです。

  • 1.検査基本方針における「検査重点事項」に関連する事例を多く掲載

    本事務年度の検査基本方針においては、金融仲介機能の発揮、法令等遵守、顧客保護等の徹底及び各種リスクの的確な管理を行うためには、適切な経営管理のもとでの、経営陣の主導性とコミットメントが決定的に重要であるとの認識を示し、昨事務年度に引き続き、各金融機関の戦略目標の合理性や持続可能性をはじめ、「経営管理(ガバナンス)態勢」の整備について重点的に検証してきており、本事例集においては、これらに関する事例を多く掲載しています。

    また、同方針の「検査重点事項」において、新たな検証項目として追加された、震災等を踏まえた業務継続体制や、リスク性商品の説明態勢・フォローアップ態勢の整備等に係る事例も掲載しています。

  • 2.金融円滑化に関連する事例を多く掲載

    金融庁では、金融円滑化法(注2)の実施等を踏まえ、金融機関によるコンサルティング機能の発揮を一層定着させる観点から、今期の金融検査においても、昨事務年度に引き続き、金融機関による適切なコンサルティング機能の発揮等について重点的に検証しており、「金融円滑化編」において、指摘事例だけではなく、評価事例も多く掲載しています。

    一方、債務者の実態を十分に把握することなく条件変更に応じている問題事例等については、「信用リスク管理態勢」に掲載しています。

(注1)掲載事例については、預金等受入金融機関について、平成23年7月~平成24年1月までの間に通知された検査結果を中心に掲載しています。

(注2)中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律(平成21年12月4日施行)。

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「報道関係資料」から「金融検査結果事例集」の公表について(2月23日)にアクセスして下さい。

また、過去の事例集については、平成16検査事務年度版(平成17年7月27日)、平成17検査事務年度版(平成18年7月5日)、平成18検査事務年度版(平成19年7月5日)、平成19検査事務年度版(平成20年7月4日)、平成20検査事務年度版(平成21年7月3日)、「金融円滑化に係る金融検査指摘事例集」(平成21年12月17日)、平成21検査事務年度版(平成22年7月21日)、平成22検査事務年度前期版(平成23年2月10日)、平成22検査事務年度後期版(平成23年7月1日)の「報道発表資料」をご覧ください。


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