広報コーナー 第17号
 
柳澤大臣を表敬訪問するオニール財務長官(1月21日(月))
 
<空売りへの総合的な取組みについて>


.はじめに

 金融庁では、平成13年8月に発表した「証券市場の構造改革プログラム」を踏まえて、これまで個人投資家の証券市場に対する信頼向上のためのインフラ整備等を推進して参りました。しかしながら、証券市場においては、一部証券会社の法令違反行為(空売り規制違反等)に見られるように、一部の市場仲介者や市場参加者について、なお個人投資家の信頼に悪影響を与えるような事例が見られました。
 そこで、金融庁では、「改革先行プログラム」(平成13年10月26日決定)等を踏まえ、個人投資家の証券市場への信頼向上のためのインフラ整備をさらに徹底するため、空売りへの総合的な取組みを行うこととしました。


.空売りへの監督上の対応
 

(1)

 空売り規制の周知徹底
 日本証券業協会を通じて、会員証券会社に対して、空売り規制の周知徹底を図るとともに、その遵守状況について総点検を行うよう要請することとしました。
 

(参考

)現行「空売り規制」は平成10年10月に、米国における規制を参考に、それまでの規制を強化したもので、基本的には米国並みの規制となっています。(ちなみに英、仏、独は空売り規制を行っていません。)
 具体的には、空売り明示・確認義務と価格規制の2つの規制から成り立っています。
 空売り明示・確認義務は、証券取引法第162条第1項等に規定されており、「政令で定めるところに違反して」「有価証券を有しないで若しくは有価証券を借り入れて」「売付」をしてはならない等となっており、政令では同法施行令第26条の3で「証券取引所の会員等は、」「空売りであるか否か」を「明らかにしなければならない。」とされています。
 価格規制は、同じく証券取引法第162条第1項等に規定されており、政令では同法施行令第26条の4で「空売りを行おうとするときは、」「直近」「価格に満たない価格において当該空売りを行ってはならない。」とされています。


.空売りへの監視上の対応
 

(1)

 証券会社に対する検査及び報告聴取
 証券取引等監視委員会は、証券会社に対する検査及び報告聴取を通じて、空売り規制違反の有無について重点的に点検することとしました。

(2)

 証券取引等監視委員会の監視機能強化
 上記(1)を含め、証券取引等監視委員会の監視機能の一層の充実強化を図るため、必要な人員の確保、民間専門家の採用等を積極的に行います。
 

(参考


平成14年度政府予算案における定員整備
   13年度定員(増員) 14年度定員
  (監視委員会)
    122人(+61人) ⇒ 182人(定削1)
  (財務局監視部門)
   143人(+39人) ⇒ 182人
(※) 証券取引等監視委員会の採用情報をご覧下さい。


.空売りへの規制上の対応
 

(1)

 信用取引に対する空売り規制の適用
 現行、信用売りについては、空売りの明示・確認義務の適用から除外されていますが、信用売りが増加していること等を踏まえて、信用売りについても上記の明示・確認義務を対象とすることとします。
 
 (参考 「有価証券の空売りに関する内閣府令の一部を改正する内閣府令案の概要の公表について」

(2)

 日々公表銘柄制度の機能強化等
 取引所等が信用取引残高を日々公表する日々公表銘柄制度の機能強化及び信用売りに対するモニタリングの強化について、取引所等に要請することとしました。
 
 (参考 )日々公表銘柄制度とは、取引所等が定める基準に照らし、信用取引が過度に利用されていると認められる銘柄について、取引所等がその取引残高を日々公表している制度のこと。

(3)

 その他
 上記の措置の導入後の状況を注視し、必要に応じて、更なる措置を検討することとしています。

【参考資料】
 
「証券市場の構造改革プログラム」について(平成13年8月8日)
「改革先行プログラム」(平成13年10月24日)

 
<平成14年度機構・定員及び予算案の概要について>

 平成13年12月24日に閣議決定された、平成14年度予算政府案における金融庁の機構・定員及び予算の概要は以下のとおりです。


.機構・定員

 「緊急経済対策」(平成13年4月)、「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」(「骨太の方針」同年6月)や「改革先行プログラム」(同年10月)で、証券市場の構造改革や不良債権問題の抜本的解決が重要な政策課題とされている中、金融庁では、これらの諸課題に迅速かつ的確に対処するため、証券取引等監視委員会で「61人」、検査局で「46人」をはじめ、全体で「134人」の増員を図るなど、体制を整備することとしています。
 各部局の体制整備の概要は以下のとおりです。
 

(1

)証券取引等監視委員会(61人の増員)
 証券取引等監視委員会では、証券市場の構造改革が重要な政策課題とされている中、個人投資家の証券市場に対する信頼を確固たるものとするため、現体制「122人」に対し、5割増の「61人」の増員を図ることとしています。
 なお、財務局証券取引等監視官部門での増員「39人」と合わせると、全体で「100人」の増員が図られることとなり、我が国の市場監視体制は抜本的に強化されることとなります。

(参考1)監視委員会の各部門別体制整備の概要
 
 

現状

増員

検査部門

45人

20人

検査局との同時検査体制強化
概ね1.5年周期での検査体制

取引審査部門

19人

17人

人員を倍増。日常的な監視体制を抜本的に強化

特別調査部門

40人

22人

証券犯罪の一掃のため、犯則事件の調査体制強化

総括部門

18人

2人

監視活動の端緒となる情報収集体制の整備

 
(参考2)監視委員会と財務局監視官部門の増員
 
 
13年度末定員   増員 14年度末定員
監視委員会 122人   61人(定削1) 182人
財務局監視官部門 143人   39人(注) 182人
合 計 265人  100人 364人
(注)財務局監視官部門の定削は未定

(2

)検査局(46人の増員)
 検査局では、不良債権の最終処理を確実に進めるため、主要行の自己査定の正確性を高める観点から主要行に対して「年1回検査」、「フォローアップ検査」に加え、市場の評価に著しい変化が生じているなどの債務者に着目した「特別検査」を実施する体制を整備するほか、ITを利用した新たなシステム業務・取引への対応、証券市場活性化のための環境整備を図るため、証券会社や投信会社に対する検査体制を整備することとし、全体で「46人」の増員を図ることとしています。
 この結果、主要行については、持株会社等を含め、1年周期での検査が可能となるほか、地銀・第2地銀、証券会社、投信会社、保険会社については概ね1.5年周期、その他についても概ね3年周期での検査が可能となる体制が確保されます。

(3

)監督局(14人の増員)
 監督局では、ペイオフ解禁後の監督業務を迅速かつ的確に実施するため、「参事官」を新設するとともに、不良債権問題の正常化等に向けた体制整備の一環として、「監督調査室」を新設し、監督上必要な調査機能を抜本的に強化するなど、全体で「14人」の増員を図ることとしています。

(4

)総務企画局(13人の増員)
 総務企画局では、金融・経済を巡る情勢の急激な変化に的確に対応した、金融制度の整備・改善等を行なうため、調査・研究体制を充実・強化するなど、金融行政を総合的に担うための企画調整機能を強化することとし、全体で「13人」の増員を図ることとしています。
 
(参考3)平成14年度増員内訳
   
13年度末定員 14年度定員削減 14年度増員 増員後定員
総務企画局 225  −  13  239(注)
検査局 360 ▲2  46  404
監督局 144 ▲1  14  156(注)
監視委員会 122 ▲1  61  182
合 計 851 ▲4 134  981
  (注)参事官の設置に伴い、定員1人を監督局から総務企画局に振替


.予算

 平成14年度予算政府案では、上記の増員に伴う経費のほか、機動的な検査・監視の実施、海外当局との連携強化等を図るための経費を折り込んで、総額135億円(対前年度0.3%増)を計上することとしています。
 また、預金保険機構に係る公的資金枠については、現行の70兆円の枠組みを維持することとし、53.4兆円の政府保証枠を確保することとしています。
 

(注)

70兆円−13兆円(交付国債)−3.6兆円(13年度までに発行される預保債(政府保証付債券)の残高)=53.4兆円

(参考4)
平成14年度金融庁予算(概算決定)
 

区分

平成13年度
当初予算額
(A)

平成14年度
概算決定額
(B)

対前年度増△減額
(B−A)

対前年度伸び率
(B−A)/(A)

 

百万円

百万円

百万円

(項)金融庁

13,307

13,393

86

0.6

人件費

8,547

9,340

794

9.3

その他

4,760

4,053

△707

△14.9

 

検査監督等実施経費

755

765

10

1.3

検査監督事務等電算化経費

1,020

825

△194

△19.0

検査監督手法等調査・研修経費

116

97

△19

△16.3

金融制度等調査経費

250

235

△15

△5.9

審議会等運営経費

114

98

△16

△14.0

国際会議等出席経費

202

196

△6

△2.9

中央省庁等再編成経費

308

0

△308

皆減

その他

1,996

1,837

△159

△8.0

(項)経済協力費

177

133

△44

△24.8

合 計

13,484

13,526

42

0.3

(注) 各々の計数を百万円未満で四捨五入したため、計数が符合しない場合がある。
 
「平成14 年度機構・定員及び予算について」

 
<主な出来事>(12月)
     
1日(土) 金融審議会「金融の基本問題に関するスタディグループ」シンポジウム開催
3日(月) 「銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律施行令案」、「銀行等保有株式取得機構に関する命令案」等の公表(パブリックコメント)
5日(水) 銀行持株会社(株式会社大和銀ホールディングス)の設立認可
株式会社大和銀行、株式会社あさひ銀行、株式会社近畿大阪銀行、株式会社奈良銀行及びあさひ信託銀行株式会社の産業活力再生特別措置法に基づく事業再構築計画の認定
6日(木) 「公認会計士試験(第1次試験)の試験場について」発表
播州信用金庫に対する担保附社債に関する信託事業の免許
「投信・投資顧問検査マニュアルWGの検討状況」発表
7日(金) ダム・米財務副長官の大臣表敬訪問
事務ガイドラインの一部改正(証券関係)
栃木県中央信用組合、小川信用組合、黒磯信用組合及び岡山県信用組合に対する金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分
10日(月) 中小企業金融の円滑化に関する意見交換会開催
「金融機関の信託業務の兼営等に関する法律施行令等を改正する政令案」等の公表(パブリックコメント)
11日(火) 「金融機関等が行う特定金融取引の一括精算に関する法律施行規則の一部を改正する内閣府令案」の公表(パブリックコメント)
13日(木) 「自動車損害賠償保障法及び自動車損害賠償責任再保険特別会計法の一部を改正する法律の施行等に伴う政令、省令及び関係通達等の制定及び改正並びに支払基準の制定に関するパブリックコメントの結果公表
「銀行法施行規則等の一部を改正する内閣府令」(案)等に対するパブリックコメントの結果公表
14日(金) 企業会計審議会第一部会開催(第15回)
日本型金融システムと行政の将来ビジョン懇話会(第4回)
資産を買い取る場合の価格を定めるための基準及び資産の買取りの決定に係る承認を行うための基準を定める件を改正する告示案」の公表(パブリックコメント)
「“自己資本に関する新しいバーゼル合意”の完成に向けた作業の進捗状況」公表
輪島信用組合に対する管理の終了期限の延長
東京商銀信用組合に対する管理の終了期限の延長
信用組合関西興銀に対する管理の終了期限の延長
19日(水) 副大臣海外出張(マレーシア・シンガポール・インドネシア25日まで)
「特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令等の改正案」の公表(パブリックコメント)
20日(木) 「銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律施行令案」、「銀行等保有株式取得機構に関する命令案」等に対するパブリックコメントの結果公表
「BIS規制見直しにかかるバーゼル委員会公表ペーパー」公表
21日(金) 企業会計審議会第二部会開催(第24回)
企業会計審議会固定資産部会開催(第18回)
「経営健全化計画のフォローアップ(13年9月期)について」公表
ゴールドマン・サックス証券会社東京支店に対する行政処分
「空売りへの総合的な取組みについて」発表
都民信用組合、池袋信用組合、厚木信用組合及び島原信用組合に対する金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分
「シンガポール通貨監督庁との証券分野の情報交換覚書(MOU)の署名について」発表
25日(火) 「平成14年度機構・定員及び予算について」発表
「有価証券の空売りに関する内閣府令の一部を改正する内閣府令案の概要」の公表(パブリックコメント)
茨城商銀信用組合に係る管理を命ずる処分の取消し
26日(水) 「タリバーン関係者等と関連すると疑われる取引の届出について(追加要請その4)の発出について」発表
28日(金) 「石川銀行について」の大臣談話発表
長島信用金庫、佐伯信用金庫、上田商工信用組合及び両筑信用組合に対する金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分
朝銀千葉信用組合に対する管理の終了期限の延長
朝銀東京信用組合に対する管理の終了期限の延長
朝銀新潟信用組合に対する管理の終了期限の延長
朝銀長野信用組合に対する管理の終了期限の延長
朝銀近畿信用組合に対する管理の終了期限の延長