証券取引等監視委員会メ-ルマガジン (第112号)

平成30年5月10日
証券監視委ウェブサイト http://www.fsa.go.jp/sesc/index.htm

 

<目次>

市場へのメッセージ

1.ユアテック株式外1銘柄に係る相場操縦に対する課徴金納付命令の勧告について

2.プレシジョン・システム・サイエンス株式会社顧問2名による内部者取引違反行為に対する課徴金納付命令の勧告について


市場へのメッセージ


1.ユアテック株式外1銘柄に係る相場操縦に対する課徴金納付命令の勧告について
   
 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、取引調査の結果に基づいて、以下の事案について課徴金納付命令勧告を行いました。
 
・平成30年3月23日 ユアテック株式外1銘柄に係る相場操縦
         ( https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2018/2018/20180323-1.htm
 
【事案の概要】
 本件は、インターネットで株取引を行っていた個人投資家が、ユアテック株式外1銘柄の株式の売買を誘引する目的をもって、上値売り注文を大量に入れた上で、自身の売り注文と買い注文を下値で対当させるなどの方法により、同株式を下値で買い付けた後、上値に大量に入れた売り注文を取り消すとともに下値買い注文を入れた上で、自身の売り注文と買い注文を上値で対当させるなどの方法により、同株式を上値で売り付けるなどして、上記銘柄につき約17万円の売買差益を得たほか、その外1銘柄でも同様の手口を用いて、2銘柄合計で約48万円の売買差益を得たという事案です。
 
【事案の特色等】
 昨年11月21日勧告のセントラル株式外4銘柄に係る相場操縦事案等と同様に、本件も見せ玉を用いた個人投資家による相場操縦事案です。本件の特徴は、課徴金納付命令対象者が、株価の引下げと株価の引上げの両局面に関与しており、株価の引下げのために売り見せ玉と対当売買による安値形成を併用し、また株価引上げのために買い見せ玉と対当売買による高値形成を併用していることです。これまで、証券監視委が課徴金勧告を行った相場操縦事案において、売りと買いの両方の見せ玉を用いたケースや対当売買を用いたケースは少なくありませんが、本件のように見せ玉と対当売買を密接に組み合わせて何度も繰り返す手法は初めてのケースです。
 証券監視委は、証券取引所の売買審査部門等と連携して、このような手口も見逃すことなく立件しています。
 証券監視委は、これまでに相場操縦規制違反について多数の告発・勧告を行ってきたところですが、相場操縦規制違反は後を絶たない状況にあり、その要因・背景としては以下のようなものが考えられます。

  • インターネット取引の普及及び発注システムの進歩等により、個人投資家であっても、迅速かつ大量の発注・取消が可能となっているため、見せ玉等の手法を用いて人為的に相場を変動させれば、容易に売買差益を稼げる、又は損失回避を図ることができるとの誘惑
  • 市場では膨大な取引が行われているため、個人が行う小規模の相場操縦行為までは市場監視の目も届かないだろうとの誤解

 相場操縦行為は証券市場の公正性・健全性を損なうものであり、証券監視委は、証券市場に対する投資家の信頼を確保するため、厳正な調査を実施しており、調査の結果、法令違反が認められた場合には、課徴金勧告や刑事告発を行っています。
 本件が広く周知されることにより、相場操縦の抑止効果が発揮されることを期待しています。
 

 

2.プレシジョン・システム・サイエンス株式会社顧問2名による内部者取引違反行為に対する課徴金納付命令の勧告について

  
 証券監視委は、取引調査の結果に基づいて、以下の事案について課徴金納付命令勧告を行いました。
 
・平成30年3月30日 プレシジョン・システム・サイエンス株式会社顧問2名による内部者取引違反行為
         ( https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2018/2018/20180330-1.htm
 
【事案の概要】
 本件は、プレシジョン・システム・サイエンス株式会社(「以下「プレシジョン」といいます。)が平成29年5月15日に公表した、プレシジョンが株式会社日立ハイテクノロジーズと業務上の提携を行うことに関するインサイダー取引です。
 本件は課徴金納付命令対象者(以下、本節において「対象者」といいます。) が2名の事案です。

・対象者(1)について

 対象者(1)は、プレシジョンの顧問として勤務している者ですが、同人がその職務に関し、同社の業務執行を決定する機関が、株式会社日立ハイテクノロジーズと業務上の提携を行うことについての決定をした旨の重要事実(以下「本件事実」といいます。)を知りながら、本件事実の公表前に、自己の計算において、プレシジョン株式を買い付けたものです。

・対象者(2)について

 対象者(2)についても、対象者(1)と同様、プレシジョンの顧問として勤務している者であり、同人がその職務に関し、本件事実を知りながら、本件事実の公表前に、自己の計算において、プレシジョン株式を買い付けたものです。
 
【事案の特色等】
 本件の対象者2名はいずれもプレシジョンの顧問としてプレシジョン社内の会議に参加することにより、職務に関して本件事実を知ったものですが、両名とも1ヶ月に数回程度のみ出社する非常勤の従事者でした。上場会社等におかれましては、内部者取引に係る未然防止のための態勢整備の充実をお願いしたいと思いますが、その際、常勤の従業者のみならず非常勤の従業者に対しても、その職責に応じた情報管理・売買管理が徹底されているか、再点検が望まれます。
 また、本件は、「業務上の提携」を知った者によるインサイダー取引事案です。これまでのメルマガでも記載してきましたが、業務上の提携を重要事実とするインサイダー取引の勧告件数は毎年上位となっており、その原因として、業務上の提携については、当事者間での検討開始から最終的な合意・公表までに相当な時間を要し、社内のみならず社外においても重要事実を知り得る関係者が多くなることから、他の重要事実に比べてインサイダー取引が行われやすいとの指摘があります。本件を契機として業務上の提携に関わる者全ての方に対して、情報管理の徹底に努めていただければと期待します。
 本件が広く周知されることにより、インサイダー取引の抑止効果が発揮されることを期待しています。

 



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