市場へのメッセージ(令和8年4月9日)
~当委員会では、活動状況や問題意識等を簡潔かつ分かりやすくまとめて「市場へのメッセージ」として配信しています~
<概要>
今回は、有価証券報告書等の虚偽記載に係る課徴金納付命令勧告1件、内部者取引事件の告発2件、相場操縦事件の告発1件、検査結果に基づく勧告1件の紹介を行っております。
事案に応じて、その意義・特徴や発生原因、市場関係者や投資家の皆様へのメッセージ等を盛り込んでおりますのでぜひご覧ください。
<目次>
- 株式会社ウイルコホールディングスにおける有価証券報告書等の虚偽記載に係る課徴金納付命令勧告について
- 東洋証券株式会社株券に係る内部者取引事件の告発について
- 株式会社スーパーバリュー株券等5銘柄に係る相場操縦事件の告発について
- やまびこ投資顧問株式会社に対する検査結果に基づく勧告について
証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、株式会社ウイルコホールディングス(以下「当社」といいます。)における金融商品取引法に基づく開示規制の違反について検査した結果、下記のとおり法令違反の事実が認められたことから、令和8年1月14日に内閣総理大臣及び金融庁長官に対して課徴金納付命令勧告を行いました。
【法令違反の内容】
当社は、固定資産の減損損失の過少計上のほか、当社の連結子会社と共に、売上原価並びに販売費及び一般管理費の過少計上の不適正な会計処理を行ったことにより、「重要な事項につき虚偽の記載」がある下記の開示書類を北陸財務局長に提出しました。
(継続開示書類)合計14通
- 令和2年10月期有価証券報告書(令和3年1月29日提出)
- 令和3年1月第1四半期四半期報告書(令和3年3月16日提出)等
【主な不適正な会計処理の概要】


証券監視委は、本事例のような有価証券報告書等における虚偽記載などの開示規制違反に対して、引き続き厳正に対処してまいります。
2.株式会社牧野フライス製作所株券に係る内部者取引事件の告発について
証券取引等監視委員会は、令和8年2月19日及び同月27日、金融商品取引法違反(内部者取引)の嫌疑で、嫌疑者合計4名を東京地方検察庁に告発しました。注)2月19日に嫌疑者3名を、同月27日に共犯者1名を告発したものです。
【事案の概要】
犯則嫌疑者Aは、三田証券株式会社の取締役投資銀行本部長として、令和6年8月下旬頃、ニデック株式会社との間の公開買付代理人業務契約等の締結の交渉に関し、同社が株式会社牧野フライス製作所(以下「牧野フライス」といいます。)の株券の公開買付けを行うことを決定した旨の公開買付けの実施に関する事実を知ったもの、犯則嫌疑者BはAの知人、犯則嫌疑者C及びDはBの知人であるが、4名が共謀の上、同公開買付けの実施に関する事実の公表前である同年9月上旬から同年12月下旬までの間、Bほか16名義で、牧野フライスの株券合計32万9100株を代金合計約23億4980万円で買い付けたものです。
【本件の意義】
本件は、証券会社の取締役投資銀行本部長として、公開買付代理人業務等を管理する立場にあった犯則嫌疑者Aが、その職務に関して公開買付けの実施に関する事実を知り、その事実を知人であり本件事実を知り得る立場になかった犯則嫌疑者Bと共有し、犯則嫌疑者Bの知人である犯則嫌疑者C及びDを含めた4名が共謀の上、同事実の公表前に、多数の異名義口座を用いて合計約23億円もの巨額資金を投じて対象銘柄の株券を買い付けたものです。
有価証券の発行者と投資家を適切につなぎ、証券市場の公正性・信頼性を守るべき証券会社の役員が、職務上の立場を利用し、多数の異名義口座を利用して株取引をしていた共犯者と一緒になって内部者取引を行った事案であり、市場の公正性に与えた影響等諸般の事情に照らし、悪質性が認められます。
証券取引等監視委員会は、引き続き、市場の公正性・透明性の確保に向けて、本件のような重大で悪質な違法行為に対し、厳正に対応していきます。
3.東洋証券株式会社株券に係る内部者取引事件の告発について
証券取引等監視委員会は、令和8年3月12日、金融商品取引法違反(内部者取引)の嫌疑で、嫌疑者3名を東京地方検察庁に告発しました。【事案の概要】
犯則嫌疑者Aは、三田証券の取締役投資銀行本部長として、令和6年10月中旬頃までに、同社と東洋証券株式会社(以下「東洋証券」といいます。)との間の秘密保持契約の履行に関し、同社の令和6年4月1日から令和7年3月31日までの事業年度における剰余金の期末配当の予想値が、公表されていた前事業年度における剰余金の期末配当の実績値に比較し、投資者の投資判断に及ぼす影響が重要なものとして内閣府令で定める基準に該当する差異が生じた旨の同社の業務等に関する重要事実を知ったもの、犯則嫌疑者BはAの知人、犯則嫌犯則嫌疑者CはBの知人であるが、3名が共謀の上、同事実の公表前の令和6年10月中旬から同月下旬までの間、Bほか14名義で、東洋証券の株券合計99万6400株を代金合計約4億9630万円で買い付けたものです。
【本件の意義】
本件は、証券会社の取締役投資銀行本部長として、顧客へのアドバイザリー業務等を管理する立場にあった犯則嫌疑者Aが、その職務に関して上場会社の業務等に関する重要事実を知り、その事実を知人であり本件重要事実を知り得る立場になかった犯則嫌疑者Bと共有し、犯則嫌疑者Bの知人である犯則嫌疑者Cを含めた3名が共謀の上、同事実の公表前に、多数の異名義口座を用いて合計約4億円もの資金を投じて対象銘柄の株券を買い付けたものです。
有価証券の発行者と投資家を適切につなぎ、証券市場の公正性・信頼性を守るべき証券会社の役員が、職務上の立場を利用し、多数の異名義口座を利用して株取引をしていた共犯者と一緒になって内部者取引を行った事案であり、市場の公正性に与えた影響等諸般の事情に照らし、悪質性が認められます。
なお、本件の犯則嫌疑者3名については、別の株券に係る金融商品取引法違反(内部者取引)の嫌疑で、令和8年2月19日にも告発しています。
証券取引等監視委員会は、引き続き、市場の公正性・透明性の確保に向けて、本件のような重大で悪質な違法行為に対し、厳正に対応していきます。
4.株式会社スーパーバリュー株券等5銘柄に係る相場操縦事件の告発について
証券取引等監視委員会は、令和8年3月12日、金融商品取引法違反(相場操縦)の嫌疑で、嫌疑者1名を東京地方検察庁に告発しました。【事案の概要】
犯則嫌疑者は、株式会社スーパーバリュー株券等5銘柄(対象銘柄及び犯則行為期間は後述します。)について、これら株券の売買を誘引する目的をもって、複数の名義で現値より安値の売り注文を連続して行って売り下がるなどの方法により同株券を売り付けるなどし、さらに、複数名義で、現値より高値の買い注文を連続して行って買い上がるなどの方法により同株券を買い付けるなどし、もって同株券の売買が繁盛であると誤解させ、かつ、相場を変動させるべき一連の売買及びその委託をするとともに、同株券の売買が繁盛に行われていると他人に誤解させるなど、同株券の売買の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的をもって複数の名義で同株券を売り付けると同時に別途買い付け、もって権利の移転を目的としない仮装の売買をし、同株券の株価を変動させたものです。
【本件告発事実の対象銘柄及び犯則行為期間】
⑴ 株式会社スーパーバリュー株券 令和5年1月11日から同月24日までの間
⑵ NCホールディングス株式会社株券 令和5年1月11日から同月24日までの間
⑶ アビックス株式会社株券 令和5年1月31日から同年2月2日までの間
⑷ ナノキャリア株式会社株券 令和5年2月3日から同月14日までの間
⑸ 株式会社KYORITSU株券 令和5年3月10日から同月27日までの間
【本件の意義】
本件は、犯則嫌疑者が、多数の異名義口座を利用して、東証上場5銘柄の株価を不正に引き下げた上で買い付け、その後、同株価を不正に引き上げた上で高値で売り抜けるなどした相場操縦事案です。
犯則嫌疑者は、本件犯則行為において、買い上がり買付けや、売り下がり売付け等の手法を用いるなどして株価を恣意的に上下に変動させ、また、大量の馴合売買を行うなどにより、需給バランスによって形成されるべき市場の株価に大きな影響を与えており、市場の公正性に与えた影響等諸般の事情に照らし、悪質性が認められます。
また、本件の犯則嫌疑者については、多数の異名義口座を用いた巨額インサイダー取引の嫌疑でも、令和8年2月19日及び同年3月12日に告発しています。
証券取引等監視委員会は、引き続き、市場の公正性・透明性の確保に向けて、本件のような重大で悪質な違法行為に対し、厳正に対応していきます。
なお、本件については、日本取引所自主規制法人により支援がなされています。
5.やまびこ投資顧問株式会社に対する検査結果に基づく勧告について
証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、令和8年3月13日、金融庁に対して、やまびこ投資顧問株式会社(以下「当社」といいます。)に行政処分を行うよう勧告しました。
【事案の概要等】
当社は、主に株式会社産業と経済(金融商品取引業の登録はない。令和4年12月解散、令和8年1月清算結了。以下「産業と経済社」といいます。)が発刊する株式関連情報誌「オール株価チャンス」に広告を掲載し、投資顧問契約の締結に至った顧客に対して国内株式の投資助言を行っていました。
なお、産業と経済社は、同社の取締役であったX氏が実質的支配者として「オール株価チャンス」等の監修を行っていました。
そのような中、今回検査において、当社の業務運営の状況を検証したところ、以下の問題が認められました。
⑴ 当社の実質的支配者が別会社にて行う無登録による投資助言業務に当社役職員が加担している状況等
ア 当社が実質的支配者に支配され、当該支配者が運営する別会社と当社が一体として経営されている状況
X氏は、当社職員の人事・労務管理など当社運営のあらゆる重要事項に関与し、当社の実質的な意思決定や業務運営を行っている状況が認められました。
また、産業と経済社が発刊する「オール株価チャンス」は、上場企業に関する業績見通しや投資行動の方針等を解説する内容となっているところ、X氏の監修のもと、同誌の大宗を占める部分を当社役職員が執筆している等の状況が認められました。
以上のとおり、当社は、当社の重要事項の意思決定等を通じて、X氏により実質的に支配されている状況が認められ、産業と経済社とともにX氏の支配のもとで一体として経営されている状況にあると認められます。
イ 当社役職員が無登録による投資助言業務に加担している状況
産業と経済社は、「オール株価チャンス」の発刊のほか、ウェブサイト等を用いて「プラチナ会員」と称するサービス(以下「プラチナ会員事業」といいます。)を展開していました。
プラチナ会員事業は、産業と経済社ウェブサイト等から誘導された者が会員登録を行い、契約を締結した会員に対し、同社が週次でメール等により、推奨銘柄等に係る情報提供を行うサービスであり、同社が投資助言業務を行っているものです。よって産業と経済社は、金融商品取引法(以下「金商法」といいます。)に基づく登録を受ける必要がありますが、同社は登録しておらず無登録で投資助言業務を行っていると認められます。
そのような中、Y代表取締役をはじめ当社役職員は、産業と経済社のプラチナ会員事業に係る勧誘チラシ等について、当該事業及びチラシ等の内容を把握の上、当社業務時間中に「オール株価チャンス」の郵送の際の同封作業を継続的に行っていたほか、当社のA営業員(当社の100%株主)がX氏に対し、推奨銘柄に関するIR情報や株価動向等について情報共有を行うなど、当該事業に関する業務支援をしている状況が認められました。
ウ 当社営業員が個人で無登録投資助言業務を行っていると認められ、当社がそのことを看過し適切な対応を取らずに放置していた状況
当社のB営業員は、少なくとも平成30年1月以降、金商法に基づく登録を受けることなく、当社顧客を含む個人36名に対し、自身で選定した推奨銘柄に関して投資助言を行っており、その対価として総額約550万円をB営業員個人として得ていました。
なお、当社は、B営業員が無登録で投資助言業務を行っていることを令和4年6月に把握するに至ったところ、Y代表取締役は、B営業員に対し事実確認を行いましたが、B営業員はこれに応じませんでした。そのため、Y代表取締役はB営業員が他にも投資助言を行っている顧客がいるとの疑念を高めていたにもかかわらず、B営業員への追加の調査等を行っておらず、当社はこのような状況を看過し、放置していました。
上記イの状況は、当社が、プラチナ会員事業の内容を把握していたにもかかわらず、当該事業について何ら疑問を持たず、他方、産業と経済社が金商法に基づく登録を受けることなく金商法による保護が及んでいない顧客に対し、「投資助言業務」を行うことに加担しているものです。
また、上記ウの状況は、B営業員が金商法に基づく登録を受けることなく、これらの業務を行うことは、同法に違反するものであり、当該状況を当社が把握するに至ったにもかかわらずそのことを看過した当社の業務管理態勢は著しく不適切です。
当社における上記のような業務運営状況は、金商法第51条に規定する「業務の運営に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるとき」に該当するものと認められます。
⑵ 登録拒否要件に該当する者に政令で定める使用人として業務を行わせた上、当局に対しそのことを隠匿し虚偽の届出を提出等していた状況
当社は、平成29年9月、当社の金融商品取引業者登録簿における「金融商品の価値等の分析に基づく投資判断を行う者」(以下「投資判断者等」といいます。)に関し、当局より事実確認を求められました。
これを受け、当社は、平成29年12月、B営業員ほか4名を平成28年12月より投資判断者等としている事実について、当局に対し遡及して変更届を提出しました。その際、B営業員については、平成29年9月時点で投資判断業務に従事しなくなったとして、当社はB営業員の退任届をあわせて当局へ提出し、B営業員はパート従業員として当社での勤務を継続するものの投資判断業務は行わない旨報告しました。
なお、B営業員については、その当時、金商法に規定する登録拒否要件に該当しており、本来であれば政令で定める使用人として投資判断者等の業務に従事できない状況でした。当社はそのことを認識しながら、B営業員の退任届の提出後もそれまでと同様に投資判断業務を行わせ、当局に対し当該事実を隠匿し、虚偽の届出及び報告を行っていました。
さらに、B営業員が登録拒否要件に該当していた事実については、今回検査において、A営業員がB営業員に対し、検査官へ口外しないように口止め等を行っていた。
上記の状況は、当社が登録拒否要件に該当する者に投資判断業務を継続させていることを認識していたにもかかわらず、当局に対しそのことを隠匿した上で虚偽の変更届を提出したものであり、金商法第31条第1項に違反し、それにより登録拒否要件に該当する者を継続して当社の重要な業務に従事させていたものであることから、登録制度をないがしろにする行為であります。また、当社は、今回検査においても、A営業員がB営業員に対して口止め等を行うことで、検査官による事実確認を妨げるよう謀っていました。
このように、当社が当局に対する隠匿を繰り返すことで金融商品取引業の登録を維持していることは、金商法第52条第1項第10号に規定する「金融商品取引業に関し、不正又は著しく不当な行為をした場合において、その情状が特に重いとき」に該当するものと認められます。
⑶ 金融商品取引業に係る業務につき、その執行について必要となる十分な知識及び経験を有する役員又は使用人を確保していない状況及び金融商品取引業を適確に遂行するための必要な体制が整備されていない状況
当社は、上記(1)アのとおり、X氏による実質的支配を漫然と受け入れている中、営業を優先し、法令等遵守を軽視している状況となっていました。また、X氏の強い影響力のもと、Y代表取締役の当社代表取締役としての権限は制限されている状況となっていました。
こうした状況において、上記(1)イのとおり、Y代表取締役は何ら疑問を持つことなく、自身を含む当社役職員が産業と経済社の無登録投資助言業務に加担している状況を是認していました。また、当社役職員においては、上記(1)及び(2)のほか、法定の届出書の未提出等やY代表取締役自らが顧客カードの改ざんを行うなどの法令違反行為等を繰り返し行っている状況にありました。
上記のとおり、当社の法令等遵守意識等は著しく欠如している状況であることから、Y代表取締役においては、金融商品取引業の公正かつ的確な遂行に必要となる十分な資質を有しておらず、その遂行に必要となるコンプライアンスに関する知識・経験を有しているとは認められません。
また、Y代表取締役は、令和2年3月の代表取締役就任以降も、上記(1)のとおり不適切な業務運営を放置していることに加え、Y代表取締役自らがX氏に意見具申することは困難な旨を自認しており、当社の唯一の役員であるY代表取締役が主導して構築しなければならない当社の経営管理態勢等は著しく欠如している状況にあるところ、当社は、法令違反行為や不適切な業務運営をけん制・抑止する態勢となっていない状況にあるものと認められます。
当社におけるこのような状況は、金商法第29条の4第1項第1号の2に規定する「金融商品取引業に係る業務のそれぞれにつき、その執行について必要となる十分な知識及び経験を有する役員又は使用人を確保していないと認められる者」及び同項第1号ヘに規定する「金融商品取引業を適確に遂行するための必要な体制が整備されていると認められない者」に該当し、同法第52条第1項第1号に該当するものと認められます。
【証券監視委からのメッセージ】
- 当社は、X氏による実質的支配を漫然と受け入れている中、営業を優先し、法令等遵守を軽視している状況になっており、当社役職員は上記の法令違反行為等を繰り返していました。このように当社役職員は金融商品取引業の執行について必要となる十分な知識・経験を有しておらず、当社は金融商品取引業を適確に遂行するための必要な体制が整備されていないと認められたものです。
- 証券監視委は、このような法令違反行為が認められた場合には、厳正に対処してまいります。
※ 当社に対しては、令和8年4月7日に、関東財務局長から登録取消し及び業務改善命令の処分が行われています。
<発行>
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