令和7年4月25日
証券取引等監視委員会
Black Clover Limited(ブラッククローバー社)及びその役員1名による金融商品取引法違反行為に係る裁判所への禁止及び停止命令発出の申立てについて
1.申立ての内容等
証券取引等監視委員会が、Black Clover Limited(ブラッククローバー社、セーシェル共和国、代表者 坂本俊吾(さかもとしゅんご、以下「坂本」という。)、金融商品取引業の登録等はない。以下「当社」という。)に対して金融商品取引法(以下「金商法」という。)第187条第1項に基づく調査を行った結果、下記2.の事実が認められたことから、本日、証券取引等監視委員会は、金商法第192条第1項に基づき、東京地方裁判所に対し、当社及び当社の代表者である坂本(当社及び坂本を併せて、以下「当社ら」という。)を被申立人として、金商法違反行為(下記ア~ウ)の禁止及び停止を命ずるよう申立てを行った。
ア 無登録で、金商法第2条第2項第5号又は第6号に掲げる権利について、募集又は私募を業として行うこと
イ 無登録で、金商法第2条第2項第5号又は第6号に掲げる権利の売買の媒介を業として行うこと
ウ 無登録で、金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に基づいて主として有価証券又はデリバティブ取引に係る権利に対する投資として、金商法第2条第2項第5号又は第6号に掲げる権利を有する者から出資又は拠出を受けた金銭その他の財産の運用を業として行うこと
2.事実関係
当社は、平成27年8月24日に、セーシェル共和国を本店所在地とし、投資事業を目的として設立された外国法人であり、金商法第29条所定の登録を受けずに、海外金融商品である日本国内の上場企業株式を投資対象とするファンド(以下「BC日本株ファンド」という。)や、中国企業の株式を投資対象とするファンド(以下「BC中国株ファンド」といい、BC日本株ファンドと併せて「本件BCファンド」という。)をそれぞれ組成し、下記⑴のとおり本件BCファンドの募集又は私募及び売買の媒介を業として行い、また、下記⑵のとおり、本件BCファンドの出資者から拠出を受けた金銭等の運用を業として行っている。
また、当社の代表者である坂本は、当社が組成し、運用する本件BCファンド及び当社の従業員が設立した複数の合同会社(以下「各BM合同会社」という。)のファンドマネージャーとして、具体的な運用業務を行うほか、勧誘に係る指導や勧誘資料の作成を行うなど、運用や勧誘行為において極めて重要な役割を果たしている。
なお、本件BCファンドについては、下記⑴のとおり募集又は私募及び売買の媒介を通して資金を調達したほか(出資者延べ345名、出資額約30億円)、各BM合同会社から運用資産の現物出資・業務移管を受け、本件BCファンドの運用資産を形成した(注)。
(注)各BM合同会社は、「BM CAPITAL」というサービス名を用いて、社員権の自己募集であるとして資金を 調達(出資者延べ1816名、出資額約223億円)した上、一定期間、日本国内の上場企業株式で運用した後、出資者からの同意を得たうえで、順次会社を解散し、持分相当額の返金を望む出資者に係る運用資産を除き、当社に運用資産の全額を現物出資することにより、運用業務を移管した。また、各BM合同会社の現物出資の対価として、BC日本株ファンドの持分を受領し、解散に伴う清算の際、出資者に対し、残余財産としてBC日本株ファンドの持分を分配している。
(1) 集団投資スキーム持分の募集又は私募及び売買の媒介
当社らは、ステルスマーケティングなどによりBM CAPITALへの投資に興味を持ち、各BM合同会社のWebサイトに誘導され、問合せをしてきた者等に対し、本件BCファンドの内容やファンドマネージャーである坂本のこれまでの運用実績が優れており、通年で一度もマイナスになったことはないことなどを説明し、その勧誘を行っている。
そして、上記説明の結果、本件BCファンドに出資することを希望するに至った顧客に対し、当社との間で本件BCファンド持分に係る出資契約を締結させることにより、本件BCファンドの募集又は私募を行い、あるいは、坂本との間で、坂本が保有する本件BCファンド持分の持分譲渡契約に係る業務を行うことにより、本件BCファンドの売買の媒介を行っている。
これらにより、当社らは、BC日本株ファンドにつき、平成28年3月から令和6年9月までの間に、合計約26億円(出資者数:延べ287名)、BC中国株ファンドにつき、令和3年6月から令和6年9月までの間に、合計約4億円(出資者数:延べ58名)の出資を受けている。
当社らの上記行為は、外国の法令に基づく集団投資スキーム持分の募集又は私募及び売買の媒介を業として行うものであって、金商法第28条第2項第1号及び第2号に規定する「第二種金融商品取引業」に該当し、無登録でこれを行うことは、同法第29条に違反する。
(2) 集団投資スキーム持分の運用
当社らは、坂本をファンドマネージャーとして、本件BCファンドの出資者が拠出した金銭や各BM合同会社から現物出資を受けた日本株を用いて、日本株の運用を行っているほか、本件BCファンドの出資者が拠出した金銭を用いて、中国株の運用を行っている。
これにより、当社らは、令和6年9月30日時点において、BC日本株ファンドにつき、合計約201億円(出資者数:642名)、BC中国株ファンドにつき、合計約5億円(出資者数:56名)の運用を行っている。
当社らの上記行為は、金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に基づいて主として有価証券又はデリバティブ取引に係る権利に対する投資として、外国の法令に基づく集団投資スキーム持分の運用を業として行うものであり、金商法第28条4項に規定する「投資運用業」に該当し、無登録でこれを行うことは、同法第29条に違反する。
当社らは、上記金商法違反行為を今後も行う蓋然性が高いことから、これを可及的速やかに禁止・停止させる必要がある。
【顧客の皆様へ】
〇証券取引等監視委員会は、東京地方裁判所に対して、当社らが金融商品取引法違反行為(無登録金商業)を行うことの禁止及び停止を命ずるよう申立てを行いました(令和7年4月25日)。
(注)本件申立ては、当社らによる金商法違反行為の禁止及び停止を命ずるよう裁判所に求めるものであり、顧客への投資資金の返金の禁止を求めるものではありません。
〇当社らは、いずれも金融商品取引業の登録等を受けた業者ではありません。
〇 証券取引等監視委員会の調査の結果によれば、各BM合同会社又は当社の従業員において、広告であることを明示せずに、架空の管理人を設定した投資に関する情報発信を行うWebサイト(以下「紹介サイト」という。)を複数作成し、紹介サイトにおいてBM CAPITALを日本国内のヘッジファンドのおすすめランキング1位であることや年平均10%以上の高い運用利回りが期待できるなどとする記事のほか、同記事にBM CAPITALの公式サイトのWebリンクを掲載するなどして、顧客の誘引を行っていました。
〇 当社らは、当該商品の提案、勧誘を行うに当たり、顧客に対して、過去の運用実績における利回りの良さ等を謳った説明を行っていますが、当該商品の運用成果を保証するものではありません。
〇 【一般投資家の皆様へ】も、併せてご確認ください。
【一般投資家の皆様へ】
〇 無登録業者が、実際には契約内容のとおりの取引を行っていなかったなどのトラブルが多発しています。無登録業者には、金融庁の監督権限が及ばず、投資者保護規定に基づく処分等が行えませんので、ご注意ください。
〇 仮に、海外当局の登録を受けた業者であったとしても、当該海外当局は、他国民との取引について監督指導等を行わないことや、金融庁と同等の監督権限がないことなどがあります。海外当局の登録を受けたことをもって日本と同等の投資者保護を担保するものではありません。
〇一般に、無登録業者は、実際には契約内容のとおりの取引を行っていない商品であったとしても、返金等を希望する顧客に対し、他の顧客の投資資金を交付することで、返金等に応じることがあります。これまでに返金等を受けることができていたとしても、そのことをもって、直ちに当該商品が信頼できるとは言えませんので、ご注意ください。
〇 日本で登録を受けずに金融商品取引業を行うことは違法です。取引の相手方が登録を受けているか、こちら
でご確認ください。

また、無登録で金融商品取引業を行っているとして、金融庁(財務局)が警告を行った者の名称等は、こちら
をご確認ください。

〇 その他、投資の際に留意すべき点等については、こちらをご確認ください。
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参考条文
〇第二種金融商品取引業、投資運用業
金融商品取引法(抄)
(定義)
第二条 この法律において「有価証券」とは、次に掲げるものをいう。
一~二十一 (略)
2 前項第一号から第十五号までに掲げる有価証券(略)であつて内閣府令で定めるものに表示されるべき権利(以下この項及び次項において「有価証券表示権利」と総称する。)は、有価証券表示権利について当該権利を表示する当該有価証券が発行されていない場合においても、当該権利を当該有価証券とみなし(略)次に掲げる権利は、証券又は証書に表示されるべき権利以外の権利であつても有価証券とみなして、この法律の規定を適用する。
一~四 (略)
五 民法(略)第六百六十七条第一項に規定する組合契約、商法(略)第五百三十五条に規定する匿名組合契約、投資事業有限責任組合契約に関する法律(略)第三条第一項に規定する投資事業有限責任組合契約又は有限責任事業組合契約に関する法律(略)第三条第一項に規定する有限責任事業組合契約に基づく権利、社団法人の社員権その他の権利(外国の法令に基づくものを除く。)のうち、当該権利を有する者(以下この号において「出資者」という。)が出資又は拠出をした金銭(これに類するものとして政令で定めるものを含む。)を充てて行う事業(以下この号において「出資対象事業」という。)から生ずる収益の配当又は当該出資対象事業に係る財産の分配を受けることができる権利であつて、次のいずれにも該当しないもの(略)
イ~ニ (略)
六 外国の法令に基づく権利であつて、前号に掲げる権利に類するもの
七 (略)
3~7 (略)
8 この法律において「金融商品取引業」とは、次に掲げる行為(略)のいずれかを業として行うことをいう。
一 (略)
二 有価証券の売買、市場デリバティブ取引又は外国市場デリバティブ取引の媒介、取次ぎ(有価証券等清算取次ぎを除く。)又は代理(有価証券の売買の媒介、取次ぎ又は代理にあつては、第十号に掲げるものを除く。)
三~六 (略)
七 有価証券(次に掲げるものに限る。)の募集又は私募
イ~ホ (略)
ヘ 第二項の規定により有価証券とみなされる同項第五号又は第六号に掲げる権利
ト (略)
八~十四 (略)
十五 金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に基づいて主として有価証券又はデリバティブ取引に係る権利に対する投資として、次に掲げる権利その他政令で定める権利を有する者から出資又は拠出を受けた金銭その他の財産の運用を行うこと(略)。
イ・ロ (略)
ハ 第二項第五号又は第六号に掲げる権利
十六~十八 (略)
9~42 (略)
第二十八条 (略)
2 この章において「第二種金融商品取引業」とは、金融商品取引業のうち、次に掲げる行為のいずれかを業として行うことをいう。
一 第二条第八項第七号に掲げる行為
二 第二条第二項の規定により有価証券とみなされる同項各号に掲げる権利についての同条第八項第一号から第三号まで、第五号、第八号又は第九号に掲げる行為
三・四 (略)
3 (略)
4 この章において「投資運用業」とは、金融商品取引業のうち、次に掲げる行為のいずれかを業として行うことをいい、(略)。
一・二 (略)
三 第二条第八項第十五号に掲げる行為
5~8 (略)
(登録)
第二十九条 金融商品取引業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行うことができない。
第百九十七条の二 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一~十の三 (略)
十の四 第二十九条の規定に違反して内閣総理大臣の登録を受けないで金融商品取引業を行つた者
十の五~十五 (略)
第二百七条 法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。以下この項及び次項において同じ。)の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
一 (略)
二 第百九十七条の二(第十一号及び第十二号を除く。)又は第百九十七条の三 五億円以下の罰金刑
三~六 (略)
2・3 (略)
○緊急差止命令に係る申立て
金融商品取引法(抄)
(審問等に関する調査のための処分)
第百八十七条 内閣総理大臣又は内閣総理大臣及び財務大臣は、この法律の規定による審問、この法律の規定による処分に係る聴聞又は第百九十二条の規定による申立てについて、必要な調査をするため、当該職員に、次に掲げる処分をさせることができる。
一 関係人若しくは参考人に出頭を命じて意見を聴取し、又はこれらの者から意見書若しくは報告書を提出させること。
二 鑑定人に出頭を命じて鑑定させること。
三 関係人に対し帳簿書類その他の物件の提出を命じ、又は提出物件を留めて置くこと。
四 関係人の業務若しくは財産の状況又は帳簿書類その他の物件を検査すること。
2 (略)
(裁判所の禁止又は停止命令)
第百九十二条 裁判所は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、内閣総理大臣又は内閣総理大臣及び財務大臣の申立てにより、当該各号に定める行為を行い、又は行おうとする者に対し、その行為の禁止又は停止を命ずることができる。
一 緊急の必要があり、かつ、公益及び投資者保護のため必要かつ適当であるとき この法律又はこの法律に基づく命令に違反する行為
二 (略)
2~4 (略)
第百九十八条 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一~七 (略)
八 第百九十二条第一項又は第二項の規定による裁判所の命令に違反した者
第二百七条 法人(略)の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
一・二 (略)
三 第百九十八条(略)又は第百九十八条の三から第百九十八条の五まで 三億円以下の罰金刑
四~六 (略)
2・3 (略)