【金融ここが聞きたい!】


 このコーナーは、記者会見における質疑・応答(Q&A)などの中から、金融を巡る時々の旬な情報をセレクトしてお届けするものです。もっと沢山ご覧になりたい方は、是非、金融庁ホームページの「記者会見概要」のコーナーにアクセスしてください。
 


: 今朝ほど、GDPの2次推計について数字が出ていますけれども、概ねが1次推計と余り変わらないわけですが、実体経済そのものは、この数字に象徴されているように、決してそんなに悪いわけではありません。むしろ、当初の想定より高いところで成長してきている。非常に短期的には、踊り場的な状況にありますけれども、実体経済そのものは、むしろ悪くない。そうした実体経済が、株価に反映されていないのではないだろうかというぐらいに厳しい外的なショックがあるということだと思います。それは、正に世界的な規模での地政学的な不確実性の問題ということで、その非常に厳しい中に世界の経済全体が置かれているし、日本もその中にあるというふうに思っています。
 株価の動向には、引き続きイラクの問題も含めて注視をしながら、国内で出来る政策について、4本柱の改革は、これは絶対に緩めないで進めていくと、そういう姿勢が、今、非常に重要であると思います。
平成15年3月11日(火) 竹中大臣記者会見抜粋)

 
 平成14年10−12月期のGDPの2次速報については、詳しくは、内閣府経済社会総合研究所のホームページの四半期別GDP速報(平成14年10−12月期・2次速報)(2003年3月11日)にアクセスしてください。

 


: まず、いろいろしっかりと議論しなければいけないのは、「何月危機」とかという言葉がよく使われるわけですけれども、基本的に金融に対する、例えば資産査定が不十分ではないか、自己資本が不足ではないかと、そういった懸念があって株価が下がって来ているような状況、これは正に金融危機ないしはその兆候だと思いますけれども、そういう状況と今の状況は全く違うということをやはりきちっと認識しないと、対応策を誤ると思います。今は、「3月危機」というふうに言いますが、戦争を懸念した世界的な株安がこの3月に起こっているということになるわけですね。世界的な株安の圧力が増えているにもかかわらず、むしろ金融システムは健全に機能していると。そこが、やはり以前に言われていた金融危機と全く違う点だということは、これはぜひ皆さんにも国民の皆さんにもご理解いただきたいと思います。
 基本的には、日本の銀行というのは、例えばですけれども、資金調達が困難になるとか預金が流出するとか、そういう兆候はもう全くないわけですし、そういうことを誰も現時点では考えていないと私は思います。株価の動向に関しては、いろいろな要因が働きますから、非常に注意して見ていかなければいけないということは間違いありませんけれども、その金融危機とかというその「危機」という言葉が、非常にいろいろな意味で混同されて使われるのは、これは政策判断を誤る非常に大きな問題を残すと思います。
 もちろん私は、金融担当大臣に就任した時に、日本の金融システムには問題がある、病んでいるということをはっきり申し上げました。それに対応するために「金融再生プログラム」を作って、それに対して金融機関が動き始めた。その日本の金融が抱える問題が完治したなどとは私も思っておりませんが、しかしこの半年で非常に明らかに良い方に行っていると、これはもう私は申し上げてよいのではないかと思います。そこに、今、戦争を懸念した世界的な株安が起こっているということですから、これはこれでもちろんしっかりと注意して見ていかなければいけませんけれども、かといって、日本の今までの「金融再生プログラム」に基づく政策、これはやはりしっかりと続けなければいけないわけですから、そこは非常に困難な外的なショックが出て来ていることは確かでありますけれども、しかし我々がやって来ていることというのは、方向としては正しいと思っておりますし、これはぜひしっかりと続けなければいけないと思っています。
平成15年3月14日(金) 竹中大臣記者会見抜粋)

 


: 公認会計士協会の奥山会長からの通達の件でありますけれども、これは公認会計士協会のいわゆる実務指針の中で、自らがお作りになった実務指針の中で繰り延べ税金資産をどう評価するかということに関して、非常に厳密なルールを作っているわけです。そのルールを厳格に適用して、公認会計士、監査法人としての社会的責任を果たしていくというような趣旨であったと思いますので、これは我々としてもぜひ非常に歓迎したいと、このようなご努力を多としたいというふうに思います。
 それで、繰延税金資産ですけれども、これは正に検査の中で、これは資産査定、資本評価の中の非常に重要な部分になってまいりますので、もちろんこれは検査の中でこれまでもやってきたわけですけれども、市場の声にも耳を傾けながら、特にその点に注意しながら検査をやっていくということで、これはもう検査の中でそういうことを着々とやっていっているというふうにご理解をいただければよいと思います。
平成15年2月28日(金)竹中大臣記者会見抜粋)

 
 繰延税金資産の合理性の確認に関する日本公認会計士協会の会長通牒について、詳しくは、アクセスFSA本号の【トピックス】「金融再生プログラムの進捗状況について III繰延税金資産の合理性の確認、DCF的手法の採用等についての日本公認会計士協会における検討結果」にアクセスしてください。

 


【金融便利帳】


 このコーナーは、とかく専門的でわかりにくい金融に関する用語や様々な疑問について、わかりやすく解説するものです。
 今月のキーワードは「自己資本」です。


 どんな事業でも、事業を行うには資金が必要となります。個人事業主の場合は、自分自身の貯蓄の中から事業に投ずる資金を拠出し、それだけでは足らないのであれば、金融機関などから資金を借入れます。株式会社の場合は、会社設立に際して株式を発行し、まず元手になる資金を調達した上で、金融機関などから借入れを行ったり、社債を発行するなどして資金を調達します。株式会社は、事業を行っていく中で、必要に応じ、株式を新規に発行(増資)したり、それまでの事業活動から上がった利益の一部を会社内部に蓄積(内部留保)するなどして、より大きな事業活動ができるように財務基盤を強化していきます。


 企業が事業を行うために調達する資金は、自己資本負債他人資本)に分かれます。自己資本とは、上の例でいうと、個人事業主の貯蓄や株式会社の株式の発行で調達した資本金内部留保です。また、負債とは、上の例でいうと、借入金社債です。


 負債は、他人資本ともいわれるように他人から借り入れた資金(borrowed capital)であり、いずれ利子を付けて返済しなければならないものです。借入金社債手形コマーシャル・ペーパーCP)などは負債です。


 これに対して、自己資本とは、個人事業主であれ、株式会社のような法人であれ、企業が事業に投下している資金(総資本)のうち負債を除いた部分です。株式会社の自己資本は、株主が払い込んだ資金(払込資本金)と、会社が事業活動によって稼いだ収益の中から負債についての返済(債権者に対する元本利子の支払い)や税金の支払いを行った後の利益のうち配当に回さないで会社内部に蓄積される部分(内部留保)からなります。内部留保部分を含めて、自己資本は会社の所有者である株主に帰属すべきものということで、株主資本と呼ぶこともあります。


 負債は、「借り手企業(債務者)は金融機関社債権者等の貸し手(債権者)に対して、元利払いを行い、満期までには借りたものを返さなければならない」という債権債務関係を定めた約束に基づくものであり、企業の業績が悪くても、約束は履行しなければなりません(もっとも、企業の業績悪化により、元利払いが滞ったり、倒産して債務不履行に陥ることはあり得ます。金融機関の企業に対する債権がこのような状態に陥ると、それは不良債権と呼ばれます)。
 


 不良債権については、アクセスFSA創刊号の【金融便利帳】(今月のキーワード:不良債権)にアクセスしてください。


 他方、株主に対する配当は、企業の業績が悪化して、赤字に陥るようなことにでもなれば、負債に対する元利払いとは異なり、必ずしも行わなければならないものではありません。また、会社が倒産でもすれば、会社に残った財産からは、まずは負債の返済が行われ、それでもなお残余があってはじめて株主に対する残余財産の分配が行われます。このように、株主資本すなわち自己資本に対する利益の配当や財産の分配は、負債に対する支払いよりも後回しにされます。逆に言えば、会社に損失が生じた場合には、まず自己資本をもってその埋め合わせを行い、他人資本である負債にはできる限り迷惑をかけないようにするということです。すなわち自己資本は損失を填補する責任を負うわけです。なお、株主はその払い込んだ資本の限度で責任を負うという意味で有限責任です。このように自己資本が負債に先立って損失に充てられるということは、債権者にとっては、債務者の自己資本は、自分に対する元利払いの約束がきちんと履行されるかどうかの信用の拠り所になっているわけです。


 金融機関の場合、その主な負債は預金であり、その債権者は預金者です。金融機関は預金者から預金を預かり、それを企業等に貸出します。そして企業の側から見れば金融機関からの借入金は負債であり、その債権者は金融機関です。企業は金融機関に対して約束した元利払いを行い、金融機関は預金者の預金を利息を付けながら大事に預かっていきます。しかし、上にも述べたように、企業の業績が悪化すれば金融機関に対する元利払いが滞ったり、債務不履行に陥ったりすることもあり得ます。通常の損失であれば、金融機関の収益の中で、これをカバーすることもできますが、収益でカバーできないような大きな損失が生じた場合には、自己資本が預金を守るためのクッションの役割を果たすのです。


 このように金融機関の自己資本は、預金を守るためのリスクバッファーであり、金融機関の健全性の裏付け信用の拠り所です。金融機関は、その受け入れている預金の量や、その抱えているリスク(貸出が不良債権化するリスクや運用している有価証券の価格が下落するリスクなど)の度合いに応じた十分な自己資本を備えている必要があります。


 自己資本の総資本(=自己資本+負債)に対する割合が自己資本比率です(金融機関の自己資本比率の計算式は後述するようにやや複雑です)。自己資本比率は、企業の財務の健全性を示す重要な指標です。金融機関の自己資本比率は、預金者が自分の大事なお金を安心して預けることができる金融機関を選ぶ上での目安になりますので、金融機関は自己資本比率を預金者にもわかるように開示ディスクローズ)することが法令により義務付けられております。


 また、金融機関は、自己資本比率を一定水準以上に保つように監督当局によって規制されています。普通の事業会社にはそのような自己資本比率規制はかかっておりませんが、金融機関の場合は、その金融機関としての特性から規制が必要になってくるのです。金融機関の特性とは次のようなことです。


 まず、第一に、金融機関は、預金を預かり、それを貸出に回すという正に金融機関としての本来業務を行っているが故に、常に取付けのリスクに晒されているということがあります。金融機関は、その預金者が預金を引き出しに来れば、即座に現金で払い戻しに応じなければなりませんが、他方で、貸出の方は、満期まで返済を待つ約束でお金を貸しているのであり、即座に現金化できるものではありません。金融機関は、預金者が一斉に預金を引き出すことはないという前提の下で、受け入れた預金について、手元にある程度の払い戻しに備えた現金準備を置き、残りを貸出や有価証券などで運用しているのです。しかし、金融機関の健全性に不安が生じると、預金者は自分の財産を守ろうとして預金の引き出しに走ります。金融機関は、最初のうちは預金の払い戻しに応じていますが、そのうち現金不足に陥り、預金の払い戻しがストップしてしまいます。このような言わば「早い者勝ち」の状況の中で、我先にと預金者が預金引出しに走ることを取付けといいますが、金融機関は正に金融業務を行っているが故に、一旦、信用不安が生ずると、取り付けが発生しやすいという本来的な脆弱性を抱えているのです。従って、金融機関が金融機関としてちゃんと機能するためには、その健全性について預金者から信用されていることが必要であり、信用の拠り所である自己資本の充実が求められるわけです。
 


 このような金融機関が抱える本来的な脆弱性を克服するための手段としては、自己資本の充実とともに、預金保険制度によるセーフティーネットがあります。自分が預金している金融機関が破綻しても、保険によって一定額までの払い戻しが保障されているとなれば、「早い者勝ち」にはならないので、金融機関の健全性に多少の不安が生じても、預金者は預金引出しに走ることなく、取付けの発生は避けられます。預金保険制度について、詳しくは、金融庁ホームページの「新しい預金保険制度」のコーナーにアクセスしてください。


 しかしながら、金融機関がこのような特性を持っていたとしても、金融機関が、金融機関としての業務を営む上で自己資本の充実が必要不可欠であるならば、金融機関自身の経営判断として、自ら自己資本の充実に努めるはずであり、監督当局がわざわざ規制するまでもないのではないか、とも考えられます。ここで、自己資本比率規制が必要になってくる理由として、金融機関の第二の特性があげられることになるのです。それは、銀行業の公共性とか外部効果とか呼ばれたりするものですが、次のようなことです。まず、個々の金融機関は決済システムインターバンク市場などを通じて相互に網の目のようなネットワークでつながっており、ネットワーク全体が金融システムとして機能しています。このため、ある金融機関の健全性が悪化し、破綻すると、それがネットワークを通じて他の金融機関に連鎖し、金融システムそのものが機能不全に陥ってしまうおそれがあります。さらに、金融機関は、決済システムという経済活動を支える重要なインフラの担い手であり、金融システムの機能不全は、実体経済や国民生活に深刻な悪影響を与えるおそれもあります。もちろん個々の金融機関は、それぞれ自らの経営判断で自己資本を充実させようと努めますが、それでも仮に自己資本が不十分で、万一ある金融機関が破綻してしまえば、そのマイナスの影響は、その破綻金融機関の利用者だけに留まらず、広く国民経済・社会全体に及んでいくおそれがあります。グローバルに活動している金融機関の場合には、マイナスの影響はさらに海外にまで及んでいくおそれもあります。このような広がりを持った金融機関の特性から、金融機関の健全性は、個々の金融機関の自由な経営判断に委ねてしまうのではなく、自己資本比率規制などによって当局がきちんと監督していくことが必要になるのです。


 ところで、自己資本比率とは、自己資本の総資本(=自己資本+負債)に対する割合であると先に述べましたが、これは一般の事業会社の場合のことです。金融機関の場合には、もう少し計算式が複雑になります。自己資本「比率」である以上、自己資本としてカウントすべき数字を分子とし、総資本ないし総資産(会社は資本として調達した資金を事業に投下して資産として保有することになるので、それぞれの総額は形式的には一致することになる(総資本=総資産))としてカウントすべき数字を分母として、割り算をして導き出すというところは基本的に同じですが、まず、分子については、自己資本の性質に応じて基本的項目Tier1)と補完的項目Tier2)に分かれております。Tierとは、英語で「層」という意味です。金融機関の自己資本は預金を守るためのクッションと先に述べましたが、このクッションは均質な素材でできているのではなく、第1層と第2層に分かれているとイメージできます。また、自己資本は金融機関に生じた損失を負債に先立って埋め合わせるものだとも先に述べましたが、損失に充てられる順番に着目すると、自己資本の中にも負債に近い自己資本もあれば、負債の中にも自己資本に近い負債というものがあります。そのような性質の違いから、自己資本が第1層と第2層に分かれているのです。例えば、劣後ローン劣後債は、その基本的な性格は、元利払いをしなければならないという約束であり、負債であるわけですが、万一、その債務者が破産してしまったような場合には、他の一般の負債よりも返済が後回しになるなど自己資本的な性格も持っております。そこで、金融機関の自己資本比率の算定上、劣後ローンや劣後債はTier2にカウントされることが認められております。有価証券の含み益もリスクバッファーとして機能し得るので、その45%をTier2にカウントすることが認められております。Tier2については、これをいくら沢山持っていてもTier1と同額までしか分子に算入できないというルールになっています。これに対して、Tier1は、資本金資本準備金利益準備金など本来的な自己資本であり、分子への参入が無制限に認められております。


 次に分母ですが、金融機関の総資産額をそのまま分母にするのではなく、資産の種類に応じたリスク・ウエイトを掛けた額の合計を分母とすることとされております。リスク・ウエイトは、たとえば現金や国債は0%、OECD諸国の銀行向け債権は20%、抵当権付住宅ローンは50%、通常の民間部門向け債権は100%などとなっております。


 自己資本比率規制とは、上に述べたようにして算出される分子と分母から割り算で導き出される自己資本比率が、海外に営業拠点を持って国際的に業務展開をしている金融機関については国際統一基準として8%以上、海外営業拠点を持たない国内金融機関については国内基準として4%以上を維持することを求めるものです。国際統一基準は、1970年代の欧米における銀行破綻の経験を踏まえ、スイスのバーゼルに本部を持つ国際決済銀行BIS)の中に設けられたバーゼル銀行監督委員会で、金融機関の健全性に対する当局の規制のあり方が国際的に議論されるようになり、国際的に業務を展開する各国金融機関の競争条件のイコールフッティング国際金融システムの健全性を図るために、1988年にバーゼル合意として導入されたものであり、国際統一基準に基づく自己資本比率規制はBIS規制ともいわれております。
 


 BIS規制については、PDF金融庁ニュースレター第2号の〈金融便利帳:BIS規制〉にもアクセスしてみてください。


 金融機関の自己資本比率が、国際統一基準であれ国内基準であれ、8%なり4%なりの健全性の基準を下回ることとなれば、その下回っている程度に応じて、自己資本比率の改善に向けた必要な措置を講じるように、監督当局は金融機関に命ずることとされております。監督当局が金融機関に命じる措置の内容は、内閣府令・財務省令で定められており、予め定められたルールに基づく透明な行政が行われる仕組みとなっておりますが、この仕組みを早期是正措置といいます。監督当局が金融機関の自己資本比率をモニタリングしながら、健全性の基準を下回れば、早期にその是正を求め、問題が深刻化する前に早め早めに手を打っていこうというものです。


 これまで述べてきたように、金融機関の自己資本・自己資本比率、そしてこれに基づく自己資本比率規制は、預金者保護や信用秩序の維持のために極めて重要です。特に、金融機関が多額の不良債権を抱えている現在の日本の金融システムに対する信頼を回復するためには、不良債権処理の加速とともに、自己資本を質・量ともに充実させていくことが重要な課題となっております。このような観点から、金融再生プログラムでは、資産査定の厳格化ガバナンスの強化と並ぶ3本柱の一つとして自己資本の充実を掲げており、「資本の質の実態を見極めつつ、真の充実を図るため」種々の施策に取り組むこととしております。そして、現在、作業工程表に沿って、金融審議会の下の自己資本比率規制に関するワーキンググループで、繰延税金資産の問題を含め、銀行の自己資本のあり方が幅広く議論されているところです。
 

(注

)繰延税金資産とは、法人税等の支払いが、企業会計上前払いと認められる場合に、バランスシート上に資産として計上されるもので、企業会計と税務会計の差異を調整する税効果会計に基づくものです。企業会計と税務会計では、その目的が異なるため、収益(益金)又は費用(損金)の認識時点等に相違が生じます。このため、税効果会計を適用しない場合には、課税所得を基礎とした法人税等の額が費用として計上され、法人税等を控除する前の企業会計上の利益と課税所得との間に差異があるときは、法人税等の額が法人税等を控除する前の当期純利益と期間的に対応せず、また、将来の法人税等の支払額に対する影響が表示されないことになります。このような企業会計と税務会計の差異を調整するために、税効果会計が先進各国で導入されておりますが、日本においては、平成11年4月1日以降開始する事業年度から税効果会計が実施されることとなりました(平成11年3月決算からの早期適用も可)。税効果会計は金融機関のみならず一般企業にも適用される会計原則ですが、不良債権処理を進めていく中で、金融機関のバランスシートに繰延税金資産が積み上がってきております。すなわち、金融機関は不良債権が発生すると、その時点で債権の価値を適正に評価した上で、将来の損失に備えて貸倒引当金を積みます。この引当については、企業会計上は費用と認められるものであっても、引当金を積む時点では損失が確定していないことなどから、税務会計上は損金として認められず、将来、損失が確定した時点で損金として認められることになるということがあります。このように、貸倒引当金を積んだ時点で一旦支払った法人税等を将来取り戻すことができると認められる場合、すなわち企業会計上前払いと認められる場合には、前払いと認められる法人税等の額に相当する額をバランスシート上繰延税金資産として計上しなければなりません。しかしながら、繰延税金資産については、税金の前払い分が将来の所得で取り戻されることを前提に計上されているということから、計上額の判断に難しい点があり、資本の「質」の問題としても色々な議論があります。金融再生プログラムにおいては、「繰り延べ税金資産については、その資本性が脆弱であるため、自己資本比率規制における取り扱いについては、会計指針の趣旨に則ってその資産性を厳正に評価するとともに、算入上限についても速やかに検討する」こととされ、作業工程表において「算入上限については、金融審議会において年内に検討開始。速やかに検討。法律、会計、税制等の幅広い観点から検討」とされております。なお、金融再生プログラムでは「今回の一連の措置で整理し切れなかった論点については、金融庁としての見解を引き続き検討し、今後の自己資本比率規制の見直しにつなげる」ともされており、作業工程表では、この点についても「金融審議会で速やかに検討」とされております。これらを受けて、現在、金融審議会の自己資本比率規制に関するワーキンググループで自己資本のあり方が幅広く議論されているところです。
 


 金融再生プログラム及び作業工程表について、詳しくは、金融庁ホームページの「金融再生プログラム」のコーナーにアクセスしてください。
 金融審議会の自己資本比率規制に関するワーキンググループについては、詳しくは、アクセスFSA第2号【トピックス】「金融再生プログラムの進捗状況について III金融審議会における検討」及び同第3号【トピックス】「金融再生プログラムの進捗状況について II金融審議会における検討」にアクセスしてください。


【竹中大臣に質問!】
 
: 大臣はよく「マネーサプライを増やすことが重要」と発言されていますが、そもそもマネーサプライとは何なのか、それを増やす手段、そしてどのような結果が期待できるのかを教えて下さい。
 
 
:マネーサプライというのは、いろいろと経済の話に必ず出て来る時の言葉なのですけれど、「マネーサプライとは何なのか」、すごく分かり易く言うと、世の中に出回っているお金の総量ということになりますけれども、「お金って何なのか」と聞かれるとなかなか哲学的な問いになるわけですけれど、すごく分かり易く言うと、今すぐ我々が使えるお金の合計というふうに考えたらいいですから、基本的には、現金と銀行に預けている預金を考えればいいです。預金の中でも定期預金を含めるか含めないかとかいろいろな定義があるのですけれども、普通に我々が預けている普通預金や当座預金とキャッシュだというふうに簡単には考えていいと思います。
 それを増やす手段ということなのですけれども、日本銀行、このマネーサプライをコントロールするのが日本銀行、中央銀行の大変重要な役割ですけれども、これは例えばですけれども、銀行が民間企業にお金を貸すと、お金を貸した瞬間、借りた企業はそれを預金に入れますから、預金が増えて、だからマネーサプライが増えるということになるわけです。だから貸出しが増えればマネーサプライは増えるのですけれども、それが一つの方法です。だから政府が、日本銀行が、銀行に沢山お金が使えるような状況にしてあげるというのが一つのやり方で、結果的に貸出しが増えるのではないだろうか。ただ、今度は企業の方で資金を使いたいというふうになかなか思わなければ、それもなかなか難しい面も場合によってはありえます。もう一つの、日本銀行がお金を出す非常に分かり易いやり方は、何かを買えばいいのです。日本銀行が何かを買えば、その分お金を支払うわけだから、世の中にお金が出て行くということになります。じゃあ何を買うかということになると、実は分かり易い例で言うと、日本銀行は、今、国債をかなり買っているわけです。ここは専門家によって意見が分かれますが、国債をもっと買えと言う人もいるし、国債以外のものも含めて何か別のものを買ったらいいんじゃないかと。別のものとしては、これは意見が非常に分かれますけれども、株を買えという人もいれば、別の資産を買えという人もいる。しかし、ここはまだ専門家の間でも意見が分かれているところです。いずれにしても、マネーが増えるということがなぜ重要かと言うと、マネーの量によって物の値段が影響を受けるというはっきりとした傾向があるからです。マネーの量が増えれば増えるほど、結果的には物の値段はどんどん高くなる。デフレを克服するためには、その意味ではマネーを増やさなければ、マネーサプライを増やさなければいけない。そのために今何ができるかということが、政府と日銀でずっと議論をされているわけです。
 
 
※ 大臣・副大臣への質問募集中
 
 【竹中大臣に質問!】【伊藤副大臣に質問!】のコーナーでは、読者の皆様から寄せられた金融を巡る大臣や副大臣へのご質問に、大臣・副大臣が直接お答えします。
 「金融庁のやっている金融行政って、よくわからないんだけれど、大臣・副大臣にこんなことを、是非、直接聞いてみたい!」というご質問がございましたら、金融庁ホームページの「ご意見箱」にお寄せください。
 その際、ご意見箱の件名の欄には、必ず「大臣に質問」あるいは「副大臣に質問」とご記入ください。また、本文の欄にご質問の内容をご記入下さい。ご意見箱のコーナーには、「45行以内」とありますが、「大臣に質問」、「副大臣に質問」の場合には、ご質問の趣旨を明確にさせていただくために、恐縮ですが100字以内に収めていただきますようお願いいたします。
 お寄せいただきましたご質問の中から毎月1問を選定させていただき、「アクセスFSA」において大臣または副大臣の回答を掲載させていただきます。なお、採用させていただきましたご質問につきましては、ご質問者のお名前とお歳を(ご意見箱の住所の欄にもご記入いただいた場合にはお住まいになっている都道府県も合わせて)ご紹介させていただいてよろしい場合に、本文の欄にご質問内容を記入された後に「氏名等掲載可」とご記入ください。
 大臣・副大臣へのご質問がございます方は、「ご意見箱」へどうぞ。


【お知らせ】

〇 金融庁ホームページの「資料集」のコーナーに「索引」を設置

 金融庁においては、2000年7月の発足以来、金融庁ホームページ上の「広報コーナー」及び「アクセスFSA」において、時々の施策の解説記事等を掲載し、その広報に努めてきております。今般、金融庁ホームページの「資料集」のコーナーに「索引」を設置し、「広報コーナー」及び「アクセスFSA」に掲載された主要な解説記事を50音順に配列し、それぞれの記事にアクセスできるようにしました。どうぞご利用ください。

○「金融庁電子申請・届出システム」についてのご案内

 金融庁では、申請・届出等を行う方の利便性を高めるため、従来の書面での申請・届出等に加え、インターネットを利用した申請・届出等の受付を開始しますのでご利用下さい。システムの運用開始は3月20日となっております。詳しい利用方法や申請可能な手続きについては、金融庁ホームページの「電子申請・届出システム」のコーナーにアクセスしてください。

〇 新着情報メール配信サービスへのご登録のご案内

 金融庁ホームページでは、新着情報メール配信サービスを行っております。皆様のメールアドレス等を予めご登録いただきますと、毎月発行される「アクセスFSA」や日々発表される各種報道発表など、新着情報を1日1回、電子メールでご案内いたします。ご登録をご希望の方は、「新着情報メール配信サービス」へどうぞ。


【2月の主な報道発表等】
 
3日(月) 金融機関の金利の最高限度の変更について
    公認会計士審査会開催
  公認会計士制度の改革についての金融庁としての考え方
 
5日(水) アクサ・ローゼンバーグ・インベストメント・マネジメント株式会社に対する投資信託委託業者の認可
    第19回金融トラブル連絡調整協議会開催
 
6日(木) 「タリバーン関係者等と関連すると疑われる取引の届出について(追加要請その16)」の発出
 
7日(金) 株式会社北都銀行に対する行政処分
  株式会社香川銀行に対する行政処分
14年9月期における不良債権の状況等(ポイト)
 
12日(水) 「財務諸表等の監査証明に関する内閣府令及び中間財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」に対するパブリックコメントの結果
事務ガイドライン(第一分冊:預金取扱い金融機関関係)の一部改正
 
20日(木)   第25回企業会計審議会第一部会開催
 
21日(金) FATFによる対抗措置該当国の解除及び非協力国・地域リストの公表
事務ガイドライン(第一分冊:預金取扱い金融機関関係)の一部改正
「タリバーン関係者等と関連すると疑われる取引の届出について(追加要請その17)」の発出
 
24日(月)   年度末金融の円滑化に関する意見交換会開催
    金融審議会金融分科会第二部会「リレーションシップバンキングのあり方に関するワーキンググループ」地方懇談会(大阪)開催
 
25日(火) 「金融再生プログラム関連等に係る検査マニュアルの改訂について」に対するご意見等の公表
    第118回自動車損害賠償責任保険審議会開催
第118回自動車損害賠償責任保険審議会開催について
「タリバーン関係者等と関連すると疑われる取引の届出について(追加要請その18)及び(追加要請その16の訂正)」の発出
 
26日(水)   金融審議会金融分科会第二部会「リレーションシップバンキングのあり方に関するワーキンググループ」地方懇談会(仙台)開催
 
28日(金) J.P.モルガン証券会社東京支店に対する行政処分
  「証券取引法施行令の一部を改正する政令案」の公表について(パブリック・コメント)
「上場株式の議決権の代理行使の勧誘に関する内閣府令案」の公表について(パブリック・コメント)
   
マークのある項目につきましては、から公表された内容にアクセスできます。