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竹中金融・経済財政担当大臣記者会見要旨

(平成15年2月28日(金) 9時00分~9時18分 於)金融庁会見室)

1.発言要旨

おはようございます。

閣議がございました。閣議の関連で直接の担当で特にご報告申し上げることはございませんが、関連する項目としましては、雇用関連の統計、それと家計調査等々が報告されました。数字はもうご承知の通りであります。雇用情勢については、引き続き厳しい状況が続いております。生産等々の統計もあわせて発表されておりますけれども、消費については厳しい数字が出ている一方、生産については逆にプラスの数字が出ているということで、引き続き経済は踊り場的な状況にあるというふうに認識をしております。

失業率に関しては、失業率は季節調整で先月分の数字が見直されたということもあって、高い水準で引き続き推移している。一方で、有効求人倍率は高まっている。雇用のミスマッチの問題というのが改めてやはり重要な課題であるというふうに考えております。

私の方からは以上です。

2.質疑応答

問)

昨日政府の構造改革特区推進本部で、一部限定的ですけれども株式会社の病院参入が解禁されました。全体でみますと実現率が27%と、総理が全部やると言っていた割には非常にパフォーマンスの低い数字になったかなというふうな印象もあるのですけれども、特区構想に最初から関わっていらっしゃった竹中さんからご覧になって、今回の結果をどう捉えているのかを伺いたいと思います。

答)

特に、今回中身に関しては、病院の株式会社経営について、一つ突破口が開かれたという意味で、私は非常に意味の大きい、意義の大きい特区であったというふうに思っています。特に、今回私が聞いておりますところでは、総理が直接非常に強いリーダーシップを発揮されて、鴻池大臣がこれまで非常に意欲的に動かれて、このような形になったということは、これは正に私は特区を推進するということの意義そのものであって、私は総理と鴻池大臣のご努力に敬意を表したいと思っています。

数字だけで見ると、二十何%とかいうことでありますが、これは当面今国会で法律改正を行うということに集中して行ったわけでありますから、これは引き続き特区としても議論をして行くわけですね。更にこれは比率というのは当然に高まって行くわけであって、そういう意味で今国会でやるべき、急いでやることということでありますので、その意味では中身も充実させて、それで実現率も更に高めていくという努力を、これは諮問会議の場でも当然議論をしていきたいと思います。

問)

あとアメリカのハバードCEA委員長が辞任することになりまして、ブッシュ政権の経済チームが一新されることになるんですけれども、ハバード氏はいわゆる竹中路線の支持者でもあったと思うんですが、今回のハバード氏の辞任をどういうふうに受け止めていらっしゃるのか。

答)

ハバード氏は、非常に見識の高い経済専門家、エコノミストであって、アメリカ経済の問題、世界の問題、その中にはもちろん日本も含まれますけれども、非常に深い分析をしておられた方だと思います。ご家族等々の事情で大学にお戻りになるというふうに聞いておりますけれども、この間、私にとっては約2年間ですけれども、日米間の経済問題についての対話のパイプとして非常に重要な役割を果たしてくれたというふうに思っています。

今後も、もちろんしかし日本とアメリカの経済関係というのは重要でありますから、引き続き後任の方ともそういう良いパイプを築いていけるようにしたいというふうに思います。

問)

公認会計士協会の奥山会長が繰延税金資産の課税所得の見積もり期間について、安易に積むなというような趣旨の通達を出しましたけれども、これについて大臣としてどう評価するのかということと、それから金融庁は確か「金融再生プログラム」の工程表の中で厳しく検査するというのがあったかと思ったんですが、どう対応するのか。この2点についてお伺いしたいのですが。

答)

まず公認会計士協会の奥山会長からの通達の件でありますけれども、これの内容は皆さんお読みになった通りであって、これは公認会計士協会のいわゆる実務指針の中で、自らがお作りになった実務指針の中で繰り延べ税金資産をどう評価するかということに関して、非常に厳密なルールを作っているわけです。そのルールを厳格に適用して、公認会計士、監査法人としての社会的責任を果たしていくというような趣旨であったと思いますので、これは我々としてもぜひ非常に歓迎したいと、このようなご努力を多としたいというふうに思います。

それで、2つ目の繰延税金資産ですけれども、これは正に検査の中で、これは資産査定、資本評価の中の非常に重要な部分になってまいりますので、もちろんこれは検査の中でこれまでもやってきたわけですけれども、市場の声にも耳を傾けながら、特にその点に注意しながら検査をやっていくということで、これはもう検査の中でそういうことを着々とやっていっているというふうにご理解をいただければよいと思います。

問)

先日、長崎のリゾート施設のハウステンボスが会社更生法の適用を申請して経営破綻いたしましたけれども、これについて大臣はどのように受け止めておられるか。

それからもう一点。破綻の背後に「金融再生プログラム」による不良債権処理加速策があると言われていますけれども、これについて大臣のお考えをお願いします。

答)

これは個別の事象の判断でありますので、債権者、債務者、それぞれの中でその最適な方法は何かということを模索された結果であるというふうに思っております。その場合にいろいろなケースが考えられると思います。再建計画を作り直すというような場合とか、私的整理、法的整理、これは個々のケースで当事者が常に最適な判断をしていっていただく性格のものだと思っておりますので、それ以上のコメントはちょっとする立場にはないと思います。

「金融再生プログラム」との関係でありますけれども、これは「金融再生プログラム」というのは資産査定を厳格に行っていきましょうということでありますので、これは正に債権者、それとその向こうにいる債務者がどうすることが最も関係者全体の利益になるかということを、襟を正して厳格にやっていただきたいということに通じるわけでありますから、これは直接「金融再生プログラム」の結果どうこうなったということではなくて、経営を運営する中で適宜適切にそれぞれの主体が判断をしてくださっているというふうに思っています。日本経済の全体の利益、国民全体の利益のためには資産査定を厳格化して、自己資本を充実して、コーポレートガバナンスを発揮してもらうというのは、これは当然に必要なことでありますので、この「金融再生プログラム」の趣旨に則って、我々としてもしっかりとやって行きたいというふうに思います。

問)

ハウステンボスには20行近い銀行が融資していまして、事実上大手の処理加速が地方にも波及した例だと思われるのですけれども、そういう中で地域では体力の弱まった地域金融機関への影響が相当懸念されておりまして、こういう大手の加速策が地方の金融システムに及ぼす影響というのは今後心配されると思うんですが、担当大臣としてどう認識され、今後対応されて行かれるのかお願いします。

答)

日本の金融システムが抱えている課題、解決すべき問題というのは依然として多いと思います。しかし、我々としては、まず日本を代表する主要行に絞ってこの資産の厳格化等々をやっていってもらいたいというのが、我々の基本的なプライオリティーと言いますか、順位であります。その間に、地域の金融等々については、これは少し別の観点から行っていかなければいけないということで、ご承知のようにリレーションシップ・バンキングに関するワーキンググループを作って今議論をしております。もちろん、しかし同時に、金融はマーケットとしては繋がっているわけでありますから、それについての個々の問題というのは、個々の問題の性格によって、これは非常に異なると思いますけれども、やはり適切に検査・監督の中で見ていかなければいけない問題であると思っています。

ただ、いずれにしても主要行を中心としたこの問題の解決を急がないと日本の金融システム全体の信頼性が損なわれるという状況になっておりますので、一方でリレーションシップ・バンキングのあり方についての議論を急ぎながら、「金融再生プログラム」を実施に移していきたいというのが私の基本的な姿勢です。

問)

生保の予定利率ですけれども、継続協議ということで、その辺の金融庁の対応としてはどういうような対応を考えておられますか。

答)

生保の問題に関しては毎回のようにご質問を受けますが、今の段階では前回と同じ状況でありまして、我々としてまだ方針を決めているというわけではございません。与党の議論にも注意を払いながら、しっかりと勉強をした上で、我々としてもしっかりと論点を整理して対応を決めていきたいというふうに思います。

問)

今問題になっている高い予定利率ですね、5%というのは今までもありますけれども、それは過去に金融庁が認可したものであるということなんですけれども、仮に、そういう高い予定利率を引き下げる場合の行政の責任というのはどういうふうに考えておられますか。

答)

これはその時々の金融情勢の中で、ベストであるという判断をしてきたものの積み重ねが今日であろうかと思います。バブルの時に今のような日本の経済の状況は、これは容易には予測できなかったわけでありますから、これがいろいろな形で今の日本経済の問題になって集約されているんだというふうに思います。この点は、したがって状況の変化に合わせてどのような新しい枠組みを作るのか、作らないでやっていく方が良いのか、そういうことも含めて今我々なりに勉強している段階でありますので、しっかりと今の状況を改善していくために、我々としては何をすべきかということに全力を挙げたいというふうに思います。

問)

当時、昭和50年の保険審議会の答申を見ていますと、簡保の予定利率が5%で、一方民間が4%ということでより高い予定利率を提供すべきだというような趣旨の答申が提起されているんですが、こういう状況を作り出したのはやはり行政であるというような認識というのはいかがですか。

答)

昭和50年の答申は今ちょっと私は見ておりませんので、なかなか正確にお答えできないかもしれないのですけれども、当時の議論というのは保険契約者の利益を最大化するにはどのようにしたら良いのかと、それはやはり契約者に対して、その利益を還元すると、そういうような議論の流れの中で今仰ったようなポイントが出て来たのかなというふうに思います。

繰り返し言いますけれども、非常に予測困難な、今日のような状況をバブルの時も予測できなかっただろうし、昭和50年というと1975年、ましてや予測できなかったでありましょうから、その時々でのベストの議論は、これは特に審議会でありますから、日本を代表する識者が集まる場だと思います。そのような場でそういうような議論がなされていたのだというふうに思っております。繰り返し言いますが、我々としては今のような厳しい状況の中で、どのような対応をとるのが契約者、国民の最大の利益になるかという観点から何をやるべきかということをぜひしっかりと議論していきたいというふうに思います。

問)

先程のハウステンボスの例で、「金融再生プログラム」云々ではないとおっしゃったのは、それは「金融再生プログラム」には関係していないというふうに捉えていいのでしょうかというのが1点。

それと変わりますが、大臣は日頃から観光戦略というか、我が国の観光戦略を非常に積極的に進める考えを仰っておられます。ハウステンボスというのは、下水を一切流さないとか、環境に配慮したテーマパークなのですけれども、日頃大臣の仰る観光戦略と少し矛盾するような気もするのですけれども、その辺についてお願いします。

答)

「金融再生プログラム」と関係ないというふうに申し上げたつもりはございません。「金融再生プログラム」は、これはやはりやるべき、我々が行うべき、目指すべき方向を示したものであるというふうに認識しておりますので、やはりこれはしっかりと実現していかないと日本経済の再生はないだろうというふうに思っております。そのことの重要性を一方で指摘した上で、リレーションシップ・バンキングのあり方に関しては、これは別な観点からワーキンググルーブでぜひいろいろな事例を参考にしながらしっかりとやっていきたいと、そういう趣旨でございます。

観光戦略でありますけれども、私が考えます文化・観光戦略というのは、非常に幅の広いものであろうかと思います。どちらかというと、これまでテーマパークというのが非常に注目をされてきた。私はテーマパークというのも大変重要なものであると思いますし、大変魅力のあるものがたくさんあると思いますし、しかし様々な条件の中で、これは経営体としてやはりしっかりとやっていかないと、これは当然のことながら資本主義社会では続かないわけでありますから、そういう観点はそういう観点で、ぜひしっかりと持っていかなければいけないのだと思います。しかし、日本の観光の資質とか、観光関連で従事している労働者の数とかを考えますと、やはりまだ日本には非常に大きな文化・観光産業面でのポテンシャルがあると思います。このポテンシャルをどのように実現していくかということに関して、今我々は知恵を絞ろうと。そのために、まず政府としては何をすべきなのか、民間の企業、企業経営体としてはどういうことをすべきなのか、いろいろな部分について、政府も民間部門も反省すべきことを反省しながら、しかしこの大きな潜在的ビジョンに向かって我々は努力していく余地はまだまだあるというふうに思っております。

問)

株価なんですけれども、一部せっかく大手行が相次いで増資を打ち出したにも関わらず、いろいろ商品性に対する不評もあったりして、銀行株が下がっているのですけれども、これについてはどういうふうにみていらっしゃいますか。また、いわゆる大手行が打ち出している転換型の優先株式というか、商品性についてはどういうふうに見られているか。

答)

市場の評価に関連することでありますので、直接個々の問題について云々する立場にはないというふうに思っておりますが、基本的に各銀行は中・長期的な観点から自己資本を増強して経営力を強化するために様々な努力をしているというふうに思っております。それに対して、当然のことながら市場の声というのは多様でありますから、様々な評価の中で経営を行っていかなければいけない、そういう状況であると思います。

私としては、検査・監督の立場にある者としては、こういった努力が良い結果をもたらすようにするために、行政としてはこれはしっかりとルールに則ってやっていただきたいと、コンプライアンスを充実させてもらいたいと、そういうことをしっかりと申し上げる。その上で各企業の経営者に対しては、これはマーケットにはいろいろな声が当然あるでありましょうから、しっかりと説明責任を果たしていっていただいて、市場の対話を通して、自ら目指すところが十分に理解されるように、やはりしっかりと努力をしていただきたいというふうに思います。

(以上)

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