「中小企業金融円滑化に関する意見交換会」に
 おいて挨拶する竹中大臣

 伊藤副大臣より奥山日本公認会計士協会会長に
「金融再生プログラム」への的確な対応を要請


目 次

【トピックス】
 ○ 「金融再生プログラム」の作業工程表について
 ○ 日本公認会計士協会に対する「金融再生プログラム」への的確な対応の要請及び日本公認会計士協会との連絡会議の設置について
 ○ 信託機能を活用した中小企業の再生をサポートする仕組みについて
 ○ オフバランス化に「つながる措置」について
 ○ 本人確認法の施行について
【金融ここが聞きたい!】
 Q: 「金融再生プログラム」の作業工程表に沿って来年3月期に向けて査定の厳格化等を進めていくと、主要行の不良債権が増えて、金融不安が生じてしまうのではないですか?
 Q: 「金融再生プログラム」が銀行株をはじめとする株安の原因になっているのではないでしょうか?
 Q: 「金融再生プログラム」に沿って不良債権処理を進めていく過程で、中小企業に対する貸し渋りや貸しはがしが起きないか心配です。
【金融便利帳】
 ○ 今月のキーワード:不良債権
【大臣・副大臣への質問募集中】
 ○ 来月号から掲載予定の【竹中大臣に質問!】、【伊藤副大臣に質問!】のコーナーへの質問を募集しております。
【お知らせ】
 ○ アクセスFSA創刊!!
 ○ 金融庁ホームページに新コーナーを相次ぎ開設
 ○ 新着情報メール配信サービスへのご登録のご案内
【11月の主な報道発表等】

【トピックス】


 去る11月29日、金融庁は「金融再生プログラム」の着実な実現に向けて実施のスケジュールを整理した作業工程表を取りまとめ、公表しました。
 10月30日に公表された「金融再生プログラム」は、日本の金融システムと金融行政に対する信頼を回復するためには、まず主要行の不良債権問題を解決することが必要という問題意識に立っており、具体的には、主要行の不良債権比率を平成16年度には、現状の半分程度に低下させるとともに、構造改革を支えるより強固な金融システムの構築を目指して、主要行の資産査定の厳格化、自己資本の充実、ガバナンスの強化などの点について、行政の取組みを強化する方針を示しています。
 今後、作業工程表に従い、金融再生プログラムの速やかな実施に努め、不良債権処理の加速の強力な推進を図っていくこととしています。
 なお、中小・地域金融機関の不良債権処理については、「リレーションシップバンキング」のあり方を多面的な尺度から幅広く検討し、年度内を目途にアクションプログラムを策定することとしています。

PDF ◎ 金融再生プログラム「作業工程表」


「金融再生プログラム」、「作業工程表」について、もっと詳しくお知りになりたい方は、金融庁ホームページの「金融再生プログラム」のコーナーにアクセスしてください。


 「金融再生プログラム」においては、資産査定の厳格化を図るための方策として、「引当に関するDCF的手法の採用」や「引当金算定における期間の見直し」といった「資産査定に関する基準の見直し」等が盛り込まれております。
 これを受けて、去る11月12日、伊藤達也内閣府副大臣(金融担当)より奥山章雄日本公認会計士協会会長に対し、10月30日に発表された「金融再生プログラム」への的確な対応を要請しました。具体的には、「引当に関するDCF的手法の採用」については、「金融再生プログラム」では、「主要行において要管理先の大口債務者については、DCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)方式を基礎とした個別的引当を原則とし、早急に具体的手法を検討する。」とされており、「引当金算定における期間の見直し」については、「主要行において、暫定的に定められている1年基準及び3年基準について、米国等の扱い等を踏まえ検討を行う。」とされておりますが、これらの両項目について、金融庁から、関係する会計上の実務指針を策定している日本公認会計士協会に対し、協会としての検討を要請したものです。
 金融庁からの要請を受けて、日本公認会計士協会では、協会内部に特別チーム(「DCF等検討プロジェクトチーム」)を設置し、検討を開始いたしました。
 金融庁としても、検査・監督当局の立場から、公認会計士協会と必要な調整を行うため、去る11月15日、「公認会計士協会との連絡協議会(ワーキング・チーム)」(座長:野村修也検査局非常勤参事(中央大学教授)。庁内外の専門家により構成)を設置することとしました。
 なお、公認会計士協会の協議と並行して、必要に応じ、金融検査マニュアルの見直しが見込まれる部分について検討を行うこととしております。


 金融再生プログラムにおいて、中小企業貸出に対する十分な配慮を行うため、「中小企業の再生をサポートする仕組み」の整備を検討することとされております。これを受けRCCの信託・再生機能を活用し、再生可能性のある中小企業等の不良債権を再生させるため、新たな信託スキームを提供することとし、去る11月22日、金融庁及びRCCにおいて公表いたしました。これは、再生可能性のある中小企業等向けの債権について、RCCに信託し、信託期間中には実質的に銀行による債務者に対するメンテナンスを行いつつ、RCCの関与によりその再生可能性を追及すること等を通じて、再生可能性のある中小企業の再生をサポートする仕組みを構築したものです。
 なお、本件は、「オフバランス化に「つながる」措置」(注)として位置付けられることとなります。

◎ スキームの概要
◎ スキームの図解
 
(注 )「オフバランス化に「つながる」措置」については、アクセスFSA本号の【トピックス】「オフバランス化に「つながる」措置について」をご覧ください。


 去る11月22日、金融庁は、以下のとおり「オフバランス化に「つながる」措置」を公表しました。
 これは、緊急経済対策(平成13年4月6日)において、主要行の破綻懸念先以下の債権に区分されるに至った債権については、いわゆる2年・3年ルールによりオフバランス化につながる措置を講ずることとされており、平成15年3月末に当該ルールの最初の適用期限を迎えることから、「オフバランス化につながる措置」を明確化したものです。
 
1.

法的整理
(注 )破産、清算(特別清算を含む)、会社整理、会社更生、民事再生手続き続行中の債権、及び、銀行取引停止処分を受けた債務者に対する債権

2.

法的整理に準ずる措置
(注 )民事調停(特定調停を含む)、裁判上の和解などの法的手続き中の債権、及び、これらに基づいた弁済計画期間中の債権

3.

いわゆるグッドカンパニー、バッドカンパニーへの会社分割
(注 )分割後、整理を予定しているバッドカンパニーについては、速やかに(原則3年未満)整理するものに限る。

4.

個人・中小企業向け小口の債権(10億円[元本ベース]未満)について、部分直接償却の実施

5.

以下の要件を満たすRCCへの信託
RCCの関与のもと企業の再生等を信託の目的とするもの
信託期間終了時までに、再生・売却等によりオフバランス化が図られるもの
 
「中小企業再生型信託スキーム」(注)に係る債権は本件に該当する。
(注 )「中小企業再生型信託スキーム」については、アクセスFSA本号の【トピックス】「信託機能を活用した中小企業の再生をサポートする仕組みについて」をご覧ください。


 「金融機関等による顧客等の本人確認等に関する法律(本人確認法)」が平成15年1月6日から施行されます。
 近年、深刻化するテロリズム対策や、麻薬・銃器等犯罪を防止するためのマネー・ローンダリング対策が国際的な緊急の課題となっています。この法律は、銀行や証券会社、保険会社等の金融機関に対して顧客の本人確認義務等を課し、これらの金融機関がテロ資金供与やマネー・ローンダリング等に利用されることを防ぐものです。


 本人確認とは?
 本人確認とは、金融機関が顧客と金融取引を行うに際して、公的証明書により顧客の本人特定事項(顧客が個人顧客である場合は当該顧客の氏名、住居及び生年月日、顧客が法人である場合は当該顧客の名称及び本店又は主たる事務所の所在地)を確認することです。


 対象金融機関
 本人確認法では、規制の抜け道をなくすため、銀行、証券会社、保険会社、郵便局等、金融機関に幅広く本人確認義務が課されます。


 本人確認場面
 本人確認を行わなければならない場面は、(1)顧客が金融機関と取引関係を開始する際(預金口座の開設、有価証券の売買、保険契約の締結時等)、(2)顧客が200万円以上の現金取引等を行う際、(3)顧客が氏名や住居等を偽っている疑いのある取引を行う際です。


 本人確認方法
 金融機関が顧客に対して本人確認を行うときには、顧客は窓口で運転免許証、各種保険証、パスポート、外国人登録証明書などのうち、いずれかの公的証明書の原本を提示します。なお、住民票や戸籍謄本等も利用できますが、これらを使用する場合は、金融機関からカード等が証明書記載住所に送付されます。また、郵送、電話、インターネット等による取引では、公的証明書の原本又はコピーを送付(FAXでも可)し、金融機関からカード等が証明書記載住所に返送されることになります。
 代理人等による取引では、顧客と取引担当者双方について本人確認が行われます。法人顧客の取引でも同様に、法人と取引担当者双方について本人確認が行われます。なお、法人自体の本人確認は、登記簿謄本・抄本や印鑑登録証明書等を使用します。


 過去に本人確認を行ったことがある顧客について
 金融機関が過去に本人確認を行ったことがある顧客と、別の取引関係を開始しようとするときや、200万円超の現金取引を行おうとするときは、当該顧客が、既に過去に本人確認を行っている顧客と同一であることが確認できれば、再度の本人確認は不要です。ただし、顧客が過去の本人確認時に氏名や住居を偽っていた疑いがある場合や、現在取引を行おうとしている人間が過去に本人確認を行っている顧客になりすまそうとしている疑いがある場合には、再度の本人確認が必要です。
 また、本法施行前に業界自主ガイドライン・旧大蔵省通達等に基づいて、顧客について本人確認が行われている場合も、当該顧客と同一であることが確認できれば、再度の本人確認は不要です。
 なお、当該顧客が、既に過去に本人確認を行っている顧客と同一であることを確認する方法は、(1)職員との面識、(2)通帳等の顧客が本人であることを示す物の提示・送付、(3)パスワード等の本人しか知り得ない事項の申告等です。


 虚偽の申告
 本人確認法では、顧客が本人確認時に氏名や住居を偽ることを禁止しており、このような行為が、ことさら、隠蔽の目的をもって行われた場合には罰則が適用されます。


 金融機関の免責規定
 本人確認法では、金融機関は、顧客が本人確認に応じない場合には、本人確認に応じるまでの間、取引に係る義務の履行を拒むことができることとし、免責規定を設けております。


 本人確認記録の保存
 金融機関が顧客の本人確認を行った場合、直ちに本人確認記録を作成し、口座を閉鎖した日等から7年が経過するまで保存しなければなりません。
 本人確認記録には、顧客の本人特定事項の他、確認担当者名、日付、確認方法及び取引記録を検索するための事項等を記載します。


 取引記録の作成・保存
 金融機関は、顧客との間で金融業務に係る取引を行う場合、直ちに当該取引の記録を作成するとともに、その取引が行われた日から7年が経過するまで保存しなければなりません。ただし、小額の取引等(1万円以下の取引等)の場合には、作成する必要はありません。
 取引記録には、口座番号等の本人確認記録を検索するための事項、取引の日付、種類及び金額等を記載します。


 本人確認法について、もっと詳しくお知りになりたい方は、金融庁ホームページの「本人確認法について」のコーナーにアクセスしてください。

【金融ここが聞きたい!】

 このコーナーは、記者会見における質疑・応答(Q&A)などの中から、金融を巡る時々の旬な情報をセレクトしてお届けするものです。もっと沢山ご覧になりたい方は、是非、金融庁ホームページの「記者会見概要」のコーナーにアクセスしてください。
 


:10月30日に公表した「金融再生プログラム」(注1)について、今般、その着実な実現に向けて実施のスケジュールを「作業工程表」(注1)として取りまとめました。
 今後、この「作業工程表」に従い、「金融再生プログラム」を着実に実施し、平成16年度に不良債権問題を終結させることを目指します。これにより、日本の金融システムと金融行政に対する信頼を回復し、構造改革を支えるより強固な金融システムを構築してまいります。
 さらに、政府としては同プログラムの実施にあわせ、先般公表した「改革加速ための総合対応策」(注1)を着実に実施し、安心して国民が暮らし、企業が事業に専念できるよう、あらゆる手段を尽くして対応してまいります。
 ご質問は具体的にはDCF(注2)によって、要するにDCF的手法の採用によってどういう影響が出るのかというご指摘だと思います。これはまさに「工程表」の中で、この具体的な、技術的な問題を公認会計士協会を中心に議論をしていただく(注3)。それで、来年3月期決算に間に合うようにしていただこうということです。それに当たっては、幅広く専門家の意見を聞くということでありますから、現時点で、今、私の立場でどうこうという見通しを申し上げるのは難しいというふうに思っております。
 しかし、この手法につきましては、既に一部の銀行で採用されているということもありまして、これは着実に実施されていくことによって、資産査定の厳格化を通して非常によい効果が出てくると思っております。それによって、弱体化する銀行があるかどうかということでありますが、現時点でそのようなことは全く想定をしておりません。現時点ではそういった財務上の問題が生じるというふうには、そういう弱い状況にはないというふうに考えております。むしろそうした時期にこそ、しっかりと資産査定を強化して、銀行の経営基盤を固めていっていただきたいというふうに思っております。
平成14年11月29日(金)竹中大臣経済財政諮問会議後記者会見抜粋)

(注1)

 「金融再生プログラム」、「作業工程表」及び「改革加速のための総合対応策」について、もっと詳しくお知りになりたい方は、金融庁ホームページの「金融再生プログラム」のコーナーにアクセスしてください。
(注2)  DCF法とは、Discounted Cash Flow Methodの略で、貸出債権から生ずる元利払いなど将来のキャッシュ・フローを一定の割引率で割引くことによって、その債権の現在価値を求める方法です。米国において、DCF法は個別引当として認められる手法の一類型として広く採用されており、「金融再生プログラム」においても、「主要行において要管理先の大口債権者については、DCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)方式を基礎とした個別引当を原則とし、早急に具体的手法を検討する」とされております。
(注3)  引当てに関するDCF的手法の採用については、本年11月12日に、金融庁より日本公認会計士協会に対し検討を要請しております。詳しくはアクセスFSA本号の【トピックス】「日本公認会計士協会に対する「金融再生プログラム」への的確な対応の要請及び公認会計士協会との連絡会議の設置について」をご覧ください。

 


:基本的に、今の銀行に関しては資金面とか自己資本の面で、これはもちろん一生懸命不良債権の処理はしていただかなきゃいけないんですが、現状で、そういった健全性等々について問題があるというふうには思っておりません。
 やはり我々がやるべきこと、銀行にもやっていただかなきゃいけないことは、基本的には「金融再生プログラム」を、「金融再生プログラム」というのは、資産査定をきっちりとやりましょうと、ガバナンスをしっかりとやりましょうということですから、これは恐らく資産査定をちゃんとやらないでおきましょうとか、ガバナンスを強化しないでおきましょうなどという議論は、これはあり得ない議論だと思います。そういうことをやっていくということは、これは当然必要な方向なのであって、それについて、その「再生プログラム」の具体化、これを「工程表」等々で詰めるところは詰めていくし、その具体化の中身を受けて、やはり銀行にしっかりした対応をしていただく、経営のシナリオをしっかりと示していただく。そういう中で、銀行の株に対しても、マーケットでやはり次第に正しい評価をしていただけるようになると。銀行の収益力向上等々の努力が示されて、それを市場が評価していくというふうになるというふうに考えております。
 ただ、株式市場というのは、やはりその方向感を得るのに少し時間がかかるというのは、どこの国でもそうであるし、どの時代でもそうであったかと思います。よく例に出させていただきますけれども、スウェーデンで銀行に対して今は非常に高く評価されている政策をとってから1年間株は下がり続けたと。その後、突如上がり出して4倍ぐらいになったと。そういう株の方向感を得るためのタイムラグというのはやはりあるのだと思います。先程も申し上げましたように、「金融再生プログラム」を実行することによって日本の金融システムは間違いなく強くなると。その過程で、「工程表」等々でどのような細目でやっていくのかということをやはり明示して、それを受けて、銀行の方でも明解な収益力向上のための、健全化のためのシナリオを示していただく、そうした中で、長期の均衡価格、これはもっと高いところにあると、日本の株全体としてかなりもっと高い水準にあると私は確信をしておりますけれども、そういうところに向かった新しいダイナミックな動きが出てくるのであろうというふうに思っております。
 そういう正しい方向への流れを一刻でも早く実現するために、したがって、これはマクロ経済政策の観点から、デフレ抑制のためのしっかりとした措置も要るでしょうと。だから今、補正を含めた論議を始めているわけで、来年度の先行減税についても同じような視点が必要だと思いますし、何よりも、早く銀行の「工程表」等々で示せることを明示していきたいというふうに思っておりますので、これは早い時期にそういう方向感が出てくるということを期待をしております
平成14年11月19日(火)竹中大臣閣議後記者会見抜粋)

 


:私は中小企業のやはり現場の経営感覚というものをしっかり審査をして行くことが出来れば、私は中小企業がより再生をして行くチャンスというのは相当にあるのだと思います。その再生を通じて、銀行の収益を更に良くして行くことは出来るのではないかという問題意識を基本的に持っています。  非常に銀行にとって中小企業貸し出しというのは大切ではないかと思いますが。極めて大きな収益の柱になる分野だと思います。
 
平成14年10月30日(水)伊藤副大臣記者会見抜粋)

(注)

「金融再生プログラム」においては、主要行の不良債権処理によって、中小企業の金融環境が著しく悪化することのないよう中小企業貸出について十分配慮し、各種のセーフティネットを講じることとしております。詳しくはPDF「金融再生プログラム−主要行の不良債権問題解決を通じた経済再生−」(平成14年10月30日)「「金融再生プログラム」について」(広報コーナー)にアクセスしてください。なお、金融庁においては中小企業など借り手の声を幅広く聞くために、「貸し渋り・貸し剥しホットライン」を開設し、貸し渋り・貸しはがしに関する情報を電子メール・ファックスで受け付けております(電子メール:joho@fsa.go.jp 、FAX:03-3506-6699)。

【金融便利帳】



 このコーナーは、とかく専門的でわかりにくい金融に関する用語や様々な疑問について、わかりやすく解説するものです。
 今月のキーワードは「不良債権」です。
 
 不良債権とは、金融機関が企業や個人に「いつまでにいくらの利息をつけて返して下さい」と言ってお金を貸したけれど、不景気で借り手の業況が悪くなってしまったなどにより、約束どおりには返してもらえなくなってしまった貸出金などの債権のことを言います。


 不良債権には、借り手(債務者)の状況に応じて、いくつかのレベルがあります。
 
 

 破綻先とは、破産、会社更生、民事再生などの法的に経営破綻に陥っている債務者を言います。


 実質破綻先とは、法的な経営破綻には陥っていないものの、深刻な経営難の状態にあり、再建の見通しがないと見られるなど、実質的に経営破綻に陥っている債務者を言います。破綻先の債務者と実質破綻先の債務者に対する債権を合わせて破産更生債権及びこれらに準ずる債権と言います。


 破綻懸念先とは、今のところ経営破綻の状況にはないが、経営難の状態にあり、経営改善計画などに沿って再建途上にあるが、その進捗状況が芳しくなく、今後、経営破綻に陥る可能性が大きいと見られる債務者を言います。破綻懸念先に対する債権を危険債権と言います。


 要注意先とは、金利減免・棚上げを行っているなど貸出条件に問題のある債務者や、元本や利息の支払いが事実上延滞しているなど債務の履行状況に問題がある債務者のほか、業況が低調ないし不安定な債務者、または財務内容に問題がある債務者など、今後の管理に注意する必要のある債務者のことを言います。要注意先の債務者には、要管理先の債務者とそれ以外の債務者とがあります。


 要管理先とは、要注意先の債務者のうち、その債務者に対する債権の全部または一部が要管理債権である債務者のことを言います。要管理債権とは、元本や利息の支払いが3ヶ月以上延滞している債権(3ヶ月以上延滞債権)、または貸出条件を当初の約束よりも緩和している債権(貸出条件緩和債権)を言います。


 正常先とは、業況が良好で、財務内容にも特に問題のない債務者です。


 不良債権とは、これらのうち破産更生債権及びこれらに準ずる債権、危険債権、そして要管理債権を合わせたものです。すなわち不良債権は、程度の差こそあれ、業況や財務内容に問題のある債務者に対する債権であり、貸出金の返済に問題が生じている債権と言うことができます。ただ、不良債権の中でも、要管理債権は、返済状況に黄信号が出ているなど注意を要する債権ではありますが、貸出条件の緩和などの支援によって全額返済することは可能と見こまれるものです。
 
(注 )ここで説明した債権の分類は、金融機能の再生のための緊急措置に関する法律(金融再生法)に基づくものです。この分類による不良債権を金融再生法開示債権と言います。これとは別に銀行法、信用金庫法等の各種業法に基づく債権の分類の仕方もあり、その分類による不良債権をリスク管理債権と言います。


 ところで、銀行などの金融機関は、預金者などから集めたお金を企業や個人などに貸し出しており、お金を借りた企業などは、そのお金で事業を行い、儲けたお金で金融機関に利息を付けて返済します。このように金融機関がお金の出し手と借り手の間を仲立ちすることにより経済が回っていきます。このような金融機関の役割を金融仲介機能と言います。


 預金者は、預けたお金が健全に運用されていると信頼しているからこそ、金融機関にお金を預けるのですから、自分のお金を預ける金融機関を預金者が安心して選べるように、金融機関の健全性を外からも見えるようにする必要があります。そのため返済に問題が生じている貸出金、不良債権のディスクロージャーが行われています。すなわち金融機関は金融再生法に基づく金融再生法開示債権の開示と銀行法等に基づくリスク管理債権の開示をしなければなりません。


 14年3月末における全国の銀行の不良債権額、すなわち金融再生法開示債権の残高は43.2兆円であり、13年3月末の33.6兆円に比べ+9.6兆円の増加となりました。これは、厳しい経済情勢の下、貸出条件緩和債権の判定基準を厳格化したことにより要管理債権が増加したことや、特別検査の実施を踏まえ、市場のシグナルをタイムリーに反映した資産査定が進んだことなどによるものです。銀行のうち主要行に限って見ると、14年3月末の金融再生法開示債権の残高は26.8兆円(13年3月末18.0兆円)となっており、14年9月末では23.9兆円となっております。信用金庫や信用組合などの協同組織金融機関も含めた預金取扱金融機関全体では、14年3月末の金融再生法開示債権の残高は52.4兆円(13年3月末43.0兆円)となっております。
 
(注 )不良債権の状況について、もっと詳しくお知りになりたい方は、「不良債権の状況等について」(平成12年3月期〜平成14年3月期)にアクセスしてください。また、特別検査については、「主要行に対する特別検査の結果について」(平成14年4月12日)「特別検査等について」(広報コーナー)にアクセスしてください。


 不良債権比率とは、貸出金等の総与信の額に対する不良債権額の割合のことを言います。14年3月末の主要行の不良債権比率は、金融再生法開示債権ベースで8.4%(13年3月末5.3%)となっており、14年9月末では8.1%となっております。


 不良債権は、金融機関の金融仲介機能を低下させ、経済の成長・発展を阻害します。日本経済の再生のためには不良債権問題の早期解決が必要です。このような観点から、金融庁が本年10月30日に取りまとめ・公表した「金融再生プログラム」は、日本の金融システムと金融行政に対する信頼を回復するためには、まず主要行の不良債権問題を解決することが必要との問題意識に立ち、平成16年度までに主要行の不良債権比率を現状の半分程度に低下させるとともに、構造改革を支えるより強固な金融システムを構築することを目指して、主要行の資産査定の厳格化、自己資本の充実及びガバナンスの強化などについて、行政の取り組みを強化する方針を示したものです。
 また、金融庁は、本年11月29日には金融再生プログラムで取り上げた措置の具体的な方策や実施時期を定めた作業工程表を公表いたしました。
 
(注 )「金融再生プログラム」及び「作業工程表」について、もっと詳しくお知りになりたい方は、金融庁ホームページの「金融再生プログラム」のコーナーにアクセスしてください。

【大臣・副大臣への質問募集中】


 「アクセスFSA」では、来年1月発行号から新たに【竹中大臣に質問!】【伊藤副大臣に質問!】のコーナーを設ける予定です。このコーナーでは、読者の皆様から寄せられた金融を巡る大臣や副大臣へのご質問に、大臣・副大臣が直接お答えするという「アクセスFSA」の双方向性を活かしたコーナーです。
 「金融庁のやっている金融行政って、よくわからないんだけれど、大臣・副大臣にこんなことを、是非、直接聞いてみたい!」というご質問がございましたら、金融庁ホームページの「ご意見箱」にお寄せください。
 その際、ご意見箱の件名の欄には、必ず「大臣に質問」あるいは「副大臣に質問」とご記入ください。また、本文の欄にご質問の内容をご記入下さい。ご意見箱のコーナーには、「45行以内」とありますが、「大臣に質問」、「副大臣に質問」の場合には、ご質問の趣旨を明確にさせていただくために、恐縮ですが100字以内に収めていただきますようお願いいたします。
 お寄せいただきましたご質問の中から毎月1問を選定させていただき、来年1月下旬発行予定の「アクセスFSA」第2号以降、大臣または副大臣の回答を掲載させていただきます。なお、採用させていただきましたご質問につきましては、ご質問者のお名前とお歳を(ご意見箱の住所の欄にもご記入いただいた場合にはお住まいになっている都道府県も合わせて)ご紹介させていただいてよろしい場合に、本文の欄にご質問内容を記入された後に「氏名等掲載可」とご記入ください。
 大臣・副大臣へのご質問がございます方は、「ご意見箱」へどうぞ。


【お知らせ】

〇アクセスFSA創刊!!

 これまで金融庁においては、金融庁ホームページ上の「広報コーナー」において、毎月、金融庁の施策の解説記事等を掲載し、その広報に努めてまいりましたが、今般、その内容を一新し、名称も「アクセスFSA」に改めました。金融庁(Financial Services Agency)のホットな情報に直ちにアクセスできる月刊金融庁広報誌として、「アクセスFSA」創刊号は、まずは以下のような内容でスタートいたしました。
 【トピックス】では、金融庁の施策を、これまで以上に、幅広く、タイムリーに、わかりやすく解説してまいります。
 【金融ここが聞きたい!】では、「今、この点について、どうしても聞きたい!」という金融に関する旬なご質問に対するお答えを、大臣記者会見などにおける質疑応答の中からセレクトしてお届けいたします。
 【金融便利帳】では、とかく専門的でわかりにくい金融に関する用語や様々なご疑問について、わかりやすく解説いたします。
 【主な報道発表等】では、毎月の金融庁からの報道発表や審議会等の会議の開催実績などを一覧にして掲載いたします。各項目について、より詳しい情報にアクセスできるようリンクを張りましたので、金融庁ホームページの目次としてもご活用ください。
 また、来年1月下旬発行予定の第2号からは、新たに【竹中大臣に質問!】【伊藤副大臣に質問!】のコーナーを設ける予定です。大臣・副大臣へのご質問を募集しておりますので、詳しくは、【大臣・副大臣への質問募集中】をご覧ください。
 「アクセスFSA」についてのご意見・ご感想がございましたら、金融庁ホームページの「ご意見箱」にお寄せください。その際、ご意見箱の件名の欄には、「アクセスFSA」と記入してください。
 なお、金融庁ホームページに「アクセスFSA」のコーナーを開設したことに伴い、これまでの「広報コーナー」と「金融庁ニュースレター」のコーナーを「アクセスFSA」に移管いたしました。「広報コーナー」や「金融庁ニュースレター」のバックナンバーをご覧になりたい方は、「アクセスFSA」からアクセスできます。
 今後とも、月刊金融庁広報誌「アクセスFSA」を、毎月アクセスしたくなるような魅力あるものにすべく、その内容拡充に努めてまいります。宜しくお願いいたします。

〇金融庁ホームページに新コーナーを相次開設

<「本人確認法」コーナー>
 来年の1月6日から、「金融機関等による顧客等の本人確認等に関する法律(本人確認法)」が施行されます。本人確認法は、マネー・ロンダリング(資金洗浄)を防止し、国際的に深刻化するテロリズム、麻薬、銃器犯罪等の資金を見つけ出すため、銀行、証券会社、保険会社、郵便局等の金融機関に、幅広く顧客の本人確認を義務付けるものです。これにより、来年の1月6日からは、預金口座を開設するときなどに、運転免許証や保険証などの公的証明書の提示を求められることになります。金融庁ホームページでは、本年12月4日、「本人確認法について」のコーナーを開設しました。同コーナーでは本人確認法について、わかりやすく解説しております。どうぞ、アクセスしてみてください。

<「金融再生プログラム」コーナー>
 本年10月30日、金融庁は、主要行の不良債権処理を通じた経済再生を図るための「金融再生プログラム」を取りまとめました。また、不良債権処理に伴う「痛み」を最小限に抑えるため、同時に「改革加速のための総合対応策」が政府により取りまとめられました。更に、11月29日には、金融庁は「金融再生プログラム」で取り上げた措置の具体的な方策や実施時期を定めた「作業工程表」を公表しました。金融庁ホームページでは、本年12月9日、「金融再生プログラム」のコーナーを開設し、同プログラムや「作業工程表」、更には「改革加速のための総合対応策」など関連する各種施策に関する情報をまとめて掲載しております。どうぞアクセスしてみてください。

<「新しい預金保険制度」コーナー>
 本年12月11日、「預金保険法及び金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律」が国会で成立し、預金保険制度が改正されました。これを受けて、金融庁ホームページでは、本年12月12日、「新しい預金保険制度について」のコーナーを開設しました。同コーナーでは、新しい預金保険制度の下における、預金の保護の仕組みなどについてわかりやすく解説しております。どうぞアクセスしてみてください。

〇新着情報メール配信サービスへのご登録のご案内

 金融庁ホームページでは、新着情報メール配信サービスを行っております。皆様のメールアドレスを予めご登録いただきますと、毎月発行される「アクセスFSA」や日々発表される各種報道発表など、新着情報がホームページに掲載される度に、電子メールでご案内いたします。ご登録をご希望の方は、「新着情報メール配信サービス」へどうぞ。

【11月の主な報道発表等】

 
1日 (金) 中部銀行の営業譲渡に係る基本合意について
    金融審議会公認会計士制度部会開催
  全国財務局「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」開設
 
2日 (土)   平成14年度秋の褒章受賞者発表
 
3日 (日)   平成14年度秋の叙勲受賞者発表
 
5日 (火)   第17回金融トラブル連絡調整会議
 
7日 (木)   全国財務局理財部長会議開催
 
8日 (金) 主要行における自己査定と検査結果との格差について
  オリックス投信投資顧問株式会社に投資信託委託業を認可
証券会社に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)について(パブリック・コメント)
 
12日 (火)   日本公認会計士協会に対し「金融再生プログラム」への的確な対応を要請
 
13日 (水) システム統合リスク管理態勢の確認検査用チェックリスト(案)について                      
    預金保険機構、RCCに対し「金融再生プログラム」への積極的な対応を要請
学校における金融教育の一層の推進に係る文部科学省への要請について
 
15日 (金)   日本公認会計士協会との連絡会議(ワーキング・チーム)設置
    検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕の趣旨・内容を借り手企業に対しても十分周知徹底するよう、全国の財務局長に宛てて指示通達を発出
石川銀行の営業譲渡に係る基本合意について
事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)の一部改正について
 
18日 (月) 第15回金融審議会総会開催
 
19日 (火) 株式会社埼玉りそな銀行に対し銀行業を免許
 
20日 (水) 資産流動化に関する法律施行規則の改正(案)について
        (パブリック・コメント)
 
22日 (金) 信託機能を活用した中小企業の再生をサポートする仕組みについて
  オフバランス化に「つながる措置」について
  貸出債権取引市場の創設に関し全国銀行協会等に要請
株式会社三井住友フィナンシャルグループの設立認可について
株式会社三井住友銀行の産業活力再生特別措置法に基づく事業再構築計画の認定について
プルデンシャル・インベストメント・マネジメント・ジャパン・インクに対し投資信託委託業者の認可
プルデンシャル・インベストメント・マネジメント・ジャパン・インク、オリックス投信投資顧問株式会社に対し投資一任契約に係る業務の認可
 
25日 (月) 第18回金融トラブル連絡調整協議会の開催について
  「タリバーン関係者等と関連すると疑われる取引の届出について(追加要請その14)」の発出について
 
26日 (火) 証券会社の行為規制等に関する内閣府令及び金融機関の証券業務に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)等に対するパブリック・コメントの結果について
 
27日 (水) 株式会社損害保険ジャパン及び大成火災海上保険株式会社の産業活力再生特別措置法に基づく事業再構築計画の変更認定について
 
29日 (金) 「金融再生プログラム」作業工程表
    金融審議会第一部会開催

 
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