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(はじめに) 去る4月12日、政府の「早急に取り組むべきデフレ対応策」(2月27日発表)を踏まえて、金融庁において、主要行に対する特別検査の結果及び主要行による平成14年3月期の財務内容の概要を公表するとともに、併せて、「より強固な金融システムの構築に向けた施策」及び「金融検査マニュアル別冊・中小企業融資編」(案)を公表しました。 (特別検査の結果について) <特別検査とは> 特別検査は、昨年10月の「改革先行プログラム」を踏まえて、本年3月期決算において企業業績や市場のシグナルをタイムリーに反映した適正な債務者区分及び償却・引当を確保するため、市場の評価に著しい変化が生じている等の債務者に着目して、昨年10月末から主要行に対して実施したものです。 <特別検査の対象> 検証の対象となった債務者は、上記主要13行(※)がメイン行となっている債務者のうち、株価や外部格付など市場の評価に著しい変化が生じている等、債務者区分が下位に変更される可能性が高い大口債務者です。なお、対象を主要行としたのは、大口債務者のメイン行のほとんどが主要行であるためです。 |
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<特別検査の結果> 上記方針のもと、検証を行うことが適当と考えられる一定の客観的条件に該当する債務者は、149社、与信額は12.9兆円ありました。 このうち、約半数の71社(7.5兆円)が、昨年9月期と比べて債務者区分が下位に移り、そのうち34社(3.7兆円)は破綻懸念先以下になりました。これらによる不良債権処分損は1.9兆円となっています。 |
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<特別検査の結果を踏まえた各行の対応> 特別検査の結果、債務者区分が破綻懸念先とされた債務者は、昨年10月の「改革先行プログラム」において、(a)私的整理ガイドライン等による徹底的な再建計画策定、(b)民事再生法等の法的手続きによる会社再建、(c)RCC(整理回収機構)などへの債権売却等、のいずれかの措置を講ずることが求められており、これに沿った対応が行われます。既に、債務者との間で金融支援策が盛り込まれた経営改善計画について合意するなどの対応がなされています。 (主要行の14年3月期の財務内容の概要について) 次に、特別検査の結果公表に合わせて主要行が公表した14年3月期の主な財務内容の概要をみますと、特別検査等を踏まえた結果、不良債権処分損は約7.8兆円と、昨年11月時点の業績予想約6.4兆円と比べると、約1.4兆円の増加(21%増)となっています。これは、特別検査による債務者区分の下位変更のほかに、特別検査を踏まえた自己査定の厳格化(特別検査対象債務者の準メイン行等)、特別検査対象外の債務者の業況悪化などの要因によるものと考えられます。また、自己資本比率は、国際基準行については 8%、国際基準行については4%を大きく上回る水準となる見通しです。 なお、特別検査の結果による不良債権処分損が1.9兆円であるのに、財務内容の公表概要での同処分損は、昨年11月時点の見込みに比べて1.4兆円の増加にとどまっています。これは、下の図にも示した通り、各行が、特別検査の実施を踏まえ、既に昨年11月時点で自主的にその影響を織り込んでいたためです。 不良債権処分損の見込額の推移 |
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(「より強固な金融システムの構築に向けた方策」について) さらに、「より強固な金融システムの構築に向けた方策」については、ペイオフ解禁がされたこともあり、総理の指示を踏まえ、金融システムの安定を確保するため、不良債権処理等を更に促進するよう、切れ目なく施策を講じる観点から、金融庁としてとりまとめたものです。 この新たな「施策」は、次の3つの項目からなっています。 <(a)不良債権処理の促進> 第一に、不良債権の処理促進のため、昨年4月の緊急経済対策などを踏まえ、現在、主要行の新規に発生した破綻懸念先以下の債権について、3年以内にオフバランス化につながる措置を講ずるとの期限を設定しています。この枠組みの中で、オフバランス化を一層加速するため、主要行に対し、その破綻懸念先以下の債権のオフバランス化について、原則1年以内に5割、2年以内にその大宗(8割目途)との具体的な処理目標を設定するよう、要請することとしました。これについては、既に要請しているところです。 また、この具体的処理目標を確実に実現するため、RCCの債権買取りや信託などの機能を積極的に活用するよう要請しているところです。これらにより不良債権が銀行からRCCの管理下に移されることとなり、昨年11月に設置されたRCCの企業再生本部などの機能も活用しつつ、一層円滑な不良債権処理、企業再生が進められることが期待されます。 <(b)主要銀行グループ通年・専担検査の導入> 第二に、持株会社方式による経営統合など主要行を中心とする金融機関のグループ化の流れを踏まえ、現行の主要行検査部門を主要銀行グループ別に再編し、各部門が1年を通じて同一グループ内の金融機関を継続的かつ専担的に検査することにより、実質常駐検査体制を導入します(平成14年検査事務年度が始まる14年 7月より導入予定です)。 さらに、内部監査体制や市場関連リスク、システムリスクといった専門性の高い分野については、民間出身の専門家を登用した専門班を別途編成し、各グループを横断的に検査することとします。 こうした検査体制の再編・強化により、主要銀行グループを一体的に捉えた専門性の高い検査を継続的かつ専担的に実施することが可能となり、検査の実効性・効率性を高めることができると考えています。 <(c)金融機関の合併促進> 第三に、金融機関の経営基盤の一層の強化と中小企業金融の円滑化を図るため、主として地域金融機関を念頭において、合併促進を中心とした施策を早急に検討することとしました。 これは、金融機関の合併等が、収益性の改善や財務・経営基盤の充実を通じて金融システムの一層の強化に資すると期待されるほか、中小企業金融の円滑化にもつながり得ると考えられることから、今後なお合併等によるメリットを追求できる余地が大きいと考えられる、主として地域金融機関を念頭において検討することとしたものです。 具体的な施策については、地域金融機関のニーズを聴取しつつ、必要に応じ関係省庁とも協議しながら、幅広い観点から検討していきます。 (別紙)経営実態に応じた検査の運用確保等 これら3つの施策に併せて、中小・零細企業等の経営実態の把握の向上による適切な検査の運用確保のため、「金融検査マニュアル別冊・中小企業融資編」(案)を作成し、パブリックコメントに付しました。 この「別冊」は、金融検査マニュアルにおける中小・零細企業等の債務者区分の判断に関する記述の解説である「検証のポイント」及びこれら検証ポイントの具体的な適用事例としての「検証のポイントに関する運用例」からなっています。 また、検査の効率性向上の観点から、資産内容に特に問題がなく、前回検査の結果が良好な金融機関に対しては、与信額が一定額以下の債務者について、原則として自己査定に委ねることとしました。こうした取扱いは、現行の金融検査においても、既に主任検査官の判断により行われているものであり、今回の措置はそうした取扱いの明確化をしたものです。 なお、一定金額以下の債務者とは、債務者の規模に関わりなく、与信額2千万円、又は資本の部合計(会員勘定計)の1%のいずれか小さい額未満の者とすることを考えています。 (結び) 今回の特別検査の結果や14年3月期の主要行の財務内容の概要に示されているように、不良債権処理の具体的進捗が図られたところですが、金融庁としては、引き続き、より強固な金融システムの構築に向けて、全力を尽くしてまいります。 |
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4月17日、金融庁は本事務年度第4回目の財務局長会議を開催した。会議においては、柳澤金融担当大臣、村田金融担当副大臣からのご挨拶のほか、長官からペイオフ解禁に向けての各財務(支)局等のこれまでの尽力に謝意を述べるとともに、引き続き地域金融機関の安定のため適切な監督等を行っていただきたい旨の挨拶があった。また、各財務(支)局長等からデフレ対応策における貸し渋り対策のフォロー、地域銀行における要注意先債権等の健全債権化に向けた取組みについて報告があったほか、当庁各局及び証券取引等監視委員会から、「より強固な金融システムの構築に向けた施策」の概要、主要行に対する特別検査の結果、金融検査マニュアル別冊・中小企業融資編(案)の作成・整備、不良債権処理の促進(RCCの機能の積極的な活用)、証券取引等監視委員会における民間専門家の採用状況等についての説明及び意見交換が行われた。 柳澤金融担当大臣挨拶 財務局長会議の開催に当たり、私から、現下の金融行政について一言申し上げます。 村田金融担当副大臣挨拶 財務局長会議の開催に当たり、私から、一言申し上げます。 |
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〈財務局長会議で挨拶する村田副大臣〉 |
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1 |
.経緯等 昨年9月の米国同時多発テロ事件の発生以降、国際社会においてテロ資金対策が重要な課題となり、我が国も、昨年10月30日に「テロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約」(以下「テロ資金供与防止条約」という。)の署名を行い、同条約の早期締結を目指すこととなった。 同条約においては、(a)テロ資金提供・収集行為の犯罪化、(b)テロ資金の没収及び没収のための凍結、(c)テロ資金に関する金融機関等の疑わしい取引の報告義務、(d)金融機関等の顧客等の身元確認義務、(e)金融機関等の取引記録の保存義務等について所要の措置を講ずることとされており、金融庁としては、(d)・(e)に関して所要の法整備を行うこととなった(注1)。そして、関係各方面の意見を踏まえ検討を行い、3月12日に「金融機関等による顧客等の本人確認等に関する法律案」を国会に提出した。同法案は、4月11日に衆議院で可決され、同月22日に参議院で可決され、成立した(同月26日公布)。 |
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2 |
.法律の目的 本法律の目的は、金融機関等による顧客等の本人確認及び取引記録の保存に関する措置を定めることにより、(a)テロ資金供与防止条約の的確な実施を確保することに加え、(b)テロ資金やマネー・ローンダリングに関する疑わしい取引の届出(注2)の実効性を確保し、かつ、(c)捜査機関による効率的な資金トレースを可能にすること等によりテロ資金の提供(注3)やマネー・ローンダリングが金融機関等を通じて行われることを防止するための金融機関等の顧客管理体制の整備の促進を図ることである。 |
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3 |
.法律の概要 本法律の概要は、以下のとおりである。なお、この法律は多様な金融機関等の行う取引等を対象としており、制度の柔軟性・実効性を確保するため、具体的な定めの相当部分を政省令に委任している。政省令事項の概要(5月15日現在。関係各方面の意見を聴取しつつなお検討中であり、今後の変更があり得る)は、4.を参照。 |
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4 |
.主な政省令事項(5月15日現在の案。関係各方面の意見を聴取しつつなお検討中であり、今後、パブリックコメント等所要の手続を経て成案を得ることとなる。) |
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5 |
.今後の日程 本法律が金融取引に広く関係するものであることを踏まえ、政省令を含む制度の全体像についてできるだけ早く成案を得、十分な周知期間・準備期間をとって、来年1月から施行することを予定している。(注12) |
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○金融機関等による顧客等の本人確認等に関する法律 |
大臣、東京証券取引所視察〈平成14年4月25日(木)〉 |