第3回金融専門人材に関する研究会議事要旨

1. 日時:

平成20年1月23日(水)10時00分~12時00分

2. 場所:

中央合同庁舎7号館9階 共用会議室3

3. 議題:

  • ゲスト・スピーカーによる講演

  • オブザーバー(事務局)説明

  • 自由討議

  • 事務連絡

4. 議事内容:

  • ゲスト・スピーカーより金融専門人材に必要な能力・資質についての説明、事務局より資料(これまでの論点整理および今後の具体的論点について)に沿っての説明があった。

  • 会議における主な発言は次のとおり。

(期待される役割について)

  • 「キャッシュ・フロー製造業」としての金融技術を理解した人材をいかに確保するかが課題。

  • 金融機関の経営者や企画担当者は古典的な金融モデルから脱却し、実務において金融工学を活用するためのインフラや組織を整備するべき。

  • 資格についての構想は、「ビジネスのレベルアップ」と「コンプライアンスのレベルアップ」という2つの視点を同時に追い求めるもの。

  • 「ビジネスのレベルアップ」という観点からは、この国の金融業の商品を作る力、評価する力がもっとあってしかるべき。

  • 「コンプライアンスのレベルアップ」という観点からは、エンロンの事件以降、コンプライアンス意識というものは担当者だけのものではなく、その水準の向上が競争力の源泉であるという考え方が一般的になってきており、資格を担当者のものではなく、経営に近いところのものであるとして考えていくべき。

  • 経営者に助言ができる人材や幅広い目配せができる人材が組織に必要であるということは確かであるが、これが資格制度に馴染むかは疑問。

  • 資格取得者が、いずれは経営者に助言する人材となることを目指す、ということではないか。

  • 一般事業会社の中に、例えばCFOレベルなどで金融工学の能力を持った人材が必要ではないか。

  • 金融機関から売り込みに来る金融商品のリスクを見極められる人材は、大企業や上場企業に限らず、様々なレベルで必要。

  • バーゼル II 第二の柱では、金融機関が自らリスク管理をし、その妥当性を監督当局が検証する、という仕組みになっている。従って監督当局側の人間も、金融機関が構築する(リスク管理の)枠組みを検証する能力を持つ必要。

(キャリアパスのイメージ)

  • (1)大学・大学院卒業者が在学中に資格取得、(2)専門職大学院等修了後に資格取得、(3)金融機関等の役職員が資格取得、(4)金融機関等をクライアントとする弁護士・公認会計士等が資格取得、という色々なキャリアパスがあってよく、パスを限らない方がいいのではないか。

  • 金融工学の観点からは、理系のドクターなど優秀な人材を確保した上で、彼らが持ち合わせたスキルを把握しながら、取引の知識やITのノウハウを教え、向上させていくことが肝要。

(求められる資質について)

  • 金融工学に必要な知識としては、(1)対象についての知識(金融取引や経済・会計・法律など)、(2)分析手法についての知識(金融理論や確率解析など)、(3)実現手段についての知識(データベース、プログラミングなど)。

  • 金融工学の世界において、技術開発やシステム開発ができるような高度な知識を求める資格を創設するのは難しいのではないか。ただ、ベースとなる知識は持っているということを資格試験で確認することは有意義。

  • 資格要件としては、コンプライアンス試験、金融工学試験、というように、何種類かの専門科目に分けるとして、それに加えて最低限の基礎知識はパスしなければならない、というものが考えられる。例えば、会計士の資格を持っているのであれば、あとは幅広い知識を問う試験だけ受ければよい、といった形。

  • 法学部の出身等で他の分野の知識を持っている人でも、金融工学の最低限のベースが掴めていれば、経営陣に入ったときに理解が深まるのでは。

  • 金融工学の視点からも、商品設計する段階で法律の知識は必要になってくる。

  • 法律を学ぶ者もファイナンスを学ぶ者も、お互いの知識をある程度持っていれば、共通の言葉で話すことができる。

  • 理工系の人たちは、計算能力は非常に高いがマクロ的な観点で世の中を見られない。資格制度は、幅広い視点で金融を眺められるような人材を育て、層を厚くするものとすべき。

  • 英語でしか試験としないといった大胆な発想も考えられる。日本は本気であるということを示すには、少し厳しめのものであっても良い。

(資格要件について)

  • 例えば、法学部の学生は他学部のこの分野のこの単位が必要だといった枠組みを作って、いろんな分野の知識をある程度持った人が大学を卒業していく、といった枠組みができないか。

  • 「教職課程」のような形で、金融機関に就職するための「金融課程」のようなものを作り、大学が資格を認定するようなことはできないか。

(実務経験、継続教育について)

  • 実務経験を積んだ人の中には、改めて自分の持っている金融知識を高めていきたいというニーズがあり、そういった人たちが一定期間、大学に戻って知識を整理してきてもらうという仕組みが考えられる。

  • 実務と大学の間で問題意識を共有した上で、実務の側から大学のほうに理論の組み立てをお願いするような仕組みを制度化できないか。

  • 製造業では、工学部の教授と実務は深く結び付いている。金融の分野においても、同様の結び付きが作れないか。

(資格のグローバル化について)

  • 1億人の日本人から優秀な人間に資格を与えて右から左へ回す、ということではなく、世界の60億人の中から、日本の金融システムに有益な人材を積極的に連れてくる、という発想が重要。そのためにも国籍を問わず広く世界から金融専門人材を確保するための工夫が必要。

  • 資格を設けること自体が、外国人の参入障壁にならないようにしなければならない。

  • 海外からの人材確保という論点は、日本がこれから海外に市場を開いていくというメッセージになると考えられる。

  • グローバルに人材を集めていくといった観点からは、世界各国で同じレベルの問題を出していくといったことも、大きなスケールとしてはある。

(その他具体的論点について)

  • 資格制度というのは、国が、これからどのような日本にしていくのかという覚悟を世界に示す道具。

  • 各金融機関や事業法人の経営の自由度というものがあるので、業務独占や設置義務は避けるべき。

  • 設置義務に関しては、様々な分野の最低限の知識がある人を支店に必要、などの一定の設置義務要件はあり得るのでは。

  • 資格所有者は、上場するのに当たって必ず取締役の中に何割必要だ、といったルールを作ってみることも考えられるのでは。

  • 資格を作ると、こういう資格を持っている人は最低限こういう知識を持っているということが分かり、例えば地銀と都銀など、官と民のみならず民と民の間でも、人事交流が活発化するのではないか。

(以上)

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