ディスカッションペーパー
ディスカッションペーパーとは
金融研究センターにおける「ディスカッションペーパー(DP)」とは、当センター所属の研究官等が、研究成果を取りまとめたものです。随時掲載しますので、ご高覧いただき、幅広くコメントを歓迎します。電子メールでのコメントは、frtc_comments★fsa.go.jp宛(注:★を@記号に置き換えて下さい)にお寄せ下さい。
なお、DPの内容はすべて執筆者の個人的見解であり、金融庁あるいは金融研究センターの公式見解を示すものではありません。
令和8年度ディスカッションペーパー
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| ファイル | 題名 | 執筆者 | 年月 |
|---|---|---|---|
| 昭和の金融行政 100年の歴史にみる効率性と公共性のバランス | 横山 和輝 | 2026年9月 | |
| ASEAN主要国の金融システムの構造 ー発展的観測 シンガポール、ベトナム、フィリピンの位置づけ |
三重野 文晴 平田 礼王 |
2026年8月 |
ディスカッションペーパー要旨
DP2026-1
「ASEAN主要国の金融システムの構造-発展的観察シンガポール、ベトナム、フィリピンの位置づけ」
三重野 文晴 金融庁金融研究センター専門研究員
平田 礼王 金融庁金融研究センター専門研究員
タイ、マレーシア、インドネシアを対象に金融システムの共通構造を検討した昨年度のディスカッションペーパーDP2025-9 を拡張する形で、ベトナム、シンガポール、フィリピンの 3 ヶ国を加えた比較分析をおこなった。国際収支構造、銀行信用等の国内金融システム、企業の資金調達行動の観察に 3 ヶ国を追加するとともに、新たに全 6 ヶ国に対して企業の設備投資行動と資金制約の関係についての実証分析も行った。
分析の結果、国際収支構造における海外投資の収益性の低さと、それが国内金融システムの金融仲介機能の不完全性を背景にしたものであるという見方は、6 ヶ国の観察でも概ね妥当であることを確認した。ただし、ベトナムは先に分析したタイ、マレーシア、インドネシアの 3ヶ国との共通性が非常に高く、一方シンガポール、フィリピンにはそれとは外れる要素が多い。
6 ヶ国を通じた共通性としてもっとも明瞭なのは、商業銀行貸出の製造業部門からの後退と企業の負債ファイナンスの後退に見られる金融仲介の停滞である。企業行動の側面では自己資金と負債の代替性や、負債調達が企業投資を活性化させる効果が観察されているので、信用市場の役割の余地は大きいといえる。株式市場や債券市場の成長には国ごとの違いが大きいが、社債の発行体が金融部門や不動産・建設部門に偏ることや、企業は長期性の資金需要に応じて社債ファイナンスを活用していることは、ASEAN の債券市場における共通特性であることがわかった。
キーワード:ASEAN、金融システム、資金調達
DP2026-2
「昭和の金融行政 100年の歴史にみる効率性と公共性のバランス」
横山 和輝 金融庁金融研究センター特別研究員
本稿は、昭和期の金融行政を「効率性と公共性の両立」という観点から再検討するものである。昭和初期には金融恐慌への対応として銀行規制と検査体制が強化され、戦時には金融システムが統制経済へ組み込まれた。戦後は預金封鎖や金融機関再建を経て銀行中心の資金配分体制が再構築される。高度経済成長期には業務計画表にみられるように、戦前・戦時の経験を継承しつつ銀行行政が展開された。一方、証券行政も持株会社の整理と市場育成から出発し、企業金融の補完や国債市場整備へと役割を変化させた。家計の財産管理は株式投資よりも預貯金を重視していたが、銀行行政を通じて安定性が保証されたことで、銀行システムは家計から高い信頼を獲得してきたものとも言える。金融行政は、家計貯蓄を企業投資へ結びつける制度的条件を整え、経済発展を金融面から支えた。その過程を確かめるなかで見えてくるのは、現場目線を重視しつつも、ときには行政そのものを見つめ直すべく、厳しい目線を金融行政自らにも向けていた点である。金融行政は、制度を一度設計して終わるものではなく、現場の行動と制度の帰結を観察しながら、自らの介入方法を修正していく歴史的な学習過程だったことを、昭和の歴史からあらためて認識することができる。
キーワード:銀行行政、証券行政、効率性、公共性、間接金融優位体制、家計の資産選択

