ディスカッションペーパー

ディスカッションペーパーとは

金融研究センターにおける「ディスカッションペーパー(DP)」とは、当センター所属の研究官等が、研究成果を取りまとめたものです。随時掲載しますので、ご高覧いただき、幅広くコメントを歓迎します。

なお、DPの内容はすべて執筆者の個人的見解であり、金融庁あるいは金融研究センターの公式見解を示すものではありません。

令和元年度ディスカッションペーパー

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ファイル 題名 執筆者 年月
PDFDP2019-7
(PDF:2.06MB)
国際金融規制が日本の銀行行動に及ぼす影響に関する実証分析 -中小企業金融への波及を中心にして- 岩木 宏道
大鐘 雄太
2019年12月
PDFDP2019-6
(PDF:2273KB)
次世代テクノロジーを活用した地域銀行の新たなビジネスモデルの検討 木村 昌史
冨田 尚子
梶本 裕城
2019年10月
PDFDP2019-5
(PDF:1398KB)
わが国における不動産情報整備の状況と展望 清水 千弘 2019年9月
PDFDP2019-4
(PDF:932KB)
不動産市場のファンダメンタルズ 清水 千弘
才田 友美
井上 智夫
2019年9月
PDFDP2019-3
(PDF:959KB)
金融機関を標的としたサイバー攻撃等の動向について 佐々木 稔 2019年9月
PDFDP2019-2
(PDF:2660KB)
顧客本位の業務運営(FD)にふさわしい金融商品販売のあり方 松本 大輔
中西 孝雄
2019年8月
PDFDP2019-1
  (PDF:4517KB)
レバレッジ比率考~国内基準行への適用の是非~ 鈴木 利光 2019年6月

ディスカッションペーパー要旨

DP2019-7
「国際金融規制が日本の銀行行動に及ぼす影響に関する実証分析 -中小企業金融への波及を中心にして-」

   岩木 宏道   金融研究センター特別研究員
   大鐘 雄太 金融研究センター特別研究員

      
 本稿は、世界金融危機後に段階的に導入された国際金融規制が日本の銀行の貸出行動に及ぼした影響について、銀行貸出のなかでもその約7割を占める中小企業向け貸出への影響に焦点を当てて定量的な分析を行うものである。国際金融規制は従来型の銀行自己資本の考え方に基づくリスクベース自己資本比率規制に加え、流動性カバレッジ比率規制、安定調達比率規制といった多面的な規制から構成されているため、銀行のなかでも当該規制から相対的に制約を受けていたと考えられる銀行(処置群)とそうでない銀行(対照群)について、各規制の導入が公表された年度(以降、「アナウンス年度」とする)以後とそれ以前の差異を比較することにより、個々の規制から受けたネットの影響を抽出する検証手法(Difference-in-differences推計)を採用した。検証の結果、リスクベース自己資本比率規制からの影響について、国内基準行の中でも同規制から相対的に制約的であった銀行においては、事後的に中小企業向け貸出の増加が抑制的になった可能性が示唆される一方、国際基準行については、そのような影響はみられなかった。他の諸規制に関する同様の検証では、国内基準行、国際基準行の別を問わず、中小企業向け貸出(以降、「SME貸出」とする)へ有意に影響を及ぼしたという説得的証拠は得られなかった。

キーワード:国際金融規制、銀行貸出、中小企業金融
 

DP2019-6
「次世代テクノロジーを活用した地域銀行の新たなビジネスモデルの検討」

   木村 昌史   金融研究センター特別研究員 冨田 尚子  梶本 裕城
      
 地域銀行を取り巻く環境が大きく変化する中、今後地域銀行では、人工知能やクラウド等の次世代のテクノロジーを積極的に導入していくことで、タイムリーな情報の収集と、収集した情報の営業活動への積極的な活用を行う、いわば「地域のプラットフォーマー」としての役割を担うことが期待される。さらに、こうした次世代テクノロジーを導入・活用することで、より一層効率的な業務運営を実現していくことが求められる。

 本稿では、こうした次世代テクノロジーの導入意義を改めて考察するとともに、次世代テクノロジーを活用した地域銀行の新たなビジネスモデルを検討する。特に、収益性を強化する手段として、次世代テクノロジーの活用が地域銀行のビジネス(収益・経費)に対してどのような効果をもたらすのかについて定量的な分析を行った。また、地域銀行が次世代テクノロジーを導入するにあたっての必要要件の検討も行った。分析調査の結果、こうした次世代テクノロジーの導入による収益・経費への影響を通じて、地域銀行全体では2033年度末までに1,400億円のコア業務純益押し上げ効果があるほか、コア業務純益赤字先が減少する可能性が確認された。他方で、次世代テクノロジーの導入はファースト・ムーバーズ・アドバンテージ(先行者利益)が効きやすく、取り組み度合いによって得られる効果に地域銀行間の格差が生じるほか、FinTech企業等との競争によって地域銀行全体の収益が侵食される可能性があることも分かった。各地域銀行では経営体力の十分性を把握しつつ、早期に次世代テクノロジーの導入に向けて検討を進めていく必要があると考える。

キーワード:地域銀行、ビジネスモデル、次世代テクノロジー、コア業務純益、定量効果、経営体力
 

DP2019-5
「わが国における不動産情報整備の状況と展望」

   清水 千弘   金融研究センター特別研究員
      
 多くの先進主要国は、不動産価格の急騰とその後の下落といった資産バブルを通して、深刻な経済問題を発生させた共通の経験を持つ。2000年代初頭から欧米諸国の大都市部を中心に発生した住宅価格の急騰は、それらの住宅資産に裏付けられた証券化金融商品市場の拡大をもたらし、その後の住宅価格の下落を受けて、世界的な金融危機を発生させる引き金になった。そのような中で、不動産価格の変動を的確に捉えることができる経済指数の開発が、政策当局、とくにマクロ経済政策の運営者にとってきわめて重要になってきている。そして、国際通貨基金(IMF)、国際決済銀行(BIS)が主導する形で、不動産価格指数をはじめとする公的統計の整備を進めようとする動きが積極化してきている。本稿は、不動産価格指数を取り巻く政策的な議論を整理したうえで、わが国における不動産情報の整備状況を整理することを目的とする。

キーワード:不動産情報・情報の非対称性・価格指数・ヘドニックアプローチ・リピートセールスアプローチ・カルリ型指数
 

DP2019-4
「不動産市場のファンダメンタルズ」

   清水 千弘   金融研究センター特別研究員
   才田 友美、井上 智夫
      

 本稿では、我が国の地価形成要因について長期時系列分析を行った。地価形成理論の一つである「割引現在価値モデル」を都道府別地価データに適用し、1975年~2015年について共和分分析および誤差修正モデルの推計を行った。その結果、所得や金利、期待成長率等の経済のファンダメンタルズ指標から算出される割引現在価値と実際の地価との間には、共和分関係が見出された。また、人口要因が、地価に影響を与えている可能性も確認された。得られた共和分関係を用いて推計した誤差修正モデルから短期変動をもたらす要因として得られた主な事実は以下のとおりである。六大都市については、1980 年代半ばから後半にかけては、金利が低水準に維持された中、期待成長率が上振れて割引現在価値が大きく上昇していたことに加え、銀行貸出の多寡も地価上昇に寄与していた。2000年代入り後、低金利の下での持続的な経済成長を反映して、割引現在価値が地価押上げに寄与するとともに、均衡値より下がりすぎていた地価を押し戻す動き(誤差修正)が顕著となった。しかしその後、人口要因の地価押し下げ圧力が増加したため、ファンダメンタルズほど地価は上昇しなかったことが示唆されている。地方圏では、バブルの生成・崩壊期は、バブルの発生源(東京をはじめとする六大都市圏)からの地価波及効果が大きく、ファンダメンタルズの動き以上に地価が上昇・下落していた可能性が示唆された。2000年代入り後、徐々に地価波及効果は薄れ、2000年代後半では、地方圏自身の要因(ファンダメンタルズおよび人口)が地価の動きを主導するようになっており、不動産マーケットが地域間で分断されつつある可能性を示唆している。

キーワード:割引現在価値・不動産バブル・共和分・誤差修正モデル・人口減少
 

DP2019-3
「金融機関を標的としたサイバー攻撃等の動向について」

   佐々木 稔   金融研究センター研究官

 近年、サイバーセキュリティに対する脅威の増大が声高に叫ばれている。
 国家レベルでは、日本政府が来年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会を見据えて取組みを加速させており、国際的には選挙への介入や通信機器の安全性などが大きな問題として取り上げられている。
 他方、個別のサイバーセキュリティ事案のレベルでは、SNSからの情報漏洩事案が世界的に大きく報じられ、日本国内では今年に入って百万件単位の情報漏洩事案が複数公表されてはいるものの、そもそもそのような事案の詳細まで公になることは決して多くなく、そのため、脅威が実際にどのようなものであるかというイメージが湧きにくいという実情もあろう。
 そこで、本稿では、金融機関のサイバーセキュリティに対する脅威のイメージをつかみ、そのリスクを理解するため、公表情報を収集し、日本を含む世界の金融機関において実際に確認されたサイバー攻撃事案等を整理する。
 また、SWIFTネットワークをはじめとする銀行間決済システムが悪用された不正送金事案が多数確認されている状況を踏まえ、SWIFTが行っている取組みについても説明する。この取組みの中でSWIFTがSWIFTネットワーク利用組織に対して実施を求めている対策は、SWIFTに関連しないシステムのセキュリティを確保する上でも参考にできる内容が多く、それを理解することはSWIFTネットワークを利用していない金融機関にとっても有益であろう。

キーワード:サイバーセキュリティ、サイバー攻撃、SWIFT、不正送金、暗号資産
 

DP2019-2
「顧客本位の業務運営(FD)にふさわしい金融商品販売のあり方」

   松本 大輔   金融研究センター特別研究員
   中西 孝雄   金融研究センター特別研究員
      

 昨年度の調査では、資産形成の必要性を感じながらも投資には踏み切れていない人が多数存在すること、また、投資を妨げている要因として、「信頼できる専門家の不在」、「金融機関から推奨される商品が必ずしもニーズに合ったものではない」ことに加え、「金融知識が豊富ではない人が多い」ことを確認した。このような状況を打開し、貯蓄から投資への動きを後押ししていくため、販売会社において「顧客のニーズを丁寧に聞く」「ニーズに合った商品提案」「銘柄分散、時間分散、定期的な運用診断等の中身の濃い提案の時間を設ける」ことが重要であることを確かめた。また、販売会社において、顧客推奨度をはじめとする、顧客本位の販売となっていることを、顧客に直接確認する指標の活用が今後期待されることを論じた。

 この1年間で、多くの金融機関が顧客推奨度の把握、改善へ向けた分析を始める等、顧客視点で直接的な指標で客観的かつ比較可能なかたちで「顧客自身が販売会社の取組をどう捉えているか?」を把握する、という取組みが急速に拡がってきている。顧客本位の業務運営に取組むための下地が固まりつつある。一方で、顧客の金融知識が必ずしも豊富でなく、情報の非対称性が大きい状況においては、「顧客自身が顧客本位と感じている」だけでよいのだろうか?という疑問が残る。この状況を踏まえ本稿では、金融知識の高低と販売会社の顧客推奨度の高低の2軸で顧客を大きく4分類したうえで、真に望ましい顧客本位の営業活動とは「顧客の金融知識を高めたうえで、かつ高い顧客推奨度を維持する」ことであることを、再確認した。さらに、このような顧客を増やすためには、どのような取組が必要かを分析した。

キーワード:顧客本位の業務運営、金融知識、顧客推奨度、家計部門アンケート、投資意識調査
 

DP2019-1
「レバレッジ比率考~国内基準行への適用の是非~」

   鈴木 利光   金融研究センター研究官
      

 バーゼルⅢで「レバレッジ比率」の導入が合意され、相応の時間が経過している。
 しかし、本邦でレバレッジ比率が「一柱化」(最低水準の導入をいう)されたのは、2019年3月末のことであり、いわば「古くて新しいテーマ」となっている。
 本邦では、国際統一基準行の自己資本比率をバーゼルⅢにアップデートした時点(2013年3月末)から一年後に、国内基準行の自己資本比率にバーゼルⅢの要素を取り入れた大幅改訂をしたという経緯がある。
 そのため、国内基準行にあっては、レバレッジ比率についても、2019年3月末より計算告示から新一柱告示にアップデートされたことを受けて、国内基準行向けの、本邦オリジナルのレバレッジ比率が早晩導入されるのではないかと危惧する先もあろう。
 そこで、本稿では、レバレッジ比率を国内基準行にまで導入すべきか否かを、本邦における国内基準行計529個を対象に行った「簡易レバレッジ比率」の試算により得られた結果を基に検討する。
 併せて、国際合意におけるレバレッジ比率の導入の背景や、本邦における実施の経緯を振り返る。

キーワード:バーゼル、レバレッジ比率、自己資本比率
 

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