ディスカッションペーパー

ディスカッションペーパーとは

金融研究センターにおける「ディスカッションペーパー(DP)」とは、当センター所属の研究官等が、研究成果を取りまとめたものです。随時掲載しますので、ご高覧いただき、幅広くコメントを歓迎します。電子メールでのコメントは、frtc_comments★fsa.go.jp宛(注:★を@記号に置き換えて下さい)にお寄せ下さい。

なお、DPの内容はすべて執筆者の個人的見解であり、金融庁あるいは金融研究センターの公式見解を示すものではありません。

令和4年度ディスカッションペーパー

(「ファイル」をクリックして本文を、「題名」をクリックして要旨を閲覧することができます。)

ファイル 題名 執筆者 年月
PDFDP2022-6
(PDF:2.14MB)
Measuring Climate Transition Risk under a Delayed Transition: An Exploratory Analysis of the Japanese Banking Sector Jakob Thomae 2022年8月
PDFDP2022-5
(PDF:746KB)

PDF別添資料
(PDF:3.71MB)
金融リテラシーと家計の消費行動:新型コロナウイルス感染拡大下の実証分析 関田 静香 2022年7月
PDFDP2022-4
(PDF:1.91MB)
金融機関における戦略的なサイバーセキュリティ対策の計画立案・推進に関する考察 十川 基 2022年7月
PDFDP2022-3
(PDF:699KB)
地域金融機関の外部環境の分析に係る研究と
手法の標準化
浅井 義裕 2022年4月
PDFDP2022-2
(PDF:747KB)
鶴田 大輔 2022年4月
PDFDP2022-1
(PDF:1.07MB)
証券会社の行動と投資家効用及び経済成長 山口 智弘
山下 美咲
吉野 直行
2022年4月

ディスカッションペーパー要旨

DP2022-6
"Measuring Climate Transition Risk under a Delayed Transition: An Exploratory Analysis of the Japanese Banking Sector"

   Jakob Thomae   金融庁金融研究センター専門研究員

(仮訳)

 本稿では、日本における複数の銀行をサンプルとして、その融資残高について、気候シナリオへの整合性と気候関連リスクへのエクスポージャー分析を行った。
 具体的には、融資先の気候関連技術へのエクスポージャーを理解するため、気候変動の影響を受けやすいセクターの物理的資産から計算される、(同セクター内の)企業の生産計画に関するデータベースを活用して、融資残高に Paris Alignment Capital Transition Assessment(PACTA)手法を適用した。この手法は、融資残高と気候シナリオとの整合性を生産量ベースで計算するために使用され、低炭素経済への移行に沿ったセクター、技術、資本ストックと、そうでないセクター等を特定するのに役立つ。
 次に、融資残高に対し、2 Degrees Investing Initiative(2 DII)が設計した気候関連移行リスクストレステストを適用した。このストレステストでは、企業の生産データと気候シナリオから導かれる生産予測に基づいて、融資先企業の将来利益をモデル化する独自のアプローチを使用している。本稿では、(気候変動対策を行わない)従来通り(Business-as-usual)シナリオと、脱炭素経済への移行の遅れを様々な程度で反映する一連の遅行ショックシナリオの下で、融資先企業の将来利益の変化を導出した。さらに、マートン型信用リスクモデルを使用して、銀行セクターにおける潜在的な脆弱性を特定した。
 分析によれば、日本のサンプル銀行の融資残高は、少数のサブセクター(ガス火力発電とハイブリッド自動車製造)についてのみ野心的な気候シナリオの目標と一致する傾向がある一方、PACTAの対象となる他のセクターについては不一致が確認されている。これは、移行が遅れるシナリオにおいて、デフォルト確率が不利に変化する可能性を意味する。すなわち、最も早く脱炭素化する必要があり、現在最も気候目標に不整合なセクターは、収益性が悪化するリスクが最も高い傾向にあるということである。こうしたセクターには、特に石炭採掘および石油・ガス上流部門が含まれるが、化石燃料に依存する自動車および発電部門の一部も影響を受ける可能性がある。ただし、分析の対象が気候変動に関連する一部のセクターに限定されているため、絶対額で見ると、不整合で最もリスクの高いセクターが日本の銀行の融資残高に占める割合は大きくない。さらに、本分析では2020年度時点の静的な融資残高を想定しており、日本政府や金融規制当局による最近の気候関連政策や、それに関連する取組を十分に反映していない可能性がある。
  
キーワード:気候シナリオ分析、気候関連移行リスク、ストレステスト
 

DP2022-5
「金融リテラシーと家計の消費行動:新型コロナウイルス感染拡大下の実証分析」

   関田 静香   金融庁金融研究センター専門研究員
         
 2020年以降、新型コロナウイルスの感染拡大が経済活動に影響を与えており、予期せぬ所得減少が人々の消費行動に影響を与えたと予想される。完全保険仮説では、もし広い意味での保険市場が十分に発達していれば、消費の変動を回避することができるとされている。そこで、2020年4月にOECDが発信した”Supporting the financial resilience of citizens throughout the COVID-19 crisis”という声明文に金融庁が即座に対応し2021年3月に実施した「新型コロナウイルス感染拡大下での家計の金融行動や意識に関するアンケート」の個票データを用いて、その検証を行う。また、所得減少時の人々の対処方法(貯蓄の取り崩し、借入、所得移転)についても分析する。そして、これら2つの分析を行う際、金融リテラシー(金融経済に関する知識・行動・態度の水準)のレベルの違いに注目する。なぜなら、金融リテラシーの高い人ほど、貯蓄を多く持ち、借入が必要な場合には審査に通りやすいと考えられるため、所得が減少したとしても、消費の減少を回避しやすいと予想されるからである。このように、金融リテラシーの役割について確認した後、日本における金融経済教育の推進状況を説明し、他国の国家戦略を紹介しながら、今後の日本における金融経済教育に関する政策提言を行う。
 
キーワード:金融リテラシー(金融経済に関する知識・行動・態度の水準)、完全保険仮説、対処方法、金融経済教育、行動変容
 

DP2022-4
「金融機関における戦略的なサイバーセキュリティ対策の計画立案・推進に関する考察」

   十川 基   金融庁金融研究センター研究官
         
 近年、サイバーセキュリティに関する脅威は増加しており、国家の関与が推察されるような、長期間にわたる入念な探索や高度な技術が用いられる攻撃も発生している。金融機関はITを活用し、多くの個人情報や金融資産等を管理しているため、サイバー攻撃の標的になりやすく、被害が発生してしまうケースが少なくない。そのため、サイバーリスクマネジメントは、金融機関における経営課題の中でも重要なテーマの一つとなっている。しかしながら、金融機関は数多くのシステムやサービスを複雑に連携しているため、絶えず変化するサイバー攻撃に対して整合性のとれた網羅的なサイバーセキュリティ対策を迅速に実現することが難しい。そこで本稿では、政府や金融機関等に関連するサイバーインシデントの傾向及び近年の概況と、金融機関のサイバーセキュリティ対策に役立つ文献を調査し、各文献の特徴を取りまとめた。そして、それらを活用して各金融機関に必要なサイバーセキュリティ対策を分析し、その計画立案と推進を行うための具体的な手法の提言を行い、金融機関が自律的にサイバーセキュリティ対策の高度化を継続的に実施できるように解説する。

 キーワード:サイバー攻撃、サイバーセキュリティ対策、戦略立案
 

DP2022-3
「地域金融機関の外部環境の分析に係る研究と手法の標準化」

   浅井 義裕   金融庁金融研究センター専門研究員
         
 日本では、人口減少が進んでいて、大都市圏以外の地域金融機関では、融資先がなくなっていくことが懸念されている。一方で、中小企業の資金繰りは、大企業の資金繰りよりも一貫して厳しい状況にある。つまり、地域金融機関が、資金ニーズのある中小企業に十分な融資を行うことができれば、地域金融機関と中小企業が抱える問題を同時に緩和できる可能性がある。そこで、本研究では、一定地域の融資データと企業の財務データを用いて分析を行った。その結果、地域金融機関は、特に、小規模企業の資金需要に応える形で、融資を開始し、融資額も増やしていることが明らかになった。一方で、小規模企業の資金需要は満たされていないという指摘がされることもあり、小規模企業の資金ニーズと地域金融機関の役割については、都道府県ごとに、見解が異なる可能性がある。今後の研究では、企業の資金需要に応える形で地域金融機関が融資を進められているかどうか、また、どのような地域金融機関が企業の資金需要に応えて融資できているのかを、都道府県ごとに明らかにしていく必要があるだろう。
 
キーワード:地域金融機関(Regional Banks)、中小企業金融(SMEs Financing)
 

DP2022-2
「金融機関と借り手企業のマッチデータを用いた地域貸出市場の実証分析」

   鶴田 大輔   金融庁金融研究センター専門研究員
            
 近年、我が国では地方において高齢化や人口減少に伴い、資金需要が構造的に減少する傾向にある。このような状況の中、創業や事業承継の促進による資金需要の掘り起しの必要性が増している。また、近年は、金融機関の収益性の低迷から、県外の金融機関からの越境融資が増加しており、地域貸出市場の競争は活発化する傾向にある。本論文では、このような状況を踏まえ、ある都道府県の金融機関と企業のマッチデータを利用し、地域貸出市場に関する分析を行った。企業×金融機関レベルのデータを用いることで、企業固有の観察できない要因や金融機関固有の資金供給能力をコントロールでき、金融機関の融資姿勢を数量的に表すことが可能になる。本論文では、利益率、企業の信用度を表す評点、負債比率といった企業属性や、業態、県外の立地、といった金融機関属性に注目し、どのような地域金融機関がどのような属性の企業に対して積極的に融資を行っているのかを明らかにした。
 
キーワード:地域貸出市場、金融機関・企業マッチデータ、金融機関行動、越境融資
 

DP2022-1
「証券会社の行動と投資家効用及び経済成長」

   山口 智弘   東京国際大学データサイエンス教育研究所教授
         山下 美咲   金融庁企画市場局市場課市場企画第三係長

   吉野 直行   金融研究センター長、慶應義塾大学名誉教授
         
 本稿では、まず投資家の効用最大化行動の観点から、どのような資産配分となっていたかを実証的に導出する。次に、証券会社の行動を財務データ分析により明らかにする。データ分析から得られる特徴を前提として、株式売買に関連する手数料収入に着目し、理論モデルでは、より安全な投資対象への売買とリスクの高い投資対象への売買の二つに分類し、コスト面でも両者が異なる点を明示的に含めて、証券会社の利潤を最大化させる売買配分を導出する。更に、マクロの観点から安全な投資対象企業と、リスクは高いが成長の期待できる投資対象企業への、経済成長を最も高める資本の配分点を導出する。日本の投資家は、証券市場においても安全性の思考が強いことが導かれる。高い経済成長を目指すという観点からも、こうした日本の投資家行動が、低成長に導いてしまうことにつき、マクロ生産関数を用いて説明する。これまで、証券市場での資金配分と経済成長への貢献については、殆ど分析がなされて来なかったことにつき補完する実証分析を行っている。
 
キーワード:安全企業とリスク企業への投資配分、証券会社の行動、証券市場を通したマクロの資金配分

コンテンツの利用について

DP2022-5
「金融リテラシーと家計の消費行動:新型コロナウイルス感染拡大下の実証分析」

   関田 静香   金融庁金融研究センター専門研究員
         
  2020年以降、新型コロナウイルスの感染拡大が経済活動に影響を与えており、予期せぬ所得減少が人々の消費行動に影響を与えたと予想される。完全保険仮説では、もし広い意味での保険市場が十分に発達していれば、消費の変動を回避することができるとされている。そこで、2020年4月にOECDが発信した”Supporting the financial resilience of citizens throughout the COVID-19 crisis”という声明文に金融庁が即座に対応し2021年3月に実施した「新型コロナウイルス感染拡大下での家計の金融行動や意識に関するアンケート」の個票データを用いて、その検証を行う。また、所得減少時の人々の対処方法(貯蓄の取り崩し、借入、所得移転)についても分析する。そして、これら2つの分析を行う際、金融リテラシー(金融経済に関する知識・行動・態度の水準)のレベルの違いに注目する。なぜなら、金融リテラシーの高い人ほど、貯蓄を多く持ち、借入が必要な場合には審査に通りやすいと考えられるため、所得が減少したとしても、消費の減少を回避しやすいと予想されるからである。このように、金融リテラシーの役割について確認した後、日本における金融経済教育の推進状況を説明し、他国の国家戦略を紹介しながら、今後の日本における金融経済教育に関する政策提言を行う。
 
キーワード:金融リテラシー(金融経済に関する知識・行動・態度の水準)、完全保険仮説、対処方法、金融経済教育、行動変容

サイトマップ

ページの先頭に戻る