FSA リサーチ・レビュー 第7号

FSAリサーチ・レビューとは

FSAリサーチ・レビューは、金融研究センターに所属する研究官・特別研究員等の研究成果として公表したディスカッション・ペーパー(DP)のうち研究論文として所収するにふさわしいものを、すべて外部のそれぞれの分野の専門家の方々による査読手続きを経て、金融研究センター長の責任編集のもと所収しています。(注)

なお研究論文の内容はすべて執筆者の個人的見解であり、金融庁あるいは金融研究センターの公式見解を示すものではありません。

  • (注)FSAリサーチ・レビューは、平成21年度(第6号)までは、年度中に1回、研究論文の他に、当センターにて開催した国際コンファレンス概要や研究会の報告書を年間活動報告としてとりまとめておりましたが、平成24年度(第7号)から、研究論文のみを年1回程度不定期で掲載するウェブ・ジャーナルとして再刊することとなりました。

FSAリサーチ・レビュー第7号(平成25年(2013年)3月発行)
-吉野直行金融研究センター長(慶應義塾大学経済学部教授) 責任編集-

(「Article」をクリックして本文を、「題名」をクリックして要旨を閲覧することができます。)

【Article 1】
PDF:1,126KB
“Credit Rationing, Earnings Manipulation, and Renegotiation-Proof Contracts”
執筆者: 中村 友哉 金融庁金融研究センター研究官
コメント: 小倉 義明 早稲田大学政治経済学部准教授
【Article 2】
PDF:518KB
「回収実績データに基づくLGDの要因分析と他段階モデルによるLGDおよびEL推計」   
執筆者: 川田 章広 統計数理研究所特別共同研究員
山下 智志 金融庁金融研究センター特別研究員
(統計数理研究所教授)
コメント: 吉野 直行 金融研究センター長(慶應義塾大学経済学部教授)
【Article 3】
PDF:1,310KB
「エージェントシミュレーションを用いた「価格規制」と「Naked Short Sellingの禁止」の有効性に関する研究」
執筆者: 大井 朋子 金融庁金融研究センター研究官
コメント: 佐々木 百合 明治学院大学経済学部教授
【Article 4】
PDF:745KB
「経営者報酬の高額化に関する研究動向」
執筆者: 中村 友哉 金融庁金融研究センター研究官
コメント: 内田 浩史 神戸大学大学院経営学研究科教授

FSAリサーチ・レビュー第7号 掲載論文要旨

【Article 1】
“Credit Rationing, Earnings Manipulation, and Renegotiation-Proof Contracts”

中村 友哉 金融庁金融研究センター研究官

本稿は、近視眼的な経営者が投資家との間で資金借り入れの契約を締結して長期プロジェクトを実行する際に、信用割当問題が発生する状況を考察している。経営者と投資家の時間選好率が異なる場合であって、約定後に中間期の利益予想に基づいた再交渉が可能であるときには、再交渉が不可能な場合に比べて信用割当問題が悪化する可能性を示す。さらに、成功確率は低いが、利益予想に関するシグナルの精度が十分に高いプロジェクトの場合には、経営者が投資家に対してシグナルを提供しないことによって、かえって信用割当問題が改善する可能性があることを示す。

Keywords: Credit rationing; Earnings manipulation; Renegotiation; Managerial myopia
JEL classification: D82, E51, G34, J33

【Article 2】
「回収実績データに基づくLGDの要因分析と多段階モデルによるLGDおよびEL推計」

川田 章広 統計数理研究所特別共同研究員
山下 智志 金融庁金融研究センター特別研究員 (統計数理研究所教授)

LGD(Loss Given Default)はPD(Probability of Default)とともに信用リスクの構成要素であり、正確な推定を必要とされている。これまで、市場データやリスク・プレミアムからLGDを推計するモデルについては提案がなされているが、回収実績データから作成される統計モデルについてはほとんど存在しない。とくに我が国においては、銀行の回収実績データが未公開なため回収率の決定要因や推計モデルが提案されていない。本研究では、地方銀行における事業法人向け融資の回収実績データをもとにLGDの要因分析とLGD・EL(Expected Loss)の推計モデルの開発を行った。その結果、LGDについては担保、保証、貸出額(エクスポージャー)が重要であることがわかった。また、LGDのレベルはFIRBの回収率関数(LGDは0.35~0.45となる)に比較して、低いことがわかった。EL推計には多段階モデルを用いたが、その結果、担保や保証などの貸出要件がPDに影響していることなどが判明し、EL推計精度の向上に対する知見が得られた。

キーワード:信用リスク、LGD(Loss Given Default)、EL(Expected Loss)

【Article 3】
「エージェントシミュレーションを用いた「価格規制」と「ネイキッド・ショート・セリングの禁止」の有効性の検証」

大井 朋子 金融庁金融研究センター研究官

本研究ではエージェントシミュレーション手法を用いて、空売り規制の効果に関し定量的な分析を行った。我が国の現行の空売り規制のうち2 つの措置(価格規制、ネイキッド・ショート・セリングの禁止)をモデル化し、その有効性について規制のある市場とない市場で比較検証を行った。本モデルは株式の売り買いだけでなく、エージェント間に貸株・借株の取引を導入している。シミュレーションでは各市場において、価格変動の特徴や期待価格との乖離、価格のボラティリティについて計測した。また、2 種類の外生的ショックが与えられた時に、規制による市場の頑健性効果について考察を行った。その結果、多くの先行研究と同様に、規制を導入することで規制のない市場よりも市場のリスクは低下するが、価格が過大評価になる傾向があることがわかった。

キーワード: 空売り規制、ネイキッド・ショート・セリング、価格規制、エージェントシミュレーション
JEL 分類コード: C63; G18

【Article 4】
「経営者報酬の高額化に関する研究動向」

中村 友哉 金融庁金融研究センター研究官

米国における経営者報酬は1980 年代から急激に高額化している。その変化は従来の理論では十分な説明が出来ず、新たに多くの理論および実証研究が発表されてきた。本稿では、近年の学説を紹介する前に、コーポレート・ガバナンスの理論における経営者報酬の位置付けを確認していく。その上で、従来のエージェンシー理論の限界と、近年の論点になっているレント獲得説および市場競争説に関する研究を概観していく。

キーワード:コーポレート・ガバナンス、経営者報酬、エージェンシー問題、レント獲 得説、市場競争説
JEL 分類コード:D2; D3; D34; J3

キーワード : 信託、所得税、複層化

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