ディスカッションペーパー

15年度ディスカッションペーパー

2004年3月19日

  • 米国の地域コミュニティ金融
    -円滑化策とそれが機能するための諸条件-
    松田 岳   金融研究研修センター専門研究員

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2004年3月17日

  • 倒産処理法制改革のインパクト
    -再建着手の早期化促進の効果を、イベント・スタディによって検証-
    広瀬 純夫   金融研究研修センター研究官
    秋吉 史夫   金融研究研修センター専門研究員

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2003年12月9日

  • フランス・オランダの地域金融システム
    -欧州における「リレーションシップ・バンキング」の実態と日本への示唆-
    山村 延郎   金融研究研修センター研究官

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2003年10月31日

  • 信用リスクモデルの評価方法に関する考察と比較
    山下 智志   統計数理研究所助教授
    CRD運営協議会顧問
    (金融研究研修センター特別研究員)
    敦賀 智裕   金融研究研修センター専門研究員
    川口 昇   新日鉄ソリューションズ株式会社

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2003年9月17日

  • 金融コングロマリットと範囲の経済
    永田 貴洋   金融研究研修センター研究官
    前多 康男   慶應義塾大学経済学部教授

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2003年9月17日

  • 金融コングロマリットと伝染効果
    永田 貴洋   金融研究研修センター研究官
    前多 康男   慶應義塾大学経済学部教授

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2003年9月9日

  • 信託の成立要件をめぐる一考察
    -最一小判平14・1・17を起点として-
    杉浦 宣彦   金融研究研修センター研究官
      金融研究研修センター専門研究員

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2003年8月28日

  • 電子マネーの将来とその法的基盤
    杉浦 宣彦   金融研究研修センター研究官
    片岡 義広   弁護士(片岡総合法律事務所)

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2003年8月28日

  • 韓国における電子金融法制
    -「韓国電子金融取引法(案)」と日本法制への示唆
    杉浦 宣彦   金融研究研修センター研究官
      金融研究研修センター専門研究員

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2003年8月15日

  • 手形・小切手の電子化(ペーパーレス化)をめぐる法的研究
    杉浦 宣彦   金融研究研修センター研究官
    松田 政行   弁護士(マックス法律事務所)
    大谷 郁夫   弁護士(銀座第一法律事務所)
    森下 哲朗   上智大学法学部助教授
    池村  聡   弁護士(マックス法律事務所)

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2003年5月28日

  • ドイツにおける預金保護・危機対応の制度
    -市場経済に立脚した金融システムの維持-
    山村 延郎   金融研究研修センター研究官

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ディスカッションペーパー要旨

米国の地域コミュニティ金融
-円滑化策とそれが機能するための諸条件-

本稿では、米国における地域コミュニティ金融の「円滑化策」を金融監督政策に限定せず、コミュニティの金融ニーズが満たされるべく行政府が行った施策を広く「円滑化策」と捉え、整理している。その際、「円滑化策」の内容そのものよりもむしろ、当該政策がそれぞれの時期に必要とされた時代背景や社会的ニーズ、それら政策が定着した社会的・経済的条件が歴史的に準備される様に重点を置いて考察している。考察を通じて明らかになった政策的含意としては、我が国においても「税財政などによるインセンティブ措置が必要ではあるが、それが効果的に機能するためには円滑化で「核」となる主体の育成もあわせて必要であること」、「金融監督政策においては多角的な視点から金融機関をチェックする必要があること」、が指摘できる。


倒産処理法制改革のインパクト
-再建着手の早期化促進の効果を、イベント・スタディによって検証-

2000年4月の民事再生法施行、昨年4月には改正会社更生法施行と、企業倒産・再建に関する法制度に大きな変革が施された。長期にわたる日本経済停滞の打開策の一つとして、企業再生促進が喫緊の課題であるとの問題意識が、その背景にある。本稿では、一連の制度改革が再建促進に貢献したのか否か、実証分析による検証を試みた。分析結果によれば、民再法施行以前に法的手続き申立を行った企業の場合、業績の落込みがあったタイミングから法的手続きに入るまで、平均的にみて5年程度の期間を要していたのに対し、民再法施行以降に法的手続き申立を行った企業では、業績の落込みがあった翌年には、法的手続きに入る傾向があることが確認された。さらに、2000年4月以降に私的整理による債権放棄を受けた企業と、法的手続きを利用した企業とを比較すると、債権放棄があった企業の方が、法的手続き申立を行った企業に比べて直前の収益性は比較的高いとの結果が得られた 。この点は、健全な体質へ回復するために抜本的な改革を要する企業の場合、法的手続きが積極的に活用されていることを物語っている。これらの分析結果から、一連の制度改革によって、早期の企業再建着手が促進された可能性が高いことが確認された。


フランス・オランダの地域金融システム
-欧州における「リレーションシップ・バンキング」の実態と日本への示唆-

「リレーションシップ・バンキング」をめぐる論議は、リレーションシップ・バンキング(収益機会の拡大)、リレーションシップ・プライシング又はレンディング(リレーションシップ情報によるリスク管理)、金融機関が果たす「社会的」な役割(金融の円滑)の三つに整理できる。本稿は、フランス・オランダの地域金融システムを、メイン・システムを支える補完的な制度や背景にも配慮しつつ分析することによって、コミュニティ・リレーションシップ・バンキングがこれら三つの点についてどのようなものであるか、その実態を解明した。

その結果、わが国にとって重要と思われる以下の示唆を得られた。地域金融機関の再編の際には、リスク管理の集約とともに、経営組織の分権化が必要である。地域金融機関のガバナンスには地域住民や現場の職員が関与するのが望ましい。地域金融機関が地域情勢にあわせた経営戦略を策定できるために、ユニバーサルバンク制度に近づけることが望ましい。個人向けの住宅金融が重要となるため、長期資金調達の手段を利用することが必要である。貸出先としてもリスク審査援助者としてもNPO活動の活発化が重要な鍵となる。


信用リスクモデルの評価方法に関する考察と比較

本稿は、現在用いられている様々な信用リスクモデル評価方法を列挙し、その成り立ち、特色をまとめ、モデルと評価方法の対応関係を考察した。これまでの信用リスクモデル評価方法に関する論文では、個々の評価方法について説明するだけであり、その評価方法が具体的にどのモデルに適用できるかを与える研究は少ない。また、評価方法が体系的にまとめられていないので、どういった考え方でモデルを評価するかが意識されず、予測が完全に当たるモデル、つまり、的中率が高いモデルがよいと判断することが多い。しかし、作成されるモデルは誤差を含むものであり、単純に予測的中率が高いモデルがいいモデルであると判断するのは危険である。

以上のことから、本稿では、個々の評価方法や評価指標について、その特徴をまとめ、各方法の短所・長所について個別に考察した。その後、モデルケースを想定し適用方法を考察した。考察においては、モデル評価の考え方を明確にした上で、その評価方法が適用できるかどうか考えた。その結果、各評価方法に関してどのモデルに適用できるか、その対応関係を示す表を作成することができた。


金融コングロマリットと範囲の経済

本稿では、金融コングロマリットの形成に関する範囲の経済についての考察を行う。前半では、はじめに金融コングロマリットを正確に定義し、金融コングロマリット形成の現状と動機について整理を行う。続いて金融コングロマリットにおける範囲の経済について、簡単な理論モデルのフレームワークを紹介する。後半では、まず欧州の3つの金融コングロマリット(INGグループ、アリアンツグループ、クレディスイスグループ)について、1998年から2001年の子会社財務データを用い、範囲の経済の存在に関する分析を行う。結論としては、規模の経済は観察されるものの、範囲の経済は観察されなかった。続いてこの財務データを用い、コングロマリット形成のリスク分散効果の検出を行う。簡単な分析ながら、リスク分散効果はある程度検出された。


金融コングロマリットと伝染効果

本稿では、金融コングロマリット化にともなう、セーフティネットの漏出、ダブルギアリングなどの問題について理論的な考察を行う。モデルにおいては、情報が対称であり、それゆえ市場規律が効果的に効いている状況が設定されている。その結果、セーフティネットの漏出、ダブルギアリングなどの問題はそのことが資源配分を歪めることにはなっていないことが分かった。この結果を踏まえると、銀行のディスクロージャーを推進して、市場の価格付け機能を高めることによって、銀行に設けられているセーフティネットが他の部門に漏出することなどの伝染効果を防ぐことが可能になる。


信託の成立要件をめぐる一考察
-最一小判平14・1・17を起点として-

平成14年1月17日、最高裁は、公共工事の請負者が保証事業会社の保証の下に地方公共団体から支払をうけた前払金(預金)について、地方公共団体と請負者との間でこれを信託財産とする信託契約が成立したことを認める初めての判断を下し、関係者の注目を大いに集め、信託に関する議論が活発化した。本稿では、この判決やその後に続いた類似のケースの判例について、判例理論や関連する学説を踏まえつつ分析した上で、当該事案において信託の成立を認定したことの妥当性、信託の成立要件のあり方等について検討を行い、結論として、信託法1条における要件((1)財産権の移転、(2)一定の目的に従い当該財産を処分または管理させる)、プラス(3)信託設定の意思の存在が信託成立の要件になるのではないかと主張する。日本の信託法制は、従来、主として商事信託や営業信託を念頭においたものとなっており、英米に比べ未成熟な民事信託法理の発展が課題であると言われてきたが、信託法や信託業法改正の動きに伴うその法理の見直しの流れとともに、信託の活用可能性について、学界・実務界の関心が高まっている。本稿は、そうした関係者の関心にも応えようとするものである。


電子マネーの将来とその法的基盤

現在、国内外で交通カード等で使われはじめたICカードが、交通だけでなく、コンビニエンス・ストアやその他の店で買い物ができるという多目的型への変化を見せている。このような動きのなかで、再び「電子マネー」という言葉が着目されるようになっている。

本稿では、このような実態を受けて、電子マネー定着に向けての法的基盤整備がどのように行われるべきかを海外の事例を織り交ぜながら検討した。まず、最初に電子マネーの法的性質について再考するため、通貨、金券、手形・小切手の定義との対比を行うとともに、電子マネーを取り巻く法制度(例:電子署名法、電子消費者契約法、出資法、銀行法、外為法等)を検討し、さらに、前払式証票規制法における前払式証票と電子マネーの共通点と違いについて、前払式証票概念の要件要素(有体物であること、有体物への金融情報の記録、情報移転と対価性、代価の弁済)やこれまでの電子マネーの法的性質論(金券説、債権譲渡構成、支払委託構成など)の視点から明らかにしている。

では、今後の電子マネー発展のために必要な法的基盤整備にはどのような点に留意すべきだろうか。それには、やはり(1)信認の確保、(2)前金の保全、(3)決済の安定性をどのように維持していくかが重要であり、そのためには、電子マネーの概念(対象範囲)をどのように位置付けるか等を検討しつつ、これまでカード型電子マネーを一部カバーしていた前払式証票規制法を改正し、現実の取引の進展と、周辺の法的基盤整備の進展にあわせた継続的見直しを行っていくことが現実的な選択ではないかと考える。なお、その場合でも、責任と規制の明確化、前金保全措置の検討とその制度、電子マネー発行体の説明義務、不正行為対策、電子マネー譲渡の対抗要件具備の問題、さらには、電子マネーの強制執行等が今後の課題として残る。


韓国における電子金融法制
-「韓国電子金融取引法(案)」と日本法制への示唆

韓国においては、ここ数年間、超高速情報通信インフラの普及に伴う新しい法的問題に対応すべく、電子取引基本法、電子署名法(以上1999年2月)、情報通信網利用促進および情報保護法(2001年1月)、電子商取引消費者保護法(2002年3月)などが整備されてきた。最近(2002年10月)は、その流れの一環として、金融全般を対象とする横断的ルールとしての性格を有する「電子金融取引法(案)」が立法予告されている。本法律案は、その制定目的として、電子金融取引の法律関係の明確化、利用者の保護、電子金融業の健全な発展を図ることなどを掲げているが(1条)、とりわけ電子マネーにおける非金融機関に対する参入の許容、電子金融取引に利用される各種カード(クレジットカード・電子マネーカード・キャッシュカードなど)の偽造・変造および盗難・紛失などにおける責任分担の明確化、電子金融のアウトソーシングにおける監督当局の監督の仕方、電子債権に関する根拠規定などを置いた点において、その制定の帰趨が注目されている。そこで本稿では、韓国の電子金融および電子金融関連法規の現況を検討し、「電子金融取引法(案)」の制定背景およびその主要内容を紹介することとともに日本法への示唆点を探ることにする。なお、末尾に「電子金融取引法(案)」の試訳も併せて掲載している。


手形・小切手の電子化(ペーパーレス化)をめぐる法的研究

これまで有価証券取引は紙媒体の証券というものを必要としてきたが、電子化によるコスト面や保管・管理面でのメリットに対する利用者・管理者双方の意識の高まりを受けて、近年、債券や株式等の電子化・ペーパーレス化が進行している。

この電子化の動きは手形・小切手の世界にまで進行してきており、一部の銀行で提供しているサービスのなかには、すでに実用段階にまで進んでいるものもある。しかし、手形・小切手の電子化に必要なシステムの運用方法やそれを支える技術上の問題については、ある程度解決されているにもかかわらず、手形・小切手の電子化が法律面に与える影響(新しい法律構成が必要なのか等)については、投資有価証券などに比較しても十分な検討が行われてこなかった。

本稿では、従来の約束手形の機能を維持したまま約束手形の電子化システムを構想した場合の法的問題についての検討を試みた。当然のことではあるが、電子化された約束手形は、約束手形という名称を使用したとしても、約束手形の仕組みと機能を電子的に実現(あるいは模倣)しようとするものにすぎず、手形法という制定法にその存在が裏付けられた「約束手形」そのものではない。従って、電子化された約束手形に関して生じる法的問題点は、一般法である民法等によって解決せざるを得ない。手形法のような流通性促進のための規定をもたない民法による解決では、電子化された約束手形に約束手形と同様の流通性を確保することは困難であり、その結果、約束手形特有の機能を維持するという電子化の目的は達成できない。この点は、システム利用者と金融機関等との間の利用契約・約款において、手形法と同様あるいは類似したルールを規定することによって対応することが志向される。このため、システムの設計にあたっては、電子化された約束手形の流通が利用契約を締結した当事者間に限定されるようなものとする必要があるだろう。この結果、電子約束手形の流通性は制限されざるを得ないが、これが電子約束手形の利便性を損なう可能性も考えられる。また、利用契約によってルールを規定する方法では、差押債権者等の第三者との関係で困難な問題を生じるが、こうした問題は立法による解決を待たざるを得ない。他方、第三者との関係でも明確なルールが存在することは電子約束手形が実際に利用可能なものであるための重要な条件であると考えられる。以上のように考えると、何らかの立法による手当てがなされない限り、約束手形の電子化には実務的に許容し得ない困難な問題が存在するのではないか、というのが本研究の結論である。


ドイツにおける預金保護・危機対応の制度
- 市場経済に立脚した金融システムの維持 -

日本と同じBank-Oriented System(「銀行志向システム」)であるが市場経済の機能維持を重視するドイツの預金保護及び危機対応制度について調査・分析したものである。

ドイツにおいては、高額かつ長期の預金保護が金融システムの維持の観点から重視されており、地域金融機関では、困難に陥った金融機関の保護による預金を全額保護、営利金融機関では、当該銀行の責任自己資本の30%を各預金者の保護上限としてほぼ全ての預金を保護するという制度が確立している。

これらの保障は、設置主体、資金源、個別金融機関の検査等すべてにおいて、業界内で行うという自己完結体制であり、モラルハザードと国家の過剰介入を排除している。最後の貸手機能も、全業態で出資した「リコバンク」によって担われ、国も中央銀行も、信用リスクを負わない。

連邦金融監督公社(BaFin)は、秩序維持の役割を持たされており、市場経済の側で救済できないものについて、法的な「倒産手続」(整理又は清算)をとる。

日本でも、自主財源と業態内部の相互監視による自治と職責に根ざした第二レベルの業態別預金保護制度等により、モラルハザードを極力回避した非決済性預金の保護拡大を図るべきである。

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