ディスカッションペーパー

ディスカッションペーパーとは

金融研究センターにおける「ディスカッションペーパー(DP)」とは、当センター所属の研究官等が、研究成果を取りまとめたものです。随時掲載しますので、ご高覧いただき、幅広くコメントを歓迎します。

なお、DPの内容はすべて執筆者の個人的見解であり、金融庁あるいは金融研究センターの公式見解を示すものではありません。

30年度ディスカッションペーパー

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ファイル 題名 執筆者 年月
DP2018-4
  (PDF:818KB)
金融機関による事業性評価の定着に向けた採算化にかかる分析・考察 金澤 一広
冨田 尚子
稲葉 誠
稲田 正樹
清水 祥行
2018年9月
DP2018-3
 (PDF:1.43MB)
先進的IT技術の進展に伴う証券市場の構造的変化(デジタライゼーション)と証券市場の公正性・透明性を確保するための考察 鮫島 洋一 2018年9月
DP2018-2
(PDF:5.71MB)
顧客本位の業務運営(Fiduciary Duty)にふさわしい金融商品販売のあり方 松本 大輔
前川 知英
2018年7月
DP2018-1
(PDF:691KB)
地域経済と貸出行動―日本における地方部の県(X県)を事例にした経済変数と個別金融機関要因の定量的評価― 平賀 一希
真鍋 雅史
2018年6月

ディスカッションペーパー要旨

DP2018-4
「金融機関による事業性評価の定着に向けた採算化にかかる分析・考察」

   金澤 一広   金融研究センター特別研究員
   冨田 尚子・稲葉 誠・稲田 正樹・清水 祥行
   

 現在、地域経済の活性化と金融機関の安定した顧客基盤と収益の確保という視点で、顧客との「共通価値の創造」の構築に向けた取組みとして、"事業性評価"が多くの地域金融機関に認識されつつある。一方、事業性評価の「ビジネスモデルとその具体的な効果」については未だ不明確であり、更なる取組みの定着に向けては、事業性評価が顧客企業・地域経済及び地域金融機関自身に資する持続可能なビジネスモデルとして成立することの蓋然性を示す必要がある。また、銀行経営全体における事業性評価の位置付け/狙いは、各地域金融機関の経営方針/経営戦略によってもそれぞれ異なるため、事業性評価の定着を進める上では、経営方針/経営戦略との関係性を踏まえた取組みが必要となる。
 そのため、本稿では、複数の地域金融機関の協力の下、銀行経営における事業性評価の位置付け/狙いによって、どのようなビジネスモデルが存在するかを明らかにすると共に、各ビジネスモデルの定量・定性的な効果を分析している。また、事業性評価の取組みを実現する為の必要条件の把握を通じ、事業性評価の要諦と水平展開可能性を調査した。
 調査の結果、事業性評価を徹底している地域金融機関では定量面・定性面ともに一定の効果が見受けられた。一方、効果実現に向けては、事業性評価の位置付け/狙いの明確化や経営トップ主導での改革の徹底、中長期的な取組み等が必要であることも示唆された。


キーワード:事業性評価、地域金融機関、銀行経営、ビジネスモデル、定量・定性効果

DP2018-3
「先進的IT技術の進展に伴う証券市場の構造的変化(デジタライゼーション)と証券市場の公正性・透明性を確保するための考察」

   鮫島 洋一   金融研究センター特別研究員
   

 ブロックチェーン/分散型台帳技術(Distributed Ledger Technology、以下「DLT」という。) やAI等、FinTechの進展に伴い、市場環境が変化し、取引の実態把握が困難となる等、市場監視当局(以下「当局」という。)の業務にも大きな影響が出ることが想定される。そうした将来動向に鑑み、当局が市場監視機能の強化として取り組むべき課題を具体的に把握するために、先進的IT技術の将来動向及び制度的・技術的な諸問題を考察する必要がある。
 本研究は、上記の観点から、「発行・流通市場」及び「資金取引市場」における内外の先進事例に鑑み、将来想定される課題及び組み込むべき技術的な整備について整理した。
「発行・流通市場」においては、昨今のアルゴリズム取引等の増加した株式市場における不公正取引の監視手法の提言と、DLTという先進技術を用いた事例から証券市場の構造的変化を想定し、市場監視における課題及び対応要件を整理した。また、対応要件を達成するための当局、運営側及び第三者機関との関係のあり方について提言している。
 「資金取引市場」においては、DLTやOpen API(銀行のシステムの接続仕様を外部に公開する仕組み)等の先進技術を用いた事例からトレーサビリティの可能性に言及し、資金移動の把握を用いた疑わしい取引の累進的及び逆進的な特定方法について提言している。
 また、包括的かつ横断的に監視できる可能性に言及するとともに、当該実現を可能にするためのプロセスとデータのデジタル化と標準化(以下、「デジタライゼーション」という。)やそのデジタライゼーションへの環境変化を促すこと(以下、「デジタルトランスフォーメーション」という。)を念頭に将来のあるべき姿について提言している。


キーワード:FinTech、DLT、Open API、証券市場の構造的変化、市場監視機能の強化、デジタライゼーション、デジタルトランスフォーメーション

DP2018-2
「顧客本位の業務運営(Fiduciary Duty)にふさわしい金融商品販売のあり方」

   松本 大輔   金融研究センター特別研究員
   前川 知英 金融研究センター特別研究員


 「貯蓄から投資(資産形成)へ」が叫ばれて久しいが、家計調査(総務省統計局)や金融リテラシー調査(金融広報中央委員会)等から見る限り、家計部門の資産全体に占める投資資産の比率はそれほど上昇していない。家計部門における投資資産の積み増しを妨げている原因を探るため、投資意識、金融リテラシー及び金融機関による顧客本位の業務運営(Fiduciary Duty)の実践度等に関する包括的なアンケート調査(インターネット調査)を行った。
 その結果、家計部門の投資を妨げている要因として、金融リテラシーの低さによる抵抗感や、信頼できる専門家不在による不安感、金融機関から推奨される商品が必ずしもニーズに合ったものばかりではないと感じていること、等が浮かび上がってきた。
 また、投資経験がありかつ投資資産積み増しに積極的な層や、投資経験は無いものの資産形成の必要性を認識している層の特徴分析のほか、金融機関から受けているサービスとその効果、また受けたサービスと金融機関への満足度の関係性の分析等を実施した。
 調査・分析の結果、金融機関側が顧客のニーズを丁寧に聞き、ニーズに合った商品を提案すること、また、銘柄分散や時間分散、定期的な資産運用診断等の中身の濃い提案の時間を設けることが、顧客の金融リテラシーの向上や、投資商品の購入開始あるいは積み増しを促進するうえで重要であることが浮き彫りになった。


キーワード:顧客本位の業務運営、金融リテラシー、家計部門アンケート、投資意識調査

DP2018-1
「地域経済と貸出行動―日本における地方部の県(X県)を事例にした経済変数と個別金融機関要因の定量的評価―」

   平賀 一希   金融研究センター特別研究員
   真鍋 雅史 金融研究センター特別研究員


 本研究は、日本のとある県(X県)の金融機関別支店別の貸出残高データを用いて、地域金融機関の貸出行動を定量的に分析しようとするものである。ここでは、X県を10地域に分割し、地域ごとに集計をした計数を用いて分析を行う。貸出残高と預貸率を人口や所得や生産の代理変数である住民税収などで説明される地域の社会経済変数や、地価の代理変数である固定資産税収で回帰した上で、金融機関別の個別効果を捉えた。推定された金融機関別の個別効果は、経済・地域要因および地価ないしは不動産担保価値に依存しない貸出を含んでいると考えられる。すなわち、貸出態度が積極的ないしは経営努力を行っているとされる金融機関の個別効果は相対的に大きな正の値を持っており、本研究による定量的接近は一定の意味があると考えられる。同時に、寡占度指数(ハーフィンダール・ハーシュマン指数)や不良債権比率の影響を分析したが、いずれも有意な結果は得られていない。このことは、地域金融機関の合併は地域金融市場の貸出を抑制もしなければ、規模の経済、貸出を積極的に行ったとしても必ずしも不良債権を増大させるとは限らないこと、といったことが示唆される。


キーワード: 地域金融機関、貸出行動、土地担保融資

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