証券取引等監視委員会メ-ルマガジン(第30号)平成25年5月1日
証券監視委ホームページ http://www.fsa.go.jp/sesc/index.htm

<目次>

1.新着情報

2.市場へのメッセージ

3.コラム


1.新着情報


◎告発の実施状況を更新しました。
http://www.fsa.go.jp/sesc/actions/koku_joukyou.htm


2.市場へのメッセージ


◆不公正ファイナンスについて(その3)◆

今号では、不公正ファイナンスの告発事例のうち、現物出資制度を悪用した2 つの事件をご紹介します。

現物出資とは、株式会社の設立や新株の発行にあたり、金銭以外の財産をもって出資に充てることをいいますが、現物出資における財産の評価手法等は様々であり、出資者は価値の低い財産を不当に高く評価し、株式を取得するなど、会社に損害を与える場合があります。そのような現物出資制度を悪用し、不動産の現物出資により偽計を用いた事例で、証券監視委が告発したものは2つありますので、以下にそれぞれご紹介します。

○(株)NESTAGE関係者らによる現物出資制度を悪用した偽計事件

まず、平成23年8月2日に告発した(株)NESTAGE(以下「NESTAGE」といいます。)関係者らによる現物出資制度を悪用した偽計事件です。本件において、犯則嫌疑者は、NESTAGEの上場廃止を回避するため、募集株式の払込金額として予定されていた額に相当する価値のない現物出資財産(宿泊施設等)による第三者割当増資を行い、適正な鑑定評価を受けた不動産が現物出資として給付される旨の虚偽の内容を含む公表を行っていました。証券監視委は、金融商品取引法第158条(偽計)等違反で計7名の犯則嫌疑者を告発しました。NESTAGE株が上場廃止になったのはもちろんのこと、本件に関連して、不動産鑑定士及び不動産鑑定業者に国土交通省から業務停止等の行政処分等が下されています。(本件については公判係属中)

○(株)セイクレスト関係者らによる現物出資制度を悪用した偽計事件

また、同じく現物出資制度が悪用された(株)セイクレスト(以下「セイクレスト」といいます。)の事件では、セイクレストの代表者と同社の資金調達業務を支援していたコンサルタントの2名の犯則嫌疑者が、セイクレストの上場廃止を回避するため、募集株式の払込金額に相当する価値のない山林約8万平方メートルによる現物出資を含む第三者割当増資を行い、当該現物出資等に係る虚偽の内容を含む公表等を行っていた、として証券監視委は、昨年12月18日に金商法第158条(偽計)等違反で大阪地検に告発しました。増資の引受先は上記コンサルタントが実質的に支配している会社で、同社は引き受けた株式を直ちに売却し、犯則嫌疑者は利益を得た一方、その後、現物出資された山林は全く販売されず、セイクレストは巨額の負債を抱えて破産し、上場廃止となっています。(本件については公判係属中)

不公正ファイナンスの事例としては、他にも、中国企業がいわゆる「裏口上場」 を企図して虚偽の第三者割当増資を行っていた(株)セラーテムの事案などがあります。

証券監視委は、今後も引き続きその手法や関与者が多様化している不公正ファ イナンスについて、広い視野をもって監視を行い、悪質な事案については摘発に 努めていくこととしています。

◆信用格付業者に対する検査結果及び信用格付業制度に係る建議について◆

1.信用格付業者について

信用格付とは、債券等の証券やその発行体について、元本や利払い等が契約どおりに行われないリスクを簡単な記号等(AAA等)で表示したものです。この信用格付を決定して、広く公表等をする行為を業として行うことにつき、金融商品取引法上の登録を受けた者を信用格付業者といいます。信用格付は、金融・資本市場において広範に利用されているところであり、投資者の投資判断に重大な影響を及ぼすことから、信用格付業者に対しては、法令により、様々な規制が課せられています。

平成21年6月の金商法改正によって、平成22年4月より、信用格付業者に対する規制が導入され、同年9月より、5グループ7社が信用格付業にかかる登録を受け、信用格付業者として業務を行っています。

2.信用格付業者に対する証券監視委の対応

金商法における信用格付業者に対する規制の目的は、信用格付業者に、市場における情報インフラとしての機能を適切に発揮させ、ひいては国民経済の健全な発展及び投資者の保護に資することにあります。

証券監視委は、平成23年4月より、順次、信用格付業者に対する検査を実施し、問題点が認められた場合には、検査対象先にこれを通知し、必要に応じて監督部局に対し適切な措置を講じるよう要請してきました。

本年2月に、全信用格付業者に対する検査が一巡したことを踏まえ、今回、証券監視委は、これまでの検査結果の概要を取りまとめた「信用格付業者に対する検査結果」を公表するとともに、信用格付制度に係る建議を実施し、当該建議に係る公表を行いました。

  • (1)信用格付業者に対する検査結果の公表について

    全信用格付業者に対する検査の結果、信用格付業を公正かつ的確に遂行するための業務管理体制等に問題点が認められたため、各検査対象先に対して問題点の通知を行いました。

    これらの信用格付業者に対する検査結果の概要については、証券監視委のウェブサイトにおいて、「信用格付業者に対する検査結果について」(PDFwww.fsa.go.jp/sesc/kensa/shinyou-01.pdf)として掲載を行っております。

    なお、具体的な指摘事項につきましては、「信用格付業者に対する検査における主な指摘事項」(PDFwww.fsa.go.jp/sesc/kensa/shinyou-02.pdf)をご参照ください。

    特に、スタンダード&プアーズ・レーティング・ジャパン㈱については、社内で決定された信用格付と異なる信用格付を公表等しているなど、信用格付業務の運営状況について、公益又は投資者保護上、重大な問題が認められたため、平成24年12月11日に、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、

    行政処分を行うよう勧告(http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2012/2012/20121214-3.htm

    を実施しました。

    (参考)「証券取引等監視委員会メ-ルマガジン(第26号)平成24年12月28日付」(http://www.fsa.go.jp/sesc/message/20121228-1.htm

  • (2)信用格付業制度に係る建議について

    上述のとおり、信用格付は、投資者が投資判断を行う際の信用リスクの評価の参考として、金融・資本市場において広範に利用されており、投資者の投資判断に大きな影響を与えています。

    したがって、信用格付業者においては、信用格付の決定に係る業務を的確に実施するのみならず、社内で決定した信用格付について正しく公表等を行うことも非常に重要な業務であり、上記(1)のように、社内で決定された信用格付を公表等する際に、誤って異なる信用格付を公表等している事例は、信用格付業者の業務運営として極めて不適切です。

    しかしながら、現行の制度では、信用格付を正確に公表等することを直接義務付ける規定が存在しないため、証券監視委は、公益又は投資者保護のため必要かつ適当と認められるとして業務改善命令に係る規定(金商法第66条の41)を適用し、監督部局に対し、行政処分を求める勧告を実施しました。

    さらに、証券監視委は、検査・調査の結果、必要があるときは、金融商品取引等の公正や投資者の保護などを確保するために必要と認められる施策について、内閣総理大臣及び金融庁長官に建議することができることから、これらの状況を踏まえ、平成25年3月29日、信用格付業者が信用格付の公表等を行う際に、その正確性の確保を直接求める制度の整備を求める建議(http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2013/2013/20130329-3.htm)を行いました。

    証券監視委としては、今回の建議に基づき、信用格付の公表等に係る正確性のルールが明確化されることにより、信用格付業者側の規制に係る予見可能性に資するとともに、適切な業務運営の確保が図られ、ひいては、信用格付を利用する投資者保護に繋がるものと考えています。


3.コラム
[東京証券取引所自主規制法人からの寄稿]


◆東京証券取引所自主規制法人における売買審査業務について◆

東京証券取引所自主規制法人(以下、「東証自主規制法人」といいます。)は、その自主規制業務の1つとして、株式会社東京証券取引所(以下、「東証」といいます。)が運営する市場に係る売買審査を行っています(本年7月16日(予定)からは株式会社大阪証券取引所(以下、「大証」といいます。)が運営する市場の売買審査も行います。)。

東証自主規制法人の売買審査部では、東証市場及び大証市場において「相場操縦」や「インサイダー取引(内部者取引)」などの不公正取引が行われていないか審査をします。具体的には、全ての取引についてシステムを駆使してモニタリングしており、不公正との疑念が持たれる取引を抽出し、証券会社及び上場会社への照会等を通じてさらに詳しく調査・確認していきます。審査の結果、不公正取引の疑念があると考えられるものについて、年間100件以上の案件について証券取引等監視委員会に報告しており、このような活動を通して、証券市場の信頼性・公正性確保に努めています。

また、売買審査部では、不適切な取引が発見された場合には必要に応じてこれに関与した証券会社に対し措置を講じるほか、東証COMLEC(平成23年4月28日付証券取引等監視委員会メ-ルマガジン (第6号)のコラムで掲載させていただいております。)によるコンプライアンス支援活動などを通じて、不公正取引の未然防止を図っています。

売買審査業務の活動状況については、東証自主規制法人の考査部の活動状況と合わせて、「東証Rコンプライアンス四季報」として、四半期ごとにその概要を取りまとめてホームページでご紹介しております。

なお、売買審査業務については、東証・大証に限らず、従前より名古屋・福岡・札幌の各証券取引所、証券取引等監視委員会及び日本証券業協会等、関係機関と連携することで、売買審査の実効性を高めており、今後もその連携をより一層深め、適時適切な売買審査を遂行することにより、証券市場の信頼性・公正性確保に努めてまいります。

東京証券取引所自主規制法人 売買審査部


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