証券取引等監視委員会メ-ルマガジン (第63号) 平成28年2月22日
証券監視委ウェブサイト http://www.fsa.go.jp/sesc/index.htm

<目次>

1.新着情報

2.市場へのメッセージ

3.コラム


1.新着情報



2.市場へのメッセージ


  • アーツ証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について

    証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、アーツ証券株式会社を検査した結果、平成28年1月29日、金融庁に対して行政処分を行うよう勧告いたしました(詳細は下記リンク参照)。

    (公表文)http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2016/2016/20160129-1.htm

    (参考資料)PDFhttp://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2016/2016/20160129-1/01.pdf

    【事案の概要等】

    アーツ証券は、株式会社オプティファクターが設立・運営する3社が発行する社債(いわゆる「レセプト債」)について、自ら投資家に販売したり、他の6つの証券会社の販売支援等を行っていましたが(3社債合計で発行残高は約227億円で、投資者数は約2470者でした(平成27年10月末現在))、オプティファクター及び当該3社は平成27年11月に破産手続開始決定を受けました。

    証券監視委が検査を行ったところ、当該3社においては、買い取った診療報酬債権等の残高が社債発行残高に比して著しく僅少であり、社債発行による調達資金が関連会社等に流用され毀損し、決算書に実態が不明な資産が多額に計上され、実在性のある資産は社債発行残高に比べて著しく僅少となっていました。

    アーツ証券の川崎社長は、こうした実態について、遅くとも平成25年10月頃までに、オプティファクターの児泉社長から相談等を受けて認識しており、これを意図的に秘匿・隠蔽して販売を継続しました。

    こうしたアーツ証券の行為は極めて悪質であり、証券監視委による行政処分の勧告と同日、関東財務局による登録取消処分が行われました。

    (公表文)http://kantou.mof.go.jp/rizai/pagekthp032102850.html新しいウィンドウで開きます

    なお、各財務局において検査を行っていた他の6つの証券会社についても、2月19日、金融庁に対して、行政処分を行うよう勧告いたしました(詳細は下記リンク参照)。

    (公表文)

    http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2016/2016/20160219-6.htm

    http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2016/2016/20160219-5.htm

    http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2016/2016/20160219-4.htm

    http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2016/2016/20160219-3.htm

    http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2016/2016/20160219-2.htm

    http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2016/2016/20160219-1.htm

  • 最近の取引調査に基づく勧告について

    証券監視委は、取引調査の結果に基づいて、以下の3事案(相場操縦2事案、内部者取引1事案)について課徴金納付命令勧告を行いました。

    • H28.1.29
    ディー・ディー・エス株式に係る相場操縦
    http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2016/2016/20160202-1.htm
    • H28.2.2
    Mipox株式に係る相場操縦
    http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2016/2016/20160202-2.htm
    • H28.2.2
    石山Gateway Holdings株式会社の社員からの情報受領者による内部者取引
    http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2016/2016/20160202-3.htm

    【相場操縦事案の概要等】

    • (1)DDS株式に係る相場操縦(見せ玉を利用した市場間を跨ぐ相場操縦)

      本件は、海外の投資運用業者(違反行為者)が、東証の前場立会取引開始前の注文受付時間帯に、約定させる意思のない大量の成行買い注文(いわゆる見せ玉)を多数の証券会社に分散発注して当該銘柄の寄前気配値段を人為的に引き上げ、その結果、同気配値段の上昇に追随してPTSで当該銘柄の株価が上昇した際に、この価格変動を利用して、保有していたDDS株式をPTSにおいて自己に有利な価格で売り抜けたという事案でした(その後、違反行為者が大量に発注していた「見せ玉」の取消し等を行い東証の寄前気配値段は急落しています)。

      本件について取引調査を行った結果、(a)違反行為者が違反行為の前日にDDS株式を買い付けていたこと、(b)DDS社が前日夜に公表した業績の下方修正を受けて当日の東証寄前気配値段が急落し、保有するDDS株式には含み損が発生する状況にあったこと、(c)今回の一連の取引により、損失を回避し売却益の獲得に成功していたこと、等が判明しています。

      金商法159条2項1号は「売買が繁盛であると誤解させ、又は、相場を変動させるべき一連の売買の委託等」をすることを禁止していますが、今回、違反行為者が人為的に引き上げた「寄前気配値段」は、上場銘柄の最新の需給動向を客観的に反映したものとして東証が情報開示しているものであり、投資者にも投資判断に有用なものとして幅広く利用されていることから、当然に「相場」に該当するものです。

      違反行為者は、大量の買い見せ玉を発注することによって「寄前気配値段」を大幅に引き上げていることから、この行為は「相場を変動させるべき一連の売買の委託等」に該当することは明らかですし、DDS株式の取引が「繁盛であると誤解」させるために行われたものであると認められたことから、違反行為者に対し課徴金の納付を命ずるよう内閣総理大臣等に勧告を行ったものです。

      証券監視委は、東証や受託証券会社の売買審査部門等とも適切に連携しながら効率的・効果的な市場監視に努めているところであり、今回把握された多数の証券会社に分散発注された「見せ玉」についてもその過程で把握されたものです。近時、金融商品取引所の寄前気配値段を人為的に操作し、これと連動するPTSで売買差益を稼ぐ手法の取引が認められており、昨年3月以降、勧告対象となったものは3件目となりますが、このような取引は、市場の公正性に対する投資者の信頼を著しく損なうものであり、今後とも東証を含む市場関係者と適時・適切に連携しながら厳正に対応してまいりたいと考えております。

    • (2)Mipox株式に係る相場操縦(仮装売買や見せ玉を利用した相場操縦)

      本件は、個人投資家(違反行為者)が、自己対当売買(仮装売買)や買い上がり買付け、見せ玉等の手法を使って人為的にMipox株価の引上げと出来高を増やすことにより、他の投資者の売買注文を誘引し、あらかじめ安値で買い付けていた当該株式を高値で売り抜けたという事案でした。

      なお、当該銘柄については、当初の予想に反して株価が下落したため違反行為者の保有株にも含み損が発生する状況にありましたが、違反行為者が行った一連の売買取引の結果、損失回避ができただけでなく、少額ながら売却益を確保することにも成功していたことが判明しています。

      【内部者取引事案の概要等】

      • 石山Gateway Holdings(株)の社員からの情報受領者による内部者取引(バスケット条項を適用)

        本件は、石山Gateway Holdings(株)(以下「石山GH)」という。)の社員甲から、同人が職務に関して知った、石山GHが有価証券報告書の虚偽記載の嫌疑事実により証券監視委の強制調査を受けた旨の、「同社の運営、業務又は財産に関する重要な事実であって投資者の投資判断に著しい影響を及ぼす事実」の伝達を受けた知人(違反行為者)が、当該重要事実の公表前に、同社株式を売却したという事案でした。

        本件の特徴は、「有価証券報告書の虚偽記載の嫌疑事実により証券監視委の強制調査を受けたこと」が、金商法166条2項4号の規定する「上場会社の運営、業務又は財産に関する重要な事実であって投資者の投資判断に著しい影響を及ぼすもの」(いわゆるバスケット条項)に該当すると認定していることにあります。

        「証券監視委の強制調査を受けたこと」は、法166条2項1~3号に列挙された重要事実には該当しませんが、上場会社である石山GHが「有価証券報告書の虚偽記載の嫌疑で証券監視委の強制調査を受けた」ことは、(a)同社の業績内容の信用性や会社運営の健全性に重大な疑義を生じさせるものであること、また、(b)投資者の投資判断にも著しい影響を与えるものであること(実際に、重要事実を公表した翌日以降、同社の株価は二日連続のストップ安となっている)を踏まえ、法166条2項4号のバスケット条項を適用することが適当であると判断したものです。今事務年度においてバスケット条項を適用した事案は、本件で3件目となります(概要は以下に記載した参考のとおり)。

        なお、石山GHの社員甲と違反行為者は古くからの知人として定期的に会って飲食をともにしており、本件強制調査が行われた当日夜に会食をすることが予定されていましたが、社員甲は強制調査により会食に出席することができなくなったため、違反行為者に対して出席できない旨を告げる際、「証券監視委の強制調査を受けている」ことについても告げていました。また、違反行為者は、この情報が公表された場合には石山GHの株価が急落し多額の損失が発生すると考えて当該重要事実の公表前に保有する同銘柄を全て売却したものであり、これにより損失回避に成功しただけでなく、若干の売却益を得ていたことが判明しています。

      (参考)今事務年度にバスケット条項を適用した事案の概要

      • ○スカイマーク元役員による内部者取引事案(H27.10.9勧告)

        スカイマークの元役員が、在任当時に以下の事実を職務に関して知り、当該事実が公表される前に保有していたスカイマーク株式を全株売却していた事案。

        ⇒スカイマークが、A380型機の購入契約に基づく前払金約8億円をエアバス社に支払わなかったことに対して、エアバス社が発出した、契約の解除の前提となる催告書がスカイマークに到達したことで契約解除がほぼ確実になった事実。

        ⇒債務不履行によって本件契約を解除された場合には、エアバス社に支払済みの前払金合計約260億円が返還されず減損損失になる等、スカイマーク社の事業継続に重大な疑義が生じる状況にあったことが調査で判明。

        http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2015/2015/20151009-1.htm

      • ○アールテック・ウエノとの契約締結者の職員による内部者取引事案(H27.11.25勧告)

        アールテック・ウエノとの間で治験契約を締結していた法人の職員が、同契約の履行に関して、同社が開発中であった新薬の第3相臨床試験の中止という事実を知り、当該事実が公表される前にアールテック株式を信用取引を利用して売却していた事案。

        ⇒本件に関しては、(a)新薬の希少性・特殊性が認められていたこと、(b)本臨床試験の成功が客観的に期待されている状況にあったこと、(c)アールテック社が新薬の有望さを投資者にアピールしていたこと、(d)本件新薬開発に対して市場も好意的に反応していたこと、が調査で判明。

        ⇒本件は「新製品の企業化(又は中止)」(法166条2項1号カ)に該当する可能性があったが、アールテック社は、本件新薬の臨床試験を中止しているものの、本件新薬の開発・研究を完全にあきらめたわけではないため当該条項には該当しないことから、バスケット条項を適用すべきと判断。

        http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2015/2015/20151125-1.htm


3.コラム

[日本証券業協会からの寄稿]


◆自主規制規則の見直しに関する検討結果等について公表しました◆

  • 本協会では、平成23年度から、定期的(年1回)に協会員等に対して自主規制規則の見直し等に関する意見・要望を募集し、寄せられた意見・要望の内容を整理・検討のうえ、必要に応じて規則所管分科会等において審議を行い、見直しを行うこととしています。

  • 平成27年度においても昨年4月21日から5月20日までの間、自主規制規則の見直し等に関する意見・要望を募集し、その間に寄せられた提案内容(5項目)を整理のうえ、検討に着手する事項(4項目)を決定し、7月以降順次検討して参りました。検討開始から約6か月が経過したことから、これまでの検討結果(又は検討状況)について昨年12月15日に公表しました。

  • 検討に着手した事項は、(1)店頭取扱有価証券の「確認書」に関する事項、(2)外国投資信託証券目論見書等の提出義務に関する事項、(3)インターネットを利用した株式等売買受注時における本人確認に関する事項、(4)番号法施行に伴う社内規定モデルに関する事項で、このうち(2)及び(4)は検討を終了し、(1)及び(3)は引き続き検討中です。

  • 上記検討結果(又は検討状況)については、日本証券業協会のホームページをご覧ください。

    PDFhttp://www.jsda.or.jp/katsudou/kentoukekka.pdf新しいウィンドウで開きます

  • 本件に関するお問い合わせ先:日本証券業協会自主規制企画部

    (TEL 03-3667-8470)


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