証券取引等監視委員会メ-ルマガジン (第111号)

平成30年4月27日
証券監視委ウェブサイト http://www.fsa.go.jp/sesc/index.htm

 

<目次>

市場へのメッセージ

1.株式会社エスクロー・エージェント・ジャパン役員から情報を受領した者による内部者取引違反行為及び当該役員による重要事実に係る伝達違反行為について

2.ミサワホーム株式会社役員から情報を受領した者が所属する同社子会社の役員によるミサワホーム株式に係る内部者取引違反行為について

3.株式会社JG-company、株式会社Master及び株式会社S&F並びにその役員3名の金融商品取引法違反行為に係る裁判所への申立てについて


市場へのメッセージ


1.株式会社エスクロー・エージェント・ジャパン役員から情報を受領した者による内部者取引違反行為及び当該役員による重要事実に係る伝達違反行為について
  
 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、取引調査の結果に基づいて、以下の事案について課徴金納付命令勧告を行いました。
 
・平成30年3月16日 株式会社エスクロー・エージェント・ジャパン役員から情報を受領した者による内部者取引違反行為及び当該役員による重要事実に係る伝達違反行為
         ( https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2018/2018/20180316-1.htm
 
【事案の概要】

 本件は、課徴金納付命令対象者(以下、本節において「対象者」といいます。) が2名の事案です。

・対象者(1)について
 対象者(1)は、株式会社エスクロー・エージェント・ジャパン(以下「エスクローAJ」といいます。)の役員であった対象者(2)から、同人がその職務に関し知った、

ア.同社の業務執行を決定する機関が株式の分割を行うことについての決定をした旨の重要事実(以下「本件事実1」といいます。)の伝達を受けながら、本件事実1の公表前に、自己の計算において、エスクローAJ株式を買い付け

イ.1)同社の属する企業集団の平成28年3月1日から平成29年2月28日までの事業年度(以下「平成29年2月期」といいます。)の売上高について、平成28年6月17日に公表がされた、直近の予想値に比較して、同社が新たに算出した予想値において、投資者の投資判断に及ぼす影響が重要なものとなる差異が生じた旨の重要事実(以下「本件事実2」といいます。)、2)同社の平成29年2月期の剰余金の配当について、平成28年4月8日に公表がされた前事業年度の実績値に比較して、同社において新たに算出した平成29年2月期の予想値において、投資者の投資判断に及ぼす影響が重要なものとなる差異が生じた旨の重要事実(以下「本件事実3」といいます。)の伝達を受けながら、本件事実2及び3の公表前に、自己の計算において、エスクローAJ株式を買い付けたものです(インサイダー取引違反行為)。

 
・対象者(2)について
対象者(2)は、エスクローAJの役員でしたが、本件事実1から3(以下「本件事実等」といいます。)
を、本件事実等の公表前にエスクローAJ株式の買付けをさせることにより対象者(1)に利益を得させる目的を持って伝達したものであり、上記のとおり対象者(1)は本件事実等の公表前に、自己の計算において、エスクローAJ株式を買い付けています。

 
【事案の特色等】

 本件は、エスクローAJの役員であった情報伝達者(対象者(2))から公表前に入手した重要事実を利用しインサイダー取引を行ったものであり、課徴金納付命令勧告の対象となった重要事実は、合計3件にも及んだ悪質な事案です。
 複数の重要事実による違反行為は、パイオニア事案(3重要事実、平成27年9月8日勧告)、ピクセラ事案(3重要事実、平成28年7月12日勧告)、ロングライフホールディング事案(4重要事実、平成29年2月10日勧告)、ジャパンインベストメントアドバイザー事案(3重要事実、平成29年12月15日勧告)などがあります。証券監視委では、調査対象者の属性に応じて過去の取引にも幅広く目を向けるなど、深度ある調査を実施しています。
 また本件は、エスクローAJの役員であった者による重要事実に係る伝達違反行為についての勧告事案でもあります。本来、上場会社の役員であれば情報管理体制を整備し、役職員へ教育する立場にあるはずです。しかしながら、本件対象者(2)である役員自ら、利益を得させる目的をもって知人に対して公表前の重要事実を複数回にわたり伝達したものであり、上場会社役員の行動としては、非常に問題がある行為です。利益を得させる等の目的をもって、未公表の重要事実等を伝達した場合、伝達者は取引により利益を得ていない場合であっても、伝達された者が行った取引金額に応じて課徴金が課せられることになり得ます。自身のインサイダー取引だけではなく、情報伝達行為も課徴金納付命令の対象となることを十分ご理解いただきたいと思います。
 なお、情報伝達者が同一人物へ複数回行った伝達違反行為について勧告した事例は、本件が初です。
 本件が広く周知されることにより、インサイダー取引の抑止効果が発揮されることを期待しています。

 

2.ミサワホーム株式会社役員から情報を受領した者が所属する同社子会社の役員によるミサワホーム株式に係る内部者取引違反行為について

 
 証券監視委は、取引調査の結果に基づいて、以下の事案について課徴金納付命令勧告を行いました。
 
・平成30年3月16日 ミサワホーム株式会社役員から情報を受領した者が所属する同社子会社の役員によるミサワホーム株式に係る内部者取引違反行為
         ( https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2018/2018/20180316-2.htm
 

【事案の概要】

 本件は、トヨタホーム株式会社(以下「トヨタホーム」といいます。)が平成28年11月22日に公表した、トヨタホームによるミサワホーム株式会社(以下「ミサワホーム」といいます。)の株式に対する公開買付けの実施に関するインサイダー取引です。
 本件の課徴金納付命令対象者(以下「対象者」といいます。)は、ミサワホームの子会社であるA社の役員であった者ですが、その職務に関し、A社の役員丙がミサワホームの役員乙から職務上伝達を受けた、トヨタホームの業務執行を決定する機関がミサワホーム株式の公開買付けを行うことについての決定をした旨の公開買付けの実施に関する事実(以下「本件事実」といいます。)を知りながら、本件事実が公表される前に自己の計算において、ミサワホーム株式を買い付けたものです(インサイダー取引違反行為)。
 

【事案の特色等】

 平成17年4月の課徴金制度導入後、インサイダー取引による課徴金勧告を行った事案を重要事実等別に分類した場合、「公開買付け等事実」が一番多い結果となっていることは、これまでのメルマガでもお伝えしているとおりですが、本件も「公開買付け等事実」を知った者によるインサイダー取引です。
 公開買付けについては、これまでのメルマガで繰り返しお伝えしているところですが、公開買付けの当事者である買付企業や買付対象会社のみならず、コンサルティング会社や金融機関など多くの関係者が関与すること、また、当事者間での検討開始から最終的な合意・公表までに相当な時間を要することから、他の重要事実に比べてインサイダー取引が行われやすいとの指摘があります。繰り返しになりますが、公開買付けに関わる全ての関係者において厳正な情報管理に努めることが強く求められていると言えます。
 本件は、公開買付けの当事者である買付対象会社(ミサワホーム)の子会社の役員によるインサイダー取引違反行為です。上記記載のとおり、公開買付けについては多くの関係者が関与する中、当事者のみならず、その子会社、関係会社においても、役職員によるインサイダー取引を招かないように、インサイダー情報を適切に管理し、役職員に対するインサイダー取引の研修、教育等を通じて未然にインサイダー取引を防止する体制の構築をお願いしたいと思います。
 本件が広く周知されることにより、インサイダー取引の抑止効果が発揮されることを期待しています。
 

3.株式会社JG-company、株式会社Master及び株式会社S&F並びにその役員3名の金融商品取引法違反行為に係る裁判所への申立てについて

 
 証券監視委は、平成30年3月2日、東京地方裁判所に対して、株式会社JG-company、株式会社Master及び株式会社S&F(以下、併せて「被申立人会社ら」といいます。)並びにその役員3名(以下、被申立人会社らとその役員3名を併せて「被申立人ら」といいます。)に金融商品取引法違反行為の禁止及び停止を命ずるよう申立てを行いました(詳細は下記リンク参照)。
 
・平成30年3月2日 株式会社JG-company、株式会社Master及び株式会社S&F並びにその役員3名の金融商品取引法違反行為に係る裁判所への申立て
         ( https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2018/2018/20180302-1.htm
 
【事案の概要】
 被申立人らは、被申立人会社らの従業員を代表者として、多数の実体のない会社を設立し、その名義で、1)一般投資家に対して電話等で投資顧問契約(有料で株価の上昇が見込まれる国内株式の銘柄の情報の提供を受けることができる契約)の締結の勧誘を行い、契約を締結した一般投資家に対して株価の上昇が見込まれる国内株式の銘柄の情報を提供する事業や、2)一般投資家に対して海外のFX取引業者を紹介し、そのFX取引業者との間のFX取引をあっせんする事業を行っていました。
 上記1)2)の事業を行う場合には、金融商品取引法上の登録(1)については投資助言・代理業の登録、2)については第一種金融商品取引業の登録)を受ける必要がありますが、被申立人らは、この登録を受けることなく、上記の事業を行っていました。
 上記1)2)の事業を行う上でその名義が使われていた実体のない会社に対しては、関東財務局等から、無登録で金融商品取引業を行っているとして、度々警告が出されるなどしていましたが、被申立人らは、その度に新たな実体のない会社を起ち上げるなどして、上記の事業を続けていました。その結果、被申立人らは、これまでに、1)の事業については延べ約3,700名の一般投資家から約37億5,000万円の情報提供料を得ており、また、2)の事業については延べ約1,100人の顧客を海外のFX取引業者に紹介し、紹介先のFX取引業者から約3,200万円の手数料を得ていました。
 被申立人らに対しては、平成30年3月29日に、東京地方裁判所から、金融商品取引法違反行為の禁止及び停止を命ずる決定が出されています。
 証券監視委においては、引き続き、関係機関とも連携しつつ、無登録業者に対して厳正に対処してまいります。投資者の皆様におかれては、無登録業者と取引を行うことがないように、注意してください。

 



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