証券取引等監視委員会メ-ルマガジン (第124号)

平成31年3月20日
証券監視委ウェブサイト
https://www.fsa.go.jp/sesc/index.htm

 

<目次>
1) 新着情報
2)市場へのメッセージ
1. 犯則調査における証拠収集・分析手続の整備についての建議
2. エーアイトラスト株式会社に対する検査結果に基づく勧告について
3. 最近の開示検査に基づく勧告について
・株式会社ディー・エル・イーにおける有価証券報告書等の虚偽記載


1) 新着情報


◎株式会社ソルガム・ジャパン・ホールディングスに係る虚偽有価証券報告書提出事件の告発について
https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2019/2019/20190320-1.htm


2) 市場へのメッセージ


1. 犯則調査における証拠収集・分析手続の整備についての建議

 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、平成31年2月26日、金融庁設置法第21条の規定に基づき、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、犯則調査における証拠収集・分析手続の整備についての建議を行いました。
https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2019/2019/20190226-1.htm

(注)建議は、証券監視委が、検査・調査等の結果把握した事項を総合分析した上で、法規制や自主規制ルールの在り方等について証券監視委としての見解を明らかにし、これを行政や自主規制機関が行う諸施策に反映させようとするものであり、証券監視委の行う建議は、規制当局等の政策対応の上で、重要な判断材料として扱われます。

【建議の概要】

 高度情報化の進展に伴い、近年コンピュータを利用した犯罪行為が増加を続けており、こうした事態に適切に対処するため、金融商品取引法上の犯則調査においても、電磁的記録等の証拠収集・分析を行う必要性が高まっています。

 しかし、金融商品取引法には、刑事訴訟法、国税通則法等と同様の電磁的記録に係る差押えの規定が導入されていません。

 こうした状況に鑑み、証券監視委は、「適時・的確な証拠収集・分析手続を可能とする観点から、金融商品取引法に必要な規定を整備する等、適切な措置を講ずる必要がある」との建議を行いました。

 金融庁において、当該建議に基づいた適切な対応がとられることを期待します。


2. エーアイトラスト株式会社に対する検査結果に基づく勧告について

 証券監視委は、平成31年2月22日、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、エーアイトラスト株式会社(以下本節において「当社」といいます。)に行政処分を行うよう勧告いたしました。
https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2019/2019/20190222-1.htm

【事案の概要等】

 当社が取扱うファンドの取得勧誘等に関して、平成30年12月7日付で行政処分勧告を行った問題点
https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2018/2018/20181207-2.htm
に加え、以下の問題が認められました。

・高速道路事業を貸付対象事業とするファンドについて、あたかも借入人が高速道路関係工事の発注を受けているかのような表示をしていたが、実際には、借入人が発注を受けた事実はなく、高速道路関係の工事受注を前提とした資金使途のための貸付けは当初から行われていなかった。

・公共事業に係るコンサルティング業務を貸付対象事業とするファンドについて、あたかも借入人において公共事業プロジェクトに対するコンサルティング業務が行われるかのような表示をしていたが、対象となる公共事業プロジェクトが存在せず(高速道路事業:借入人において受注されていない、除染事業:事業自体が存在しない)、公共事業プロジェクトに対するコンサルティング業務等の実施を前提とした資金使途のための貸付けは当初から行われていなかった。

・燃料卸売事業を貸付対象事業とするファンドについて、初年度売上に関し、「30億円をボトムラインとして」と記載しているところ、これについては何ら根拠の無いものであり、工事の実施状況等にかかわらず、最低でも30億円の売上が予定されているかのような誤解を生ぜしめるべき表示となっていた。

・事業の実態を十分確認することなく、ウェブサイト上に資金使途や返済原資等を具体的に表示し、取得勧誘を行っていた。また、貸付金がウェブサイトに表示した資金使途どおりに使用されているかについて十分な確認を行っていなかった。その結果、平成29年2月から同30年11月までの募集総額約52億円のうち、少なくとも約15億8千万円が、各ファンドの案件紹介等に中心的な役割を果たしていた山本幸雄取締役(平成30年10月当社取締役就任)が実質的に支配する法人に流出していた。

 このように、投資者保護上問題のある行為に対しては、今後も厳正に対処していきます。

 なお、当社に対しては、平成31年3月8日に、関東財務局長から登録取消し及び業務改善命令の行政処分が発出されています。
https://lfb.mof.go.jp/kantou/kinyuu/pagekthp032000813.html


3. 最近の開示検査に基づく勧告について

・株式会社ディー・エル・イーにおける有価証券報告書等の虚偽記載

 証券監視委は、株式会社ディー・エル・イー(以下本節において「当社」といいます。)における有価証券報告書等の虚偽記載について検査を行った結果、下記のとおり、有価証券報告書等に重要な虚偽記載が認められたことから、平成31年2月13日に内閣総理大臣及び金融庁長官に対して課徴金納付命令勧告を行いました。
https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2019/2019/20190213-1.html

【事案の概要】

 当社は、映像(TVアニメ等)の企画・制作事業において、売上の過大計上や映像の製作委員会に対する当社からの出資金に係る減損損失の不計上等の不適正な会計処理を行いました。

 これらにより、当社は、過大な当期純利益や純資産等を計上した連結財務諸表を記載した有価証券報告書及び四半期報告書を提出したほか、当該有価証券報告書を参照情報とする有価証券届出書を提出し、当該有価証券届出書に基づく募集により株券等を取得させました。

【不適正な会計処理の概要】

 当社が行った不適正な会計処理の概要は下記(1)~(4)のとおりです。

(1) 要件を満たさない売上計上による売上の過大計上等

[1] 当社が一部を出資する製作委員会から受託するTVアニメの企画業務に係る対価は、かつては、総製作費の20%相当額とすることで当該制作委員会の他の出資者と合意がなされ、締結する契約書において「総製作費の20%相当額」と明記されていました。しかしながら、事案が大型化・長期化し、出資者が増加する中で、相当数の事案については、当該対価を「総製作費の20%相当額」とすることについて他の出資者と合意することができなくなりました。そのため、当社は、企画業務の対価について他の出資者との合意がないまま、契約書を締結するようになりました。

 会計上、売上を計上する要件として、「役務提供の完了」及び「支払人及び受取人の間で役務提供に対する対価の合意・成立」が必要とされています。

 したがって、出資者との間で企画業務の対価について合意できなかった事案については、売上計上要件を満たさないため、売上を計上することができませんでしたが、当社は、「総製作費の20%相当額」を売上として計上し続け、売上の過大計上を行っていました。

[2] 当社は、上記[1]とは別に、TVアニメを制作し、完成したものを納品して制作売上を計上していました。しかしながら、当社は、決算月において、複数の作品のうちのほとんどが未完成でありながら、当該制作業務に係る対価の合意・成立はあったことから売上計上基準を満たしているとして、これら未完成の作品を含めた複数の作品分の制作売上を計上していました。

 上記[1]のとおり、「役務提供の完了」がなければ売上計上要件を満たさないため、当社は、完成(納品)した作品分についてのみ売上を計上すべきでしたが、未納分の映像作品に係る売上を前倒しで計上していました。

(2) 架空売上の計上による売上の過大計上

 当社は、劇場用アニメの製作委員会の出資者となることができず、当該劇場用アニメの企画・製作に出資者として参加することができなかったことから、

ア 当該劇場用アニメの製作委員会の出資者であるA社と契約して、A社から映像の制作業務を受託し、

イ A社から受託した映像の制作業務をA社の子会社でA社から映像の制作業務の委託を受けているB社に再委託する

ことによって、A社とB社との間の映像制作に係る取引に参加したとしていました。

 これにより、当社は、A社からの映像制作の受託に係る売上及びB社への映像制作の委託に係る外注費用をそれぞれ計上していました。

 しかしながら、当社はA社とB社との間の取引に形式的に参加したことにしただけであり、これらの取引は実体のない架空取引であるため、映像の制作業務に係る売上は架空売上であり、また、映像制作の委託に係る外注費用の計上も架空の費用計上でした。

(3) 自己取引に係る売上の計上による売上の過大計上

[1] 当社は、アニメの製作に関してC社・D社と共同で製作委員会を組成して出資するとともに、当社が当該アニメの企画・制作を行う旨の共同事業契約書を両社との間で取り交わしました。当社は、これに基づいて企画売上を計上し、その後、制作売上を計上しました。

[2] 当社は、当該企画・制作に関連したコンサルティング業務をC社に委託し、C社に支払う対価(コンサルティング料)として、外注費を計上していました。

[3] 当社は、当該企画・制作に関してD社に外注加工費を支払っていました。

 しかしながら、C社・D社は、当社に対してコンサルティング業務等の役務提供は行っておらず、その一方で、当社からC社・D社に支払われたコンサルティング料・外注加工費は、C社・D社から当該製作委員会に対して行われていた出資の原資となっていたことが認められました。つまり、C社・D社の当該製作委員会への出資は見せかけの出資であり、実質的には、当社が当該製作委員会へ全額出資していることから、会計上、当社と当該製作委員会は同一であると認められます。

 したがって、当社の当該企画・制作に係る売上は自己取引に基づくものであり、売上として計上することはできないものの、当社は当該売上を計上することによって、売上の過大計上を行っていました。

(4) 製作委員会への出資金に係る減損損失の不計上

 上記(1)及び(3)の事例では、製作委員会から当社が受託していたアニメの企画・制作業務について、当社は、本来であれば計上できない売上を計上するとともに、これら製作委員会へ出資を行っていました。

 したがって、当社は、これらの企画・制作業務からのキャッシュ・フローがそもそも見込める状況ではないことから、当初からこれら製作委員会への出資金に係る減損損失を計上すべきでしたが、計上していませんでした。

【不適正な会計処理が行われた原因・背景】

 検査の結果、本件の不適正な会計処理の主な原因・背景は、下記の[1]~[4]であると考えられます。

[1] 当社は、平成26年3月に東京証券取引所マザーズ市場に上場した後、平成28年4月に東京証券取引所市場第一部へ市場変更を行っています。この市場変更に当たっては、最近2年間(当社の場合、平成26年6月期及び平成27年6月期)の経常利益が総額5億円以上を達成する必要があり、当社はこの利益目標を達成することを優先する中で、売上の過大計上等を行いました。

[2] 内部監査担当者は経営管理部を兼任する1名のみであり、また、当社が市場第一部への市場変更のために会社全体として売上や利益目標の達成を優先させていた状況下であったため、深度ある内部監査が行われていませんでした。また、内部監査担当者と監査役との連携も図られていませんでした。

[3] 当社の経営陣等は、本件の不適正な会計処理の一部について認識していたものの、これらを是正する措置を取らなかったなど、当社におけるコンプライアンス意識が著しく欠如していました。

[4] 当社の経営管理部全員に対して売上等の申請・承認権限が付与されており、自ら売上等の申請・承認・確定を行うことにより、売上の恣意的な計上が行われているなど、当社における内部統制が適切に機能していない事例が認められました。

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