【特別企画】
 

神田秀樹金融審議会金融分科会第一部会長インタビュー

 アクセスFSAでは、去る1月31日(金)に、金融審議会の神田秀樹第一部会長にインタビューを行い、証券市場改革や決済機能保護策などについてお話をお伺いいたしました。インタビューの概要を以下のとおりお届けいたします。
 
(注 ) 東京大学の神田教授が部会長をされている金融審議会金融分科会第一部会においては、昨年12月、「証券市場の改革促進」を部会報告として取りまとめました。また、神田部会長は、昨年夏に決済機能の安定確保策について集中的に審議するために金融審議会金融分科会の下に設置された「決済機能の安定確保に関するプロジェクト・チーム」のメンバーでもあります。

── 昨年12月に金融審議会第一部会で取りまとめた「証券市場の改革促進」のポイントについて改めてご説明いただけますか。神田秀樹金融審議会金融分科会第一部会長
 「証券市場の改革促進については、昨年の8月に金融庁が「証券市場の改革促進プログラム」を発表しました。その背景はいろいろありますが、1996年11月から行われた「日本版金融ビッグバン」まで遡ると、その大きな柱は証券市場の活性化ということに尽きると思います。当時の言葉で言うと、「東京市場を2001年までにニューヨーク、ロンドン並に発達させる」ということを言って来たわけです。ただ、金融ビッグバンは、制度改革としては非常に大胆に行われたのですけれども、残念ながら実体経済の停滞や株式市場の低迷もあって、証券市場は実際には予想したようには活性化していないというのが事実です。そこで金融庁としては、証券市場を活性化するためには、更に体系的な施策を実施することが必要であると認識し、昨年8月に「証券市場の改革促進プログラム」を、実施の手順を含めて公表したのだと理解しています。その中で、金融審議会で審議すべき事項も多数ありました。特に法改正、その他の制度改正を伴うものがいくつもありましたので、それらについて出来るだけ早く審議・検討しようということで、金融審議会の第一部会で審議をしました。
 ポイントはいろいろありますが、大別して3つの分野に分けられますので、3つのワーキンググループを設けて検討をしました。第1はディスクロージャー制度の見直し、第2は取引所(証券取引所のほか金融先物取引所も含む)のあり方の改善、そして第3は証券会社などの市場仲介者に関する規制改革です。この3本柱で審議をしました。法改正が必要なものについては、今年の通常国会に関係諸法案を提出できるように、かなり急ピッチで審議しました。」

── 金融ビッグバン以来、大胆な制度改革をやってきたけれども、なかなか間接金融から直接金融へのシフトが進みません。金融ビッグバンでは、「これで舞台装置は整った。その上で演技者が見事な演技をしてくれることを期待したい」というようなことが言われました。ところが、なかなか期待されたようには演じてくれないわけですけれども、そこは日本人は投資者としてはやや臆病なところがあるのでしょうか。もしそうだとすれば今回、また舞台装置を改善してもなかなかうまくいかないということも懸念されるのですが。
 「非常に難しい問題で、そのような「証券市場の不信」の原因は一つではなく、実体経済の状態など複合的な理由があると思います。ただ、私は日本人の特性ということ自体が特に大きな原因であるわけではなく、原因は環境にあるのではないかと思っています。現在、個人金融資産は1,400兆円以上あると言われていますが、ゼロ金利時代がずっと続いてきたなかで、銀行預金を含めた預貯金の比率はなぜか上がってきているのです。ということは日本の国民は、金利がつかないのに、より多く預貯金に預けている。それはなぜかなのですが、恐らく証券市場に対する国民の信頼がないということだと思うのです。ですから、そこを解決することによって、私は国民の個人金融資産がもっと証券市場に流れるようになるというふうに思います。
 関連してもう1点だけちょっとお話しておきたいのは、金融ビッグバンもそうですけれども、日本の近年の改革は「もう銀行システムはやめて証券システム一本で行く」という話では決してないということです。重要なことは証券市場がもっと活性化するということです。なかなか活性化しない要因は、決して一つではありません。そもそも経済が不振なので、それを反映する企業の業績、そして、それを反映する株価も低迷している。お金の流れという観点から見ると、日本の証券市場はなぜか今一つ国民の信頼が乏しいという点がどうしても挙げられると思います。」

── 今回、「証券市場の改革促進」ということで、証券市場の信頼を得るための抜本的な改革をして、また証券税制の抜本的な見直しというのも決定されているわけで、こういったことから、「貯蓄から投資へ」の流れが加速すると期待出来るでしょうか。
 「期待したいですね。ただ、税制はもちろん大きな影響があると思いますけれども、私は、もうちょっと根本的に、なぜ証券市場にお金が流れないのかと、もっと証券市場にお金が流れるようにする施策はないのかと、そういうことを考える必要があると思います。」

── 証券市場がもっと信頼されるものになるためには、更にどのような改革が必要でしょうか。
 「証券市場が一般の人から見て、「公正な」、つまりは「不正がない」取引の場になっている必要がありますね。騙されたり不正がない市場環境を確立することです。納得して入っていってリスクを取った結果として損をすることはあり得る、これは自己責任の世界で当然あり得る話なのですけれども、騙されたとか不正があったという印象を持ないような、そういう運営をする必要があると思うのですね。
 そのためには、一つは、ルールのエンフォースメント(実現)の強化と「複線化」が必要であると思います。ルール違反に対する民事・刑事・行政の複線的な制裁を強化することによって、不正があった時にはそれが迅速かつ適切に是正される、つまり法のルールそのものがきちんと実行されるというか、そういう安心感みたいなものが証券市場に漂っていなければいけないのではないかと思います。」

── ところで、神田先生の描かれる将来の我が国の金融システムの姿、そしてそこにおける銀行の役割といったものはどのようなものでしょうか。
 「これも非常に難しい質問だと思いますけれども、良く言われることですが、日本はアメリカ型になる訳ではないと思います。つまりアメリカほど預貸取引すなわち伝統的な銀行取引の比率が下がるということはあまり考えられない。他方、これまでのように銀行による資金供給が圧倒的に大きなウエイトを占めるということもない。ですからもっと証券市場・資本市場というものの規模が拡大する。しかしいわゆる預貸取引という銀行取引も残る。これを金融システムの「複線化」という人もいますが、そういう世界になると思うのです。それを今実現するためには、いろいろ乗り越えなければいけないことがありますが、一つは勿論、今ある銀行の不良債権の問題を解決しなければいけない。もっと広くいえば銀行機能の強化をはかる環境を整備しなければいけない。これは「金融の再生」と呼んでいる問題です。それから経済の方の状況も良くしなければいけない。これは「産業の再生」と呼んでいる問題です。
 国民経済的な観点からお金の流れを見たときに、金融セクターを全体として眺めますと、先程言いましたように国民のお金は銀行にゼロ金利であっても大量に入ってきているわけですね。ですから銀行から証券市場にお金を流すということを考える必要があると思うのです。そうでないと銀行にお金が大量に入ってきても貸す先がないということにもなりかねませんので。しかしこのような流れはいずれは変わるかもしれません。たとえば、英国のように直接(直接と言っても年金とか投資信託とかを通じてですが)、証券市場にもっとお金が流れるようになるかもしれません。ですけれども、今のところ銀行に入ってきているわけですから、そこから資本市場に流すというようなことを考えないといけないと思います。銀行部門だけが預貸という形でリスクを取り過ぎたために、不良債権の問題や、更には銀行部門の不信という事態を招来したわけです。」

── 国民経済全体のお金の流れとして考えたときに、リスクマネーがきちっと流れていくようにするためには、公的な金融のあり方というか、公的なお金の流れのあり方もあわせて検討していく必要があると思うのですが。
 「そうですね。それは非常に重要なポイントで、やはり公的金融というものの存在がこれまで日本のお金の流れというものを歪ませてきたという事実があると思います。この点は今是正されつつありますので、今後急速に改善されると思います。」

── 話は変わりますが、去年の夏に金融審議会でまとめられた決済機能安定策については、ペイオフを骨抜きにするものではないかなどの批判もあるわけですが、改めて決済機能保護のための制度的な手当てを講ずることの意義についてお考えをお伺いしたいのですが。
 「まず一つ元になる考え方としては、決済というものは国が保護するに値するものだということです。決済というと分かりにくいと思いますが、支払いということですね。ではなぜこれを保護しなければならないかですが、今、支払いの手段としては、現金はもちろん使われますが、それよりも銀行を通じた銀行預金が支払手段(すなわち決済手段)として圧倒的に多く使われている訳です。それで、万が一、銀行が破綻しますと、支払いに使うお金を失うこととなる。取引相手への支払いが出来なくなってしまうのみならず、支払った本人のところに戻っても来なくなってしまうのです。ですからそういう意味で銀行預金というのは安全な決済手段とは言えない訳です。しかし、もし決済が滞るということになりますと、これは経済の基本が崩れるということになりますので、非常に問題がある。そこで、決済を保護するために安全な決済手段を用意する必要があるということなのです。
 この話とは別に、他方において、銀行預金は決済手段以外のものも含めていつまでも全額保護するから銀行は常に安全ですと言って、永遠にペイオフを延期するとしますと、これは言うまでもなく大きな弊害がある。破綻した銀行のつけは全部国民の税金で埋めるということになってしまう訳です。つまり、銀行が破綻した場合には預金を全額、預金保険制度でカバーする。預金保険機構は赤字になっても資金を借り続ける、そしてそれを政府保証する仕組みになっているのですね。したがって、ペイオフをどんどん延期していれば結果として実は決済も守られるのですが、そのつけは常に将来の国民の税金ということになるわけです。そのモラルハザードの弊害は非常に大きく、銀行は「別に破綻したって預金者に迷惑はかけないから」ということで経営に緊張感がなくなってしまう訳です。
 そこでまず最初に重要なことは、ペイオフは解禁しなければならないということです。この点の認識は昔から基本線は変わってなくて、政府はペイオフを解禁できるような条件を整えたらできるだけ早く解禁しましょうという考え方で来ています。人々の意見が分かれるのは、解禁できる条件が整ったかどうかについての認識という点です。その点についていろいろ意見があって、平成12年の預金保険法改正の際には、定期預金などについては1年、普通預金などの流動性預金については2年延期されることになったわけです。その上で去年の夏の話をいたしますと、決済の保護ということとペイオフ解禁ということを両立させるためにはどういう答があるかということをいろいろと考えた結果、出てきたアイディアが、そこでは「決済用預金」という言葉を使ったために世の中に分かりにくかったと思うのですけれども、そこの考え方は要するに、決済手段として安全なものを預金という形でも認めましょうということなのです。現金という決済手段、これは安全な手段です。しかし銀行預金というものが、決済すなわち支払いの手段として安全かどうかというのは、常に銀行の信用と表裏です。銀行の信用力があれば安全なのですけれども、しかし銀行の信用力というのは揺らぎ得るということが、そもそもペイオフ解禁ということの意味でもあるわけですから、ペイオフ解禁を一方では実現をし、他方で決済システムは守らなければいけない。そのために決済用預金という特別の仕掛けを作って、それについては銀行の信用が揺らいだとしても全額保護しましょうと、そういう考え方なのです。」

── 最後に、第一部会の今後の課題というのはどういったところでしょうか。
 「これもなかなか難しいところであると思います。何故難しいかと言いますと、金融庁にもいろいろ課題がありまして、何よりも金融再生プログラムを着実に進めていくということが一番大きな課題だと思いますが、これは簡単な問題ではありませんし、多大な労力も要します。第一部会については、仮に引き続き証券分野を取り扱っていくとしますと、昨年からの積み残し事項もあります。例えば、取引所のワーキンググループは、課題の半分くらいは審議を済ませましたが、更に引き続き課題があります。しかし、新しい一つの重要な課題としては、最初の方でも申し上げましたが、ルールのエンフォースメントの強化と言いますか、「強化」と言う言葉が適切かどうか分かりませんが、そういう所を点検をしてみる必要があるのではないかという点です。もっと抽象的に言えば、証券市場に対する信頼を回復するための制度環境の点検ということです。もっと多くの人に安心して証券市場に入って来ていただく、そのためのインフラ整備として何があるだろうかという、そこのところを正面から議論することが必要だと思いますし、そういう基本のところにつながるような具体的な項目を議論できれば一番よいのではないかと感じています。」


 「証券市場の改革促進プログラム」については、金融庁ホームページの「報道発表など」から「「証券市場の改革促進プログラム」について(平成14年8月6日)」にアクセスしてください。

 「日本版金融ビッグバン」については、金融庁ホームページの「大蔵省から引き継いだ情報(金融企画局分)」から「金融システム改革」にアクセスしてください。

 「証券市場の改革促進」(金融審議会第一部会報告)については、アクセスFSA第2号の【トピックス】「「証券市場の改革促進」について(金融審議会第一部会報告)」及び金融庁ホームページの「審議会など」から「金融審議会」の「資料等」に入り、「<第一部会> 第8回平成14年12月16日 資料」にアクセスしてください。

 証券税制の見直しについては、アクセスFSA第2号の【トピックス】「新しい証券税制について」及び金融庁ホームページの「証券税制の大幅な改善について」のコーナーにアクセスしてください。

 「決済機能の安定確保のための方策について」(金融審議会答申)については、金融庁ホームページの「報道発表など」からPDF「決済機能の安定確保のための方策について」(平成14年9月5日)にアクセスしてください。また、ペイオフや決済機能の保護など新しい預金保険制度について、詳しくは、金融庁ホームページの「新しい預金保険制度のコーナー」及びアクセスFSA第2号の【トピックス】「預金保険法及び金融機関等の更生手続きの特例等に関する法律の一部改正について」や【金融便利帳】「今月のキーワード:「ペイオフ」」にアクセスしてください。

 なお、証券市場の改革については、アクセスFSA本号の【金融便利帳】「今月のキーワード:「直接金融と間接金融」」もご覧ください。


【海外通信】
 
〜韓国−金融構造改革の成果と現状〜

在韓国大使館参事官
 市 川 健 太


 韓国の経済構造は1997年の通貨危機を境に大きく変貌をとげた。とりわけ顕著な変化は金融と産業の関係に生じており、財閥が政治に働きかけ官が民間融資を左右した「官治金融」慣行は過去のものとなった。韓国はどのように短期間で危機を収拾し金融規律を先進化しえたか、金融・企業構造改革の成果と現状を整理する。なお、本テーマに関してはすでに各種レポートが発表されており、一般に閲覧可能なものを末尾に記載する。


.金融危機の原因と対処の枠組み
 
(1)  韓国の金融危機は、財閥の過剰投資と金融機関の放漫な融資が限界に達し、財閥の破綻、金融不安、さらにアジア通貨暴落の影響を防げず外貨流動性危機に発展したものである。為替安定化を狙ったIMFの高金利政策もあり企業破綻は継続し、1998年央段階で不良債権は推定150兆ウォン規模、民間28銀行の約半数が破綻ないし破綻を懸念される状態となった。
(2)  国家デフォルトの危機感の下、韓国政府は、金融・企業構造調整政策を一元化すべく金融監督体制を整備し、以下の3面にわたり迅速に対応していくこととなる。
 
 ○  公的資金の大量投入(金融機関リストラ、不良債権の集中処理)
 ○  金融機関を通じた企業構造改革の徹底
 ○  外資の導入(市場原理の適用)
(3)  時期的に見れば、1997年末から大宇破綻を乗り越えた1999年までが構造改革第一期であり、公的資金を集中投与し破綻処理と不良化連鎖の遮断に注力した。マクロ環境を見ると98年末には失業率が10%超に高まったが、財政・金融緩和に加え、1999年にはウォン安とITブームにより輸出が大きく伸び、好調な対内投資とあいまって2桁成長を記録した(韓国は輸出がGDPの5割を占め、その好不調が経済を大きく左右する構造。)。V字回復と称されるマクロ経済の回復が不良債権処理を大いに助けたことは事実である。
 次に、2001年1月のペイオフ解禁を挟む2000年から2001年が第二期であり、市場主導型経済システムの内実化の時期と位置付けられる。折からの景気減速と現代グループの債務悪化にひるむことなく構造改革を再加速し、ペイオフ解禁という節目を乗り切ることで韓国経済に対する国際的信認を確立した。
 2002年以降は、良好な経済環境の下で金融機関の大型再編や国有化行の民営化が進められている。いわば構造改革の果実を享受しているといえよう。


.金融機関の構造調整
 
(1)  選別的な破綻処理
 韓国の金融改革では、金融部門の大幅なリストラ(機関数2,001→1,600、人員4割減。)が一般に指摘されるが、金融危機克服の逼迫した局面下で、結果として処理形態は選別的であった。すなわち、小額預金者が大部分を占める相互信金及び信用協同組合の破綻は直ちに免許取消と預金全額保護(営業停止後、2、3ヵ月後に支給)で処理され、これは、再生見込がないほとんどの総合金融社も同様である。
 他方、銀行部門及び保険部門では預金保険が発動されていない。再生見込のない地方銀行5行等は廃止されたが、この場合も資産・負債の他機関への継承(P&A)により預金支払停止事態は回避している。
(2)  銀行部門のリストラ
 銀行部門では、合併や公的資本受入、さらに外資の導入をベースに財務改善が図られた。1997年末に破綻したソウル銀行・第一銀行の緊急国有化の後、1998年に経営改善計画を全銀行から徴求し、自己資本比率8%未満の不健全行に対し経営改善勧告等を行った。銀行及び保険会社は、経営健全化目標をクリアするため自主合併や公的資本注入等を受け、不良債権の圧縮、人員整理を進めた。優良銀行においても外資を導入し、資本基盤を強めリストラを実施した。
 こうした手法については、自主再建支援のために公的資本を注入しながら結局はP&Aに至る保険会社がでたり、銀行部門でも再建計画が破綻し既注入の公的資本が毀損される等、当初の段階で大手機関破綻回避のバイアスが働いたとの見方も否定できない。ただし、ここで重要なことは、一部に公的資金再注入の手戻りはあったものの、一貫した健全性監督の強化(資産査定の厳格化、健全化数値目標)と支援(公的資金、税制特例)が不良債権処理を加速し、外部資本の導入や経営陣の交代を通じ銀行部門全体の経営体質を大きく改善したことである。
 いわゆる不良銀行の整理は、2000年末の6行の国有化(ウリ金融持株会社への編入)で完結する。2001年1月からのペイオフ導入を見据えてワークアウト企業の一斉整理を図った政府は、それにより資産がさらに悪化した不健全行について、12月末に完全減資、国有化を実施した。この時点で銀行部門は「外資を導入した優良行」と「国有化された旧不健全行」に大別され、預金者の不信感を払拭した状態でペイオフに臨んだことがポイントである。
 
(注)1 .韓国の金融機関は、銀行部門(市中銀行、地方銀行、政府系)と、証券・投信会社、保険会社、総合金融会社、相互信用金庫(2002年3月から「相互貯蓄銀行」)、信用協同組合の第二金融圏に分類され、すべてが預金保険対象である。
.総合金融会社は、財閥が保有するファイナンス会社であるが、手形発行により預金的資金をも集める独特の金融機関であり、その放漫な海外資金調達が外貨危機の主要因となった。
.証券会社の破綻も原則、免許取消で処理。なお、一部投信社について公的資本注入が行われているが、これは大宇危機により社債市場が混乱した際に、投信社に投資家への償還保証をさせた(!)ことにより経営悪化したことに伴う異例の措置である。
.ペイオフはIMFプログラムで2001年からの導入が決まっていたもの。当座預金と無利子別段預金(2004年から)を除き、5千万ウォン(約500万円)が保護限度。ペイオフ解禁後、いくつかの相互信金や信組が破綻したが、大部分が限度額以下の少額預金者であり、大きな混乱は生じていない。


.公的資金と不良債権処理
 
(1)  公的資金
 公的資金は、危機当初に国有財産や借款資金を緊急に動員した23兆ウォンの公共資金と、預金保険公社(KDIC)及び韓国資産管理公社(KAMCO)が発行する政府保証債64兆ウォンを指し、預保債は2000年に40兆ウォンの増発が認められた。回収・再投入分も含めれば、延べ投入規模は159兆ウォン(GDPの3分の1)にのぼる。
 KDICにおいて、公的資金は、預金保険支払、P&Aに伴う引受機関への損失補填、再生支援のための資本注入等に使用され、KAMCOにおいては不良債権買取原資となった。公的資本注入は普通株取得により行われる。KDICは再建目標を定めるのみで経営権を直接握ることはないが、経営陣が交代することは通例である。
 公的資金の償還については、KAMCOの不良債権処理は赤字を出していないが、KDIC使用分には贈与性資金や毀損した資本注入も含まれるため69兆ウォンが回収不能になると見込まれている。うち20兆ウォンは金融機関に課せられる特別保険料で、49兆は財政負担と郵貯の納付金で25年をかけて処理することが決められた。
 なお、思い切った規模の公的資金の投入が可能であった背景としては、韓国は極めて健全な財政を維持してきたため(OECD加盟国中、今なお黒字収支を維持する3カ国の一つ)財政余力があったこと、IMF管理下に入るという危機感の下、マスコミ及び国民の支持があったことをあげておく。

(付表1)公的資金使用実績
  (付表1)公的資金使用実績

(2)

 不良債権処理
 KAMCOは、当初の推定不良債権100兆ウォンの約半分を一括整理すべく計画され、破綻(懸念)行のほか健全行からも経営支援のため買取を実施した(2002年末に買取業務終了、買取実績は100兆ウォン。)。買取価格は平均落札率等を適用しており特記すべきことはないが、KAMCOの特徴は、短期間に大量の不良債権を買い入れ外国系投資会社との連携で国際入札やABS発行等により迅速に処分し、処分益を買取原資に再投入したことである。直接回収は2割に満たない。
 このような迅速な買取の背景として税制措置も重要である。構造改革促進のため、不良債権の引当や償却が無税とされ、さらに免除益をうける企業側も無税とされたことは、KAMCOへの売却や銀行自体の間接償却を容易にし、金融部門の短期間でのクリーン化に決定的な役割を果たした。
 全金融機関の不良債権比率は、資産分類基準の3度にわたる強化のため正確な比較が困難であるものの、現行FLC基準ベースで1998年6月22%(推計)、1999年末15%、2000年末10%、2001年末5.4%と急速に低下しており、銀行部門は2002年9月末2.4%と完全に正常化している。金額ベースでは、新規発生分が不明のためこれも正確には把握できないが、1999年末までに不良債権が100兆ウォン減る中でKAMCOは65兆ウォンを買い取っており、その有効性は評価できる。

(付表2)KAMCOの不良債権整理実績
  (付表2)KAMCOの不良債権整理実績
 
(注 )買入総債権額100兆ウォンのうち、02年8月現在、処分済の債権の内訳。AMCは、CRV設立時に資産保有者となる。


.企業構造調整と金融機関の役割
 
(1)  企業構造調整原則
 政府は、財閥の企業統治や透明性の問題が過剰投資に繋がったとの認識の下、5大財閥との合意を経て、債務比率の200%以下への引下げ、系列企業間の相互保証禁止、連結財務諸表の導入、社外取締役制度等の改善措置を導入した。
 これらは商法、証取法、独禁法等により措置されたが、実際の企業財務の監視については金融機関が大きな役割を担うこととなる。
(2)  ワークアウト
 完全に不良化した企業債権はKAMCOへの売却や銀行内での償却により処理されるが、一方、不採算企業の不良化をくいとめるため「ワークアウト」と称される私的和議制度が導入された。これは中堅財閥以下の83社に適用され、銀行団が自主協約によりファイナンスを担保しつつ企業のリストラや売却を銀行主導で図るものである。同制度には、公的資金による間接的な企業救済、時間稼ぎとの批判もあるが、危機的状況下で不良化の連鎖を切断し市場主導で企業の過剰投資を強力に是正するためには有効かつ必要であった(55社が正常化、16社が法的整理に移行。)。
 99年以降に問題化した大宇自動車や現代建設、ハイニクス電子も同様に処理されているが、このような大型案件の場合には、銀行の償却体力も見極めつつ、政府が水面下で慎重に進度調整することとなる。
(3)  常時企業構造調整
 ワークアウトには、自主協約のためフリーライダーを防げない、モラルハザードに陥りやすいという限界がある。このため、銀行主導による企業のモニタリングと構造調整を制度化したのが「企業構造調整促進法」(2001年5月)であり、メインバンクの監視・構造調整主導義務、金融機関の債権団への参加義務、特別多数での処理決定(少数反対者は債権団に時価での買取を請求可能)等が法律で定められた。


.外資と市場手法の導入
 
(1)  金融機関における外資導入
 韓国は従来、外国資本の受入れに極めて警戒的であり、金融部門においても外資参入はバンカメの出資する韓美銀行や在日系資本をコアに作られた新韓銀行など極めて限定的であった。
 しかし、金融危機によりこの図式は一変する。経営改善勧告を受けた外換銀行がコメルツバンクから30%の出資を受けたほか、国民銀行(ゴールドマンサックス)、商業銀行(ING)による受入れ、さらにDR形式での外資調達が続いた。また、初期に国有化された第一銀行は米系投資会社ニューブリッジに売却された(51%)。2002年末現在、外国人持株比率が50%を超える銀行は市中銀行(都銀)8行中4行に達する。
(2)  産業界における外資導入
 1999年の経済のV字回復を支えたもう一つの要因は、大量の直接投資、証券投資資金の流入である。1998年には、外国人持株比率制限の撤廃、不動産保有自由化、M&A自由化等の一連の改革に加え、直接投資促進のための税制特例も導入された。これにより年間百億ドルを超える直投資金・証券投資資金が流入した。M&Aの活性化は不採算部門の売買等を通じ企業構造調整ひいては不良債権処理の促進に寄与した。上場企業の外国人株式保有比率は36%(時価総額ベース)に達し、特に三星、浦項等の大手企業では50%を超えている。コーポレートガバナンスの改善は市場に監視され、後退が許されなくなっている。
(3)  不良債権処理と資本市場ツール
 「不良債権処理は法律家の論理ではなく、経済の論理で進めるべきもの。」とKAMCOの実務家が繰り返し強調している。この言葉どおり、未だデリバティブに無縁と思えた韓国金融市場にも、KAMCOが外資との連携で不良債権の流動化を進める中で一挙にABS(資産担保付証券)が導入された。また、企業資金調達を助けるためCBO(社債担保付証券)、CLO(債権担保付証券)が導入され、一時期、これらの発行規模は一般社債をはるかに上回った。
 このような資本市場型ツールは企業再生にも応用された。KAMCOや産業銀行と外資との合弁でCRC(企業構造調整専門会社)、CRV(企業構造調整投資会社)が設立され、破綻企業の事業再構成等が実行された。
 政府は、このようなツールの導入を公的保証の供与、税制特例等で支援している。


.韓国金融産業の現状
 
(1)  マクロ経済状況と金融機関のパフォーマンス
 韓国経済は2000年下半期から1年間景気後退を経験する。しかし、銀行部門は不良債権比率の低下から引当金負担が縮減し、2001年に黒字転換する。低金利にもかかわらず大手企業が借入に慎重になる一方、銀行は安全かつ利幅の大きい個人貸付(不動産担保)に注力し、2002年も黒字を伸ばしている。2002年の韓国経済は、潤沢な個人向け融資を背景に力強い消費ブームが牽引した。しかし、その一方でカード破産等の個人信用不良者が260万人に達し、局地的に不動産ミニバブルが生じる等の歪みがあらわれている。
 現在、バブル的現象は沈静化しつつあるが、歪みという意味では、5年間の構造調整を経て、非常勤雇用者が全労働者の50%以上に達する等、所得格差が深刻化している。庶民層を支持層とする盧武鉉新政権は、財閥改革の一層の推進と所得政策を重要課題に掲げているが、今後、急速に高齢化も予測される中で、産業競争力の維持とのバランスをいかに図るかが悩ましい問題である。
(2)  大型再編と民営化
 2000年末の追加国有化段階で、実質的に商業銀行は13行(グループ)に再編された。1997年末の28行から半減以下であるが、それ以降も再編の動きは続いている。2001年に国民銀行と住宅銀行が大型合併したのに続き、優良銀行は、国有化銀行の引受を通じ規模の拡大を図っている(ハナ銀行がソウル銀行を合併し、新韓銀行が朝興銀行を引受ける方向。)。最大の国有金融グループであるウリ金融持株会社(旧ハンビット銀行等)は、市況を見つつDR発行により徐々に民営化を進める予定である。
 非銀行部門では、ウリ持株会社と同様に中小保険会社の合併先となった大韓生命、大韓投信のような大型民営化(外資売却)もほぼ終了した。その一方で、信用組合のような中小預金機関は、運用難と逆ざやから経営が苦しい。2002年末には、1,200余りの信組のうち100以上が債務超過を指摘された。

(付表3)商業銀行の再編の現状
  (付表3)商業銀行の再編の現状

(3)

 東北アジア・ビジネス・ハブ構想
 韓国は、経済構造調整の成功を背景に、また激化する日本・中国との競争を見据え、仁川・釜山等を特区指定し外資誘致を図り(2002年特区法成立)、もって韓国を域内のビジネス中心地に育成する「東アジア・ビジネス・ハブ構想」を推進中である。
 金融部門も、今後10年内に外為法を完全自由化し、東京・香港なみの金融センターに育て上げることを目指している。
 さて、大型再編中の国内金融機関の実力であるが、これは評価が分かれる。経営陣は若返り、外資からの経営参加もあり確実にガバナンスは向上した。しかし、未だ銀行ごとに特色を出した経営とはいえない。発行規模ではアジア最大となったABSも、セカンダリー・マーケットで活発にディールされている訳ではない(シニカルな見方をすれば、不良債権をABSに組替えて処理時間を稼いだだけともいえる。)。昨秋のブームに乗じて、主要銀行が為替リスクの説明もなしに中小企業向けに円建てローンを勧誘し当局の指導を受けている様子からは、各種リスク管理の考え方もまだまだ甘い。
 しかし、韓国の強みは環境変化への対応の早さと強い挑戦精神である。とりわけ、この5年間で、官や政治に、ましてや市場における自らの規模に頼れないことを骨の髄まで知った韓国の金融機関は、経営の質の向上を目指し、更なる自己改革を続けるであろう。我が国金融機関も早急に不良債権問題を処理し、東京国際金融市場の地位回復に取り組むことが望まれる。

(参考文献)
市川健太「韓国報告−構造改革と不良債権処理」2002年2月財務省広報誌“ファイナンス”
中沢則夫「金大中大統領の構造改革政策」2002年6月“東亜” 420号
赤間弘「韓国における金融改革について」2002年10月“にちぎんクオータリー”
門倉貴史「韓国の不良債権処理に関する誤解」2002年12月“第一生命経済研究所ニュースレター”37号
李相蓮「アジアに不良債権市場を」日経新聞2003年1月26日


【金融ここが聞きたい!】


 このコーナーは、記者会見における質疑・応答(Q&A)などの中から、金融を巡る時々の旬な情報をセレクトしてお届けするものです。もっと沢山ご覧になりたい方は、是非、金融庁ホームページの「記者会見概要」のコーナーにアクセスしてください。
 
Q:金融庁内に「金融問題タスクフォース」が設置され、活動を開始したということですが、「金融問題タスクフォース」の役割を教えてください


:このタスクフォースは平成16年度までに不良債権問題を終結させるという目標の達成に向け、その状況をモニタリングする、結果を出すために幅広くアドバイスをしていただくというのが第一の目的であります。第二の目的は、万が一にも特別支援金融機関が出来た場合には、その経営に関して適切なアドバイスをいただく。
 いずれにしても、金融庁に対する知的なインプットをお願いしたいと。それを行政の中で我々なりに消化して反映するようにしたいというようなことを申し上げました。
 委員の方々は最近の銀行の様々な動きについて、銀行が非常に早い速度で動き始めたということについて、それを評価するというご発言が出ました。それと同時に、しかし、なかなか分かり難い側面もあって、それぞれについては、しっかりと見て行く必要があるのではないかというご指摘がまた同時にありました。
 私の方からは最後に、当面、平成15年3月期の決算に向けて業界の様々な動きを、今後どのように評価していったら良いか、見ていったら良いかというような点。それと、金融機関経営のガバナンスの強化に対する問題をどのように考えていったら良いかといったような点。更には、例の工程表に基づいて、少しずつ処理していかなくてはいけない案件がありますので、そうした点を踏まえて、総合的に最初の2〜3回は少し集中してインテンシブに議論を進めて行く必要があるのではないかという締め括りをさせていただきました。
 今の金融行政というのは、技術的な意味でも情報の意味でも非常に高度なものが求められているというふうに思います。しかも、市場の見方が非常に多様であるということだと思います。高度で多様なそういった情報があって初めて実効のある金融行政が出来ると思います。そうした意味で、知的なインプットをして欲しいんだということ、それがタスクフォースの目的であるということに尽きます。ここで何かを決めるという性格のものでは全くありません。我々が当局として必要な行動が取れるように、高度でかつ多様な情報をインプットしていただきたいとおもっております。
 基本的に、行政当局が金融再生プログラムに基づいて必要な結果を出していくということが問われているわけです。それに必要な高度で多様な情報をいろいろインップットしてくれるというのが彼らの役割ですから、彼らが何をチェックするとか、三原則をチェックするとか、そういう性格のものではありません。今日、いろいろお話を伺って、私としては当面ガバナンスを強化するにはどのように、今我々もいろんな事を考えておりますけれども、そういったことについていろいろアドバイスをしていただいて、結果的に不良債権問題が終結に向かうような手助けをして欲しいと思いますし、これは我々からそれをお願いする場合もありますし、彼らから逆に金融再生プログラムのここが進んでいないのではないだろうか、というようなご指摘ももしあれば、これは自由にいただきたいと、それがモニタリングの意味だと思っています。
 金融庁自身も個別の銀行の経営にどうこうという立場には基本的にはないわけです。その意味ではあくまでも結果を出すと、金融システム全体が強化されていくと、勿論個々のプレイヤーは銀行でありますから、その範囲においてそれぞれの議論になることはあり得ると思いますけれども、結果として不良債権が半減していくようにならなければいけない、その為に必要な議論をすると、それがモニタリングの意味であるというふうに思っています。
平成15年1月22日(水) 竹中大臣記者会見抜粋)

 
 「金融問題タスクフォース」については、アクセスFSA本号の【トピックス】「金融問題タスクフォースの開催」、第2号【トピックス】「金融問題タスクフォースについて」及び金融庁ホームページ「報道発表など」から「金融問題タスクフォースについて(平成14年12月27日)」にアクセスしてください。

 「金融再生プログラム」については、金融庁ホームページの「金融再生プログラム」のコーナーにアクセスしてください。

 「三原則」については、アクセスFSA第2号【金融ここが聞きたい!】「Q:大手行に様々な経営改革の動きが出てきていますが、これをどのように見たらいいでしょうか?」にアクセスしてください。



Q:主要行に特別検査が入るということですが、特別検査の意義を教えてください


:日本の金融の部門、銀行部門と金融行政の信頼を回復させて、しっかりとした金融システムを作っていくという、「金融再生プログラム」でも書かれている我々の目指すところでありますけれども、そのためには、本当にバランスシートがきちっと信頼されるものでなければいけないし、その中身が本当にしっかりとしたものでなければいけないというふうに思います。これはやはり金融再生のための重要な出発点、原点であると思っています。
 「金融再生プログラム」にも書かれていますけれども、今回、繰り延べ税金資産等に関連しますけれども、ゴーイング・コンサーンとしてきちっとやっていけるかどうかということを監査するのも大変重要な1つの項目に掲げているわけで、その意味では、しっかりとしたバランスシートを作るという責務を金融機関は負っているし、同時に、それを監査する監査法人も非常に大きな責任を負っているというふうに私は思っております。
 その意味では、特別検査、我々としてしっかりやると。銀行は銀行でしっかりと自主性を発揮していただく。監査法人にもそこは正に社会的責任を背負っているわけですから、しっかりと見ていっていただく、そういう積み重ねによってやはり信頼を回復していくということが大変重要であると思っています。
 基本的には銀行のコーポレート・ガバナンスが本当に十二分に働いているならば、銀行みずからが厳しく、適正な査定をするであろうと。それによって、市場メカニズムのもとでやはり動いていくと。これがやはり民間金融機関としての本来の自立メカニズムであるというふうに思います。
 ところが、特別検査を市場の声に耳を傾けながらやってみると、やはり自己査定と金融庁の検査の間では格差があったと。それをだからこそ公表したわけです。しかし、そういう公表の過程で、自己査定と金融庁の検査の格差は着実に、まだ十分ではないと思っておりますが、縮小していっているというふうに思います。
 その意味では、銀行のコーポレート・ガバナンスに対して、健全な刺激を与えるという意味で、特別検査はやはり大変重要な役割を果たしたし、当面果たさなければいけないというふうに思います。これは今後どのような検査をしていくべきかというのは、やはりかなり多くの要素を考えながら判断していかなければいけないと思いますが、いわゆる今我々はリアルタイム検査というふうに呼んでいるわけですけれども、これは銀行の健全な資産査定の定着、コーポレート・ガバナンスの確立に向けて、当面やらなければいけない重要な仕事になろうというふうに思っています。
平成15年1月31日(金)竹中大臣閣議後記者会見抜粋)

 
 昨年実施した「特別検査」については、金融庁ホームページの「報道発表など」から「主要行に対する特別検査の結果について」(平成14年4月12日)及び「特別検査等について」(広報コーナー)にアクセスしてください。

 「リアルタイム検査」については、金融庁ホームページの「報道発表など」から「平成14検査事務年度検査基本方針及び基本計画の公表について」(平成14年7月30日)及び「平成14検査事務年度検査基本方針及び基本計画について」(広報コーナー)にアクセスし、「債務者区分等の適時の検証」をご覧ください。


【金融便利帳】


 このコーナーは、とかく専門的でわかりにくい金融に関する用語や様々な疑問について、わかりやすく解説するものです。
 今月のキーワードは「直接金融と間接金融」です。


 経済は、お金を当面必要とされる分以上に持っている者から、お金が必要だけれど今は必要なだけのお金を持っていない者に流れていくことによって回っていきます。例えば、給料をもらったサラリーマンは、当座必要な生活費以外のお金を預金株式などの金融資産運用します。預金を受け入れた銀行は、そのお金を企業に貸し出し、お金を借り入れた企業は、そのお金で事業を行います。あるいは、株式を発行して、お金を調達した企業は、そのお金で事業を行います。そして、その事業で儲けたお金で、企業は銀行に利息を支払い、預金者は銀行から利息を受け取りますし、株式を購入した人は、その企業が儲けたお金から配当を受けます。


 このようなお金の流れを金融といいます。そして、上の場合のサラリーマン、お金の出し手を資金余剰主体、または黒字主体といい、上の場合の企業、お金の取り手を資金不足主体、または赤字主体といいます。


 黒字主体から赤字主体へのお金の流れには、直接金融と間接金融があります。
 直接金融とは、赤字主体が資金調達のために発行する債券株式などの有価証券等を黒字主体が直接購入することによって、お金が黒字主体から赤字主体に直接流れていくというものです。たとえば、事業会社が発行する株式債券を個人が自らの判断で購入する場合がこれに当たります。普通、株式や債券は事業会社から直接購入するのではなく、証券会社から購入します。しかし、この場合、黒字主体は赤字主体が発行した有価証券等を自らの判断で購入しているのであり、このようなお金の流れを直接金融というのです。


 これに対して、間接金融とは、黒字主体が銀行などに預金を行い、銀行などが、預金で調達したお金を、銀行等の判断で赤字主体の発行する借入証書手形などを購入することによって(言い換えれば、銀行などが赤字主体に証書貸付手形貸付などを行うことによって)、お金が黒字主体から銀行などの金融仲介機関を介して間接的に赤字主体に流れていくというものです。


 このように、黒字主体から赤字主体へのお金の流れである金融によって経済が回っていきますが、ここで金融は、上述の資金仲介という機能とともにリスクシェアリングの機能を果たしています。
 赤字主体は黒字主体から調達した資金で事業を行い、儲けたお金で借入先の銀行などに元利払いを行ったり、株式の配当を行ったりします。しかし、事業が当初の想定どおりにうまくいかなくて、銀行への元利払いが滞ったり、株式の配当ができなくなったりするかもしれません。事業会社が深刻な経営困難に陥り、倒産してしまえば、銀行は貸し出した資金を全て回収することはできなくなりますし、株式も紙切れ同然の無価値なものになってしまいます。しかし、事業が成功すれば、その収益から、銀行は元利払いを受け、預金者も元利払いを受けますし、株式を購入した人は、十分な配当と、株価の上昇によるキャピタルゲインを得るかもしれません。


 事業を行い収益を上げるには一定の時間がかかりますし、事業は必ず成功するというものではなく、ひょっとしたら失敗するかもしれないという一定のリスクを伴うものです。黒字主体は、利息や配当などの収益を得ようとして、一定のリスクを負担しながら、当座必要のない資金を運用します。黒字主体は、基本的には家計ですから、個々の黒字主体が運用できる資金と負担できるリスクはそれほど大きなものではありません。しかし、銀行が事業会社に貸し出す資金を多数の預金者から調達することや、事業会社が株式市場において多数の者から資金を調達したりすることによって、赤字主体の行う事業についてのリスクを多数の黒字主体で広く薄く負担することが可能になります。これが、リスクシェアリングです。


 間接金融の場合は、リスクの第一次的な担い手は銀行などの金融仲介機関です。金融仲介機関の融資先が倒産しても預金者は直接的には損失を蒙りません。融資先の業況が全般的に悪くなり、多くの貸付金について元利返済が滞るなど不良債権となり、金融仲介機関の収益が大きく落ち込み、更には融資先の倒産が相次ぐなどして、金融仲介機関がリスクを抱えきれなくなり、金融仲介機関自身が破綻してはじめて預金者は損失を蒙ります。但し、その場合でも、預金については、預金保険制度によって一定の保護がなされます。
 
 不良債権については、アクセスFSA創刊号の【金融便利帳】(今月のキーワード:不良債権)に、預金保険制度については、アクセスFSA第2号の【トピックス】「預金保険法及び金融機関等の更正手続の特例等に関する法律の一部改正について」と【金融便利帳】(今月のキーワード:ペイオフ)、そして金融庁ホームページの「新しい預金保険制度について」にアクセスしてください。


 日本の金融システムは、間接金融に偏っており、銀行などの預金取扱金融機関に資金供給パイプとリスクが集中しております。したがって、銀行などが不良債権を大量に抱えると、資金供給パイプが目詰まりを起こし、日本の金融システム全体がうまく金融仲介機能を発揮できなくなってしまいます。また、経済・産業の発展には、金融システムを通じた社会全体での適切なリスクテイクリスクシェアリングが不可欠ですが、預金取扱金融機関にリスクが集中していると、増大するリスクを支えきれなくなってしまいます。


 このため、日本の金融システムについては、間接金融から直接金融へのシフトを進めていくことが重要な課題となっております。そのためには、株式や債券等が売買される市場である証券市場の活性化が必要です。
 証券市場については、近年、金融ビッグバンをはじめとして、様々な改革が実施されており、売買委託手数料の大幅な低下、銀行による投資信託の販売の増加など、一定の成果は現れてきておりますが、実体経済の停滞や証券市場の低迷の影響もあり、日本における個人金融資産は、依然として、預貯金中心となっており、株式等への投資割合はむしろ減少傾向となっております。
 
 金融ビッグバンについては、金融庁ホームページの「大蔵省から引き継いだ情報(金融企画局分)」から「金融システム改革」にアクセスしてください。


 このような中、政府は、昨年6月の閣議決定「経済財政運営と構造改革に関する基本方針 2002」において、「預貯金中心の貯蓄優遇から株式・投資信託などの投資優遇への金融のあり方の転換を踏まえた直接金融への信頼向上のためのインフラ整備など、証券市場の構造改革を一層推進していく」こととしました。
 これを踏まえ、金融庁は、昨年8月、「証券市場の改革促進プログラム」を公表いたしました。このプログラムは、(1)誰もが投資しやすい市場の整備、(2)投資家の信頼が得られる市場の確立、(3)効率的で競争力のある市場の構築という3つの柱に沿って、発行体企業市場仲介者市場開設者投資家に関する制度についての包括的な取り組みを定めたものです。同プログラムに沿って、銀行と証券会社の共同店舗の解禁などの各種施策が順次実施されており、また、昨年末には、証券税制について、簡素でわかりやすく、思い切って投資を優遇する抜本的な見直しが決定されました。
 
 「証券市場の改革促進プログラム」については、金融庁ホームページの「報道発表など」から「「証券市場の改革促進プログラム」について」(平成14年8月6日)にアクセスしてください。
 また、証券税制の見直しについては、アクセスFSA第2号の【トピックス】「新しい証券税制について」及び金融庁ホームページの「証券税制の大幅な改善について」のコーナーにアクセスしてください。


 さらに、昨年12月には、金融審議会金融分科会第一部会において、「証券市場の改革促進」(金融審議会第一部会報告)が、金融審議会公認会計士制度部会において、「公認会計士監査制度の充実・強化」(金融審議会公認会計士制度部会報告)が、それぞれ取りまとめ・公表されました。
 本年においては、これらの金融審議会報告で結論を得た、証券の販売チャネルの拡充・多様化、取引所の市場機能の強化、公認会計士監査の充実・強化などについて、今通常国会への法案提出を予定しており、「貯蓄から投資へ」という流れの加速に向けて、証券市場の構造改革を一層推進することとしております。
 
 「証券市場の改革促進」(金融審議会第一部会報告)については、アクセスFSA第2号の【トピックス】「「証券市場の改革促進」について(金融審議会第一部会報告)」及び金融庁ホームページの「審議会など」から「金融審議会」の「資料等」に入り、「<第一部会> 第8回平成14年12月16日 資料」にアクセスしてください。
 また、「公認会計士監査制度の充実・強化」(金融審議会公認会計士制度部会報告)については、金融庁ホームページの「報道発表など」からPDF「公認会計士監査制度の充実・強化」(金融庁公認会計士制度部会報告)(平成14年12月17日)にアクセスしてください。


【竹中大臣に質問!】
 
:私は鉄を切って販売している溶断業の会社に勤めております。昨年末から受注量が減ってきており、日本の製造業の海外進出の影響が目に見えて明らかになってきました。製造業に従事する者の立場から意見を述べさせてもらいますと、「円安を1ドル=200円台まで進めれば、GDPの底上げができるのではないか?」と考えます。このまま、日本の景気に関係なく、ドル安・円高が続くと、日本国内の製造業は国際競争力を無くし、製造も雇用も消費も海外に流出してしまいます。1ドル=200円台までにすれば、国内の中小企業にも仕事が回り、雇用と消費が促進されるはずです。また、円高で海外から安い品物がどんどん流れ込んでくるような状況では、日本のデフレは終わりません。アメリカの景気が右肩下がりになっている現状では、イラク問題が解決してもバブル的な円高・ドル安は続きそうです。私は、為替レートを早く円安に向かって引っ張っていくことが、デフレ解消・景気回復につながると思うのですが、大臣はどのようにお考えでしょうか?
 
 
:日本の空洞化の問題を阻止するためにも、また、デフレを止めるためにも円安にもっと持っていく方がいいのではないか、そのことによるメリットが非常に大きいのではないか、というご指摘だと思います。こういう議論は、経済界の中でも非常に広くありますし、日本の経済が考えるべき重要な点を確かに間違いなく指摘していると思います。
 ただ、重要なことは、為替レートというのは、本来、政府がどうこうしようというふうに決められるものではありません。円を、円建ての資産を買う人、ドル建ての資産を買う人、また売る人との間で、一種の通貨の交換レートとして決まってくるものですから、為替レートそのものを政策の対象にするのは現実には大変難しいというふうに思います。
 ただ、今後、日本として考えなければいけないことは、一部の国の通貨が、固定的に決まってくると、例えば、アジアの国のいくつかの通貨はドルにペッグしていると言われているわけですが、そういうものについては、為替レートをより市場の需給を反映するような形に持っていかなければならないのではないか、その意味では国際的な通貨のシステムそのものをより健全にしていくために、日本が積極的に発言もし、リードしていく、そういうことが一つ必要だと思っております。
 もう一つ、日本としては、金融の一層の緩和が必要だろうというふうに政府も考えている訳で、金融が緩和されて、デフレが少し収まれば、やや技術的な話ですが、それが実質金利を下げて、結果的に円が安くなるということはあり得ることだと思っております。
 そういった総合的な観点から施策を実施していく決意でおります。
 
 
※ 大臣・副大臣への質問募集中
 
 【竹中大臣に質問!】【伊藤副大臣に質問!】のコーナーでは、読者の皆様から寄せられた金融を巡る大臣や副大臣へのご質問に、大臣・副大臣が直接お答えします。
 「金融庁のやっている金融行政って、よくわからないんだけれど、大臣・副大臣にこんなことを、是非、直接聞いてみたい!」というご質問がございましたら、金融庁ホームページの「ご意見箱」にお寄せください。
 その際、ご意見箱の件名の欄には、必ず「大臣に質問」あるいは「副大臣に質問」とご記入ください。また、本文の欄にご質問の内容をご記入下さい。ご意見箱のコーナーには、「45行以内」とありますが、「大臣に質問」、「副大臣に質問」の場合には、ご質問の趣旨を明確にさせていただくために、恐縮ですが100字以内に収めていただきますようお願いいたします。
 お寄せいただきましたご質問の中から毎月1問を選定させていただき、「アクセスFSA」において大臣または副大臣の回答を掲載させていただきます。なお、採用させていただきましたご質問につきましては、ご質問者のお名前とお歳を(ご意見箱の住所の欄にもご記入いただいた場合にはお住まいになっている都道府県も合わせて)ご紹介させていただいてよろしい場合には、本文の欄にご質問内容を記入された後に「氏名等掲載可」とご記入ください。
 大臣・副大臣へのご質問がございます方は、「ご意見箱」へどうぞ。


【お知らせ】

〇 金融庁ホームページに「資料集」のコーナー開設

 金融庁ホームページでは、金融に関する様々な情報を検索する資料集としてご活用いただくことを目的に「資料集」のコーナーを開設しました。どうぞアクセスしてみてください。
 まずは「金融庁の一年」PDF「平成5年以降の金融関連の主な出来事等」及び「免許・登録などを受けている業者一覧」を掲載しておりますが、今後とも、逐次内容拡充に努めてまいりたいと考えております。掲載情報についてのご意見・ご希望がございましたら、「ご意見箱」にお寄せください(その際、ご意見箱の件名の欄には「資料集」とご記入ください)。

〇 金融庁ホームページに「違法な金融業者にご注意!」のコーナー開設

 「違法な高金利を取る」、「無登録で営業する」など悪質な貸金業者による被害が急増中です。金融庁ホームページでは、「違法な金融業者にご注意!」のコーナーを開設しました。同コーナーでは、貸金業者関係の法令や貸金業者(財務局長登録)一覧などの情報を掲載しております。どうぞアクセスしてみてください。

○ 金融庁金融研究研修センターの研究成果公表

 金融庁金融研究研修センター(FRTC)では、このたび、金融工学分野の研究成果PDF「大規模データベースを用いた信用リスク計測の問題点と対策(変数選択とデータ量の関係)」(山下智志特別研究員(文部科学省統計数理研究所助教授、CRD運営協議会顧問)、川口昇専門研究員(早稲田大学大学院理工学研究科))を公表いたしました。
 中小企業に関する大規模信用データベースとして、信用保証協会(全国52協会)及び政府系金融機関を中心に運営されているCRD運営協議会によって構築された中小企業信用リスク情報データベース(CRD)のデータを用いて、デフォルト確率の推計を行い、信用リスクの定量化に必要(有効)な経営指標の組合せについて分析。併せて、データを業種や規模といったセグメントに分けた場合の問題点や留意点等について整理し、その対策を検討しています。どうぞ、アクセスしてみてください。
 また、これまでのディスカッションペーパーPDF「信託業法のあり方−イギリス法を手がかりに」(山下純司特別研究員(学習院大学法学部助教授))、PDF「米国における信託会社規制−イリノイ州を中心に−」(森田特別研究員(東北大学大学院法学研究科助教授))にも、どうぞアクセスしてみてください。

〇 新着情報メール配信サービスへのご登録のご案内

 金融庁ホームページでは、新着情報メール配信サービスを行っております。皆様のメールアドレス等を予めご登録いただきますと、毎月発行される「アクセスFSA」や日々発表される各種報道発表など、新着情報を1日1回、電子メールでご案内いたします。ご登録をご希望の方は、「新着情報メール配信サービス」へどうぞ。


【1月の主な報道発表等】
 
6日(月)   事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)の一部改正
 
7日(火)   株式会社日本証券クリアリング機構に対し有価証券債務引受業の免許
 
9日(木)   ユナム・ジャパン傷害保険株式会社に対する行政処分
 
10日(金)   「資金洗浄対策の観点から監視を強化すべき取引について」を発出
    クレディ・リヨネ証券会社東京支店に対する行政処分
    アイエヌジー証券会社東京支店に対する行政処分
 
13日(月)
〜15日(水)
    竹中大臣のオーストラリア訪問
 
14日(火)     学生のための霞ヶ関探訪の実施について
 
15日(水)   「財務諸表等の監査証明に関する内閣府令及び中間財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令案」の公表について (パブリック・コメント)
 
22日(水)     金融問題タスクフォース開催
 
24日(金)   検査要員の募集について
 
25日(土)     竹中大臣の世界経済フォーラム年次総会出席
 
27日(月)   第19回金融トラブル連絡調整協議会の開催について
 
28日(火)     財務局長会議開催
 
29日(水)     第24回企業会計審議会第一部会開催
 
31日(金)   (株)みずほホールディングスに対する行政処分
    「タリバーン関係者等と関連すると疑われる取引の届出について(追加要請その15)」の発出
    事務ガイドライン(「金融監督等にあたっての留意事項について」)の一部改正
      金融審議会第17回総会・第5回金融分科会合同会合開催
   
マークのある項目につきましては、から公表された内容にアクセスできます。