神田秀樹金融審議会金融分科会第一部会長インタビュー アクセスFSAでは、去る1月31日(金)に、金融審議会の神田秀樹第一部会長にインタビューを行い、証券市場改革や決済機能保護策などについてお話をお伺いいたしました。インタビューの概要を以下のとおりお届けいたします。
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── 昨年12月に金融審議会第一部会で取りまとめた「証券市場の改革促進」のポイントについて改めてご説明いただけますか。 「証券市場の改革促進については、昨年の8月に金融庁が「証券市場の改革促進プログラム」を発表しました。その背景はいろいろありますが、1996年11月から行われた「日本版金融ビッグバン」まで遡ると、その大きな柱は証券市場の活性化ということに尽きると思います。当時の言葉で言うと、「東京市場を2001年までにニューヨーク、ロンドン並に発達させる」ということを言って来たわけです。ただ、金融ビッグバンは、制度改革としては非常に大胆に行われたのですけれども、残念ながら実体経済の停滞や株式市場の低迷もあって、証券市場は実際には予想したようには活性化していないというのが事実です。そこで金融庁としては、証券市場を活性化するためには、更に体系的な施策を実施することが必要であると認識し、昨年8月に「証券市場の改革促進プログラム」を、実施の手順を含めて公表したのだと理解しています。その中で、金融審議会で審議すべき事項も多数ありました。特に法改正、その他の制度改正を伴うものがいくつもありましたので、それらについて出来るだけ早く審議・検討しようということで、金融審議会の第一部会で審議をしました。 ポイントはいろいろありますが、大別して3つの分野に分けられますので、3つのワーキンググループを設けて検討をしました。第1はディスクロージャー制度の見直し、第2は取引所(証券取引所のほか金融先物取引所も含む)のあり方の改善、そして第3は証券会社などの市場仲介者に関する規制改革です。この3本柱で審議をしました。法改正が必要なものについては、今年の通常国会に関係諸法案を提出できるように、かなり急ピッチで審議しました。」 ── 金融ビッグバン以来、大胆な制度改革をやってきたけれども、なかなか間接金融から直接金融へのシフトが進みません。金融ビッグバンでは、「これで舞台装置は整った。その上で演技者が見事な演技をしてくれることを期待したい」というようなことが言われました。ところが、なかなか期待されたようには演じてくれないわけですけれども、そこは日本人は投資者としてはやや臆病なところがあるのでしょうか。もしそうだとすれば今回、また舞台装置を改善してもなかなかうまくいかないということも懸念されるのですが。 「非常に難しい問題で、そのような「証券市場の不信」の原因は一つではなく、実体経済の状態など複合的な理由があると思います。ただ、私は日本人の特性ということ自体が特に大きな原因であるわけではなく、原因は環境にあるのではないかと思っています。現在、個人金融資産は1,400兆円以上あると言われていますが、ゼロ金利時代がずっと続いてきたなかで、銀行預金を含めた預貯金の比率はなぜか上がってきているのです。ということは日本の国民は、金利がつかないのに、より多く預貯金に預けている。それはなぜかなのですが、恐らく証券市場に対する国民の信頼がないということだと思うのです。ですから、そこを解決することによって、私は国民の個人金融資産がもっと証券市場に流れるようになるというふうに思います。 関連してもう1点だけちょっとお話しておきたいのは、金融ビッグバンもそうですけれども、日本の近年の改革は「もう銀行システムはやめて証券システム一本で行く」という話では決してないということです。重要なことは証券市場がもっと活性化するということです。なかなか活性化しない要因は、決して一つではありません。そもそも経済が不振なので、それを反映する企業の業績、そして、それを反映する株価も低迷している。お金の流れという観点から見ると、日本の証券市場はなぜか今一つ国民の信頼が乏しいという点がどうしても挙げられると思います。」 ── 今回、「証券市場の改革促進」ということで、証券市場の信頼を得るための抜本的な改革をして、また証券税制の抜本的な見直しというのも決定されているわけで、こういったことから、「貯蓄から投資へ」の流れが加速すると期待出来るでしょうか。 「期待したいですね。ただ、税制はもちろん大きな影響があると思いますけれども、私は、もうちょっと根本的に、なぜ証券市場にお金が流れないのかと、もっと証券市場にお金が流れるようにする施策はないのかと、そういうことを考える必要があると思います。」 ── 証券市場がもっと信頼されるものになるためには、更にどのような改革が必要でしょうか。 「証券市場が一般の人から見て、「公正な」、つまりは「不正がない」取引の場になっている必要がありますね。騙されたり不正がない市場環境を確立することです。納得して入っていってリスクを取った結果として損をすることはあり得る、これは自己責任の世界で当然あり得る話なのですけれども、騙されたとか不正があったという印象を持ないような、そういう運営をする必要があると思うのですね。 そのためには、一つは、ルールのエンフォースメント(実現)の強化と「複線化」が必要であると思います。ルール違反に対する民事・刑事・行政の複線的な制裁を強化することによって、不正があった時にはそれが迅速かつ適切に是正される、つまり法のルールそのものがきちんと実行されるというか、そういう安心感みたいなものが証券市場に漂っていなければいけないのではないかと思います。」 ── ところで、神田先生の描かれる将来の我が国の金融システムの姿、そしてそこにおける銀行の役割といったものはどのようなものでしょうか。 「これも非常に難しい質問だと思いますけれども、良く言われることですが、日本はアメリカ型になる訳ではないと思います。つまりアメリカほど預貸取引すなわち伝統的な銀行取引の比率が下がるということはあまり考えられない。他方、これまでのように銀行による資金供給が圧倒的に大きなウエイトを占めるということもない。ですからもっと証券市場・資本市場というものの規模が拡大する。しかしいわゆる預貸取引という銀行取引も残る。これを金融システムの「複線化」という人もいますが、そういう世界になると思うのです。それを今実現するためには、いろいろ乗り越えなければいけないことがありますが、一つは勿論、今ある銀行の不良債権の問題を解決しなければいけない。もっと広くいえば銀行機能の強化をはかる環境を整備しなければいけない。これは「金融の再生」と呼んでいる問題です。それから経済の方の状況も良くしなければいけない。これは「産業の再生」と呼んでいる問題です。 国民経済的な観点からお金の流れを見たときに、金融セクターを全体として眺めますと、先程言いましたように国民のお金は銀行にゼロ金利であっても大量に入ってきているわけですね。ですから銀行から証券市場にお金を流すということを考える必要があると思うのです。そうでないと銀行にお金が大量に入ってきても貸す先がないということにもなりかねませんので。しかしこのような流れはいずれは変わるかもしれません。たとえば、英国のように直接(直接と言っても年金とか投資信託とかを通じてですが)、証券市場にもっとお金が流れるようになるかもしれません。ですけれども、今のところ銀行に入ってきているわけですから、そこから資本市場に流すというようなことを考えないといけないと思います。銀行部門だけが預貸という形でリスクを取り過ぎたために、不良債権の問題や、更には銀行部門の不信という事態を招来したわけです。」 ── 国民経済全体のお金の流れとして考えたときに、リスクマネーがきちっと流れていくようにするためには、公的な金融のあり方というか、公的なお金の流れのあり方もあわせて検討していく必要があると思うのですが。 「そうですね。それは非常に重要なポイントで、やはり公的金融というものの存在がこれまで日本のお金の流れというものを歪ませてきたという事実があると思います。この点は今是正されつつありますので、今後急速に改善されると思います。」 ── 話は変わりますが、去年の夏に金融審議会でまとめられた決済機能安定策については、ペイオフを骨抜きにするものではないかなどの批判もあるわけですが、改めて決済機能保護のための制度的な手当てを講ずることの意義についてお考えをお伺いしたいのですが。 「まず一つ元になる考え方としては、決済というものは国が保護するに値するものだということです。決済というと分かりにくいと思いますが、支払いということですね。ではなぜこれを保護しなければならないかですが、今、支払いの手段としては、現金はもちろん使われますが、それよりも銀行を通じた銀行預金が支払手段(すなわち決済手段)として圧倒的に多く使われている訳です。それで、万が一、銀行が破綻しますと、支払いに使うお金を失うこととなる。取引相手への支払いが出来なくなってしまうのみならず、支払った本人のところに戻っても来なくなってしまうのです。ですからそういう意味で銀行預金というのは安全な決済手段とは言えない訳です。しかし、もし決済が滞るということになりますと、これは経済の基本が崩れるということになりますので、非常に問題がある。そこで、決済を保護するために安全な決済手段を用意する必要があるということなのです。 この話とは別に、他方において、銀行預金は決済手段以外のものも含めていつまでも全額保護するから銀行は常に安全ですと言って、永遠にペイオフを延期するとしますと、これは言うまでもなく大きな弊害がある。破綻した銀行のつけは全部国民の税金で埋めるということになってしまう訳です。つまり、銀行が破綻した場合には預金を全額、預金保険制度でカバーする。預金保険機構は赤字になっても資金を借り続ける、そしてそれを政府保証する仕組みになっているのですね。したがって、ペイオフをどんどん延期していれば結果として実は決済も守られるのですが、そのつけは常に将来の国民の税金ということになるわけです。そのモラルハザードの弊害は非常に大きく、銀行は「別に破綻したって預金者に迷惑はかけないから」ということで経営に緊張感がなくなってしまう訳です。 そこでまず最初に重要なことは、ペイオフは解禁しなければならないということです。この点の認識は昔から基本線は変わってなくて、政府はペイオフを解禁できるような条件を整えたらできるだけ早く解禁しましょうという考え方で来ています。人々の意見が分かれるのは、解禁できる条件が整ったかどうかについての認識という点です。その点についていろいろ意見があって、平成12年の預金保険法改正の際には、定期預金などについては1年、普通預金などの流動性預金については2年延期されることになったわけです。その上で去年の夏の話をいたしますと、決済の保護ということとペイオフ解禁ということを両立させるためにはどういう答があるかということをいろいろと考えた結果、出てきたアイディアが、そこでは「決済用預金」という言葉を使ったために世の中に分かりにくかったと思うのですけれども、そこの考え方は要するに、決済手段として安全なものを預金という形でも認めましょうということなのです。現金という決済手段、これは安全な手段です。しかし銀行預金というものが、決済すなわち支払いの手段として安全かどうかというのは、常に銀行の信用と表裏です。銀行の信用力があれば安全なのですけれども、しかし銀行の信用力というのは揺らぎ得るということが、そもそもペイオフ解禁ということの意味でもあるわけですから、ペイオフ解禁を一方では実現をし、他方で決済システムは守らなければいけない。そのために決済用預金という特別の仕掛けを作って、それについては銀行の信用が揺らいだとしても全額保護しましょうと、そういう考え方なのです。」 ── 最後に、第一部会の今後の課題というのはどういったところでしょうか。 「これもなかなか難しいところであると思います。何故難しいかと言いますと、金融庁にもいろいろ課題がありまして、何よりも金融再生プログラムを着実に進めていくということが一番大きな課題だと思いますが、これは簡単な問題ではありませんし、多大な労力も要します。第一部会については、仮に引き続き証券分野を取り扱っていくとしますと、昨年からの積み残し事項もあります。例えば、取引所のワーキンググループは、課題の半分くらいは審議を済ませましたが、更に引き続き課題があります。しかし、新しい一つの重要な課題としては、最初の方でも申し上げましたが、ルールのエンフォースメントの強化と言いますか、「強化」と言う言葉が適切かどうか分かりませんが、そういう所を点検をしてみる必要があるのではないかという点です。もっと抽象的に言えば、証券市場に対する信頼を回復するための制度環境の点検ということです。もっと多くの人に安心して証券市場に入って来ていただく、そのためのインフラ整備として何があるだろうかという、そこのところを正面から議論することが必要だと思いますし、そういう基本のところにつながるような具体的な項目を議論できれば一番よいのではないかと感じています。」 |
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「証券市場の改革促進プログラム」については、金融庁ホームページの「報道発表など」から「「証券市場の改革促進プログラム」について(平成14年8月6日)」にアクセスしてください。 「日本版金融ビッグバン」については、金融庁ホームページの「大蔵省から引き継いだ情報(金融企画局分)」から「金融システム改革」にアクセスしてください。 「証券市場の改革促進」(金融審議会第一部会報告)については、アクセスFSA第2号の【トピックス】「「証券市場の改革促進」について(金融審議会第一部会報告)」及び金融庁ホームページの「審議会など」から「金融審議会」の「資料等」に入り、「<第一部会> 第8回平成14年12月16日 資料」にアクセスしてください。 証券税制の見直しについては、アクセスFSA第2号の【トピックス】「新しい証券税制について」及び金融庁ホームページの「証券税制の大幅な改善について」のコーナーにアクセスしてください。 「決済機能の安定確保のための方策について」(金融審議会答申)については、金融庁ホームページの「報道発表など」から「決済機能の安定確保のための方策について」(平成14年9月5日)にアクセスしてください。また、ペイオフや決済機能の保護など新しい預金保険制度について、詳しくは、金融庁ホームページの「新しい預金保険制度のコーナー」及びアクセスFSA第2号の【トピックス】「預金保険法及び金融機関等の更生手続きの特例等に関する法律の一部改正について」や【金融便利帳】「今月のキーワード:「ペイオフ」」にアクセスしてください。 なお、証券市場の改革については、アクセスFSA本号の【金融便利帳】「今月のキーワード:「直接金融と間接金融」」もご覧ください。 |
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韓国の経済構造は1997年の通貨危機を境に大きく変貌をとげた。とりわけ顕著な変化は金融と産業の関係に生じており、財閥が政治に働きかけ官が民間融資を左右した「官治金融」慣行は過去のものとなった。韓国はどのように短期間で危機を収拾し金融規律を先進化しえたか、金融・企業構造改革の成果と現状を整理する。なお、本テーマに関してはすでに各種レポートが発表されており、一般に閲覧可能なものを末尾に記載する。 |
1 |
.金融危機の原因と対処の枠組み |
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2 |
.金融機関の構造調整 |
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3 |
.公的資金と不良債権処理 |
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4 |
.企業構造調整と金融機関の役割 |
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.外資と市場手法の導入 |
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.韓国金融産業の現状 |
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このコーナーは、記者会見における質疑・応答(Q&A)などの中から、金融を巡る時々の旬な情報をセレクトしてお届けするものです。もっと沢山ご覧になりたい方は、是非、金融庁ホームページの「記者会見概要」のコーナーにアクセスしてください。 |
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※ | 「金融問題タスクフォース」については、アクセスFSA本号の【トピックス】「金融問題タスクフォースの開催」、第2号【トピックス】「金融問題タスクフォースについて」及び金融庁ホームページ「報道発表など」から「金融問題タスクフォースについて(平成14年12月27日)」にアクセスしてください。 「金融再生プログラム」については、金融庁ホームページの「金融再生プログラム」のコーナーにアクセスしてください。 「三原則」については、アクセスFSA第2号【金融ここが聞きたい!】「Q:大手行に様々な経営改革の動きが出てきていますが、これをどのように見たらいいでしょうか?」にアクセスしてください。 |
※ | 昨年実施した「特別検査」については、金融庁ホームページの「報道発表など」から「主要行に対する特別検査の結果について」(平成14年4月12日)及び「特別検査等について」(広報コーナー)にアクセスしてください。 「リアルタイム検査」については、金融庁ホームページの「報道発表など」から「平成14検査事務年度検査基本方針及び基本計画の公表について」(平成14年7月30日)及び「平成14検査事務年度検査基本方針及び基本計画について」(広報コーナー)にアクセスし、「債務者区分等の適時の検証」をご覧ください。 |
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このコーナーは、とかく専門的でわかりにくい金融に関する用語や様々な疑問について、わかりやすく解説するものです。 今月のキーワードは「直接金融と間接金融」です。 |
経済は、お金を当面必要とされる分以上に持っている者から、お金が必要だけれど今は必要なだけのお金を持っていない者に流れていくことによって回っていきます。例えば、給料をもらったサラリーマンは、当座必要な生活費以外のお金を預金や株式などの金融資産に運用します。預金を受け入れた銀行は、そのお金を企業に貸し出し、お金を借り入れた企業は、そのお金で事業を行います。あるいは、株式を発行して、お金を調達した企業は、そのお金で事業を行います。そして、その事業で儲けたお金で、企業は銀行に利息を支払い、預金者は銀行から利息を受け取りますし、株式を購入した人は、その企業が儲けたお金から配当を受けます。 |
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このようなお金の流れを金融といいます。そして、上の場合のサラリーマン、お金の出し手を資金余剰主体、または黒字主体といい、上の場合の企業、お金の取り手を資金不足主体、または赤字主体といいます。 |
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黒字主体から赤字主体へのお金の流れには、直接金融と間接金融があります。 直接金融とは、赤字主体が資金調達のために発行する債券、株式などの有価証券等を黒字主体が直接購入することによって、お金が黒字主体から赤字主体に直接流れていくというものです。たとえば、事業会社が発行する株式や債券を個人が自らの判断で購入する場合がこれに当たります。普通、株式や債券は事業会社から直接購入するのではなく、証券会社から購入します。しかし、この場合、黒字主体は赤字主体が発行した有価証券等を自らの判断で購入しているのであり、このようなお金の流れを直接金融というのです。 |
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これに対して、間接金融とは、黒字主体が銀行などに預金を行い、銀行などが、預金で調達したお金を、銀行等の判断で赤字主体の発行する借入証書や手形などを購入することによって(言い換えれば、銀行などが赤字主体に証書貸付、手形貸付などを行うことによって)、お金が黒字主体から銀行などの金融仲介機関を介して間接的に赤字主体に流れていくというものです。 |
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このように、黒字主体から赤字主体へのお金の流れである金融によって経済が回っていきますが、ここで金融は、上述の資金仲介という機能とともにリスクシェアリングの機能を果たしています。 赤字主体は黒字主体から調達した資金で事業を行い、儲けたお金で借入先の銀行などに元利払いを行ったり、株式の配当を行ったりします。しかし、事業が当初の想定どおりにうまくいかなくて、銀行への元利払いが滞ったり、株式の配当ができなくなったりするかもしれません。事業会社が深刻な経営困難に陥り、倒産してしまえば、銀行は貸し出した資金を全て回収することはできなくなりますし、株式も紙切れ同然の無価値なものになってしまいます。しかし、事業が成功すれば、その収益から、銀行は元利払いを受け、預金者も元利払いを受けますし、株式を購入した人は、十分な配当と、株価の上昇によるキャピタルゲインを得るかもしれません。 |
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事業を行い収益を上げるには一定の時間がかかりますし、事業は必ず成功するというものではなく、ひょっとしたら失敗するかもしれないという一定のリスクを伴うものです。黒字主体は、利息や配当などの収益を得ようとして、一定のリスクを負担しながら、当座必要のない資金を運用します。黒字主体は、基本的には家計ですから、個々の黒字主体が運用できる資金と負担できるリスクはそれほど大きなものではありません。しかし、銀行が事業会社に貸し出す資金を多数の預金者から調達することや、事業会社が株式市場において多数の者から資金を調達したりすることによって、赤字主体の行う事業についてのリスクを多数の黒字主体で広く薄く負担することが可能になります。これが、リスクシェアリングです。 |
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間接金融の場合は、リスクの第一次的な担い手は銀行などの金融仲介機関です。金融仲介機関の融資先が倒産しても預金者は直接的には損失を蒙りません。融資先の業況が全般的に悪くなり、多くの貸付金について元利返済が滞るなど不良債権となり、金融仲介機関の収益が大きく落ち込み、更には融資先の倒産が相次ぐなどして、金融仲介機関がリスクを抱えきれなくなり、金融仲介機関自身が破綻してはじめて預金者は損失を蒙ります。但し、その場合でも、預金については、預金保険制度によって一定の保護がなされます。 |
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日本の金融システムは、間接金融に偏っており、銀行などの預金取扱金融機関に資金供給パイプとリスクが集中しております。したがって、銀行などが不良債権を大量に抱えると、資金供給パイプが目詰まりを起こし、日本の金融システム全体がうまく金融仲介機能を発揮できなくなってしまいます。また、経済・産業の発展には、金融システムを通じた社会全体での適切なリスクテイクとリスクシェアリングが不可欠ですが、預金取扱金融機関にリスクが集中していると、増大するリスクを支えきれなくなってしまいます。 |
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このため、日本の金融システムについては、間接金融から直接金融へのシフトを進めていくことが重要な課題となっております。そのためには、株式や債券等が売買される市場である証券市場の活性化が必要です。 証券市場については、近年、金融ビッグバンをはじめとして、様々な改革が実施されており、売買委託手数料の大幅な低下、銀行による投資信託の販売の増加など、一定の成果は現れてきておりますが、実体経済の停滞や証券市場の低迷の影響もあり、日本における個人金融資産は、依然として、預貯金中心となっており、株式等への投資割合はむしろ減少傾向となっております。 |
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このような中、政府は、昨年6月の閣議決定「経済財政運営と構造改革に関する基本方針 2002」において、「預貯金中心の貯蓄優遇から株式・投資信託などの投資優遇への金融のあり方の転換を踏まえた直接金融への信頼向上のためのインフラ整備など、証券市場の構造改革を一層推進していく」こととしました。 これを踏まえ、金融庁は、昨年8月、「証券市場の改革促進プログラム」を公表いたしました。このプログラムは、(1)誰もが投資しやすい市場の整備、(2)投資家の信頼が得られる市場の確立、(3)効率的で競争力のある市場の構築という3つの柱に沿って、発行体企業、市場仲介者、市場開設者、投資家に関する制度についての包括的な取り組みを定めたものです。同プログラムに沿って、銀行と証券会社の共同店舗の解禁などの各種施策が順次実施されており、また、昨年末には、証券税制について、簡素でわかりやすく、思い切って投資を優遇する抜本的な見直しが決定されました。 |
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さらに、昨年12月には、金融審議会金融分科会第一部会において、「証券市場の改革促進」(金融審議会第一部会報告)が、金融審議会公認会計士制度部会において、「公認会計士監査制度の充実・強化」(金融審議会公認会計士制度部会報告)が、それぞれ取りまとめ・公表されました。 本年においては、これらの金融審議会報告で結論を得た、証券の販売チャネルの拡充・多様化、取引所の市場機能の強化、公認会計士監査の充実・強化などについて、今通常国会への法案提出を予定しており、「貯蓄から投資へ」という流れの加速に向けて、証券市場の構造改革を一層推進することとしております。 |
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※ 大臣・副大臣への質問募集中 |
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〇 金融庁ホームページに「資料集」のコーナー開設 金融庁ホームページでは、金融に関する様々な情報を検索する資料集としてご活用いただくことを目的に「資料集」のコーナーを開設しました。どうぞアクセスしてみてください。 まずは「金融庁の一年」、「平成5年以降の金融関連の主な出来事等」及び「免許・登録などを受けている業者一覧」を掲載しておりますが、今後とも、逐次内容拡充に努めてまいりたいと考えております。掲載情報についてのご意見・ご希望がございましたら、「ご意見箱」にお寄せください(その際、ご意見箱の件名の欄には「資料集」とご記入ください)。 〇 金融庁ホームページに「違法な金融業者にご注意!」のコーナー開設 「違法な高金利を取る」、「無登録で営業する」など悪質な貸金業者による被害が急増中です。金融庁ホームページでは、「違法な金融業者にご注意!」のコーナーを開設しました。同コーナーでは、貸金業者関係の法令や貸金業者(財務局長登録)一覧などの情報を掲載しております。どうぞアクセスしてみてください。 ○ 金融庁金融研究研修センターの研究成果公表 金融庁金融研究研修センター(FRTC)では、このたび、金融工学分野の研究成果「大規模データベースを用いた信用リスク計測の問題点と対策(変数選択とデータ量の関係)」(山下智志特別研究員(文部科学省統計数理研究所助教授、CRD運営協議会顧問)、川口昇専門研究員(早稲田大学大学院理工学研究科))を公表いたしました。 中小企業に関する大規模信用データベースとして、信用保証協会(全国52協会)及び政府系金融機関を中心に運営されているCRD運営協議会によって構築された中小企業信用リスク情報データベース(CRD)のデータを用いて、デフォルト確率の推計を行い、信用リスクの定量化に必要(有効)な経営指標の組合せについて分析。併せて、データを業種や規模といったセグメントに分けた場合の問題点や留意点等について整理し、その対策を検討しています。どうぞ、アクセスしてみてください。 また、これまでのディスカッションペーパー「信託業法のあり方−イギリス法を手がかりに」(山下純司特別研究員(学習院大学法学部助教授))、「米国における信託会社規制−イリノイ州を中心に−」(森田特別研究員(東北大学大学院法学研究科助教授))にも、どうぞアクセスしてみてください。 〇 新着情報メール配信サービスへのご登録のご案内 金融庁ホームページでは、新着情報メール配信サービスを行っております。皆様のメールアドレス等を予めご登録いただきますと、毎月発行される「アクセスFSA」や日々発表される各種報道発表など、新着情報を1日1回、電子メールでご案内いたします。ご登録をご希望の方は、「新着情報メール配信サービス」へどうぞ。 |
6日(月) | ・ | 事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)の一部改正 | ||
7日(火) | ・ | 株式会社日本証券クリアリング機構に対し有価証券債務引受業の免許 | ||
9日(木) | ・ | ユナム・ジャパン傷害保険株式会社に対する行政処分 | ||
10日(金) | ・ | 「資金洗浄対策の観点から監視を強化すべき取引について」を発出 | ||
・ | クレディ・リヨネ証券会社東京支店に対する行政処分 | |||
・ | アイエヌジー証券会社東京支店に対する行政処分 | |||
13日(月) 〜15日(水) |
・ | 竹中大臣のオーストラリア訪問 | ||
14日(火) | ・ | 学生のための霞ヶ関探訪の実施について | ||
15日(水) | ・ | 「財務諸表等の監査証明に関する内閣府令及び中間財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令案」の公表について (パブリック・コメント) | ||
22日(水) | ・ | 金融問題タスクフォース開催 | ||
24日(金) | ・ | 検査要員の募集について | ||
25日(土) | ・ | 竹中大臣の世界経済フォーラム年次総会出席 | ||
27日(月) | ・ | 第19回金融トラブル連絡調整協議会の開催について | ||
28日(火) | ・ | 財務局長会議開催 | ||
29日(水) | ・ | 第24回企業会計審議会第一部会開催 | ||
31日(金) | ・ | (株)みずほホールディングスに対する行政処分 | ||
・ | 「タリバーン関係者等と関連すると疑われる取引の届出について(追加要請その15)」の発出 | |||
・ | 事務ガイドライン(「金融監督等にあたっての留意事項について」)の一部改正 | |||
・ | 金融審議会第17回総会・第5回金融分科会合同会合開催 |
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