III .保険検査・監督に係る事務処理上の留意点

III -1 検査・監督事務に係る基本的考え方

前述(Ⅰ-1(1))の保険検査・監督の目的を達成するためには、金融庁においても、保険会社に対し、個々の保険会社の規模や特性に応じた対応を継続的に行っていくことが必要である。

このため、保険会社の検査・監督を行うに当たっては、まずは、各社がどの様にしてビジネスモデルの構築、保険契約者等の保護、財務の健全性の確保、コンプライアンス・リスク管理態勢の構築等の課題に取り組もうとしているかの方針を理解し、その上で、当該方針がどの様なガバナンス体制の下で実施され、如何なる潜在的なリスクや課題を内包し、各社がこれらのリスク等をどの様に認識し対応しようとしているか、的確に把握することが不可欠である。

経営全体を見据えた重要課題に対応し、国民経済の健全な発展につなげていくには、各社が、当局から指摘されることなく自らベストプラクティスに向けて改善するよう、保険会社自身で経営体制を変革していく必要がある。金融庁としては、実態把握や対話等を通じた継続的なモニタリングの過程で、より良い実務を追求する各社の取組みを促していく。

その上で、上記の過程で、業務の健全性・適切性の観点から重大な問題が認められる場合や保険会社の自主的な取組みでは業務改善が図られないことが認められる場合は、法第132 条に基づく業務改善命令等の行政処分(Ⅲ-4)の発動等を検討することとする。

さらに、保険会社の検査・監督事務を行うに当たっては、以下の点にも十分に留意した上で実施することとする。

  • (1)保険会社との十分な意思疎通の確保

    検査・監督に当たっては、保険会社の経営に関する情報を的確に把握・分析し、必要に応じて、適時適切に対応していくことが重要である。このため、金融庁においては、保険会社からの報告に加え、保険会社との健全かつ建設的な緊張関係の下で、日頃から十分な意思疎通を図り、積極的に情報収集する必要がある。具体的には、経営陣や社外取締役、内部監査の担当者を含む保険会社の幅広い役職員との定期・適時の面談や意見交換等を通じて、保険会社との日常的なコミュニケーションを確保し、財務情報のみならず、経営に関する様々な情報についても把握するよう努める必要がある。

  • (2)保険会社の自主的な努力の尊重

    金融庁は、私企業である保険会社の自己責任原則に則った経営判断を、法令等に基づき検証し、問題の改善を促していく立場にある。検査・監督に当たっては、このような立場を十分に踏まえ、保険会社の業務運営に関する自主的な努力を尊重するよう配慮しなければならない

  • (3)効率的・効果的な検査・監督事務の確保

    金融庁及び保険会社の限られた資源を有効に利用する観点から、検査・監督事務は、保険会社の規模や特性を十分に踏まえ、効率的・効果的に行われる必要がある。したがって、保険会社に報告や資料提出等を求める場合には、検査・監督事務上真に必要なものに限定するよう配意するとともに、現在行っている検査・監督事務の必要性、方法等については常に点検を行い、必要に応じて改善を図るなど、効率性・有効性の向上を図るよう努めなければならない。

    既報告や資料提出等については、保険会社の事務負担軽減等の観点を踏まえ、年1回定期的に点検を行う。その際は、保険会社の意見を十分にヒアリングすることに留意する。

     

    また、保険会社や保険募集人(法第2条第23項に規定する「保険募集人」のうち、「少額短期保険募集人を除いた者をいう。以下同じ。)の小規模な営業所等に関して、保険会社や保険募集人に報告や資料提出等を求める場合には、取り扱うサービスや商品などに関する当該営業所等の特性を十分に踏まえ、業務の円滑な遂行に支障が生じないよう配意する。

  • (4)国際的な監督水準の確保

    監督当局は、本監督指針の対象となる保険グループの中には国際的に活動しているものもあることを踏まえ、検査・監督に当たっては、IAISが令和元年11月に採択した「国際的に活動する保険グループの監督のための共通枠組み(Common Framework for the Supervision of Internationally Active Insurance Groups; ComFrame)」等を可能な限り反映するよう努めるとともに、ComFrameの規定に基づいて我が国における国際的に活動する保険グループ(Internationally Active Insurance Groups; IAIG)を指定することとする。

    また、保険グループの海外における活動に関し、当該保険グループが拠点を有する法域(ホスト法域)の金融監督当局と密接に連携する必要がある。

III -1-1 検査・監督事務の進め方

保険会社の検査・監督事務の基本は、実態把握や対話等を通じたモニタリング、監督上の措置、フィードバック、情報発信といった各手法を、各社の状況や抱えている問題の性質・重大性等に応じ適切に組み合わせることを通じて、各社に必要な改善を促していくことにある。

これに加えて、日常的なモニタリングを通じて、保険会社を巡るグローバルな経済・市場環境の変化を的確に把握するとともに、各社における個別的状況についても、モニタリング・データや随時のヒアリング等の結果を踏まえ、保険会社との対話の中で、リスク管理等に関するベストプラクティスの追求や、変化に柔軟に対応できる経営・ガバナンス態勢の整備等の課題の解決に向けた取組みを促していくことが求められる。

III -1-2 検査・監督事務の具体的手法

  • (1)オン・オフ一体の継続的かつ重点的なモニタリング

    金融庁は、各社の特性・課題を把握した上で、課題の性質・優先度に応じて立入検査を含むモニタリング手法を機動的に使い分け、改善状況をフォローアップする継続的なモニタリングを実施する。

    モニタリング手法の使い分けについては、各社の個別具体的状況に加え、各手法における実態把握に係る有効性や当局側・保険会社側における負担の程度、問題の緊急性等の観点も十分に踏まえるものとする。基本的には、まず、経営・財務・リスク計数等に係る資料の分析や、社内外の関係者からのヒアリングといったモニタリングを実施し、足下の健全性・適切性等に係る課題が見られるかどうか等の分析結果を踏まえて、法第129条(外国保険会社等にあっては法第201条、引受社員及び免許特定法人にあっては第227条。以下同じ。)に基づく立入検査の要否について判断するものとする。

  • (2)具体的手法

    • マル1実態把握及び対話の実施に当たっての前提行為

      • ア. 情報収集・プロファイリング(特性把握)

        金融庁は、各社の特性や課題、改善に向けた自主的な取組み状況等その時々における個別具体的状況を把握することを目的としてモニタリングを実施する。この中には、保険会社を巡る環境変化が及ぼす経営への影響やこれへの各社の対応状況について把握することも含まれる。

        また、内外の経済や金融・資本市場の動向と個々の保険会社の行動は相互に影響を及ぼし得るため、その相互作用についても分析・把握する必要がある。

        こうした情報収集やプロファイリングは、日常的なモニタリングの成果の集積であり、特定の形式にとらわれるものではないが、例えば以下のような視点で取組みを行っていく。

        • (ア) マクロの視点

          経済、金融市場、政治、社会等内外の環境変化が各社や金融システムに与える影響について分析・把握する必要がある。そのため、例えば、庁内の関係部署や財務局、関係省庁等と連携し、一般事業会社を含む国内外の不祥事、国内外の法令・制度の改正や判例の動向、海外当局や国際機関における議論の動向、経済・社会環境の変化(SDGsへの注目の高まり等)等の内外の環境変化に関する情報を収集した上で、同業他社や他業界、類似業務・商品、法制度等に潜む共通の課題を分析・把握することが有用となる。

          こうした情報収集・分析を通じた、問題事象の横展開・広がりの分析を通じ、金融セクター全体に内在する課題の把握・特定に努めていく。

        • (イ) ミクロの視点

          保険会社との実効性のある対話等を実現するためには、各社固有の実情についての深い知見の蓄積が不可欠である。特に、その出発点として、保険会社が、それぞれの経営環境(顧客特性、競争環境等)の中でどのような姿を目指し、そのために何をしたいのかといった経営理念を確認することが必要となる。そのために、例えば次のような、当該保険会社やそのステークホルダー(従業員、顧客、地域社会、株主等)からの情報収集が有用となる。

          • ・ 財務データやリスク計数データ等の定型資料のみならず、経営の意  思決定に係る会議体の資料や議事録等を分析すること

          • ・ 決算やリスク管理に係る定期的なヒアリングのみならず、各部門の責任者をはじめとする各階層の者からビジネス動向等について随時ヒアリングを行うこと

          • ・ 保険会社自身のリスク認識や業務のあり方を把握するため、内部監査部門、監査(等)委員・監査役、社外取締役等と意見交換を行うこと

          • ・ 保険会社の顧客特性・産業特性についての理解を高めるため、事業者や地域の関係者等と意見交換を行うこと

          • ・ 金融サービス利用者相談室に対して寄せられた相談・苦情等の情報や、各種ヒアリングの結果など、様々なチャネルを活用して収集した金融サービス利用者の声のほか、メディア報道や外部からの照会等を含めた外部情報を分析すること

          上記のような情報収集・分析やこれまでのモニタリングを通じて、保険会社のビジネスモデル・経営戦略、業務運営及び組織態勢を理解した上で、それぞれの課題や特性、保険会社を巡る環境変化による影響について把握する。

      • イ. 優先課題の洗い出し及びモニタリング方針・計画策定

        上記情報収集・特性把握を通じて特定された各社の課題や業態等に共通す る横断的な課題については、保険会社の経営陣と経営上の実質的な重要事項を議論するため、また、限られた行政資源を最大限有効活用するため、社会的要請など時々の重要度・緊急度も十分に踏まえ、優先順位を付ける必要がある。こうして特定された横断的な優先度の高い課題については、事務年度初に年度単位の方針等で設定・公表する。

        次に、各社特有の経営状況等を踏まえ、モニタリング方針・計画を策定し、優先課題への具体的な対応方針・計画を定め、適正な人員配置等の体制を構築する必要がある。その際、保険会社が実質的な重要事項の改善に経営資源を集中できるよう、重点的な課題の性質に応じて立入検査とそれ以外のモニタリング、各社のモニタリングと水平的なモニタリング等を使い分ける。

        なお、立入検査については、従来のように一定期間ごとに実施するのではなく、一連のモニタリングプロセスにおける実態把握のための手法の一つと位置付けられる。但し、長期間立入検査が実施されていない場合には、当局の予見困難な問題事象が生じている可能性が相対的に高まっていることも考えられ、そのことがリスク要素の一つとも捉えられる。

        また、期中に新たな課題が発生・発覚した場合にはモニタリング計画を柔軟に見直すなど、その時々に応じた適切なモニタリングを心掛ける。

    • マル2各社の詳細な実態把握

      実態把握のため、課題の性質又は対応の進捗、各社の実態に応じ、各種ヒアリング、任意の資料提出依頼、アンケート、法令上の報告徴求、立入検査などの中から、最も効率的かつ効果的な手法を選択することとする。

      また、当局において、過去に情報を把握していたり、別途把握を行っている場合には、その内容を事前に確認の上、それらを最大限活用するなど保険会社の負担軽減に配慮する。

      更に、一旦行った分析に基づきモニタリングを実施している場合においても、情報収集や実態把握、対話に基づき新たに課題が判明した場合には、新たな課題の性質に応じて、適切な対応を行っていく。

      選択された各手法については、それぞれ例えば次の点に留意して実施する。なお、いずれの手法を実施するにしても、当局がどのような課題を認識したうえで、どのような議論を志向しているのかを、保険会社に対して丁寧に説明していく。

      • ア. 各種ヒアリング

        優先課題について保険会社との相互理解を深めるため、課題の性質に応じ て経営トップ、各部門や各営業拠点の責任者、実務者レベル等との間で重層的にヒアリングを行っていく。

        なお、ベストプラクティスの追求に向けた取組みについては、保険会社が自らの置かれた環境と特性に応じ創意工夫を行うものであることを踏まえ、当局が特定の答えを押し付けることのないよう留意する必要がある。

        また、こうした各種ヒアリングの一環として、保険会社の施設内において、特定のテーマに関して一定期間集中的にヒアリングや対話を行う場合がある。

      • イ. 任意の資料提出依頼

        保険会社の負担に配慮し、また、依頼趣旨が明確かつ正確に伝わるよう、当該依頼がどのような課題認識に基づくものか、そのためにどういった内容の資料が必要なのかといった点を明らかにし、保険会社に対して丁寧に説明し理解を得るよう努める。その際、実施時期の分散、二重の依頼の回避、余裕をもった提出期限の設定といった保険会社に課せられる負担の軽減に努めることとする。特に、アンケート等、複数の保険会社を対象とする場合は、各社の特性・置かれた環境にも十分留意する。

      • ウ. 法第128 条に基づく報告徴求

        必要が認められる場合には法第128 条(外国保険会社等にあっては法第200 条、引受社員及び免許特定法人にあっては第226 条。以下同じ。)に基づき報告を求める。その際、当該報告徴求が当局のどのような課題認識に基づくものか、保険会社に対して丁寧に説明する。

      • エ. 法第129 条に基づく立入検査

        足下の健全性・適切性等について詳細な検証が必要と判断された場合等、必要が認められる場合には法第129条に基づく立入検査を行う。その際、経営上重要な問題は何で、その根本的な原因は何かを常に念頭に置き、洗い出した優先課題の正確性について、経営陣との議論の中で再確認し、仮説を構築する。更にその仮説の立証のために更なる事実・実態の収集・把握を行い、収集した事実・実態に基づき、経営陣と議論を行うことで、安易な結論ではなく保険会社の経営や金融行政上重要な課題について根幹に根差した議論を行うよう心掛ける。

        なお、立入検査に係る基本的な手続きは、別紙1「立入検査の基本的手続」を参照。また、検査結果通知書を交付した場合は、その交付日から原則として一週間以内に保険会社に対し、指摘事項についての事実確認、発生原因分析、改善・対応策等について、法第128 条に基づき、1か月以内に報告することを求める。報告を求める事項については、様式・参考資料編 様式Ⅲ-1-2-1(1)を基本様式として参照するが、指摘の内容に応じ、個々に適切かつ十分な報告事項を定めるよう、十分検討することとする。

  • マル3対話

    対話は、財務の健全性やコンプライアンス等に係る重大な問題発生の有無や蓋然性、保険会社の経営状況等の改善に向けた自主的な取組み状況等その時々における個別具体的状況や、問題の性質に応じて実施される。

    対話を実施する際は、当局側の思い込み、仮説の押し付けを排し、可能な限り、保険会社が安心して自らの立場の主張をできるよう努めつつ、まずは、保険会社側の考え方や方針を十分に把握し、その上で事実の提示を伴いつつ行うことを徹底する。

    更に、対話に当たっては、それまで、当局が各社と行ってきたやりとり等を 十分に踏まえ、対話の継続性に配慮した運営に努める必要がある。

    • ア. 当局による実態把握において、財務の健全性やコンプライアンス等に係る重大な問題発生の蓋然性が高まったことが認められた場合においても、まずは、保険会社自らが課題・根本原因・改善策の妥当性について検証を行った上で、当局と保険会社との間で改善策の策定・実行について深度ある対話を行うこととする。但し、既に上記問題が発生している等高度の緊急性が認められる場合においては、当局が考える要改善事項の明確な指摘を行った上で各社の対応方針を確認する。

    • イ. 上記問題が発生する蓋然性が認められない保険会社については、自らの置かれた状況に応じ多様で主体的な創意工夫を発揮することで、ビジネスモデルやリスク管理の高度化への努力を続けることが重要である。そこで、当局としては、日頃のモニタリングを通じた特性把握を基に、各社の置かれた経営環境や経営課題あるいは、各社の戦略、方針について深い理解を持った上で、特定の答えを前提とすることなく、保険会社自身に「気付き」を得てもらうことを目的に、保険会社との間で、ビジネスモデルやリスク管理、人材育成等について深度ある対話を行っていく(この過程でベストプラクティス等の他の参考事例を必要に応じて共有する)。

  • マル4多様な手法の柔軟かつ適切な組合せ

    上記のとおり、金融庁が保険会社に対する行政対応として用いる手法は様々なものがあるが、有効性や当局側・保険会社側における負担・費用等の観点から、それぞれメリット・デメリットがある。そこで、金融庁としては、各社における課題や財務の健全性・コンプライアンス等に係る重大な問題発生の有無等その時々における個別具体的状況に応じて、各手法のメリットを最大限生かす柔軟な組み合わせを実現することで、有効かつ効率的な検査・監督事務の実現を目指す。例えば、既に述べた手法以外にも以下の方法が考えられる。

    • ・ 業界共通の状況や課題、特定分野における事例等をフィードバックすること は、保険会社自身による創意工夫の発揮に資するものである。特に、これらの取組みを各社の有する課題に即してフィードバックを行うことで、当局・保険会社間における高度の共通価値を構築した上での深度ある対話が可能となる。その場合においても、各社の自主的な経営判断を尊重し、個別取引の判断に当局として不適切な介入を行うことのないように配慮する必要がある。

    • ・ 保険会社が自主的に開示する経営方針やその改善に向けた取組みといった情報は、保険会社と当局との間の対話のみならず、顧客等の関係者との対話を深め、保険会社による経営改善に向けた取組みに資する可能性がある。

    • ・ 各社の課題が顧客保護や顧客利便といった分野である場合は、当局・保険会社間でのやり取りに終始するのではなく、取引先や利用者といった第三者にアンケートやヒアリングを実施し、その結果を当局・保険会社間の対話の際にフィードバックすることで、対話の効果を高めることが可能となる。

    • ・ 必要に応じ、金融庁が、保険会社以外の関係者と共通価値や目標を共有したり、金融庁としての各種分析や金融行政のスタンスを情報発信していくことで、保険会社の経営環境に関係するステークホルダー等に働きかけることが考えられる。

  • マル5モニタリング結果を踏まえた対応

    上記の金融モニタリング結果の還元については、従来の「検査結果通知」の形式に捉われることなく、認識が一致しない点については相違点を確認の上、継続的に議論を続けるなど、優先課題についての重点的な議論に適した進め方を工夫する。
     例えば、以下のような形で保険会社に還元し、継続的な議論や必要に応じて改善対応を求めるなど、適切なフォローアップを行っていく。

    • ア. 通年で実施したオン・オフのモニタリングの成果は、必要に応じ年間を通じた「フィードバックレター」として文書で交付する。

    • イ. 立入検査を実施した際には、原則として、その都度、結果の還元を行う。その方法は、把握した事象や立入検査の内容により様々であるが、例えば、軽微な事象や上記③イのような対応を行う項目については、「講評」や「当局所見」のような形で、あるいは、重大な事象については「検査結果通知」のような形で行う。

    • ウ. 業界共通の課題については、上記「ア」又は「イ」のほか、随時情報発信する。

      モニタリングによって認められた問題点・収集した情報を①個別保険会社限りのもの、②当該業態共通のもの、③他業態にも共通のもの、④当局の他の所掌業務や関係省庁その他業界団体等に影響するものに分類し、上記Ⅲ-1-2(2)①アのプロセス等を通じて、次期の年度単位の方針やモニタリング計画に反映するほか、業態横断的な水平的モニタリングの検討、また、モニタリングのみに留まらない問題の広がりを踏まえ、当局の他の所掌業務や関係省庁その他業界団体等への働きかけを行っていく。

III -1-3 品質管理

検査・監督事務の全過程において、実態把握及び対話を通じたモニタリングの質や深度について適切な判断が確保されるよう、組織として品質管理を行う。各社の経営環境や経営理念等各々の固有の実情を踏まえ、各社の創意工夫を尊重しているか、各社に対して不適切な負担を強いていないか等について、国民全体の厚生の最大化という幅広い視点に立ちつつ、検査・監督事務の品質の確保に努める。

そのため、総合政策局・監督局関係幹部において、例えば次の点について、保険会社から寄せられた意見も踏まえ、多角的・重層的な検証を行い、継続的に必要な改善を図る。

  • 情報収集やヒアリング、対話にあたり、保険会社に重複徴求等の過大な負担をかけないよう、業態別・分野別モニタリングチームの間で実効的な連携・情報共有を行っているか。また、資料提出依頼にあたり、依頼内容が明確か、各社の違い・特性に留意しているか、余裕をもった期限が設定されているか。

  • 特性把握にあたり、各社の経営環境や経営理念等各々の固有の実情を十分踏まえているか。また、当局担当者が思い込みに陥らないよう、客観的な資料・事実を踏まえているか。

  • 優先課題の洗い出しにあたり、各社固有の実情に応じた経営上の実質的な重要課題に着目できているか。また、他の保険会社や業態に広がりを持つ共通的な課題を見落としていないか。

  • モニタリング方針・計画の策定にあたり、適切なモニタリングの対象や手法が選択されモニタリングの実施を行う体制が整備されているか。

  • 報告徴求にあたり、当局の課題認識を保険会社に丁寧に説明しているか。

  • 上記Ⅲ-1-2(2)③を踏まえ、適切な対話になっているか。また、対話が一方的な指導となっていないか。

  • モニタリングの結果認められた課題や問題点について、根本原因分析が行われているか。

  • モニタリング結果の還元にあたり、優先課題を重点的に議論するために最も適した方法が選択されているか。また、還元する内容について、問題の重要性に応じた的確な議論や改善の要請等ができているか、些末な問題を指摘していないか、不適切な経営介入を行う結果となっていないか。

その際、モニタリング全般に関する意見申出制度に加え、幹部が保険会社を訪問し、保険会社から直接モニタリングについての意見を聞くなど、保険会社等からの率直な意見や批判を受ける機会を充実させるよう努める。
 また、保険会社及び金融庁職員等へのヒアリング等を通じた金融行政に対する外部評価や有識者会議等を通じた外部有識者からの意見聴取を実施する。

III -1-4 財務局との連携等

  • (1)金融庁と財務局との連携

    令第47条の3の規定により、特定保険募集人の登録、報告及び資料の提出命令並びに質問及び立入検査に関する権限は、金融庁長官から財務局長(特定保険募集人の主たる事務所の所在地を管轄するもの。)に委任している。

    特定保険募集人の募集業務の適正な運営等を確保するため、当該特定保険募集人に関して参考となる情報があれば、適宜、金融庁及び財務局が互いに情報提供するなど、密接な連携に努めるものとする。

  • (2)財務局間における連携

    令第47条又は第47条の3に規定された委任事項を行う財務局長は、委任された事項が他の財務局の管轄区域に及ぶときは、あらかじめ当該他の財務局長と協議することとするほか、その他参考となる情報があれば、適宜、当該他の財務局に情報提供するなど、密接な連携に努めるものとする。

  • (3)上記により委任される事項以外の権限について

    令第47条又は第47条の3の規定に基づく金融庁長官の権限のうち財務局長に委任されている権限以外の権限に係る認可又は承認等の申請があったときは、事情を調査の上、財務局の意見を付して、監督局長に進達することとするほか、当該保険会社に関して参考となる情報があれば、適宜、監督局担当部門に情報提供するなど、密接な連携に努めるものとする。

III -1-5 委任等

III -1-5-1 管轄財務局長の権限の一部の管轄財務事務所長への内部委任

特定保険募集人の主たる事務所の所在地が財務事務所、小樽出張所又は北見出張所の管轄区域内に所在する場合においては、管轄財務局長(福岡財務支局長及び沖縄総合事務局長を含む。以下同じ。)に委任した権限は、財務局長の判断により当該財務事務所長又は出張所長に行わせることができるものとする。

なお、これらの事項に関する申請書及び届出書等は、管轄財務局長宛提出させるものとする。

III -1-5-2 銀行の営業免許等に係る登録免許税納付額の報告について

銀行の営業免許等を行う金融庁長官(登記機関)は、登録免許税法第32条の規定に基づき、登録免許税法を所管する財務大臣に対し、登録免許税の納付額を通知しなければならない。

したがって、登記機関である金融庁長官が上記の通知を行うために必要となるので、各財務局においては、その年の前年の4月1日からその年の3月31日までの期間内にした認可等に係る登録免許税の納付件数及び納付額を様式・参考資料編 その他報告等様式集 様式 III-1-5-2により取りまとめ、これをその年の4月末日までに監督局に報告するものとする。

III -1-6 個別保険会社に関する行政報告

次の事項につき行政処理を行ったときは、その結果を遅滞なく監督局長に報告するものとする。

  • (1)法第128条第1項、第200条第1項及び第226条の規定による報告並びに資料の提出を求めたとき。

  • (2)法第271条の3第1項に規定する保険議決権保有届出書の受理

  • (3)法第271条の4第1項及び第3項に規定する変更報告書並びに第4項に規定する訂正報告書の受理

  • (4)法第271条の5に規定する基準日届出、同項に規定する保険議決権保有届出書及び同条第2項に規定する変更報告書の受理

  • (5)法第271条の6及び第271条の7に規定する訂正報告書の提出を命じたとき。

  • (6)法第271条の8に規定する報告及び資料の提出を命じたとき。

III -1-7 災害における金融に関する措置

III -1-7-1 災害地に対する金融上の措置

政府は、災害対策基本法によりその目的を達成するために必要な金融上の措置等を講じなければならないこととされている(同法第9条第1項)。こうしたことから、災害発生の際は、現地における災害の実情、資金の需要状況等に応じ、関係機関と緊密な連絡を取りつつ、保険会社に対し、機を逸せず必要と認められる範囲内で、以下に掲げる措置を適切に運用するものとする。

  • (1)保険金等の支払いに係る便宜措置

    保険証券、届出印鑑等を喪失した保険契約者等については、可能な限り便宜措置を講ずることを要請する。

  • (2)保険金の支払及び保険料の払込猶予に関する措置

    生命保険金又は損害保険金の支払いについては、できる限り迅速に行うよう配慮し、生命保険料又は損害保険料の払込については、契約者のり災の状況に応じて猶予期間の延長を行う等適宜の措置を講ずることを要請する。

  • (3)営業停止等における対応に関する措置

    保険会社において、窓口営業停止等の措置を講じた場合、営業停止等を行う営業店舗名等を、ポスターの店頭掲示等の手段を用いて告示するとともに、その旨を新聞やインターネットのホームページに掲載し、取引者に周知徹底するよう要請する。

III -1-7-2 南海トラフ地震の事前避難対象地域内外における金融上の諸措置

南海トラフ地震防災対策推進基本計画により国は、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)の内容その他これらに関連する情報(以下「巨大地震警戒」という。) が発表された場合における預貯金の払い戻し、平常時間外営業等金融機関がとるべき措置についての指導方針等を定めることとされている。

ただし、保険業務の事務処理の機械化とその無人サービス網の普及等により、地域的に分断して対応することが困難であることから、南海トラフ地震への対応については、現地における資金の需要状況等に応じ、関係機関と緊密な連絡を取りつつ、保険会社に対し、以下に掲げる措置を適切に運用するものとする。

  • (1)事前避難対象地域内に本店又は支店等の営業所を置く保険会社の巨大地震警戒発表時における対応について

    • マル1営業時間中に巨大地震警戒が発表された場合には、保険会社において、本店又は支店等の営業所における営業を停止するとともに、営業停止の措置を講じた旨を取引者に周知徹底するよう要請する。

    • マル2営業停止等を取引者に周知徹底させる方法は、保険会社において、営業停止等を行う営業店舗名等を、ポスターの店頭掲示等の手段を用いて告示するとともに、その旨を新聞やインターネットのホームページに掲載するよう要請する。

    • マル3休日、開店前又は閉店後に巨大地震警戒が発表された場合には、発災後の保険業務の円滑な遂行の確保を期すため、保険会社において、営業の開始又は再開は行わないよう要請する。

    • マル4その他

      • ア. 巨大地震警戒に伴う避難指示の措置が解除された場合には、保険会社において、可及的速かに平常の営業を行うよう要請する。

      • イ. 発災後の保険会社の応急措置については、上記「III-1-7-1 災害地に対する金融上の措置」に基づき、適時、的確な措置を講ずることを要請する。

  • (2)事前避難対象地域外に本店又は支店等の営業所を置く保険会社の巨大地震警戒発表時における対応について

    保険会社において、事前避難対象地域内の本店又は支店等の営業所が営業停止の措置をとった場合であっても、当該営業停止の措置をとった事前避難対象地域外の本店又は支店等の営業所については、平常どおり営業を行うよう要請する。

III -1-7-3 行政報告

以上のような金融上の諸措置をとったときは、遅滞なく監督局長に報告するものとする。

III -1-8 保険会社に関する苦情・情報提供

III -1-8-1 苦情等を受けた場合の対応

保険会社に関する相談・苦情等を受けた場合には、申出人に対し、当局は個別取引に関してあっせん等を行う立場にないことを説明する。

その上で、必要に応じ、保険会社及び保険関係団体の相談窓口並びに指定ADR機関を紹介するものとする。また、寄せられた相談・苦情等のうち、申出人が保険会社側への情報提供について承諾している場合には、原則として、当該保険会社への情報提供を行うこととする。

III -1-8-2 報告

  • (1)保険会社に対する監督上、参考になると考えられるものについては、その内容を記録(様式・参考資料編 その他報告等様式集 様式 III-1-8-2(1)参照)するものとし、特に有力な情報と認められるものについては、速やかに金融庁担当課に報告するものとする。

  • (2)各財務局管内における1年間の苦情受付件数を、毎年3月末現在でとりまとめ、これを4月末日までに金融庁担当課に報告するものとする(様式・参考資料編 その他報告等様式集 様式 III-1-8-2(2)参照)。

III -1-8-3 金融サービス利用者相談室との連携

  • (1)監督部局においては、金融サービス利用者相談室に寄せられた相談・苦情等の監督事務への適切な反映を図るため、以下の対応をとるものとする。

    • マル1相談室から回付される相談・苦情等の分析

    • マル2相談室との情報交換

  • (2)また、金融サービス利用者相談室に寄せられた相談・苦情等のうち、申出人が保険会社側への情報提供について承諾している場合には、原則として、監督部局において当該保険会社への情報提供を行うこととする。

III -1-9 法令解釈等の照会を受けた場合の対応

III -1-9-1 照会を受ける内容の範囲

保険業法等金融庁が所管する法令に関するものとする。なお、照会が権限外の法令等に係るものであった場合には、コメント等は厳に慎むものとする。

III -1-9-2 照会に対する回答方法

  • (1)本監督指針、審議会等の答申・報告等の既存資料により回答可能なものについては、適宜回答する。

  • (2)財務局が照会を受けた際、回答にあたって判断がつかないもの等については、「連絡箋」(様式・参考資料編 その他報告等様式集 様式 III-1-9-2(2)参照)を作成し、金融庁担当課と電子メール等により協議するものとする。

  • (3)金融庁担当課長は、当庁が所管する法令に関し、当庁所管法令の直接の適用を受ける事業者又はこれらの事業者により構成される事業者団体(注)から受けた、次のマル1及びマル2の項目で定める要件を満たす一般的な照会であって、書面による回答及び公表を行うことが法令適用の予測可能性向上等の観点から適切と認められるものについては、これに対する回答を書面により行い、その内容を公表することとする。

    • (注)事業者団体とは、当庁所管法令の直接の適用を受ける、業種等を同じくする事業者が、共通の利益を増進することを主たる目的として、相当数結合した団体又はその連合体(当該団体に連合会、中央会等の上部団体がある場合には、原則として、最も上部の団体に限る。)をいう。

    • マル1本手続きの対象となる照会の範囲

      本手続きの対象となる照会は、以下の要件の全てを満たすものとする。

      • ア. 特定の事業者の個別の取引等に対する法令適用の有無を照会するものではない、一般的な法令解釈に係るものであること(法令適用事前確認手続(以下、「ノーアクションレター制度」という。)の利用が可能でないこと。)

      • イ. 事実関係の認定を伴う照会でないこと。

      • ウ. 照会内容が、金融庁所管法令の直接の適用を受ける事業者(照会者が団体である場合はその団体の構成事業者)に共通する取引等に係る照会であって、多くの事業者からの照会が予想される事項であること。

      • エ. 過去に公表された事務ガイドライン等を踏まえれば明らかになっているものでないこと。

    • マル2照会書面(電子的方法を含む。)

      本手続きの利用を希望する照会者からは、以下の内容が記載された照会書面の提出を受けるものとする。また、照会書面のほかに、照会内容及び上記マル1に記載した事項を判断するために、記載事項や資料の追加を要する場合には、照会者に対して照会書面の補正及び追加資料の提出を求めることとする。

      • ア. 照会の対象となる法令の条項及び具体的な論点

      • イ. 照会に関する照会者の見解及び根拠

      • ウ. 照会及び回答内容が公表されることに関する同意

    • マル3照会窓口

      照会書面の受付窓口は、照会内容に係る法令を所管する金融庁担当課又は照会者を所管する財務局担当課とする。財務局担当課が照会書面を受領した場合には、速やかに金融庁担当課に電子メール等により照会書面を送付することとする。

    • マル4回答

      • ア. 金融庁担当課長は、照会者からの照会書面が照会窓口に到達してから原則として2ヵ月以内に、照会者に対して回答を行うよう努めることとし、2ヵ月以内に回答できない場合には、照会者に対してその理由を説明するとともに、回答時期の目途を伝えることとする。

      • イ. 回答書面には、以下の内容を付記することとする。

        「本回答は、照会対象法令を所管する立場から、照会書面に記載された情報のみを前提に、照会対象法令に関し、現時点における一般的な見解を示すものであり、個別具体的な事例への適用を判断するものではなく、また、もとより捜査機関の判断や司法判断を拘束しうるものではない。」

      • ウ. 本手続きによる回答を行わない場合には、金融庁担当課は、照会者に対し、その旨及び理由を説明することとする。

    • マル5公表

      上記マル4の回答を行った場合には、金融庁は、速やかに照会及び回答内容を金融庁ホームページ上に掲載して、公表することとする。

  • (4)(3)に該当するもの以外のもので照会頻度が高いものなどについては、必要に応じ「応接箋」(様式・参考資料編 その他報告等様式集 様式 III-1-9-2(4)参照)を作成した上で、関係部局に回覧し、金融庁担当課又は財務局担当課の企画担当係に保存するものとする。

  • (5)照会者が照会事項に関し、金融庁からの書面による回答を希望する場合であって、III-1-9-3(2)に照らしノーアクションレター制度の利用が可能な場合には、照会者に対し、ノーアクションレター制度を利用するよう伝えることとする。

III -1-9-3 法令適用事前確認手続(ノーアクションレター制度)

ノーアクションレター制度とは、民間企業等が実現しようとする自己の事業活動に係る具体的行為に関して、当該行為が特定の法令の規定の適用対象となるかどうかを、あらかじめ当該規定を所管する行政機関に確認し、その機関が回答を行うとともに、当該回答を公表する制度であり、金融庁では、法令適用事前確認手続きに関する細則を定めている。本項は、ノーアクションレター制度における事務手続きを規定するものであり、制度の利用にあたっては必ず様式・参考資料編 III.参考資料 [資料1]「金融庁における法令適用事前確認手続に関する細則」を参照するものとする。

  • (1)照会窓口

    照会窓口は、金融庁監督局総務課とする。

    なお、照会窓口たる金融庁監督局総務課は、下記(2)マル3の記載要領に示す要件を満たした照会書面が到達した場合は速やかに受け付け、照会事案に係る法令を所管する担当課室に回付する。

    財務局所管の金融機関等は、財務局に照会する。財務局が照会を受けた場合には、金融庁監督局総務課に対し、照会書面を原則として速やかに電子メール等により送付する。

    • (注)財務局においては、照会書面を金融庁監督局総務課に送付する際、原則として審査意見を付するものとする。

  • (2)照会書面受領後の流れ

    照会書面を回付された後は、担当課室において、回答を行う事案か否か、特に、以下のマル1ないしマル3について確認し、当制度の利用ができない照会の場合には、照会者に対しその旨を連絡する。また、照会書面の補正及び追加書面の提出等が必要な場合には、照会者に対し所要の対応を求めることができる。ただし、追加書面は必要最小限とし、照会者の過度な負担とならないよう努めることとする。

    • マル1照会の対象

      民間企業等が、新規の事業や取引を具体的に計画している場合において、当庁が本手続の対象としてホームページに掲げた所管の法律及びこれに基づく政府令(以下、「対象法令(条項)」という。)に関し、以下のような照会を行うものか。

      • ア. その事業や取引を行うことが、無許可営業等にならないかどうか。

      • イ. その事業や取引を行うことが、無届け営業等にならないかどうか。

      • ウ. その事業や取引を行うことによって、業務停止や免許取消等(不利益処分)を受けることがないかどうか。

      • エ. その事業や取引を行うことに関し、直接に義務を課され又は権利を制限されることがないかどうか。

    • マル2照会者の範囲

      照会者は、実現しようとする自己の事業活動に係る具体的行為に関して、対象法令(条項)の適用に係る照会を行う者及び当該者から依頼を受けた弁護士等であって、下記マル3の記載要領を満たした照会書面を提出し、かつ、照会内容及び回答内容が公表されることに同意しているか。

    • マル3照会書面の記載要領

      照会書面(電子的方法を含む。)は、下記の要件を満たしているものか。

      • ア. 将来自らが行おうとする行為に係る個別具体的な事実が記載されていること。

      • イ. 対象法令(条項)のうち、適用対象となるかどうかを確認したい法令の条項が特定されていること。

      • ウ. 照会及び回答内容が公表されることに同意していることが記載されていること。

      • エ. 上記イ.において特定した法令の条項の適用に関する照会者の見解及びその根拠が明確に記述されていること。

    • マル4回答

      照会書面を回付された課室の長は、照会者からの照会書面が照会窓口に到達してから原則として30日以内に照会者に対する回答を行うものとする。ただし、次に掲げる場合には、各々の定める期間を回答期間とする。なお、いずれの場合においても、補正期間を含め、できるだけ早く回答するよう努めることとする。

      • ア. 高度な金融技術等に係る照会で慎重な判断を要する場合 ・・・・・ 原則60日以内

      • イ. 担当部局の事務処理能力を超える多数の照会により業務に著しい支障が生じるおそれがある場合 ・・・・・ 30日を超える合理的な期間内

      • ウ. 他府省との共管法令に係る照会の場合 ・・・・・ 原則60日以内

        照会書面の記載について補正を求めた場合にあっては、当該補正に要した日数は、回答期間に算入しないものとする。また、30日以内に回答を行わない場合には、照会者に対して、その理由及び回答時期の見通しを通知することとする。

    • マル5照会及び回答についての公開

      金融庁は、照会及び回答の内容を、原則として回答を行ってから30日以内に全て金融庁ホームページに掲載して公開する。

      ただし、照会者が、照会書に、回答から一定期間を超えて公開を希望する理由及び公開可能とする時期を付記している場合であって、その理由が合理的であると認められるときは、回答から一定期間を超えて公開することができる。この場合においては、必ずしも照会者の希望する時期まで公開を延期するものではなく、公開を延期する理由が消滅した場合には、公開する旨を照会者に通知した上で、公開することができる。また、照会及び回答内容のうち、行政機関の保有する情報の公開に関する法律に定める不開示事由に該当しうる情報が含まれている場合、必要に応じ、これを除いて公表することができる。

Ⅲ-1-9-4 グレーゾーン解消制度

産業競争力強化法(以下、「強化法」という。)第7条第1項は、新事業活動を実施しようとする者は、その実施しようとする新事業活動及びこれに関連する事業活動に関する規制について規定する法律及び法律に基づく命令(告示を含む。以下、Ⅲ-1-9-4において「法令」という。)の規定の解釈並びに当該新事業活動及びこれに関連する事業活動に対する当該規定の適用の有無について、その確認を求めることができる制度(以下、「グレーゾーン解消制度」という。)を規定している。本項は、グレーゾーン解消制度における事務手続きを規定するものであり、制度の利用に当たっては、「「グレーゾーン解消制度」、「規制のサンドボックス制度」及び「新事業特例制度」の利用の手引き」(令和4年7月15日経済産業省)(以下、同省による改正後のものを含め、Ⅲ-1-9-4において「利用の手引き」という。)を参照するものとする。

  • (1) 照会窓口

    照会窓口は、金融庁総合政策局総合政策課とする。

     

    なお、照会窓口たる金融庁総合政策局総合政策課は、下記(2)③の記載要領に示す要件を満たした照会書が到達した場合は速やかに受け付け、当該照会書の提出先が二以上の主務大臣であるときは、他の主務大臣に対し、その確認を求めるものとする。

  • (2) 照会書受領後の流れ

    照会書を受け付けた後は、総合政策局総合政策課において、当該照会書に記載された確認の求めに係る法令を所管する担当課室に速やかに回付するとともに、当該担当課室と協議しつつ、回答を行う事案か否か、特に、以下の①から③について確認し、当制度の利用ができない確認の求めの場合には、当該照会書を提出した者(以下、Ⅲ-1-9-4において「提出者」という。)に対しその旨を連絡する。また、照会書の補正、追加書類の提出等が必要な場合には、提出者に対し所要の対応を求めることができる。ただし、追加書類は必要最小限とし、提出者の過度な負担とならないよう努めるものとする。

    • ① 確認の求めの主体

        以下のア.及びイ.を満たすか。

      •   ア.提出者は、新事業活動を実施しようとする者であること。

         (注)「新事業活動」とは、新商品の開発又は生産、新たな役務の開発又は提供、商品の新たな生産又は販売の方式の導入、役務の新たな提供の方式の導入その他の新たな事業活動のうち、当該新たな事業活動を通じて、生産性(資源生産性(エネルギーの使用又は鉱物資源の使用(エネルギーとしての使用を除く。)が新たな事業活動を実施しようとする者の経済活動に貢献する程度をいう。)を含む)の向上又は新たな需要の開拓が見込まれるものであって、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがないものをいう(強化法第2条第4項、産業競争力強化法に基づく新技術等実証及び新事業活動に関する規制の特例措置の整備等及び規制改革の推進に関する命令(以下、「強化法命令」という。)第2条)。

      •  イ.提出者が、当庁所管の事業に係る新事業活動を実施しようとしている者であること。または、提出者が、その新事業活動及びこれに関連する事業活動に関する規制について規定する当庁が所管する法令の規定の解釈及び当該規定の適用の有無について、その確認を求めようとしている者であること。

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    • ② 照会の対象

      提出者が、その実施しようとする新事業活動及びこれに関連する事業活動に関する規制について規定する当庁が所管する法令の規定の解釈及び当該規定の適用の有無について、その確認を求めるものであって、以下のような照会を行うものか。

      • ア.その事業や取引を行うことが、無許可営業等にならないか。

      • イ.その事業や取引を行うことが、無届け営業等にならないか。

      • ウ.その事業や取引を行うことによって、業務停止や免許取消等(不利益処分)を受けることがないか。

      • エ.その事業や取引を行うことに関し、直接に業務を課され又は権利を制限されることがないか。

    • ③ 照会書の記載要領

      強化法命令様式第九に従い、また利用の手引きを踏まえ、以下の事項が記載されているか。

      • ア.新事業活動及びこれに関連する事業活動の目標

      • イ.新事業活動及びこれに関連する事業活動の内容

      • ウ.新事業活動及びこれに関連する事業活動の実施時期

      • エ.解釈及び適用の有無の確認を求める法令の条項等

      • オ.具体的な確認事項

  • (3) 回答

    照会書を回付された課室は、総合政策局総合政策課において回答を行う事実と判断した場合においては、提出者からの照会書が照会窓口に到達してから原則として1ヵ月以内に提出者に対し強化法命令様式第十一による回答書を交付するものとする。

    また、照会書を回付された課室は、当該照会書に記載された確認の求めに係る法令の規定の解釈及び適用の有無についての検討の状況に照らし、上記期間内に回答書を交付することができないことについてやむを得ない理由がある場合には、当該回答書を交付するまでの間1ヵ月を超えない期間ごとに、その旨及びその理由を提出者に通知するものとする。

III -1-10 保険会社等が提出する申請書等における記載上の留意点

保険会社、保険持株会社、保険募集人又は保険仲立人が提出する申請書等において、役員等又は保険計理人の氏名を記載する際には、氏を改めた者においては、旧氏及び名を括弧書で併せて記載することができることに留意する。

なお、免許申請書等又は役員等の選退任の届出書等に、既に旧氏及び名を併せて記載して提出している場合には、当該旧氏及び名を変更する旨を届け出るまでの間、当該書類以外の様式を含め、当該旧氏及び名のみを記載することができることに留意する。

III -1-11 書面・対面による手続きについての留意点

保険会社等による当局への申請・届出等及び当局から保険会社等に対し発出する処分通知等については、それぞれ情報通信技術 を活用した行政の推進等に関する法律(以下「デジタル手続法」 という。)第六条第一項及び第七条第一項の規定により、法令の規定において書面等により行うことその他のその方法が規定されている場合においても、当該法令の規定にかかわらず、電子情報処理組織を使用する方法により行うことができることとされている。

こうしたデジタル手続法の趣旨を踏まえ、同法の適用対象となる手続きに係る本監督指針の規定についても、当該規定の書面・ 対面に係る記載にかかわらず、電子情報処理組織を使用する方法により行うことができるものとする。

また、経済社会活動全般において、デジタライゼーションが飛躍的に進展している中、政府全体として、書面・押印・対面手続きを前提とした我が国の制度・慣行を見直し、実際に足を運ばなくても手続きができるリモート社会の実現に向けた取組みを進めている。

金融庁としても、こうした取組みを着実に進めるため、保険会社等から受け付ける申請・届出等について、全ての手続きについてオンラインでの提出を可能とするための金融庁電子申請・届出システムを更改したほか、押印を廃止するための内閣府令及び監督指針等の改正を行うこと等により、行政手続きの電子化を推進してきた。

更に、民間事業者間における手続についても、「金融業界における書面・押印・対面手続の見直しに向けた検討会」を開催し、業界全体での慣行見直しを促すことにより、書面の電子化や押印の不要化、対面規制の見直しに取り組んできた。

このような官民における取組みも踏まえ、本監督指針の書面・対面に係る記載のうち、デジタル手続法の適用対象となる手続きに係るもの以外についても、「Ⅲ-1-12 申請書等を提出するに当たっての留意点」に掲げる原本送付を求める場合を除き、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法により行うことができるものとする。

以上のような取扱いとする趣旨に鑑み、本監督指針の規定に基づく手続きについては、手続きの相手方の意向を考慮した上で、 可能な限り、書面・対面によらない方法により行うことを慫慂するものとする。

III -1-12 申請書等を提出するに当たっての留意点

「Ⅲ-1-11 書面・対面による手続きについての留意点」を踏まえ、保険会社等による当局への申請・届出等については、原則として、以下(1)、(2)に掲げる方法により提出を求めることとする。

 ただし、公的機関が発行する添付書類(住民票の写し、身分証明書、戸籍謄本、税・手数料等の納付を証する書類等)については、原本送付を求めることとする。

  • (1) 金融庁電子申請・届出システム

    保険会社等による当局への申請・届出等のうち、(2)に掲げる金融庁業務支援統合システム(以下「統合システム」という。) を利用して提出を求める手続を除いては、原則として、金融庁電子申請・届出システムを利用して法令に定める提出期限までに提出を求めることとする。

  • (2)金融庁業務支援統合システム

    業務報告書(中間期にあっては中間業務報告書)については、 原則として、統合システムを利用して提出を求めることとする。

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