平成12年12月1日
金融庁

企業会計審議会第11回第二部会議事録について

企業会計審議会第11回第二部会(平成12年11月9日(木)開催)の議事録は、別紙のとおり。

(問い合わせ・連絡先)

金融庁(TEL 03-3506-6000)
総務企画部企業開示参事官室
企業会計審議会事務局


企業会計審議会第11回第二部会議事録

日時:平成12年11月9日(木)午後2時00分~午後4時03分

場所:中央合同庁舎第4号館4階共用第一特別会議室

○脇田部会長

定刻になりましたので、これより第11回第二部会を開催いたします。

早速議事に入らせていただきます。

本日から、ゴーイング・コンサーンについて御検討いただくことになっております。これまでの御議論でも、ゴーイング・コンサーンの問題は、いろいろな観点から検討する必要があるということになっておりましたけれども、本日から2回にわたって御報告をいただき、御検討いただくことを予定しております。

本日は、その第1回といたしまして、用語や概念の意味と整理を高山委員に御報告いただき、続いて、投資家から見たリスク情報の観点から、渡辺委員に御報告をいただくことといたしております。

ちなみに、次回は、駿河台大学の八田教授に、日本監査研究学会の研究報告に基づき御報告をいただき、また市川公認会計士に、監査実務の観点から御報告をいただくことを予定しております。

それでは、早速でございますが、まず高山委員から御報告をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○高山委員

日本公認会計士協会リサーチ・センター研究員の高山です。

本日は、「ゴーイング・コンサーン問題を考える上での関連する用語と意味の整理」というテーマで、約30分ほどお時間をいただいておりますので、委員の皆様に議論の材料を提供させていただく感じで発表させていただきたいと思っております。

なお、発表における意見は私見でありますので、疑義があろうかとは思いますけれども、この点は御了承いただきたいと思います。

今回の私の発表は、「監査基準等の一層の充実に関する論点整理」において、『我が国においても、ゴーイング・コンサーン問題との関係も踏まえた上で、未確定事項に関する考え方を整理する』という点を受けて発表させていただくものであります。発表に関する資料につきましては、資料1-1から資料の1-4がお手元にございますので、こちらをごらんいただきたいと思います。

では、資料1-1、2ページ目をごらんください。

これから発表させていただきます内容として関連する用語を示しておりますが、まず、偶発事象について、我が国の会計監査に関する実務を御紹介させていただき、国際的な基準についても、あわせて簡単に御紹介したいと思っております。

次に、後発事象についても同様に御紹介をさせていただく予定です。

さらに、これらを受けまして、本日のメーンテーマであります未確定事項、ゴーイング・コンサーンについて、その後に発表させていただきたい、こう思っております。

次の3ページ目をごらんください。

まず初めに、偶発事象とは何かということです。日本公認会計士協会から公表されております監査基準委員会報告書第2号「特記事項」におきまして、偶発事象は、「利益又は損失の発生する可能性が不確実な状況が貸借対照表日現在既に存在しており、その不確実性が将来事象の発生すること又は発生しないことによって最終的に解消されるものをいう」と規定されております。

偶発事象は、偶発利益と偶発損失に分類されるとされ、偶発損失について、その発生の可能性の程度に応じて分類がなされ、それぞれに応じての会計処理が要求されております。

次の4ページ目をごらんください。

まず、分類としましては、発生の可能性が高い場合、発生の可能性がある程度予想される場合、及び発生の可能性が低い場合の3つに分類されます。

これらに対応する会計処理として、まず、発生の可能性が高く、かつ金額を合理的に見積もることができる場合には、引当金を計上しなければならないとされております。

次に、発生の可能性は高いが金額を合理的に見積もることができない場合、及び発生の可能性がある程度予想される場合については、偶発債務として、財務諸表に注記をするとされております。

最後に、発生の可能性が低い場合には、特に開示は要求されておりません。

このように偶発事象の注記としての開示が求められているのは、このうちのマル2の場合であり、監査報告書における特記事項の記載対象となるものであります。

次に、この偶発債務に関する監査上の取り扱いとしては、次の5ページに示しております。

基本的に、会計上の取り扱いのとおりに処理されておれば、監査上は問題にはならないと考えます。しかし、マル1の場合、重要性があるにもかかわらず、引当が行われていなければ限定事項となります。したがって、監査意見としては、その重要性により、限定意見あるいは不適性意見が表明されると考えられます。

次に、マル2の場合、重要性がある場合で、注記が行われていなければ限定事項になると思われます。

なお、マル2の場合で、注記がなされている場合、先ほども申し上げましたが、監査報告書上において、特記事項として記載するか否かを監査人は検討しなければならないとされております。

また、マル3の場合には、監査報告書における説明は要求されません。ここで、これらの取り扱いを米国でのそれらと対比しましたところ、基本的に相違点はないように思われます。ただ、監査上の対応といたしまして、我が国においては、繰り返しになりますけれども、重要性がある場合には、監査報告書上、偶発事象について特記事項として記載する、こうされておりますけれども、米国においては、説明区分に記載されるとされておりまして、差異としてはこの点を指摘することができると考えます。

次に、米国基準及び国際会計基準における偶発事象にかかわる規定については、次の6ページ目に記載しております。

米国基準における定義につきましては、3ページで御紹介した我が国の偶発事象の定義と比較いたしましても大きな差異はないと考えられます。また、発生の分類ということが基準において規定されておりますが、これも、我が国における会計上の対応で見たとおり、差異はないと考えられます。

国際会計基準については、紙面の都合上、このページには記載しておりませんけれども、お手元の資料1-2に、我が国及び国際的な基準に関する該当箇所を抜粋したものを御用意いたしましたので、それをごらんいただきたいと思います。

その中の資料1-2の6ページ目に、該当箇所を記載させていただいておりますので、ごらんいただきたいと思います。

以上のように、偶発事象に関しては、一部監査報告書上の取り扱いに違いはあるものの、これを除いては差異はないと考えられます。

続きまして、後発事象について御紹介したいと思います。資料1-1に戻っていただけますでしょうか。7ページ目をごらんください。

「後発事象とは、貸借対照表日後に発生した事象で、次期以降の財政状態及び経営成績に影響を及ぼすものをいう」と、企業会計原則、注解、注1-3に規定されております。そして、この後発事象には、第一の事象と第二の事象という区分が行われておりまして、これにつきましては、昭和59年7月に、日本公認会計士協会会計制度委員会から、「重要な後発事象の開示について」と題するものが出ておりまして、この中に、この第一の事象、第二の事象というものが述べられております。

ここで第一の事象は、「貸借対照表日現在の状況に関する会計上の判断ないし見積もりをする上で、追加的ないし、より客観的な資料を提供するもの」と定義されておりまして、「第一の事象は、これにより、当該事象が発生する以前の段階における判断ないし見積もりを修正する必要が生じた場合に、当該事業年度の貸借対照表及び損益計算書を修正しなければならないものである」とされております。

また、第二の事象につきましては、「当該事業年度の財務諸表には影響を及ぼさないが、よく事業年度以降の財政状態及び経営成績に影響を及ぼすものであり、会社の財政状態及び経営成績に関する的確な判断を行うために開示が必要であると認められるもの」とされておりまして、「第二の事象は、その内容が営業報告書に記載され、または財務諸表に注記されなければならないものである」とされております。

このように、後発事象とは、決算日を基準といたしまして、決算日以降に発生した事象を対象として開示が求められるものでありまして、初めに御紹介いたしました偶発事象と同様に、我が国の監査の立場からは、特記事項の対象として、監査報告書上記載するか否かを検討しなければならないものであるということが言えます。

続きまして、後発事象に関する国際的な基準について見ていきたいと思います。次の8ページ目をごらんいただきたいと思います。

まず、米国における後発事象についての規定ですけれども、米国では、会計基準として、後発事象というものは体系的に整備されてはいないようで、一般的には、SASにおいて整備されている、このようにされておるようです。

資料1-2、9ページ目をお手数ですがごらんいただきたいと思います。

米国における規定では、財務諸表に重要な影響を与え、したがって、財務諸表の修正または注記による開示が必要となる事象や取引が、貸借対照表日以後であるが、財務諸表と監査人の報告書の発行前に発生することがある。これらの出来事は、後発事象と呼ばれる、このようにされております。

そして、後発事象に2つのタイプがあるとされておりまして、これらは、我が国の規定――先ほど申し上げました第一の事象、第二の事象があると言いましたが、これらと同様なものと理解され、特に差異はないものと考えられます。

続きまして、国際会計基準及び国際監査基準についてでありますが、国際会計基準においては、IASの10号に、また、国際監査基準については、ISAの21号に、それぞれ規定されております。お手数ですが、資料1-2の6ページ目をごらんいただきたいと思います。

ここで、後発事象とは、貸借対照表日と財務諸表公表の機関決定日との間に生ずる有利な事象及び不利な事象の双方である。後発事象に関しては、状況が貸借対照表日には既に存在していたことを証拠づけられる事象である修正後発事象と、状況が貸借対照表日以後に発生したことを示す事象である非修正後発事象とに分類されるとされております。これも、我が国の規定と差異はないものと理解しております。

また、国際監査基準についてですけれども、これらにつきましては、各国における制度的な違いを調整するためのものかはわかりませんけれども、我が国などのとらえ方よりも広い概念でとらえられているようでございます。つまり、我が国においては、財務諸表に対する監査報告書提出後発生しました事象についてまでは、監査責任につきましては及ばないと私は理解しておるんですけれども、国際監査基準では、監査報告書提出後、会社が当該監査済み財務諸表を公表するまでの間の期間についても検討することが求められておりまして、これは、先ほど申し上げたとおり、国によって制度が異なるための措置であると考えられます。

また、現状では、我が国においては、後発事象に関する監査手続を規定した指針等はなく、資料1-2には含めませんでしたけれども、監査第一委員会報告第44号、「後発事象に関する監査上の取り扱い」及び会計制度委員会から、「重要な後発事象の開示」が公表されている程度でありまして、個々の監査人による監査手続ですとか、あるいは判断に関する指針等は現状では定められていないということであります。

以上、偶発事象及び後発事象について見てきたわけですけれども、これらは、財務諸表作成に当たり、財務諸表利用者が企業の財政状態及び経営成績を理解する上で重要な情報であることから、その開示の有用性が認められ、注記事項などで開示が求められているということは御承知のとおりと思われます。しかし、近年においては、これらの開示にとどまらず、より広範囲な企業のリスク情報を投資家は求めてきております。

この中には、メーンテーマであるゴーイング・コンサーンにかかわる不確実性の開示も含まれているということが言えるかと思われます。そこで、ここで使用されておる用語といたしまして、未確定事項という言葉がございます。次に、これらについて見ていきたいと考えております。次のページをごらんいただきたいと思います。

未確定事項あるいは未確定な事象ということですが、我が国におきましては、基準、規則等では、明確な定義等はございません。したがいまして、国際的な基準を参考に見ていきたいと思います。

定義とまでは言えるかわかりませんけれども、国際監査基準のGLOSSARY OF TERMSという書がありまして、ここにおきまして、国際監査基準において使用される用語について説明がなされておりまして、この中に、uncertaintyについて説明がございますので、これを御紹介したいと思います。

未確定事項あるいは未確定な事象とは、事業体が直接にコントロールできない将来の行動または事象に依存する事柄であり、財務諸表に影響する可能性のある事象であるとされております。この内容から見ますと、非常に広い概念としてとらえられると考えられます。しかしながら、財務諸表監査という立場から考えますと、被監査会社におけるすべての未確定な事象を対象といたしまして監査するということは到底不可能でありまして、あくまでも財務諸表に影響を及ぼす可能性のある未確定な事象をその対象として検討する必要があるのではないかと考えます。

一方、米国においては、この点につきまして、未確定な事象は国際監査基準での説明のような将来の不確実性を伴う事柄という表現もあるんですが、これ以外にも関連するものがあるということが述べられておりまして、その一例として、その下に何項目か掲げさせていただいております。

まず、偶発事象についてですけれども、これは、初めの説明で御紹介したとおりでありますので、ここでは割愛させていただきます。

また、SASの59号におきまして、継続企業としての存続能力に関する監査人の検討というものがございます。これについては、後ほどゴーイング・コンサーンに関するところで見ていきたいと思いますので、ここでは説明は省略いたします。

また、AICPA意見書(SOP94-6)というものが公表されております。これは、前回の部会におきまして、内藤先生の方から、事務局から提出されました米国における未確定事項の数に関する推移表に対して補足をされましたけれども、その際に、このSOP(Statement of position)94-6という報告がAICPAから公表され、未確定事項に関する注記の範囲が広くなったという御説明があったかと思います。

この報告書によりますと、経営者はすべてのリスク及び未確定事項を検討し、かつ開示すべきリスク及び未確定事項の選定と、それらの開示方法を決定しなければならず、一方、監査人は、この報告書に照らしまして、企業が行ったリスク及び未確定事項の評価が適切なものかどうか、また、開示は適切かどうかについて判断しなければならない、このようにされております。そして、具体的な例示につきまして、13項目ほどたしか示されていたかと思います。

このように未確定事項は、企業経営における将来の不確実性に関するリスクのうち、財務諸表に影響する可能性がある事象が対象であり、その中には、ゴーイング・コンサーンに関する不確実性も含まれる可能性が高いと考えられます。

では、このゴーイング・コンサーンに関しまして、国際的な基準はどのようになっておるのかというところについて、次に見ていきたいと思います。資料1-1の10ページ目をごらんいただきたいと思います。

まず、国際会計基準ですけれども、IAS第1号、財務諸表の表示のパラグラフ23に規定されております。お手数ですけれども、資料1-2の6ページ目に該当箇所を抜粋したものを書かせていただいておりますので、ごらんいただきたいと思います。

そこをちょっと読ませていただきますが、「財務諸表を作成するに際して、経営者は企業が継続企業として存続する能力があるかどうかを検討しなければならない。経営者に当該企業の清算若しくは営業停止の意図があるか、又はそうする以外に現実的な代替案がない場合以外は、財務諸表は継続企業の前提により作成しなければならない。経営者が、この検討を行うに際し、当該企業の継続企業としての存続能力に対して重大な疑問を生じさせるような事象又は状態に関する重要な不確定事項を発見したときは、その不確定事項を開示しなければならない。財務諸表が継続企業の基準で作成されていない場合には、その事実を財務諸表作成及び当該事業が継続企業とは認められない理由とともに開示しなければならない」このようにされております。

そして、経営者は、その検討の機会について、少なくとも12カ月間におけるすべての情報について検討しなければならないとされております。

また、IAS10号「後発事象」の中にも、ゴーイング・コンサーンにかかわる規定がございます。読みますと、「企業は、次のいずれかの場合には、継続企業ベースで財務諸表を作成してはならない。すなわち、経営者が当該企業を清算するつもりであるかまたは営業をやめるつもりであることを貸借対照表日後において決めている場合、あるいはそうする以外に現実的な選択肢がない場合のいずれかの場合である」

この10号は、先ほど御紹介いたしました第1号の中にある規定を逆から規定した面があるものと考えられます。すなわち、経営者に当該企業の清算もしくは営業停止の意図があるか、またはそうする以外に現実的な代替案がない場合には、継続企業を前提とした財務諸表を作成してはならず、清算価値などによる財務諸表を作成しなければならないということであります。

次に、国際監査基準ですが、集成ISA570「ゴーイング・コンサーン」が公表されております。この規定は、99年の6月に改定が行われております。この規定によれば、監査人は監査を計画するに当たって、継続企業として存続する事業体の能力についての重大な疑念を投げかけるおそれのある事象または状況があるかどうかを検討しなければならないとされております。そして、監査計画立案段階から、ゴーイング・コンサーンについての検討を行うことで、早期に問題点を識別することができ、これによって、経営者との事前の討議が行え、また、経営者が予定している計画についてのレビューも実施できるということから、その後に予定されている監査手続にも影響するであろう事象を識別し、適時に監査計画を変更することが可能になる、このようにされております。

そして、監査人は、継続企業として存続する事業体の能力についての経営者による評価を検討しなければならないと規定されております。これは、経営者による評価が妥当か否かについて、監査人は評価しなければならないという二重責任の原則を示したものと考えられます。監査人は、あくまでも経営者による評価が妥当か否かを評価する責任を負っており、企業の存続自体について評価するのではないということであろうかと思います。

次に、資料1-1、11ページ目に参りたいと思います。

国際会計基準、監査基準は、今のとおりであります。11ページ目には、米国におけるゴーイング・コンサーンに関する取り扱いを示しております。米国では、国際会計基準のように、会計基準の中にゴーイング・コンサーンの規定は実は置かれておりません。あくまでゴーイング・コンサーンは会計公準として位置づけられていると考えられているようであります。したがいまして、SASの規定について御紹介したいと思います。

SASには、ゴーイング・コンサーンに関して重大な疑念がある場合の例示が実は行われておりまして、今後の議論の参考になると思われますので、御紹介したいと思います。

まず第1に、財政悪化の傾向があること。これは、例えば、経常的な営業損失が発生しており、改善する可能性が低いような場合ですとか、運転資金が近い将来不足するようなことが見込まれるような場合、また、財務比率が悪化してきているような場合などが考えられようかと思います。

次に、財政破綻の兆候があること。これは、例えば、借入金の返済の不履行ですとか、あるいは借りかえができないような状態、あるいはまた、社債の償還ができないような場合ですとか、主要な資産を処分する以外に資金の手当てができないような場合などが考えられようかと思います。

第3に、内部の問題があること。これは、例えば、ストライキなどの労働争議の長期化ですとか、あるいは特定のプロジェクトや製品などに過度に依存しているような状態などが考えられようかと思います。今日の日経にも掲載されていたと思うんですけれども、経営再建のための人員削減について、労使交渉が不調に終わって、自主再建を断念した韓国の会社の例があったと思いますけれども、これらもこの内部の問題があったということに該当するのかなというふうに思われます。

第4に、既に発生している外部の問題による影響。これは、例えば、営業自体に重要な影響を及ぼすおそれのある訴訟の存在ですとか、不測の事態の影響、これは、最近頻発している地震ですとか、あるいは洪水、また噴火などの自然災害等で、事業へ直接影響があるような場合が考えられるのではないかなと思われます。

これらは、いずれも事業を継続することに対して客観的に見た場合に、疑義が唱えられるような状況を示している例だと思われます。ただ、これらは、あくまでも例示でありまして、これら以外にも、それぞれの業種ですとか、あるいは事業環境、さらには同じ業種であっても、企業によってさまざまに条件が変わってくることもあるかと思われますし、ある企業では特に問題がない状況であったとしても、別の企業にとっては死活問題となる場合もあると思われます。したがいまして、ゴーイング・コンサーンに影響する状況というのは、各企業によってさまざまであろうかと、このように考えております。

次に、では、このようなゴーイング・コンサーンに疑義が考えられる時点はどの時点なのか。また、リスク情報として公表すべき時点としてはどこが適当な時点なのかということについて、次に考えてみたいと思います。12ページ目をごらんいただきたいと思います。

この表は、実は、カナダ会計士協会が行ったゴーイング・コンサーン問題に関する調査報告書の中に示されている図を参考にさせていただきまして、私なりに考えたゴーイング・コンサーンの前提に関する妥当性の程度を示した表であります。横軸は時間の経過とお考えいただければと思います。例えば、ある会社が破産したという状況を一応想定した場合に、では、その会社について、時間をさかのぼるとどういう状況であったのかということを、ゴーイング・コンサーンの前提は過去の時点において、どの程度であったのかということを考えてみたいと思います。

当初は、ゴーイング・コンサーンを前提として当然企業は経営を行っているわけでありますので、ゴーイング・コンサーンに影響するような事象はその時点では多分見えない状態にあろうか、このように考えております。この場合、経営者が影響が小さいうちに、あるいは顕在化する前に対処することができておれば、特に問題はないと思われるんですが、影響が大きくなってきた段階では、それへの対応というのはかなり大がかりなものとなると思われます。

対応がおくれてしまいますと、当初、わずかの影響で済んでいたであろう状態であっても、経営環境などが悪化することによって、時間の長短はあるにせよ、雪だるま式にその影響は大きくなっていくのではないかなと考えられ、図では、問題の顕在化のあたりから、継続企業の前提に関する妥当性の程度が急激に悪化し始めるのではないかなということを考えまして、そのような表現をしております。

決してよい例ではないかもしれないんですけれども、中堅のゼネコンなどは、自社の体力以上に開発にバブルの時期に手を出して、バブル崩壊とともに、これらが塩漬けになってしまって、財務状態は極端に悪化、銀行に対して債務免除を申し出なければ立ち直ることもできないという状況がございます。

このように、時間的な経過をさかのぼっていきますと、これらの原因は判明するわけですけれども、過去にさかのぼるということではなくして、ある時点において、これらのリスクをどう評価し、かつ、これを投資家に対してどう開示するのかということが、まさにこのゴーイング・コンサーンを考える上で非常に重要な問題になるのではないかなというふうに考えております。

企業を取り巻く経営環境においては、内外に無数の未確定、不確定な状況というのは必ず存在しておるものだと思います。このような状況の中で、リスクを最小化して、最大の利益を獲得するということを企業経営をされている方々はテーマとして活動されているわけでありますので、これらの事象のうち、特に企業経営自体に影響を及ぼす可能性のある場合の経営者の対応というのは、まさにこのゴーイング・コンサーンにかかわる問題であって、財務諸表監査におけるゴーイング・コンサーンの検討は、まさにこの点を指すのではないかなというふうに考えております。

従来の監査の現場におきましては、暗黙のうちに、継続企業の前提がありまして、そのもとで、個別の勘定についての検証が順次進められてきたわけであります。しかし、継続企業の前提自体が揺らいでいる状態で、従来のような監査手続を実施して、仮に適正意見が出されたとしましても、その後に突然倒産するようなケースが後を絶たない現状では、従来型の監査では当然対応できないということであります。

監査対象企業の継続企業としての前提が問題ないかどうかということを、例えば国際監査基準で見たように、監査計画の段階から評価し、その評価に基づいて個別の監査計画を立案して、具体的な監査手続を実施していくということが必要になってきているのではないかなと思います。したがって、いかなる場合に、ゴーイング・コンサーンに疑義があると判断するのか。また、開示の時点ですとか、あるいは開示方法、具体的には、渡辺委員がこの後、お話しされるかと思いますけれども、非監査情報のレベルから開示を必要とするのか、それとも、ぎりぎりまで待って、非公開として、顕在化したときに、追加情報などの会計情報に含めて開示するのか、これらの課題についてどう対処するのかということを先ほどの米国での例などを踏まえまして、我が国の基準なり記載方法なりを検討する必要があろうかと考えております。

今までの私の話をまとめたのを13ページ目に記載しております。企業のゴーイング・コンサーンに関する懸念は、会計基準の適用に関する前提にかかわるものでありますので、監査人としても、このような懸念がないかどうかということを検討しなければならないと思われます。このような評価というのは、国際的な流れでもあるということは、今まで見てきたとおりだと思います。

このような理解のもとで、さて、では、監査人をどうすればよいのかということになりますけれども、重要な未確定事項が存在する場合には、単に適用されている会計処理の方法や開示についての検討を行うのではなく、未確定事項の存在がゴーイング・コンサーンに影響する可能性があるのか、ないのかということをまず評価する必要が出てまいります。その際、前提となりますのは、企業におけるリスクの評価及びその対策、並びに開示に関する方針や開示に関する基準というものが必要になるかと思います。

しかし、未確定事項の存在自体が、では、即ゴーイング・コンサーンの前提に疑義をもたらす状況なのかという疑問も一方では出てまいります。これは、ある特定の未確定事項が非常に重要で、その影響が非常に大きいという場合も当然あろうかと思われますけれども、これに限らず、企業における個々の事情や経営環境等も複合的に影響するものと考えられます。したがって、単に未確定事項の存在について検討するというのではなくして、その他の事象ですとか、状況についても、総合的に評価を行って、これによって、監査人はゴーイング・コンサーンの前提に問題がないかどうかを評価しなければならないものと考えられます。

最後になりますが、前回の部会におきまして、参考資料として配付されました特記事項の記載例について、本日検討いたしました偶発事象、後発事象等の注記事項にかかわる特記事項について、その内容別分類を参考までに実施してみましたものを資料1-3としてお配りしております。

この中に、特にゴーイング・コンサーンに関連するような事例がございますので、資料1-4にその具体的な部分をコピーをおつけてしております。これらについて簡単に御紹介したいと思います。

まず、資料1-3の見方なんですけれども、特記事項として取り上げられている内容を左側に記載しております。次に、Noと記載されておりますが、これは、前回の部会において配付されました参考資料の頭の2ページに、会社の一覧があったと思いますけれども、そこのNoに対応しております。したがいまして、次の会社名は、そのNoに対応しているということであります。

内容は、その会社ごとに記載されている内容を端的に表現したものでありまして、具体的な表現等は、前回の部会において配付されました資料と照らし合わせてごらんいただければと思います。

さて、この資料1-3の3ページ目をごらんいただきたいと思うんですが、最後のページに、その他として、前の2ページ目の中にはどうにも分類し切れないものを集めております。このうち、初めの4項目は別といたしまして、最近問題となっておりますゼネコンを初め、民事再生法の適用申請を行った会社等、まさに本日のテーマであるゴーイング・コンサーンにかかわるような事項を監査報告書の特記事項として記載している会社がここに集められております。

個々の会社について見ている時間はありませんので、特に3社について見ていきたいと思います。資料1-4をごらんいただきたいと思います。

ここで、3社ピックアップした会社ですが、なみはや銀行、それから、赤井電機、日本レースの3社をピックアップさせていただきました。まず、なみはや銀行の場合ですが、これは、実は、99年3月期のものなんですけれども、監査報告書の特記事項の下に、なお書きがございまして、この中に、ゴーイング・コンサーンに関する記述がございます。この部分は、特記事項なのか、それとも監査意見の一部なのか、一見して判断できないんですけれども、昨年において、既にこのような監査報告書が実務において作成されていたという事例であります。

続きまして、赤井電機の場合ですけれども、これは、2000年3月期のものでありまして、一時新聞でも取り上げられ、先週の木曜日に民事再生法の手続申請を行ったことは、委員の皆様も御承知かと思われます。この会社の前期の監査報告書、特記事項4におきまして、事業継続の可否について言及されている文言がございます。これは、会社の追加情報におきまして、同様な記述がされておりまして、これを参照するように注意喚起を促すという本来の特記事項の目的に沿った形で記述されている事例であります。今回の民事再生法の手続申請に関する新聞記事を見ますと、まさに、この特記事項に示されているとおり、デット・リストラクチャリング・プランにかかわる銀行団との合意が形成できなかった、このように報道されておりまして、その結果、自主再建を断念して、民事再生法の手続申請を行ったとされております。

ただ、継続企業を前提とした財務諸表の作成を妥当として適正意見が表明されていたということを考えますと、今後、議論を呼ぶ可能性があるのではないかなと個人的には思っております。同社の場合には、資金援助という不確実性と、銀行団との再建策についての合意という不確実性が存在しておりまして、その影響が企業の存続に重大な影響を及ぼすということが言えたのでないかな、このように考えられます。したがいまして、企業継続に影響する不確実性の存在と監査意見という重要な問題を提起した事例ではないかな、このように考えております。

最後になりますが、日本レース株式会社の場合ですが、これも、2000年3月期のものであります。この会社についても、赤井電機と同様、追加情報の注記において、その旨が記載されておりまして、その重要性から、これを注意喚起する意味で、特記事項として記載されている事例であります。

このように、現在のところ、我が国においては、ゴーイング・コンサーンに関する監査上の取り扱いは存在しておりませんし、ゴーイング・コンサーンに影響するようなリスク情報についての開示基準についても、明確にはなっておりませんで、実務的には、恐らくは監査人が追加情報として監査情報に含めて記載させているのであろうというのが現状のようでありますので、実務として、このような取り扱いが現実に出てきているということを踏まえますと、速やかな対応が必要な問題であるのではないかなということが改めて認識された次第であります。

ちょっと時間が長くなってしまいましたが、以上で発表を終わらせていただきます。

○脇田部会長

ありがとうございました。

後ほど御意見を交換していただく時間をとっておりますので、御意見などはそのときに頂戴いたしたいと思っております。ただ、御報告の内容がいろいろと多岐にわたって複雑な問題も含まれておりますので、また、内容も豊富でございますので、内容の御確認などにつきまして、少し質疑の時間をとりたいと思います。御質問がございましたら、どうぞ御発言ください。

渡辺委員、どうぞ。

○渡辺委員

偶発事象と未確定事項というのが、私は、まだよくわからないんですが、具体的な例で言った、今3つ挙げられたなみはや銀行その他の3つの例は、これは全部偶発事象というふうに考えていいんでしょうか。

○高山委員

最後に見ましたこのゴーイング・コンサーンにかかわる事例のすべてが、では、偶発事象かということになるんですけれども、必ずしも偶発事象になるのかというと、そのような部分もないかと思われます。赤井電機の場合で考えていきますと、偶発事象というよりも、ある意味未確定事項の部分というんでしょうか、恐らく経営を前提とした場合に、その銀行団の支援ですとか、あるいは親会社からの資金提供というものが継続されるということを前提として、事業の継続が成り立っているというような状況が恐らくあったかと思われますので、それが途絶えてしまうというのが、それも偶発事象というふうにとらえるのかどうなのかということもあるかもしれませんけれども、必ずしもそういうことにはならないのではないか。この特記事項を例に見た3つについては、必ずしもそういうことではないのではないかなと思います。

実は、この資料をつくっている段階で、今、渡辺委員の方から御質問があった未確定事項と偶発事象の関係というものが、私自身、正直言いまして、詰め切れていないなというふうに思っておりまして、そういう質問が出るのではないかなというふうにちょっと恐れていたんですけれども、正直言いまして、そこの部分は、私もいろいろな方々に御意見を伺ったんですけれども、皆さん、一様にいろいろなお考えをお持ちでして、統一した見解というのがどうも出ていないような感じがいたします。

したがいまして、今回のこの発表をさせていただく上でも、議論のテーマとしてそういう問題があるということをまず机の上に挙げて、皆様の御意見を伺って、それを最終的に1つのものにしていくということが多分重要な問題ではないのかなというふうには思います。ですので、その辺は、皆様もいろいろ御意見があろうかと思いますので、きょうの場でしっかり御議論いただければいいかなというふうに考えております。

○脇田部会長

ただいま高山委員から御指摘ございましたように、偶発事象、そして、未確定事項、ゴーイング・コンサーン、この関係につきましては、概念あるいはその用語の使用に関しましては、いろいろ問題がございまして、今高山委員が御指摘になりました、私も高山委員とお話し合いをする中で、複雑な問題がございますので、今日のこの後の意見交換の時間の中で、改めて委員の皆様方の御意見を伺いつつ、この審議会においての1つの集約ということをいたしたいというふうに思っておりますので、後ほどまた御意見をお寄せいただきたいと思います。

それでは、ほかにございませんでしたら、また後ほど御質疑をいただくことにいたしまして、次に移らせていただきたいと思います。

それでは、渡辺委員から御報告をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○渡辺委員

渡辺でございます。

私は、資料を3つ配付させていただいておりまして、1枚紙の「投資家から見たリスク情報と監査報告書のあり方」というタイトルをつけたメモ、それから、参考資料で、参考の1は、マネックス証券の目論見書の一部です。参考の2というのがございまして、これは、英文のものなんですが、インターネットで本を売っておりますアメリカのアマゾン社のリスク情報の開示の部分を抜き出してきたものです。

最初に、この英文の「RISK FACTORS」と書いてあるアマゾン社のものをごらんになっていただきたいと思います。

これは、去年の5月に、多分資金調達をしたんだと思いますが、日本で言う目論見書の一部かと思います。そこで開示されたアマゾン社のリスク情報ということです。簡単にどんなものがあるかということをわかっていただくために、ぱらぱらと御説明したいと思います。

最初に、「WE HAVE A LIMITED OPERATING HISTORY」と、94年にできておりますので、まだ5年しかたっていないんだ、そういうできたばかりの会社であるというリスク情報があります。

2番目に、これまでに累積損失があって、さらに損失が続く見通しであるということが開示してあります。

1ページの一番下のところに、将来の収益の予想が困難な会社である。四半期、それから、季節性もあるので、例えばクリスマスに売上のかなりの部分を負っているというような季節性があって、四半期情報を見ていっても、将来の予想がなかなか難しい、そういう状態であるということが書いてあります。その部分は2ページのところにかなりたくさん書いてあります。2ページのところが、今申し上げたことについて詳しく書いてあります。

3ページにいっていただきますと、「INTENSE COMPETITION」ということで、このインターネットを使って、消費者に物を売るという業態の競争が大変厳しいということが書いてあります。真ん中あたりのところに、Barnes&Nobleというアメリカの有名な全国チェーンの本屋さんがありますが、彼らが持っているブランドの力、あるいは売上高、それから、お客さんのベースというものが大変手ごわい競争相手になっているんだというようなことが書いてあります。

それから、4ページ目にいきまして、真ん中よりちょっと上のところに、「RISKS OF SYSTEM INTERRUPTION」、インターネットを使って物を売っておりますので、そのシステムが不具合になった場合のリスクが書いてあります。

最後のパラグラフのあたりですが、アマゾン社は、インターネットのハードウエアの部分をシアトルにだけ置いている。バックアップを持っていないということが書いてあります。そこで、そのシアトルのベースが、火事になったり、洪水になったり、あるいは停電になった場合、それから強盗が入った場合、それから地震の場合、さらにコンピューターウイルス、これに汚染された場合、それから、ハッカーによって侵入されてしまった場合には、大変大きなダメージを受ける、そういうリスクがあるということが開示されております。

ここの一番下のところにタイトルが来ていますが、今後の成長(GROWTH)をうまくマネージしていけるかどうかというリスクを我々は負っているということが書いてあります。中身は、次の5ページのところにありますが、1つは、会社の成長に応じて、経営陣も人数、能力を増していけるかどうか、それから、ファシリティー、設備がうまく拡大していけるかどうか、それから、財務的な、お金ですが、これを調達していけるかどうかというリスクがある。それから、従業員についても、規模が大きくなった場合に、人数を雇っていけるか。それから、訓練をきちんとやっていけるか。これをうまくできなければ、大きなダメージを負う、そういうリスクがあるということが開示されております。

それから、真ん中のところにありますのは、新しいビジネス分野に出る場合のリスク。当初、本を中心にやっていったわけですが、本以外の商品に出ていくようになりまして、本の場合は、この会社が一番最初に始めましたので、そういう意味で先行者としての利得があったけれども、既にほかの人たちがやっているような分野に入っていく際には、本と同じようなマージンを上げていけるかどうかということは難しいというようなことが書いてあります。そういう意味で、今後、伸びていく分野についてはリスクがあるという開示があります。

それから、国際的に展開をしていっておりますし、インターネットですので、していかなければいけないんですが、その国際展開のためのいろいろなリソースをうまく拡大していけるかどうかというリスクが書いてあります。

それから、6ページですが、新しい業界ですので、合併ですとか、買収、それから、提携といったことが盛んに行われるわけですが、それをうまくやっていけるかどうかというリスクがあるということが書いてあります。そこの最後のパラグラフのところには、98年に買収を行ったけれども、その買収した案件は、今営業損失を計上しているという、これは事実ですが、事実もリスクの説明として書いてあります。

それから次は、技術的な進歩が大変早い分野であって、その技術の進歩にアマゾン社がついていけない可能性がある。現在のウエブサイトで本を売っているわけですけれども、他の技術が出てきて、アマゾン社の今のやり方というものが陳腐化して、新しい技術にアマゾン社が変わっていけなかった場合には、ダメージを受けるということが書いてあります。

それから、6ページの最後のところになっていますが、幾人かの中心的な経営陣に多くを負っているということで、7ページのところで、Bezosという創業者で経営者ですが、彼に多くのものを負っている。このBezos氏、C.O.ですが、会社との間で、長期の雇用契約は結んでいない。それから、彼に万一があった場合の生命保険というものも会社として掛けていないということが開示してあります。

それから次に、「WE RELY ON A SMALL NUMBER OF SUPPLIERS」ということで、本の仕入れですが、Ingramというのと、Baker&Taylor、それからValley Media、この3社から、本のほとんどを購入しているということが書いてあります。そういう少数の仕入れ先に依存しているわけですが、このうちのIngram社が、最近、ライバルのBarnes&Nobleによって買収されてしまった。こういうことがさらに起こると、仕入れ先を確保できなくなってしまう。そういうリスクがあるということが開示されております。

それから次に、「WE ARE HIGHLY LEVERAGED」、ここは、倉庫を自分で持つというふうにしたらということもありまして、資金調達をされておりまして、財務内容が、負債が過多になってきているということが開示してあります。

それから、次の8ページですが、ドメインネーム、Amazon.comという名前ですけれども、これをここにありますが、「Amazon.co.uk」とか、各国でアマゾンという名前のドメインを展開しているわけですが、すべての国でこのドメインネームがとれるかどうかという問題がある。とらなかった場合には、営業に支障が生ずるということが書いてあります。

それから、その次が、政府の規制がもたらすリスクファクターということが書いてありまして、1つは、課税問題。今のところ、インターネットは、いろいろなところで課税を逃れておりますが、これについての課税が不利な形で決着をすると、収益に大きな影響をもたらす。それから、課税以外にも、オンライン取引についての規制、あるいは消費者に対する保護の観点からの規制というものが導入されて、それがアマゾン社にとって不利な内容になるリスクがあるということが書いてあります。

それから、その次のところにありますのは、オークションサービス。アマゾン社の顧客がアマゾン社のネットの上でオークションをやるというサービスがありますが、そのオークションをやっている人たちが違法な商品を販売する。あるいは違法な方法で販売をするということがこのアマゾン社のサイトで行われた場合には、訴訟に巻き込まれて、アマゾン社が多額の賠償を支払う結果になるリスクがあるということが書いてあります。

それから、9ページになりますが、著作権、その他の権利ですね。これが侵害されるおそれがある。それによってダメージを受ける可能性がある。反対に、アマゾン社が侵害したと訴えられて訴訟に負けた場合に、多額の賠償を取られるリスクがある。賠償を取られないまでも、訴訟に巻き込まれて、経営陣が時間を多くとられてしまう。そういうリスクがあるということが書いてあります。

それから、最後のところは、2000年問題についてのリスクということです。

もう1枚、最後のページですが、株価についての情報リスクが書いてあります。インターネット、IT絡みの新興企業は皆そうですが、アマゾン社も、株価の変動が非常に大きい。これは、たしか去年、直近の1年ではないかと思いますが、一番高いときで210ドルであった。一番安いときでは13ドルであった。大変ボラタイルである。こういうボラタイルな株価でありますので、ファイナンスをしようとしたときに、株価が非常に低いということで、必要な資金調達ができない可能性があるということが書いてあります。

それからもう1つは、株価について、アマゾン社の収入あるいは利益の状況と関係なく、株価が変動しているということで、そういうコントロールできない面から、株価の大変動くというリスクがある。そういうようなリスクが開示されております。

続いて、参考の1の方で、今度は、日本でも同じようにリスク情報を開示するようになっておりまして、マネックス証券、御存じかと思いますが、インターネットで、個人の株式取引の取り次ぎをやっている会社であります。ことしの7月に出されました目論見書のうち、1枚めくっていただきますと目次がありますが、目次の「第一部 証券情報」の中の第2に、「事業の概況等に関する特別記載事項」という欄があります。ここに、リスク情報を開示するようになっておりまして、お配りしたものは、特別記載事項のところを全部抜いておりますが、リスク情報は、8ページ、事業に伴うリスクということで、日本の場合も、今ごらんいただいたアマゾン社と同じように、大変最近は詳しくなっております。

ですから、簡単に御紹介していきますが、まず、8ページのところで、事業に伴うリスクということで、アマゾン社にもありましたが、業歴が浅い。会社ができて浅いということに伴うリスクが書いてあります。

それから、第1期事業年度の損失及び将来の収益性についてということについて、リスクが書いてあります。

それから、ブランドの確立についてのリスク。

それから、4として、事業が多角化されていないことについてのリスク。多角化が進められない場合には、業績に悪影響が及ぶおそれがあるというリスクが書いてあります。

それから、9ページのところで、広告宣伝費でありますが、成長を維持するために、広告宣伝費を大幅に増額する必要に迫られる可能性がある。その場合には、業績に悪影響があり得ると書いてあります。

それから、システムについて、システムに障害が発生し、機能不全に陥った場合、その場合について、重大な障害が生ずるおそれがあるというリスクがあります。リスクの内容につきましては、先ほどと同じように、この・を打ったところにありますが、ハードウエア、ソフトウエア、それから、アクセスの急激な拡大、自然災害、停電、人的ミス、破壊行為あるいはコンピューターウイルスといったものが列挙されております。

それから、業務の外部委託について、委託先の原因によるサービスの提供の中断その他のリスクがある。

それから、8番目のところで、マネックス証券はソニーとの協力で生まれている会社ですが、ソニー株式会社との関係で、そこの協力が縮小された場合のリスクについて書いてあります。

10ページの上のところにありますが、当社は、ソニーからマーケティング上の協力を得ておりますが、ソニーには当社サービスに協力する契約上の義務はありません。ソニーの協力を享受できなくなった場合には、宣伝費の増額等を余儀なくされる可能性があるというリスクの開示があります。

それから、主要な株主の影響力についてということで、この段階では、主要な株主2名と2社が、合わせて71%を持っているわけであります。3年間の間、株主間契約に基づいて、取締役の選任の仕方、それから、保有株の売却制限というものが設けられておりますが、それを3年間で終了するということが開示されております。

それから、引受業務への参入に伴うリスク。

それから、同じページですが、一番下のところで、情報提供については、QUICKから受けていますが、契約関係を今後も維持できるとは限らないということで、それに伴うリスクがある。

それから、次のページでは、投資信託について、取り扱うファンドのパフォーマンスが悪かった場合に、顧客の信頼を失うリスクがある。

セキュリティについては、ハッカーの侵入、コンピューターウイルス等々。

会社組織及び経営陣ということで、適切な人的資源を適切な時期に確保する。あるいは投資の資金を調達するということに伴うリスクがある。

さらに、小規模な組織であること。

特定の経営陣への依存をしている。特に、創業者、社長に大きく依存しているということが書いてあります。

それから、業界関連リスクということで、インターネットの安定的持続的成長についてのリスク。

次のページへ行きまして、証券業ですので、証券市場が低迷をした場合、長く続いた場合に、収入が落ちるというリスクがある。

それから、対面取引を行う証券会社との競争。既存の証券会社ですが、この対面営業とインターネットという2つの証券業のあり方で、どちらが優位に立つかということについてのリスクがある。

それから、他のオンライン証券会社との競争についても、リスク開示があります。

それから、アマゾン社でもありましたが、インターネット上でやっておりますサービスについて、陳腐化して、技術進歩に追いつけない場合のリスク。

それから、法規制についてのリスクというものがあります。

それから、13ページですが、最後のところですが、税制の変更についてのリスクというのがありまして、今、話題にもなっておりますが、源泉徴収1・05%と、申告調整の選択というもののうち、源泉徴収が廃止になった場合には、個人投資家を主な顧客とする当社サービスの利用が縮小し、当社の業績に悪影響を及ぼすおそれがありますというようなリスクが書いてあります。

細かく御紹介しましたが、以上のように、大変たくさんのリスクが開示されまして、私の感じですと、これは、かなりの部分、未確定事項、起こるかもしれないし、起こらないかもしれないし、どこかの時期になったら、もう絶対起こらないとも言えないというような感じのリスクかなというものがたくさん書いてあるということであります。

こういうものを見ますと、投資家から見ると、いっぱいリスクがあるのはわかって開示されているのは大変重要なところなんですが、リスクについての評価がないということであります。リスクの評価ということですと、これを専門にしています格付け会社というのがありまして、ムーディーズですとか、日本ですとR&Iという会社がありますが、こういう会社は、リスクを総合的に調査をして、評価をする。地震が起こった場合のリスクとか、ハッカーにやられる可能性というような事項、個別にではないですが、全体として見て、こういう業界はこのぐらいの格付けまでしかあり得ない。その中のこの会社はこうだというようなことを出しているわけであります。そういうものをAAAとか、Aとか、あるいはBBというふうに細分化して公表しているということであります。

もう1つは、常時ウォッチということで、一応考え方としては、何か事象事件が起きたときには、格付けの変更をするということになっています。そういう意味で、格付け会社というのは、債券についての総合的なリスク評価を業としているということだと思います。

1つ格付け会社の方が皆言われるのは、格付けというのは、事実についての報道ではないんだ、これは意見であるということでありまして、これが、ある意味で、リスクヘッジになりまして、アメリカで特に言われますが、これは、要するに、フリーダムスピーチである。表現の自由の問題であって、そういう意味で、意見の表明なんだ。ですから、その内容が合っているとか、間違っているという問題ではないということで、裁判になった場合も、基本的に格付け会社が言うのは、これは、誹謗中傷という、例えば事実をねじ曲げて何かを言ったということではなくて、信用状況についての意見の表明だから、そういう意見の表明は自由に行われるべきである、そういうふうな立場をとっております。

監査についてでありますが、基本的には継続企業の会計原則を適用するかどうかというための評価でありますから、格付け会社とは違って、言ってみれば、1つか2つですか、適用するかしないかという段階の評価――だけというのは変ですが、一応だけであるということです。

それから、常時の評価ではない。年に1回行うということであります。

それから、今長く御紹介した個別の事項を見ますと、かなりの部分は、これは、それぞれ一つ一つが監査といいますか、継続企業原則を適用するかどうかという場合の評価すべきリスクというにしては広過ぎるような気がいたしまして、特に、これまでの日本の例を見ますと、ほとんどの場合が継続能力の判定以前の資産・負債、偶発債務の適切な評価というのがなされていれば、かなりの監査が終わった後にすぐ破綻したんではないかと言われている事例というのは、そこがきちんとしていれば起こらなかった問題のような気がいたします。

以上ですが、最後に、ゴーイング・コンサーンという考え方が導入された場合に、会計士の方は常に二重責任の原則と言われますが、二重責任の原則というものもわかりますけれども、意見が違った場合、会計士の方が疑念が解消されず、開示もされないという場合に、その旨を監査報告書にきちんと記す、そういう義務を負っていただきたいというふうに思います。

ちょっと長くなりましたが、以上です。

○脇田部会長

投資家から見たリスク情報と監査報告書のあり方につきまして、渡辺委員から御報告をいただきました。ありがとうございました。

それでは、これまで高山委員、渡辺委員から御報告をいただきましたので、お二人の御報告を踏まえまして、御意見、御質問を頂戴いたしたいと思います。どなたからでも結構でございますので、どうぞ御発言をお願いいたします。

○那須委員

高山委員に御質問なんですが、資料1-2というものの6ページのところで、「IASおよびISAの取扱い」というところの(3)というところに、ISA21号の後発事象とあるんですが、日本では、我々がやらせていただいている法定監査の中では、特に証取法の監査の場合は、監査報告書の提出日と財務諸表の提出日というのが極めて近い。1日違うか、ほぼ同日かというような状況ですので、この後者の方、監査報告書作成日以降に発見される事象という方は極めて少ないというふうに理解しているんですが、これは、分けているということは、監査報告書はかなり前に出ると、その後のものについても後発事象だということだということでいいと思うんですが、これは、監査対象になるとか、ならないとかということは、どのように整理をしたらいいのかな。

ここで申し上げる話かどうかわかりませんが、商法の監査というのは、多分我々が監査証明をつけるものが株主のところに届くのはもっと後、監査報告書の日付よりも後になるので、このような問題が発生してしまうのかなというようなことが考えられるので、そのあたり、コメントしていただけるとありがたいんですが。

○脇田部会長

高山委員、お願いします。

○高山委員

我が国の場合、那須委員の方から御紹介があったとおりでありまして、特に商法監査の場合においては、監査報告書提出から、実際に招集通知が公表されるまでの間というのが、若干ではありますが、タイムラグがあるという問題が実際問題としてあると思われます。ただ、私の理解では、基本的に、監査報告書が提出された後の期間につきましては、監査人に対する、それに対する責任というのは出てこないんですが、ただ、証取の対象になっている場合に、そこの部分というのが、では、後発事象の対象になってくるんではないかということも、正直言ってございます。そういう意味で、論点整理のところでも、責任の問題として、監査報告書の日付をどうするかというような問題も、提案といいますか、問題点として指摘されていたのではないかなと思われます。

ISAの21号についての記載で、私はちょっとうろ覚えなんであれなんですけれども、基本的に、報告書提出日以降、もし、後発事象が発生した場合に、それが重要であれば、その分を修正するかどうかということを経営者との間で検討しなければならないという文言がたしかあったかと思われます。

そういう意味では、恐らくそういうことはないと思うんですけれども、会社の方で、招集通知を発送する前の段階で、監査報告書を入手した後、招集通知を発送するまでの間に、何かそういったことを意思決定されたとか、そういった問題がもしあった場合に、その分についてどう対応するかという問題が恐らく出てくる可能性はあるのではないかなとは思います。その辺についても、この後発事象の考え方というものを整理する上では、そういった点についても考えなきゃいけないテーマではないかな。当然これは監査報告書の日付の問題にも絡んでくる問題だと思いますので、この辺についても、各先生方の御意見等を踏まえて、どういうふうに整理していくかということが必要になってくる問題ではないかなと思います。

○脇田部会長

ありがとうございました。那須委員、よろしゅうございますか。

それでは、御意見をいただきたいと思いますが、特に、今渡辺委員から、投資家から見たリスク情報ということで、非常に貴重な資料の御紹介をいただき、それについての御発言がございました。このことを含めて、ゴーイング・コンサーン問題とのかかわりにおいて御発言いただくとありがたいと思いますが、須田委員、どうぞ。

○須田委員

まだよくわからないんですけれども、今、発表していただいた高山委員の報告のこれを見ながら、幾つか質問させていただきます。

その前に、まず、さっき問題に出ました偶発事象と未確定事項ということがよくわからない。私もよくわからないんですが、そのときに、ここの定義をよく読んでみると、偶発事象というのは、まず、英語で何というんでしょうというのが――後ろの方は、uncertaintyみたいな書き方をしてあるんですけれども、これを読んでいると、偶発事象というのは、もう貸借対照表日に既に存在していると書いてあって、後ろはなくて、前の方は、利益とか損失という言葉であって、後ろは財務諸表に影響すると書いてあると、これは、並列しているのか、未確定情報が大きい集合で、その中の部分集合なのか、そこら辺が、この文章だけを読んでいると、部分集合に見えるんです。ここの定義で、偶発事象の方がすごく狭い、不確実な中の一部をもって偶発事象と言っているように読めるんです。そういうふうな読み方はどうなんでしょうかということが、まず最初の意見です。

それから、今いろいろリスクの開示を渡辺委員から示していただいたんですけれども、本当にこれを読んだときは、自己弁護のためにリスクを羅列しているということをすごく感じまして、そして、このリスクを評価するというのを、ここで高山委員の部分を見ても、まず、私が最初に思ったのは、資料1-1の4ページで、発生する可能性が高いか、低いかとかという言葉が出てくるんです。そういうところを評価しないと、全体としての判断ができないわけで、こういうリスク情報は、出すだけでは、投資家、あなたが勝手に判断しなさいというふうに言っているようで、それは、監査する場合にはいかないわけで、そのときに、高い、低いとかというのは、どういう基準で評価したのか。

つまり、結構主観的なのか、ある程度客観的な判断基準が何かあるのだろうか。こういった基準が、ISAのゴーイング・コンサーンなんかを見ていると、まず経営者が判断しなくちゃいけないと書いてあるんですけれども、そうすると、そもそもこういったいろいろな問題に関して、可能性が高い、低いとかというのは、経営者が判断して、その上でゴーイング・コンサーン、企業の持続性について判断して、今度は、それを監査する側が判断するというと、結局経営者の確率の高さ、低さを監査人が正しいと評価するかどうかという問題になってしまうような、そういう問題なんでしょうか。私としては全くわからないことだらけなんですけれども……。

それから、後発事象の定義が、高山委員の7ページに書いてあって、これは、資料1-2のIAS、それと同じような定義ですよとおっしゃったんですけれども、私は、6ページの定義の方がすごくわかりまして、既に発生して、貸借対照表日には既に存在していることを証拠づける。存在しているものですよと書いてあるんですけれども、ここは、日本の会計制度委員会から出ている部分というのは、そういうふうに読むべきものなんですか。そういう意味では、すごくあいまいなような気がして、私は、IASのような書き方になっていた方がわかりやすいなというふうに思います。

あと、不確実性というときに、結構我々の世界でも、リスクと不確実性をどう扱うかといったときに、リスクというのは、対象もわかっていて、ある程度いろいろな確率というか、それも判断できるようなものを言って、不確実性というのは結構わからない。それも判断もできないというような言葉で使うことがよくあるんです。何だかわからないけれども、不安だという不確実性もあって、一応未確定事項といった場合に、問題となる、ここで書かれてあったようなリスクの要因がありますね。そういったものだけを指して、あと、本当に予想がつかないことが起こっちゃったというものは、そういうことが起こるかもしれないというリスクは未確定事項に入らないんですか。

変な質問で済みません。いっぱいわからないことだらけなんですけれども……。

○脇田部会長

4つほどにまとめられるかと思いますけれども、高山委員、まず、その中で、後発事象の問題は、割合明確な問題になるかと思いますが、その辺からお答えいただけるとありがたいと思います。

○高山委員

まず、後発事象の定義の問題なんですけれども、後発事象の定義、我が国の方の定義といいますと、企業会計原則の注解、注の1-3というところを紹介させていただいたわけですけれども、須田先生がおっしゃるとおり、そういう意味では、表現が非常にわかりづらいというのも確かにあろうかと思います。基本的には、決算日以降に発生した事実ですので、これを注記事項として記載しなければならない。その事実が決算日の段階での見積もりあるいは見積もりを修正しなければならない事象については、その期の決算を修正しなければならないというような形で判断されておりますので、基本的に事実としては、そこで発生しているということになろうかと思います。

ですので、そういう意味では、決算日の段階で、既に存在していたという表現は、この日本の注解のところで見ますと、その分まで読み切れないとは思うんですけれども、そこで、会計制度委員会の方から出ています第一の事象、第二の事象というものが出ておりまして、そこで、ここの部分を読んでいただくということになろうかと思いますので、ただ、企業会計原則の注解だけですと、そこまで読み切れないのかなということは、確かにそのとおりだと思われます。

それから、1番目の部分集合かどうなのかという問題ですけれども、これは、私として何と答えていいのかというのは、非常にわからない問題でもありますし、そもそも、偶発事象と未確定事項というのは、先生おっしゃるとおり、同じ対象をとらえて見ているものなのか、それとも、全く違うものを見ているのかということ。また、会計の領域の問題なのか、監査の領域の問題なのかという問題がありますので、少なくともそれが部分集合なのかどうなのかということは、確かにこれを会計の範囲として考えればどうなのかということ、また、監査の領域として考えればどうなのかという、そういった問題ともかかわってくる問題だと思いますので、これが、先ほど申し上げたとおり、関係がどうなのかというところで、皆様の御意見が異なってくるというところになる問題ではないのかなというふうに私は理解している次第です。

ですので、少なくとも、では、これを会計の問題としてとらえるのか、監査の問題としてとらえるのかによって、未確定事項の範囲というものも、恐らくは変わってくるんではないかなというふうに思いますし、そういった意味で、皆様の御意見というものをここでお伺いしていきたいなというふうに私自身は考えている次第です。

○脇田部会長

問題が、非常に抽象的に取り上げますと、議論がなかなか明確になってまいりません。といって、適切な例というのが、これまた難しいわけですけれども、この辺について、御指名して大変恐縮ですけれども、内藤先生、山浦先生、いかがでございましょうか。

○内藤委員

御指名ですので、まず、偶発事象と未確定事項の差で、須田先生の方が、一番最初に、偶発事象は英語で何というんでしょうかという御質問があったと思うんですが、偶発事象は、たしか記憶では、アメリカでは、contingencyですね。何かこういう事象が生じたときに、損失になりますよ、あるいは逆に利益になりますよ、そういったものをcontingencyという用語を1980年代ぐらいまでは使っていたと思うんですが、それ以後は、uncertaintyという言葉を使いまして、きょうの報告では、uncertaintyを未確定事項というふうに訳されていると思うんです。

uncertaintyというと、未確定事項ですから、まだ確定していない事項だというふうにとれるわけですが、これは、どうなんでしょうか。私は、監査人が確定できるか、できないかという次元でuncertaintyをとらえると、未確定事項と訳すべきだと思うんですが、きょうも御紹介にあったアメリカ公認会計士協会のStatement of position94-6では、Risk and uncertaintisと言っていまして、私は不確実性というふうに――きょうの御報告では、不確定事項というふうに訳されていますけれども、そういう使い方をしています。

先ほど須田先生の方から、リスクというのは、対象事象がはっきりわかっていて、確率的にとらえられるものをリスクだと、これも正しいかと思うんです。それに対して、SOP94-6で、さらにuncertaintyとつけたのは、そういうリスクという何か確率事象的にとらえられるものだけでなくて、もっと広い、本当に将来どうなるかわからないというようなことについても、まず開示させよう。そういう趣旨で入っていますので、一番広い概念は、uncertaintyだと思います。その中にcontingencyもあるでしょうし、それから、リスクも入っているんではないかというふうに私は理解しております。

それで、渡辺先生の方から御紹介のあったアマゾン社の情報は、FormS-3Aという形で出ている情報なんですけれども、これが、後で聞こうと思ったんですけれども、Form10-Kの方でも、こういう情報が出ているんでしょうかということを伺いたかったんです。

SOP94-6で、きょう、御紹介のあったような範疇が4つ指示されていまして、事業活動の性質に関するリスク、uncertainty、不確実性について書きなさい。そして、財務諸表を作成するに当たって、見積もり値を使っていれば、そのことを書きなさい。そして、特別というか、ある一定の有用な見積もり値、それを経営者が使っているのだったら、その見積もり値は何か、その内容を書きなさい。そして、さらに、事業活動が特定の何かに集中していれば、集中に関する現在の弱点というんですか、それを書きなさいという指示になっていまして、きょう御紹介のあった内容というのは、これに非常に近い内容ではないかと思うんです。

そうすると、uncertaintyといいますか、不確実性をとらえたときに、ゴーイング・コンサーンの問題はどうなるのかという関連性が重要になってくると思うんですけれども、きょう、高山先生の資料1-1の12ページに、カナダの会計士協会の、これは多分Boritzさんがやられた資料だと思うんですけれども、このゴーイング・コンサーンの前提に関する妥当性の程度の考察というところに、きょうは、時間的な流れでこういうふうになるという御説明があったわけですけれども、どのような企業も、こういう意味でのここでは何ですか、リスクになるのか、何かわかりませんけれども、みんな不確実があるわけです。

ない企業というのは、まずないわけでして、だから、ゴーイング・コンサーンの問題というのは、特定の非常に先行きが危ないということのところだけの問題としてとらえるということじゃなくて、もっと広く、すべての企業はそのリスクを負っているわけです。しかし、そのリスクは、どんな形で負っているかという情報を出している。その中で、もし、それを出すとすると、きょう御紹介のあったように、非常に幅広い情報が出てくるわけですけれども、その中で、決算日後1年以内に事実上倒産してしまうような可能性が判読できるような情報内容は含まれているのか、含まれていないのか。もし、含まれているとしたら、それに対して監査人として、その情報内容が正しく出ているのかどうか。それは、経営者の見積もりに対する評価も判断も含まれてくると思うんです。

ですから、不確実性とか偶発事象の問題、これは、非常に重要なんですけれども、そこを議論してはっきりさせるということは、本当に重要なんですけれども、我が国のまず開示制度として、そういう企業のリスクに関する、あるいは不確実性に関する情報開示をどうするのか。その中で、ゴーイング・コンサーンの開示をどう扱うのかというふうにしないと、国際的な水準から見ると、ディスクロージャー制度としては、その部分が不明確なままになってしまうんじゃないか。監査だけでは済まないんではないでしょうかということが言えると思います。

ちょっと説明しなさいということを超えた内容になったかもしれません。以上でございます。

○脇田部会長

ありがとうございました。ただいま言葉の整理をしていただきましたけれども、その中で、渡辺委員の御報告にも言及されておりますので、渡辺委員、いかがでございますか。

○渡辺委員

10-Kに入っているかどうか、これは、多分入っていないと思います。FormS-3Aというのは、Aはamendmentでして、多分第1回目の公開か何かのときにこれを出して、資金調達でこのamendmentを出したんだと思います。ただ、アメリカの場合というか、日本もこれからそうなると思いますが、エドガーという制度がありますので、継続開示なのか、あるときに出された開示なのか、今、余り意味がなくて、たくさんの昔出した事項が、探そうとする人には利用可能ということです。

ついでにちょっと発言をさせていただきます。偶発債務と未確定事項というのを私なりに考えたときに、今、内藤先生のお話で、偶発債務というのは、もう余り使われていないんだというようでありますが、6ページの最後のところに、何らかの事象が発生、あるいは発生しないことによって、その不確実性が究極的に解消するものを言うというのがありまして、ここかなと思っていたんですが、例えば地震のリスクというのは、究極的には解消しないわけで、システムのダウンというのも解消しない。訴訟というのは、判決が出れば、プラスかマイナスかで解消してしまう。新技術の登場というのも、これも、いつまででもあるわけですから、解消しない。

そういう始まりと終わりがわからない事項は、また、いつあるかわからないんで、未確定、そういうことなのかなというふうに理解していたんですが、どうも違うのかもしれません。余り未確定事項というのをたくさん入れていくと、地震が起こって会社がつぶれた、これは監査人の責任だというのは、これは幾ら何でも言い過ぎで、そこまで言う人はいないと思いますし、ハッカーにシステムを壊されておかしくなってしまった。今まで何の兆候といいますか、既にやられているということがないのに、ある時ハッカーにやられて、それを3カ月前に見つけなかった監査人はおかしい、これも言う人はいないと思うんです。

ですから、そういう意味では、具体的に考えていくと、そんなに幅広いものでなくて、例えば、挙げられたなみはや銀行以下3つの例は、確かにこのまま開示された方がいいなと思えるような例で、余り未確定事項を広くとらえて、それも含み込もうとすることはないのではないかというふうに思います。

○脇田部会長

ありがとうございました。内藤先生、よろしゅうございますか。

○内藤委員

今、渡辺先生が、偶発事象の高山先生の6ページの定義をとらえて、そうだと思っていたということは、私は別に否定しているわけじゃなくて、確かにそのとおりで、これは、contingencyの定義になっているわけです。ただ、SFAS No.5以外に、SOP94-6が出て、この偶発事象だけの開示ではだめですよと。それに加えて、uncertaintyあるいはリスクの開示もしなさいよというふうに広がったということで、先生の解釈が間違っているというふうには申し上げていません。

○脇田部会長

ありがとうございました。お待たせいたしました。加藤委員、どうぞ。

○加藤委員

この偶発事象と未確定事項との区別なんですが、私なりに、もしわかりやすく区別するとすれば、これが学術的に合っているのかどうかわからないんですが、偶発事象の場合には、偶発損失とか偶発利益といいますけれども、特定の損失とか利益に結びついている場合が多いんだと思うんです。ですから、高山委員が使われた資料の資料1-3のこの特記事項の分類した表があるんですが、これで言うと、例えば偶発損失とか、保証債務とか、重要な係争事件・訴訟、こういうものは、みんなこれが完結したり何かすれば、直接的に損失なりあるいは利益に結びつくということで、こういうものはいわゆる偶発事象というところに入るんじゃないかと思うんです。

それに比べて、未確定事項というのは、非常に範囲が広くて、必ずしも特定の損失とか利益に結びつかないような未確定の事項。ですから、具体的な例でいくと、この資料1-3の一番最後のページのその他の中の例えば再建計画とか、こういうのは、特別の損失とか利益に結びつくわけじゃなくて、会社そのものの存続性とか、そういう将来の全体的な事業に影響するわけで、これは、普通、余り偶発損失だとか、偶発事象と言わないような気がするんです。こういうのは、我々は、実務においては、未確定事項という形で、監査意見のときにも考えているというのが1つの区別の仕方、わかりやすい仕方じゃないかなという気がするんです。

○脇田部会長

ただいま御指摘いただきました、そうしますと、未確定事項と偶発事象のかかわりは、偶発事象は未確定事項の広い意味の中では1つに入っていると先生はお考えになっていらっしゃる。ありがとうございました。

先ほどの内藤委員の御発言の中に、高山委員の書かれましたこのグラフについての御発言もありましたので、高山委員、いかがでございますか。

○高山委員

各先生方の御意見を伺っていますと、大体私も資料を作成する上で、いろいろな図をこの場でお示しするのがいいんだろうなと思いまして、幾つか案をつくってはみたんですが、ことごとくそれをいろいろな方から御批判がありまして、図を削除した経緯が実はございまして、そのときには、未確定事項というのは非常に広い概念でとらえていまして、その中に偶発事象を包含するというんでしょうか、それの一部としてとらえているというふうな、そのような表現を初めはとらえていたわけなんですが、その中で、例えば未確定事項という表現をしたときに、それを経営者の側から見た場合の未確定事項という問題と、監査人の見た場合の未確定事項とのかかわりというのが、必ずしも対応するかどうかという問題がどうもあるみたいなんです。

どうしても経営の側から見た未確定事項というのは、渡辺委員の方で御提示されたようなリスク情報みたいに、かなり広い意味での未確定事項というのが多分とらえられるかと思われますが、監査人としての未確定事項というのは、私の発表の中でも発言させていただきましたけれども、財務諸表に対して近い将来において影響する可能性のあるもの、それに限定されるんではないかな。監査人の立場からすれば、そのところに限定されるのではないかなというふうに思うわけです。

ですので、未確定事項という一言で言っても、かなり範囲もあるでしょうし、また、事象として、事実が発生するレベルもかなり違うのではないかなと。先ほど地震の例を引かれていますけれども、地震の起きるのは監査人の責任かどうかというところも言われていましたけれども、そういったレベルの問題から、ある程度経営判断の上で、その辺が左右されるようなことですとか、あるいは第三者が、そういう行動をとることによって影響するものですとか、多分いろいろなレベルもあるんだろうと思いますので、そういった意味では、とらえ方によっては、全然違ってくるものにもなりますし、その辺で包含されるという考え方もできるのではないかなと思いますので、これは、かなり見方によっていろいろなとらえ方ができてしまうということもありますので、この場では、その辺は監査の立場でのとらえ方というのをまず念頭に置いた上で議論していく必要があるのではないかなという気はするんです。

○脇田部会長

ありがとうございました。ただいま高山委員が、立場ということに随分言及されていますので、監査側の立場、また経営のお立場ということもございますので、御意見、いかがでございましょうか。

○宮島部会長代理

いまだにお聞きしていて全然わからないんですが、そもそも偶発事象というのは、これは会計上のテクニカルタームとして存在するわけですね。それが、いまだにお聞きしていても、何が違うんだかわからない。先ほど渡辺委員がおっしゃったのは、条件が成就するかどうかみたいなところに、まさにキーポイントがあるんだとおっしゃり、あるいはほかの方々の話だと、未確定事項の中の一部が偶発だとおっしゃられているんで、そういうときに、例えば、偶発事象というものは、未確定事項が、今おっしゃったように、経営側と監査側で果たして違うものというふうに考えるものなのか。そんなことで果たして責任のある監査というものが出てくるのかどうかということが1つ疑問。

それでまた、偶発事象という問題についても、それが、もし違うのか、同じなのか、それは多分、違うとはおっしゃらないんだと思うんです。同じだとおっしゃる。それとのかかわりで、どうもまださっぱり両概念がわからなくて、しかも最後に、高山委員がおっしゃった13ページのところで、未確定事項があって、それがゴーイング・コンサーンに影響するか否かを監査人は評価する必要があるというふうにおっしゃったときに、それがというのは、未確定事項がゴーイング・コンサーンに影響するか否かと発展するわけです。そのときに、それまである未確定事項がわからないまま、ゴーイング・コンサーンの監査をしろとか、評価をしろというのが、さっぱりわからないという、わからないというだけの指摘なんですけれども、もうちょっと明確にテクニカルタームみたいなものでお教えいただくとわかりやすいんだということなんです。

○脇田部会長

今、宮島先生から、ある意味では、この部会での審議の方向と申しますか、そういったものについてを含めての疑問の問題提起をしていただいておりますが、そのことを心にとめながら、先ほどから、立場によってこういった概念が違うということはないのですが、この点について、また御指名して恐縮ですけれども、伊藤委員、いかがでございましょうか。

○伊藤委員

では、御指名なので、私の経営者としての考え方を申し上げますと、この1-2の資料の6ページに、真ん中のところに、IASの1番、その最後のところ、「経営者は、少なくとも貸借対照表日から12ケ間における全ての情報を検討する」と出ているわけですね。それで、私は、ゴーイング・コンサーンについて、いろいろかねてから疑問を持っておりまして、何を会計士の方々は見るんだろうか。1年間のキャッシュフローを見て、それでいいんだろうか、何回か聞きまして、何となくそういうことのように認識したわけです。

今日のお話を聞いて、uncertaintyに関するいろいろな話があって、1-1の12ページのところに、「ゴーイング・コンサーンの前提に関する妥当性の程度の考察」というのがあって、このあたりのどこのあたりを言われているのかなということをさっきからいろいろ考えていたんです。つまり、我々経営者としては、ゴーイング・コンサーンというのは、もっと継続的に、未来永劫的に考えているんです。企業というのは1年じゃない。絶えず継続して存在していなきゃいけないというのが我々経営者の務めだというふうに私自身は考えているわけです。

そういうものと、非常に限定した形で、公認会計士さんの方が査定をされるということと、これは、両方の意味があると思うんです。したがいまして、ゼネコンさん――名前を言って大変恐縮なんだけれども、出して、つまり、公認会計士さんが適正と言っておいても、1年ぐらい後で、でかい会社が倒産をする。これは明らかに、uncertaintyに関する適正な意見ではなかったんではないかということがあり得るわけです。

しかし、例えば、企業の永続性に関して、公認会計士さんにすべてを理解させるということは難しいと思うし、それまで要求するのは大変ではないか。また、公認会計士さんという職業において、果たして会計的な面で、企業の将来性を、今より先端技術か何かあったときに、技術の問題まで理解できるだろうかということもあるわけですね。我々経営をやっている場合には、会計士さんのそういう意見も重要だし、アナリストの意見も重要だし、先ほど格付けのことが出てきました。格付けの機関の話も重要で、全部包含して、私どもは資本市場に対応しているわけなんです。

したがいまして、渡辺委員のお話がありました資本市場に対する格付けの意見というのは、単なる意見の表明だというふうにお話があったんだけれども、そこでは、須田さんが言われたように、評価をするんですね。こういう意見を含めて、AAでやるとか、AAAでやるとか、それから、ムーディス、2Aとか1Aとか、こういう形でやるわけですね。ですから、そういうところで格付けを明らかに評価をするわけです。したがって、そのときに、適正な意見があれば、必ず評価されるわけです。ですから、我々経営者というのは、そういう最終的な評価をきちっと対応して、資本市場に向かっていっているわけです。

私が最初からこの会議で非常に期待しておったのは、ちょっと意味が違って、つまり、レジェンド・クローズがついて、レジェンド・クローズがついている原因には2つあって、1つは会計原則の問題である。企業会計の基準の問題。これは、ほとんど片づいてきているんではないか。もう1つは、ゴーイング・コンサーンの問題である。こういうふうに聞いていたものですから、つまり、これを我々がこの会議できちっとまとめ上げれば、レジェンド・クローズは外れるのですねということを期待して、私は出席しているわけんなんです。

その場合には、一体何が問題なのかということを我々は知りたいわけなんです。だから、例えば、極端なことを言えば、AAとかAAAのカンパニーにおいては、限定意見はついていないわけで、そういう会社もレジェンド・クローズはつくんですか。つまり、企業会計が全部、日本の会計がIASに近づいた段階においては、それが自動的に外れるんだという前提に立てば、きょうの議論はちょっと違うんですね。

渡辺さんから御説明があったマネックスの証券というのは、恐らく新株の発行のときだから、最初のプロスペクタスで、投資家に対して、企業が売り込もうとしているわけですね。したがって、これは、恐らくインベストメントバンクが介在して、こういうのを一生懸命プロスペクタスをつくるわけですから、我々が昔20年ぐらい前に外債を発行するのにつくったわけです。そのときはこういうことを書くわけですね。会社のあらゆる言葉、これをもとにして、格付けをして、評価があって、AAとかAA+があって、出てくるわけです。

だから、ちょっとこの資料と、ここで挙げておられるこちらの方の公認会計士さんの御説明と、若干違うのではないかという感じが私はしました。大変ロジカルじゃないんですけれども、先生方のように、ロジックを詰めたわけじゃないんですが、経営者としては、いずれにせよ、ここで議論をしていただいて、我々の日本企業に対するレジェンド・クローズをどうやって外せるかということに大変関心があるということだけをちょっと申し上げまして、答えにならないんですけれども、関心の度合いはそういうところにありますということを申し上げておきます。

○脇田部会長

ありがとうございました。引き続き御発言ございませんでしょうか。藤田委員、どうぞ。

○藤田委員

ゴーイング・コンサーンの文言について、もう少し具体的な提案をさせていただきたいと思います。

企業がこういう継続性が失われる危険の場合に対応する方法として、3つあるように思うんです。1つは、法的な手段に訴える、あるいは行政的な再建策に訴えるというのが1つと、それから、私的支援。これは、非常に日本的な事情だと思いますが、他のグループ企業、あるいは融資団に支援をお願いするというのが1つ。それからもう1つは、自助努力。

大まかに言うと、この3つになると思うんですが、たまたま、ここにつけていただいたゴーイング・コンサーンの事例3つは、まず第1が、なみはやというのは、これは金融機関ですから、既に改善命令に基づいて努力している。今後の進展いかんだということがあるわけですが、これについては意見は差し控えます。私はよくわかりません。

問題は、2番目、3番目なんです。赤井電機の場合は、ここの表現は、銀行団の合意の形成ができるかどうかとか、グループ企業の財政的支援が成り立つかどうか。非常に他力本願のことですね。これは、事実日本には、こういう例が非常に多いんで困るんですが、この場合には、本当にこれは助ける、助けるでいっても、一時的な延命措置にすぎない場合とか、それから、一次支援で少なければ、二次支援も覚悟した、本当に事業性を見極めた支援なのか。こういうのが、これではさっぱりわからないわけです。だから、そのあたりはどうしたらいいか。これだけ書いてもらっても、読み手としては、再建できるのかどうか、さっぱりわからないですね。そこのところは、非常に難しい話なんですが、理想を言えば、裏をとるといいますか、支援者の覚悟のほどを、そこまで見極めた上で、しかるべき表現でつけるべきだというのが1つ。

それから、3つ目の日本レースのケースですけれども、これは、自助努力のケースだと思います。この場合には、新規事業を導入するとか、業務提携するとか、これは、リスクというよりも、再建策としての有効性ですね。こういう状況で新規事業に入るということは、非常に危ない。逆に命取りになるケースもあって、非常に難しい話で、このあたりは、本当に自助努力としてふさわしいのかどうかというような、これは、会計監査人としては、まさに経営者とのディスカッションの対象ではないかと思います。だから、経営者の意見も併記するのもいいでしょうけれども、会計監査人としての見識をここで示してほしいなというのが私の意見です。

○脇田部会長

御意見を伺わせていただきました。先ほど葛馬委員、失礼いたしました。どうぞ。

○葛馬委員

正直言って、私も、この言葉の定義に関しては、こんなに難しいことがあるのかというのは、きょう、初めて聞いたような次第でよくわからないんですけれども、本件にアプローチするのに、非常に演繹的というか、そういうアプローチもさることながら、機能的なアプローチも十分尽くす必要があると思います。

一例として、私が以前行っていた香港の子会社が、これは、当時のピート・マーウィックの監査だったんですけれども、赤字続きで、ゴーイング・コンサーンとしての監査報告書を出さないと言われまして、こちらは上場企業ですので、香港で上場していましたので、それが出ないと困るということで、あげくの果て、結局、親会社の私どもの会社が、ボードの要求があれば、いつでも増資に応じますという無制限保証状を出すようなことをやって、やっと継続企業としての監査報告書を出してもらった。

そのときの彼らの監査の姿勢というのは、まるで検察官のようでありまして、在庫の評価なんかでも、そのときにある契約と全部照らし合わせて、では、この在庫は幾らで売れるはずだから、幾らに評価しようという、その年度末じゃなくて、それから6カ月間先ぐらいの状況を全部取り込まないと安心できないというような姿勢でありました。

例えば、在庫の評価について言えば、そういうuncertaintyというんですか、幾らで売れるかわからないという状況は、別にそういう危ない会社でも、高収益の会社でも、同じなはずなわけです。uncertaintyということで言えば、現在、物すごい高収益を上げている製品を持っている会社ほど、その高収益事業がなくなるリスクがあって、リスクが大きいんだということにもなり得るわけで、結局、何が問題になるかというと、これは、伊藤さんが日ごろ言っておられることですけれども、企業というのは、どんな会社でも、みんなリスクにさらされていて、uncertaintyの海を越えていかなければならないわけですけれども、それが起こった場合に、どこまで耐える体力があるのかということによって、監査人の心安らかさの程度が変わってくるということじゃないかと思うんです。

そのときも、監査人が出せないと言ったのは、赤字続きで、ほうっておいたら、いつつぶれるかもわからないねという常識的な判断ですよね。別に言葉の難しい定義、偶発事象がどうのこうのなんか言わなくても、その辺は常識的な判断でわかって、彼らがこのまま監査報告書を出したら、非常にリスクがあると思ったんで、そういう態度をとったわけなんで、この倒産の可能性があるようなところについては、十分注意して見ましょうねということ――ぶっちゃけた話、そういうことだろうと思うんです。

では、それをどの程度のところで、どの程度の表現をとって、どの程度のアクションを強要するのかということは、これは、実学の世界なんで、演繹的に詰めていこうとするよりも、機能的にこんなところが落としどころかなということを見出していく努力という、そういうアプローチが現実的ななのかなと。先ほどからの言葉の議論というのは、私もよくわかりません。それを聞きながら、そういうようなことを感じましたので、御参考に……。

○脇田部会長

ありがとうございました。そろそろ時間が参りましたけれども、内藤先生、どうぞ。

○内藤委員

先ほど宮島先生から、全くわからないというお話だったんで、ゴーイング・コンサーンの問題というのは、基本的に、我々がここで考えているのは、財務諸表を対象として、その監査をどうするかということですよね。財務諸表は、では、何のために開示されているかというと、投資の意思決定に有用であるから開示されているわけですね。そうすると、今、新しい会計基準によって、時価主義会計的な要素が非常に強くなってきて、それは、企業がどれだけ将来純キャッシュフローを得るかという情報に指向しているわけですね。そういう情報内容になっているわけです。

その一方で、これまで企業の安全性とか、支払い不能のリスクに関して、財務諸表情報を見ればわかるという実証研究も出ているわけですけれども、そういうのは、どちらかというと、これまでよりは、軽めに扱われているといいますか、そういった情報というのは減っているわけです。投資の意思決定にとって有用かどうかというのは、では、投資者が投資した会社がつぶれてしまったら、元も子もないわけですから、その判定をする情報として、財務諸表として、見てから1年以内につぶれるかどうかということがわかれば、全然問題ないわけですね。わからないから、これは何とかせねばいかんという話になっていると思うんです。

では、これまでのゴーイング・コンサーンに関する情報は、制度上は出ていないわけですけれども、そういった企業の将来にかかわってくるようなリスクについては、財務諸表項目それ自体が、すべてその中には、少しずつは折り込んでいるわけですね。評価という問題で、リスクを評価した上で、どういう金額で計上するかということを決めていった上で、利益が出ている。あるいは損失というのが出ているわけですね。

では、それに入ってこないものは、偶発事象、偶発損失として注記をする。あるいはuncertaintyという形で、もう少しそれを広くしましょう、そういう方向にあるわけです。しかし、肝心なのは、そういった情報開示の拡大ということじゃなくて、今、現実に問題なのは、投資した会社がつぶれてしまったら意味がないわけですね。将来キャッシュフローが幾らあると言われても、つぶれてしまったらいかん。そういうような情報内容が出ていないんだったら、そのことについては、特に経営者に情報開示をさせ、そして、それに対して、公認会計士の監査でどうそれを判断するかということになっていると思うんです。

ところが、そのゴーイング・コンサーンに関する情報というものを決めていくときに、偶発事象であるとか、未確定事項というのが関係を持っているので、今議論になっていて、今言われたように、常識の範囲でみんなが判断できれば、それは問題ないわけですけれども、しかし、その常識の判断というのが、みんながぶれたら困るので、とにかくゴーイング・コンサーンに関して、では、経営者が知っていることをちゃんと出しなさいよと。問題がないんだったら、出す必要も当然ないわけですね。それは、従来どおりの財務諸表項目の中の分析でわかるわけですから。でも、それを超えてわからないような将来の事象に依存するようなことが生じているんであれば、それをちゃんと出して、それに対して、監査はどう考えるのか。それがゴーイング・コンサーンの監査だというふうに思うわけです。

それで、少しは御理解いただけたでしょうか。

○宮島部会長代理

よくわかりました。1つお伺いしたいのは、これは経営者の方にお聞きするのがいいかもしれないんですが、企業経営の未確定事項という中で、財務諸表に影響する可能性のないものなんていうのは、大体あるんですかということをお聞きしたい。ないとしたら、会計士は全部企業経営のゴーイング・コンサーンについて監査しなきゃならない。そこのところが一番のネック、何で切るのかというのがネックなんです。それが僕らは気になるものですから、それこそ、責任の問題が監査人には出てくるわけですね。そんなときに、企業経営で未確定事項の中で、財務諸表にかかわりのないものがあるか。そういうお話です。

○内藤委員

それは、ないと思います。すべて関係していると思います。

○脇田部会長

御議論がちょっと長くなりますので、また次の機会もございますし、きょうは、いろいろと御議論が出ておりまして、宮島先生が御指摘になった、そういった問題についても、それぞれの御意見の中で、何かいろいろな方向が探れるような気がいたしますけれども、最後に、若杉会長から一言御発言いただきたいと思います。

○若杉会長

お二方の報告をいただき、それをめぐっていろいろ質疑応答が行われまして、大変活発な議論が展開されたと思っております。どうもありがとうございます。

感じましたところでは、非常に重要な概念がここでもって幾つか出てきておりますけれども、それを抽象的な定義をしただけでもって議論するものですから、なかなか議論がかみ合わなかったり、わかりにくかったりして、特に、宮島部会長代理のように、ちょっと法律の立場からとか、あるいは経済学の須田委員の立場からしますと、わかりにくいことがあったと思うんですけれども、これは、具体的な例、適切な例を挙げるというのは難しいんですけれども、しかし、企業御出身の委員の皆様方、長く深い御経験をお持ちですので、そういう御意見を承りながら、具体的な例と結びつけながら、概念を説明していきますと、もっとはっきりするんですよ。

事実、これはこんな例があるよと言って、いろいろなことが出てきておりますので、今度の議論は、そういうものをひとつ使いながら進めていく必要があるんじゃないかと思っております。特に、意見書にまとめる場合には、重要な基本概念の定義を明確化しておく必要がありますので、なかなか時間を食う仕事ではありますけれども、ひとつそこのところをしっかり固めていただきたく、よろしくお願いしたいと思います。

簡単ながら、以上でございます。どうもありがとうございます。

○脇田部会長

ありがとうございました。ただいま御指摘いただきましたところ、そして、皆様方の御議論の中にも、さらに具体性を持つように、私どもでも準備などをさせていただきますので、次回にまた議論を引き続きさせていただきたいと思います。

次回の部会は、12月1日の金曜日でございます。時間は午後2時から開催させていただきます。本日に引き続きまして、ゴーイング・コンサーンについて御審議をいただきたいと思います。

なお、もう1つお願いがございまして、次回部会の後の予定でございますけれども、年内に論点を一通り御審議いただき、改定項目のあらましぐらいまでは、一応御審議いただきたいというふうに考えております。そこで、皆様方には大変御多忙のところ、申しわけございませんけれども、かなり年末でございまして、恐縮でございますけれども、12月22日の金曜日にも、部会を開催させていただきたいと考えております。何とぞこの点御配慮をお願いしたいと思います。12月22日の部会の時間につきましては、ほかの部会との関係がございますので、午後3時30分から開催させていただくことになろうかと思います。詳しいことにつきましては、後日事務局から御連絡をさせていただきます。

本日の部会はこれにて閉会いたします。ありがとうございました。

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