平成13年6月28日
金融庁

企業会計審議会第11回固定資産部会議事録について

企業会計審議会第11回固定資産部会(平成13年6月4日(月)開催)の議事録は、別紙のとおり。

(問い合わせ・連絡先)

金融庁(TEL 03-3506-6000)
総務企画局企業開示参事官室
企業会計審議会事務局


企業会計審議会第11回固定資産部会議事録

日時:平成13年6月4日(月)午後4時00分~午後6時04分

場所:中央合同庁舎第4号館10階共用第一特別会議室

○辻山部会長

定刻になりましたので、ただいまから第11回固定資産部会を開催させていただきます。本日は皆様方にはお忙しいところをご参集いただき、ありがとうございました。

それでは早速ですが、議事に入りたいと思います。

前回は、神田委員から、商法と固定資産の減損会計等の関連についてご報告をいただき、意見交換を行いました。次に、固定資産の減損会計及び投資不動産の問題全体につきまして、主要な論点を中心に意見の集約に向けて意見交換を行いました。

本日は、前回に続き、固定資産の減損会計及び投資不動産の問題全体につきまして、主要な論点を中心に意見の集約に向けて意見交換を行いたいと思います。

お手元にございます資料は、前回の分を含めまして同じものを改めてお配りしております。前回、本日ご持参いただくようにお願いしたものと同一のものでございます。本日は、このうち資料3からということで、前回1と2につきまして意見交換を行っておりますので、資料3から続けさせていただきたいと思います。

それでは、まず小宮山委員から、のれんの減損、リース資産についてご報告をお願いいたします。

小宮山委員、よろしくお願いいたします。

○小宮山委員

小宮山でございます。お手元の資料3というのがございますが、それに沿って話をさせていただきます。

のれんとファイナンス・リースについては余り量が多くございませんので、短か目の報告になるかと思います。

資料3には、のれんについては次のように取り扱うことでどうかというふうに考え方が示してございます。基本的にのれんの減損については、個別財務諸表で計上されている営業権と、連結財務諸表で計上されている連結調整勘定、この双方が対象になることでどうかというのが1点目でございます。

基本的にはのれんの評価自体を抜き出してできないというのが、のれんの減損の基本的な問題になります。そうしますと、川村委員から前回説明の共用資産等の扱いと類似の問題がございます。基本的に減損損失の認識及び回収可能価額の判定に当たっては、原則として取得時の資産の公正価値の比率によってのれんを資産グループに配分してはどうかというふうなことが2番目でございます。

ただし、公正価値の比率による配分が適当と認められない場合、この場合にはその他の合理的な方法の採用の余地も認めていいのではないかというのが3点目でございます。

さらに、キャッシュ・フロー生成単位が識別できない場合、この場合についてはのれんの配分を行わない。この場合には基本的には取得された事業全体で減損の判定を行うということになろうかと思います。基本的にこのような考え方というのはFASの121、それからIASの36と同じような考え方でございますし、それからのれんに関する改定のところでもFASの公開草案でも基本的に報告単位で分けるというふうな考え方が示されておりまして、国際的にも整合性のある考え方になるのではないかなというふうに考えます。

減損の判定が終わった後に、今度はのれんを含む資産グループについて生じた減損損失というのをまずのれんに配分して、残りは資産の帳簿価額に基づいた比例配分等の合理的な方法によって各資産グループの構成資産に配分するというふうにしてはどうかというのが5点目でございます。

ご承知のように、当審議会の第1部会では企業結合の会計基準というのが検討されております。現行、ここに示したのれんの考え方というのは、のれんが資産に計上されて一定の期間、個別財務諸表では5年でしょうし、連結財務諸表では20年ということで期間償却されるということを前提とした考え方によっております。これは第1部会でのれんの会計処理というのも検討されるわけですけれども、ある意味でニワトリとタマゴのような議論になりかねないわけでして、基本的にはこのような考え方で当面進めてはどうかというふうに考えているわけです。

ただし、企業結合にかかわる会計基準というところでのれんの会計処理というのが決まってきたという場合を考えますと、どのように決まるかということは全く見えないわけですが、アメリカで来月にFASBから最終の確定基準というのが出ると言われております。これによりますと、のれんは非償却資産として扱って、減損のテストをするというふうなことになっているわけです。現行の一定期間で償却するという考え方をとった場合にはこういう考え方になるわけですけれども、企業結合の会計で別途の結論が出た場合については、減損の兆候の種類というのが若干異なってくることもあるかもしれませんし、それから減損の判定単位ですとか、回収可能額の算定ですとか、回収可能額の算定期間ですとか、こういうものについて別途の検討を行う必要が出てくるという可能性もあろうかと思います。

ただ、のれんの減損についてこのように考えるという基本部分については余り変わってこないのではないかなというふうに今考えております。

次に、2点目、ファイナンス・リース取引の取り扱いということですけれども、我が国の場合、いわゆるファイナンス・リース取引につきましては特に所有権が移転するかどうか、移転しない移転外リースと言われているものにつきましては、通常の売買取引にかかわる方法に準じて会計処理を行うという方法を原則として、一定の事項の注記を行うことを条件として賃貸借処理も認めるというふうな取り扱いになっております。基本的に多くの企業では賃貸借取引にかかわる方法に準じて会計処理を行うというふうな考え方が採用されているわけです。売買処理を採用している場合の取り扱いというのは、リース資産が資産計上されておりますので、他の減損と特に異なる点はないということになろうかと思います。つまり他の資産の減損と同様とするというふうに1番目で書いたことでどうかというふうに考えております。

ただ、一方、賃貸借処理を採用している場合には、ファイナンス・リースにかかわる資産というのは企業の貸借対照表には計上されないということになるわけです。そうしますと、資産の減損の論理でこの問題を取り扱うには無理があるんだろうというふうに思われます。ただ、企業が将来の収益によって回収できない債務をファイナンス・リース取引によって負担することになる場合には、資産の減損に準じて回収できない部分を損失として認識する必要があるということは明らかであろうかと思います。

この場合には、未経過リース料の現在価値額を基準として回収不能額を引当金等に計上することによって、減損に相当する金額が損失に計上されるという考え方をとってはどうかというふうに考えます。

ただ、賃貸借処理をとった場合の考え方というのは資産の減損という問題ではございませんので、この分を直接最終基準で盛り込むのか、それとも考え方がこうなるよというのを前文等で触れるのかというのはまた別途検討する必要があろうかと思います。

以上でございます。

○辻山部会長

ありがとうございました。

それでは、早速、資料3、のれん並びにファイナンス・リース取引に関しまして意見交換を行いたいと思います。どなたからでも結構ですので、ご自由にご発言いただきたいと思います。品川委員、お願いいたします。

○品川委員

(5)の「のれんを含む資産グループについて生じた減損損失は、まずのれんに配分し」となっているわけでありますが、こういう考え方が一般的であるということは理解しているつもりですけれども、資産グループ全体の減損損失が特定の資産と明らかに結びついている場合、あるいは特定の資産が災害等で損壊したために減損が生じているとか、そういう特定の資産に結びついている場合にも必ずこののれんにまず配分するという考え方が成り立つのかどうか、その辺についてちょっと確認したいんですが。

○小宮山委員

今のご質問の前者のケースについては、グルーピングをどこの特定資産に結びつけてやるかという問題とかかわってくるのかなと思いますし、それから特定の資産が大きな損害を受けたというふうなケースについては、それを優先して割り当てるというのは通常の資産の減損の考え方、回収可能性の問題とは違う問題ですので、今言われたような考え方で処理をされるのかなというふうに思いますけれども。

○品川委員

それでは、まずのれん云々というのは当然例外があるということで、原則としてということですか。

○小宮山委員

はい。一応減損の意義のところで資産の回収可能性云々というのをここで扱う減損の問題として扱っていますので、それ以外滅失等の減損はそれ以外の問題と通常の論理でやることになるんだろうと思いますし、のれんの配分のところで特定の資産にかかわっているというときにはそこに配分すると。そのところでいろいろな考え方があるだろうと思いますので、資産の公正価値の比率によるというのも一つの方法ですし、それからそれ以外の方法も一応認めるということで、あるものに直接関係あるものはくっつけられるというふうな考え方をこの5つの中ではとっているつもりでございますけれども。

○品川委員

わかりました。

○辻山部会長

そのほかいかがでしょうか。それから、ファイナンス・リースについてもここで本日議論を行いたいと思います。太田委員、どうぞ。

○太田委員

のれんにつきましては、かなり会計上一定年数以下での償却という以上の決まりがなくて、実務上ライトオフといいますか、ある一定の事業を例えば買ってそれにのれんがついてきた、その事業がその後当初の見通しどおりいっていないというような場合に、その評価をどうなのかというような議論を、現状の減損の会計基準がない範囲内でも、ある状況でその事業の状況が非常に変化した場合にはライトオフすべきかどうかというようなことを実務上議論させていただいている場合があるように考えておりますが、それとの関係でこちらはこういう新しい減損の認識基準を満たさなければそういう償却年数の短縮ないしは営業権自体、のれん自体のライトオフといいますか償却は認めないと、そういう方向性で考えるという理解でよろしいでしょうか。

○小宮山委員

今のご質問の件というのは、のれんに固有の問題ではないと思うんですね。通常の固定資産で臨時償却と減損をどうやって区分するかという点と重なる面があるというのは実は同じでして、アメリカの扱いでも減損による会計処理とAPBの16か17による臨時償却的な処理と両方入っていまして、実は境目がよくわからない部分があるわけです。そういう意味では、回収可能性によるテストというのも現状あるんでしょうし、今までのような耐用年数の短縮とかそういう部分も残るんでしょうし、ほかの固定資産と同じでして、どうも答えとして非常にすっきりと割り切れない答えになって申しわけないんですけれども。

○辻山部会長

太田委員、よろしいでしょうか。

この点は、先ほどの品川委員のご質問にもかかわってくるのではないかと思いますけれども、先ほどの質問の中で物理的な著しい減耗、風水害等によって著しくダメージを受けたような、こういったことについては従来臨時償却でやってきましたが、それらをやめてこの減損会計に統一するという趣旨ではないというのが小宮山委員のご発言の内容だと思いますけれども。

ほかに特にこの機会に。どうぞ逆瀬委員。

○逆瀬委員

グルーピングに関する話なんですけれども、ここはエッセンスとして書かれていることですけれども、ちょっと封印していただいて、例えばある報告企業が一定の事業を運営していて、その事業に必要な事業ということで外部から事業を購入してくる。それを100%子会社にたまたましましたというときに発生するのれんというのは、当該被買収事業、買収会社の100%子会社になったわけですけれども、それに関連して発生するのれんです。そののれんは、減損とか回収可能性とかといったようなことが買収側の企業の特定事業と密接に関連しているというときに、その当該被買収子会社ののれんの減損の手続をスタートするときに、親会社の事業の状況と極めてタイトに関連しているときに個別は個別、連結は連結というふうに区切って兆候、認識、測定という段取りにいくのかどうかなんです。

まだ厳密に個別、連結の議論はいたしておりませんが、私どもは以前本席でも申し上げたと思うんですけれども、特に今ののれんのようなケースは買収側の企業の事業のありようというのが密接にのれんの価値に関係してくると思うんですけれども、その点はどのように理解すればよろしいんでしょうか。

○小宮山委員

前から何度か指摘されている点で結論の出ていない問題だろうと思いますけれども、要するに連結ベースと個別ベースでの差をどういうふうに考えるか、単独で見ると、恐らく子会社段階で見ると減損が生じているやに見えるけれども、付加価値部分、複合効果みたいなもので恐らく連結ベースでは減損が生じていないというふうに見られる場合、これの扱いなんだろうと思うんですね。連結ベースでは減損として扱わないということについては明らかなんだろうと思いますが、個別でやらなければいけないのか、もしくはやっていいのかというのはまた別途ほかの問題とあわせて検討すべきなのかなと。要するに、子会社の投資額が全体で回収可能であれば、それの減損という形で評価減をするかしないのかと、具体的にはそういう問題なんだろうと思うんですけれども、これはのれんに限らないので、ほかの設備資産等と同じでやはり何らかの検討をして答えを出すのかなというふうに思いますけれども。

○逆瀬委員

では、検討すべきマターだというふうにお答えいただいたと理解してよろしいですか。

○辻山部会長

ちなみに、たびたび逆瀬委員からこの点のご発言があるわけですけれども、具体的なイメージとしてはどのようなことをイメージされているのか、もしお差し支えなければお考えをお聞かせいただきたいと思います。

○逆瀬委員

連結財務情報の重要性というのが証取法上も、あるいは今の商法の中でも高められようという――商法では導入ですけれども――そういう公開草案が出ております中で、連結で物事を判断するというのが通常の場合の経営者のありようだという、まず前提を置けばですね、個別決算段階で連結子会社の場合もきちっとしっかりくくってそこの中だけで判断しなさいというのは、なかなかそういうゴーイング・コンサーンの企業実態、あるいは事業判断と合わないんではないかという基本的な疑問なものですから、申し上げたような端的な事例においては連結の事業ラインというか、ここでいうところのキャッシュ生成単位ですか、それで見て全体としての兆候、認識というふうにステップを踏んでやることでよろしいのではないかと申し上げているわけです。そこで減損している認識にならなければ、子会社の個別計算書類とか、個別財務諸表においてあえて減損処理を強制する必要はないのではないかと申し上げているだけなんです。そういう余地は全くないのかどうかということなんですね。

○辻山部会長

この点につきましては、例えば監査上のお立場で、そんなようなことになった場合に特にご意見をいただければと思いますが、まず小宮山委員、いかがでしょうか。

○小宮山委員

最近は連結ベースで見るというのがだんだん一般化しつつあるので、基本的にはセグメントよりやや小さいくらいの単位なのか、セグメントと同じ単位なのかわかりませんけれども、その単位で減損していなければ減損の処理が要求されるということは通常ないんだろうと思うんですね。

ただ、監査上の問題としては、それはないというふうに割り切った場合に、子会社レベルでやってしまいたい、要するに、アメリカ流に言うアーニング・マネージメント的なものをされた場合に監査上どうするのかなというのはやや困った問題なのかなというふうには思いますけれども。

○辻山部会長

ありがとうございました。秋葉委員、いかがでしょうか。監査上のお立場から。

○秋葉委員

今の件は、まず理屈に合うかどうかわかりませんけれども、ルールをつくってそれに従うというふうなことであれば、監査上は問題がないんではないか。ですから、そういうようなルールをいかにつくるかということがポイントではないかというふうな気がしますが、ただもう少し実務的なことをすれば、親会社の持っている状況を子会社レベルでどのように確認するかというような点が懸念と言えば懸念ではありますけれども、当然その辺は従来からお話がありますように会社の方は親子関係の中で十二分に支配があると。ですから、逆に言うと支配されている方にもそれなりの情報があってとか、子会社の方の監査人の方が親会社の方の経営者なりにどうアクセスするかということも担保されるということが前提だと思いますけれども、実際上なかなかちょっと親会社が監査やっていないとか、違う監査法人がやっているとかいうケースだと、どういうふうにうまく対応できるかなというふうな気は若干しないでもないですけれども。懸念としてはそんなことが挙げられます。

○辻山部会長

ありがとうございました。あと会計士の先生で、太田委員、いかがでしょうか。

○太田委員

例えば非常に極端なケースですと、子会社の方が非常な赤字で、でも連結として見た場合はそんなことはない、そこそこ利益を出しているという状況が割と極端なケースで考えられるのかなという気がいたしますが、その場合に中長期的に考えますとその子会社をどうしていくのか、例えば取引価格が現状のレベルでいいのか、ないしはもっと見直すべきなんじゃないかというような議論になるような気がいたしまして、ですのである大きなところでは連結ベースで利益が出ているからグループ全体としては減損していないよということでいいのではないかと思うんですが、そこの取引価格がほかの市場価格と比べたところで割と第三者価格に近いよというような運営をされているケースであれば、やはり個別ベースでも減損を認識すべきような状況になっていると考えるのが通常なんではないかなというふうに感じます。

ただ、親子間の取引ですので、なかなかそこは値段が市場価格なのかどうなのかその辺の判定は難しい部分がございますし、中長期的にはその辺を見直してやはり子会社のレベルでも利益を出していくような体質にされることが多いんではないかなというふうに思います。

○辻山部会長

ありがとうございました。この点について、逆瀬委員、前回もたしか取引価格の問題も一つ考慮というときに、そういった矮小の問題ではないんだというご指摘を受けましたけれども、取引価格が今太田委員のご指摘のように適正価格であってもなおかつ子会社に重大な赤字が生じるようなケースという、具体的にどういったケースがあり得ますでしょうか。

○逆瀬委員

今はそのケースではなくて、申し上げたのは連結の視点から見たキャッシュ生成単位に内包される当該子会社のことを言っていて、その生成単位で全体として見たときにはのれんも含めて市場価値は十分簿価を上回っている、こういうケースのときにおいて、なお当該子会社の個別決算段階で減損の認識に至る必要があるのかどうかというご質問をしているわけでありまして、逆のことはとりあえず今言っていません。

○辻山部会長

その場合に、なぜ子会社にそういったケースで赤字が生じるのか。全体のキャッシュ生成単位で十分にキャッシュが生成できているのにもかかわらず、子会社になぜ赤字が集中するような事態があるのかという質問なんですけれども。

○逆瀬委員

例えば今の議論はのれんですから、欲しければ値段は高くなるわけですよね。別に合理的な値段でのれんといいますか、買収価額が決まるわけではないので、プレミアが乗ります。それが合理的かどうかはちょっとわからないんですけれども、ビジネスとしてはそういうことがあると。だから、いわば回収可能かどうか個別段階で判断しますよというような判断基準を会計の方でもし強制的にやったとすると、事業判断とちょっと違うものだから合いませんねと言っているわけなんです。

要するに、買収側の企業の事業にとってプラスになればいいわけです。そういう判断しかしませんので。

○辻山部会長

特にのれんの問題に関してそういった問題が生じる可能性があるということですか。

○逆瀬委員

特に顕在化すると言っているわけです。

○辻山部会長

そのほか。あとファイナンス・リースについてはいかがでしょうか、ご意見のある方いらっしゃいますでしょうか。

特にファイナンス・リースにつきまして、清水委員、いかがでしょうか。

○清水委員

当面これは賃貸借処理をしている場合ですけれども、今のリース会計が所有権移転外ファイナンス・リースが注記でオンバランスにしなくてもいいという会計基準に基づいて、現状こうだからこういう処理ということなのか、将来はやはりオンバランスにするのが本来的であって、(1)の方が本来的なんだということなのかちょっとわからないのと、とりあえず減損という認識をすれば引当金計上で、本来は資産計上をされてそれを減損なんですけれども、資産計上されていないので引当金処理をすれば減損というものも認識できるので、現状の会計処理においてはこれがベストですねというお考えであれば私もそう思うんですが、本来的にはオンバランスしたものが減損なんではないかと思いますが。

リース会計の方にかかわってきちゃうので、現状の会計処理では減損会計がこれで認識できるのでよろしいのではないかなという気がするんですけれども、ただ、ちょっと引当金というのは何となくなじまない、資産計上されていない引当金というのはなじまないような気も一方ではするんですけれども。

○小宮山委員

今おっしゃられたとおり、基本的には現行の会計制度で行われているところを是認した上でこう考えてはどうかというふうな考え方を示したつもりです。

あと引当金という言葉、実は「引当金等」と書いたのがみそでして、別に未払金でも未払費用でも何でもいいと思っているんですね。特に引当金というのは会計上非常に純化し過ぎるのが日本の会計慣行の悪いところでして、ロス・コンティンジェンシーが計上されていれば私なんかは何でもいいと思っているんですけれども。

もう一つ先のことを考えますと、ここではちょっと先ほど申し上げなかったんですけれども、別の問題に発展する可能性があるんだろうと思います。リースについて例えば未経過のリースというのを資産、負債両建てにするというふうな今言われているような会計処理が採用されますと、ここではファイナンス・リースの取り扱いだけを書いたんですが、実はオペレーティング・リースの解約不能部分の未経過リース料、現在注記されているもの、これについても同じようにやはり減損の問題があるわけです。そうしますと、今のところはファイナンス・リースの取り扱いというふうに考え方がこうかと書いたわけですが、実際には解約不能部分の未経過リース料も全く同じ話でして、最終段階でそれまで踏み込むのかどうかというのは別に検討すべき必要があるのかなという感じはしております。

○辻山部会長

清水委員、いかがでしょうか。ちなみに、今小宮山委員から最後にご発言がありました解約不能なオペレーティング・リース、この件につきまして何かご意見ございますでしょうか。

○清水委員

解約不能、要するに米国基準のようにきちっとしたファイナンス・リースとオペレーティング・リースとの算定の方法が現状、日本の場合はそこまできちっとしていないので、米国基準であるとファイナンス・リースに該当するようなものがオペレーティング・リースに若干なっている可能性もあると思うんですが、解約不能が長ければファイナンス・リース的ですので、減損会計の対象にした方がいいと思います。

○秋葉委員

今の部分についてなんですけれども、私の理解も先ほど清水委員の方が初めにお話しされたように前者の方といいますか、現状、所有権移転外ファイナンス・リースについて例外的に賃貸借処理が認められているということの弊害といいますか、原則売買処理と同じ土俵にのせようということなので、将来リース会計が変わって解約不能のオペレーティング・リースについても同じ処理が出れば別ですけれども、現状それが変わらない限りは、ないしはそれを前提にする限りは解約不能であってもオペレーティング・リースはここの部分では対象になることはないんじゃないかというふうには思っております。

ちなみに、これは当然触れていませんけれども、借り手の方の処理であって、今のようなオペレーティング・リースの場合は解約不能であっても、今度貸し手サイドの方で計上されているリース資産についての減損という話が出てくる可能性はありますけれども、一応前提としてはリース基準の現状のところを前提にしているということで変わらない限りはこのレベルにとどまるんじゃないかというふうに思います。

○辻山部会長

そのほかございますでしょうか。どうぞ清水委員。

○清水委員

もう一度言い直します。私も今の秋葉先生のお考えに実は賛同いたします。

○辻山部会長

わかりました。川村委員どうぞ。

○川村委員

引当金等の計上後の処理なんですけれども、どうやって取り崩していくのかなという疑問があって、単に減損した資産だったら定額法とか定率法のベースにのっかって損失で引き落とされなかった部分が将来の収益で回収されるというんですか、そういう感じなんですが、このケースだとどういうどういうのをイメージされているかちょっと教えていただければと思います。

○小宮山委員

現実にイコールになるかどうかは別なんですけれども、その後の期間に支払ったリース料で費用計上されるものの現在価値が損失計上額というふうになるんだろうと思うんですね。それを取り消す形で引当金を多分戻すというような処理になるんであろうと思いますけれども。

○辻山部会長

川村委員、よろしいでしょうか。

そのほか。どうぞ都委員。

○都委員

のれんの方でございますが、企業が新たに支配を獲得した場合に、従来であれば簿価との差が連調に入ってきておったんですが、最近連結では時価で評価するということで、支配を獲得するときに一定の固定資産などを含めて時価に価値を求めて取得したんであればその分は時価で評価して、その分従来であればのれんだったものが変わっていくことになるんですが、そうするとそうしたケースの場合はむしろ場合によっては連結だけの減損というような局面が出てくる可能性がありますが、この件については先ほど来全体を連結で見るんだという減損を考えていくという整理の中で、当然のこととして、ここには出ておりませんが、それは連結の中で扱われるというふうに考えてよろしゅうございますか。

○小宮山委員

のれんの計上のところで、特にアメリカの新しい基準みたいな考え方ですと、識別可能な無形資産がたくさん出てくるわけでございまして、最終的に企業結合の会計基準でどうするかとなりますけれども、のれんの問題と同時に今まで注目していなかった識別可能無形資産の減損の問題というのがある反面出てくるんだろうというふうには思っていますけれども、今のところはソフトウエアぐらいしか頭の中にないわけですが、違った問題が基準のつくり方によっては減損について出てくるだろうというふうに思っていますけれども。

○辻山部会長

よろしいでしょうか。

それでは、また後ほど全体に戻って議論する時間がございますので、次に資料4の方でございます。荒木委員からこちらのタイトルにありますように対象資産、表示・注記、その他につきましてご報告をお願いしたいと思います。

○荒木委員

それでは、これまで減損会計のさまざまな点についてご報告がありましたが、それ以外の論点についてまとめてご報告させていただきます。

まず、減損会計の対象資産ということですが、ここのところは論点整理のところとほぼ同じでして、固定資産を対象とするということでどうかということです。ただし、金融資産、繰延税金資産、前払年金費用、それからこれは追加なんですが、市場販売目的のソフトウエアについては対象資産から除いてはどうかということでございます。

最初の金融資産、繰延税金資産、前払年金費用については論点整理のときから除いてはどうかということだったんですが、市場販売目的のソフトウエアについては現行の基準、それから実務指針で、特に兆候がなくてもやるということ、それからグルーピングしないでそれぞれの個別のソフトウエア単位で減損、あるいは回収可能価額を見積もるということになっておりますので、今の減損会計の対象資産に入れますと、かえって減損会計の適用が緩くなる可能性もありますので、ここでは今検討している減損会計からは除いてはどうかということでございます。

それから、審議の過程で例えば回収可能価額がマイナスになった場合についても減損会計の基準で一緒に考えてはどうかというご意見もあったと思いますが、これについてはやはりマイナスの場合は引当金という範疇できちんと考えた方が整合性のある基準ができるのではないかと思われますので、とりあえず資産計上されているものについて見る、ただし、先ほどの小宮山委員のお話しのファイナンス・リースについては特別に引き当て、あるいは負債処理ということを考えてはどうかということになると思います。

それから、2番目の表示・注記の問題ですが、まず貸借対照表の表示ということで、ここでは何が問題になるかといいますと、減損損失累計額の金額、過去の減損の蓄積の金額をどのように表示するかということなんですが、ここでは一つの考え方として減価償却累計額と同じように考えてはどうかということで書かせていただきました。減価償却累計額と同じことになりますと、有形固定資産については累計額は控除項目として表示する、それから、無形固定資産、投資その他の資産については直接控除ということになるんではないか。ただし、土地については減価償却は当然ないんですけれども、減損はあり得るということで、それについてはどういうふうにしたらいいのか、直接減額がよいのか、間接的に控除するのがよいのかという論点はまだあると思います。

それから、2番目に損益計算書上の表示についてですが、これについては、審議の過程でも、固定資産の場合、廃却損益と同じように扱って原則として特別損益ということが妥当ではないかという意見が多かったように思われます。

それから、3番目の注記ですが、重要な減損損失を計上した場合には、減損損失の計上に至った経緯、回収可能価額の算定方法、資産のグルーピングの方法等について注記する必要があるのではないかということです。減損損失の金額自体がやはり会社の見積もり、あるいはグルーピングによって左右される部分がかなりあると思われますので、それを少なくとも重要な減損損失についてはある程度説明的に記述するということが財務諸表の読者にとって親切ではないかということが言えると思います。

それから、3番目、その他の論点としまして2つ挙げてあります。

まず、中間期で行った減損処理の年度決算における取り扱いですが、これについては中間期の処理で一旦確定させる。年度決算で中間期の処理を一旦洗いかえのようにして処理する必要はないのではないかということです。したがって、上期で減損処理をやって下期で例えばその資産を売却したということになりますと、上期末の帳簿価額から売却までの減価償却費なりを引いた金額をもとに売却損益を計算するというふうにしたらどうかということでございます。もちろん、中間期で一旦減損処理をやった資産について、さらに収益性が悪化した、あるいは回収可能価額が下がったということになりますと、年度決算においても追加で処理するということは当然あり得ると思います。

それから、2番目の再評価を行った土地の取り扱いでございますけれども、土地再評価法に基づく再評価をどのように考えればいいのかということは非常に難しい問題だと思いますが、ここでは再評価法に基づく再評価というのは、IAS等で規定されているような資産の継続的な時価評価を目的とする会計処理ではないのではないか、取得原価基準のもとで1回限りしか認められない非常に例外的な処理であるということで考えています。したがって再評価を行った土地については再評価後の帳簿価額からその後の物理的な減損も含む減損処理額を控除した金額について減損会計を適用する、その結果、認識される減損損失については損益計算書に他の再評価しない有形固定資産、無形固定資産と同じように損益計算書に計上するということが考えられるということでございます。

それから、減損損失と再評価差額金の取崩益を相殺する方がよいのではないかというご意見もあったと思いますが、減損損失の方は損益取引ですし、再評価差額金の取り崩しというのはやはり資本の部の中の取引ではないかということで、これを相殺しますと損益取引と資本取引を混同することになるのではないかということで、これは認められないのではないかと思われます。特に、再評価差額金については自己株の消却に3分の2まで使えるということですので、例えば自己株の消却に使った場合には再評価差額金というのは3分の1しか残っていないというケースがありますので、相殺するということになりますと自己株の消却をやった場合とやらない場合で最終損益が変わってくるということになってしまいます。それはちょっと考えられないではないかということです。

以上でございます。

○辻山部会長

ありがとうございました。それでは、ただいまの資料4につきまして、ご自由にご発言いただきたいと思います。

特に、今の再評価を行った土地の取り扱いにつきまして、田辺委員からご発言がございましたらよろしくお願いいたします。

○田辺委員

今、荒木委員のご説明の中にIASの規定と土地再評価法は1回限りかそうではないかという点によって違うというお話があったので、それとつながってくる話でこういう結論になっているのかもしれないんですけれども、念のため確認したいんですが、IAS36の方にはパラグラフ60で、再評価された資産の減損損失はその減損損失が当該資産について再評価、剰余金として保持されている金額を超過しない範囲で、直接に同一資産の再評価剰余金に対して認識されるという規定がありまして、さらに結論の根拠のB-94というところに「減損損失が再評価による減額であるのか、その資産の用役の潜在力の減少であるのか識別することは困難である。したがって、IASの理事会は、再評価された資産の減損損失を再評価による減少額として処理することに決定した」という説明があるんですけれども、あえてそこでIASがとっているような減損損失を一種の資本取引とみなして資本の方にチャージするというやり方をとれないというのは、土地再評価法とIASの土地再評価の性格が違うという理由に起因するものということなのでしょうか。

○荒木委員

結論的には、やはりIASで規定しているような再評価とはかなり違うんではないか、再評価が1回限りであるという点も違いの1つですけれども、再評価で簿価よりも時価の方が低い場合、評価を下げた場合の処理もIASではたしか一旦損益計算書を通して評価を下げるということになっておりますので、その点も日本の土地再評価法とIASの違う点ではないかと思われます。

○辻山部会長

この点、ほかにも自由にまだこの段階ですからどうぞご意見を。どうぞ品川委員。

○品川委員

1点は、再評価法に基づく土地の評価益計上を資本取引として断定できるのかどうかというのが疑問が1つ。

もう一つは、仮に再評価法で簿価1,000万円の土地を1億円に引き上げておいて、今度は減損会計でそれが7,000万円に引き下げなければならなかった場合に、これが完全に別々に処理することが果たして正しいのかどうか、その辺についていかがでしょうか。

○荒木委員

後のご質問の方とあわせて考えていきたいんですけれども、今のお話で挙げていただいた例では、1,000万円のものを1億円に上げてまた7,000万円に例えば減損で引き下げるというケースなんですけれども、それと逆に1億円のものを例えば7,000万円に一旦再評価によって下げたというケースも考えられるんですが、そのときに一旦下げた資産について減損を適用する場合に、最初の1億円の金額をベースに減損を考えるのか、それとも下げた後の金額をベースに考えるのかというところとも関係するんではないかと思います。

最初の評価益を立てた場合に、確かに評価益は資本直入ですので評価を下げる場合にも資本直入でいいのではないかというご趣旨だと思うんですけれども、そうしますと土地再評価で評価を下げた場合に、では評価を下げる前の簿価を基準に減損を考えるのかということにもつながるんではないかと思いますので、それはやはり土地再評価法の考え方では一旦1,000万円の土地が1億円に取得原価が変わったんだと、逆に評価を下げた場合には1億円の簿価のものが土地再評価によって7,000万円の取得原価に変わったんだというふうに考えた方が非常にわかりやすいんじゃないか。これは一つの考え方でしかありませんけれども、そういうふうに理解した方が非常にわかりやすいというか、整合性がとれるんではないかというのがここでご報告した趣旨です。

○辻山部会長

ただいまご質問の中にありました土地の再評価が資本取引というふうに断定するのはどういう根拠かという、これはいかがでしょうか。

○荒木委員

私のレジュメは、特に再評価自体が資本取引というふうには書いておりません。再評価差額金の取り崩しについて資本取引というか、資本の部の中の取引ではないかということでございます。

○品川委員

お考えはわかるんですけれども、ちょっと疑問は、個人的な疑問かもわかりませんけれども、そういうふうにすっぱり割り切れるのかどうか、ちょっとそこは割り切れない問題があるかと思うんですけれども。

○辻山部会長

ここのところの土地の再評価で評価益が出ている場合について、今特に矛盾が品川委員からご指摘ありましたけれども、それ自体の議論と評価損を出した場合、これの整合性をとるために評価益の扱いをそのようにしなければならないというその根拠もちょっと今ご質問の中にあったと思うんですけれども、この辺はまた少し検討させていただくということでよろしいですか。

○品川委員

検討していただければありがたいということです。

○荒木委員

ちょっと1点だけつけ加えさせていただきますと、整合性ということでは売却したときの処理との整合性というのもやはり考える必要があるんではないかと思います。売却したときの処理については再評価後の簿価を基準に売却損益を計算するというふうになっておりますので、それとの整合性ということを考えますとやはり減損の場合も再評価後の簿価を基準に損益計算書に計上すべき減損損失を計算するというのが整合的ではないかというふうに感じています。

○辻山部会長

では、そのところはまた少し検討させていただくということで。

ほかのところはいかがでしょうか。1、2、3とございますけれども、それぞれ表示の方法、それから損益計算書の繰り入れ区分表示の問題、この辺についてご意見がございましたらお出しいただきたいと思います。逆瀬委員どうぞ。

○逆瀬委員

教えていただきたいんですが、1番目の減損の対象資産というところで、1行目の後段に、市場販売目的のソフトウエアは除くということで基本的に異論はありませんが、日本のルールでは自社利用の中にアウトソーシングのような作業をするときのソフトウエア、これの製作費の滞留分についてもルール上自社利用と言っているんですけれども、そいつもこの市場販売目的の中に含まれると解していいのかどうかということなんですけれども。それが1点目です。

それともう一つは表示の問題ですが、2の(1)で貸借対照表上の表示ということで、有形資産については減損損失累計額というのを控除科目として表示すべきだということなんですが、ちょっとやり過ぎなんではないかと考えております。

それから、3番目のその他の論点なんですが、中間の処理で実績主義が導入されているということもあって議論があるのかもしれませんが、金融商品における有価証券の、例えば関係会社株式なんかの評価を落とすというときの話でも同様の話があって、たしかJICPAから出されている実務指針かあるいはQ&Aか忘れましたが、そこでは中間の処理であと忘れていいんではないか、表現はちょっと語弊がありますが、年度末は改めてやらなくてもいいケースも多いのではないかといったようなことがQ&Aでガイドされていまして、事実そういうケースは間違いなく多いんですけれども、ただ別途商法の観点から言うと中間というのはないわけなので、やはり年度は年度で一本改めてやるというようなことになるのではないかと思いますけれども、そこのところです。

今ご説明で下期といいますか、中間期を終えた後で売却取引があったときには、中間期の評価後の簿価から償却を進めたところが売却原価になるというご説明だったんですが、これは有価証券の実務とは違うわけですね、そこのところは。別に違っていてもよろしいんですけれども、ちょっとこの辺もう一度交通整理して確認させていただきたいと思いますけれども。年度末でもう一度再計算する必要があるのではないかと。もしそうだとすれば中間期で強制処理するということは、年度と中間期を重ねてやるべきだというふうに見るのか、そういう場合には中間期は先送りして年度でやるとか、実務の観点から言うとちょっとその辺のところがダブルでやるというのは特にこういう固定資産の場合、無形資産も含めてなかなか難しいものですから、実際のことを考えていただける、どちらかで整理していただくのがいいんではないかと思っているんですけれども。

以上です。

○辻山部会長

荒木委員、お願いいたします。

○荒木委員

ちょっと質問についてですが、自社利用のソフトウエアでアウトソーシングをして……ちょっと状況がつかめていないんですけれども。済みません。

○逆瀬委員

ちょっとこれは記憶に頼ってしゃべっているので間違いがあったら訂正いただきたいんですが、日本のルールでは大きくソフトウエアの方を滞留させるかさせないかというところは市場販売目的のものと社内利用とこういうふうに分けていると思いますが、社内利用の中のくくりとして、例えば自前でそのソフトウエア開発をしてそれの製作費を滞留させていると。しかし、そのソフトウエアの使う目的は、例えば外部のお客さんから一定の作業を請け負って開発したソフトウエアを利用して、例えば計算請負作業をやると。こういうものをたしか自社利用というようなくくりをしていたんじゃないかということなんですけれども。

○荒木委員

その場合は、顧客からの収入によってその費用を賄うということで、自社利用のソフトウエアだと思いますので私のまとめでは減損会計の対象に含めるべきだということなんですが、その場合は顧客への売り上げ、アウトソーシングの売り上げでもって回収できるというケースになるんではないかと思いますので、実際にはそういうケースではそもそも減損の兆候もないでしょうし、赤字で受注したような場合は別だと思いますけれども、余りそれだけ対象資産として分ける意味というのはちょっと感じられなかったということです。

それから、2番目の有形固定資産について減損損失累計額を分けて表示する必要はないということなんですが、私はこれで唯一の答えというふうには考えておりませんでして、これから議論をすればいい問題だと思うんですが、こういうふうにしましたのはやはり減価償却累計額との整合性といいますか類似性を考えましてこのようにしたという趣旨でございます。

それから、中間の処理については、商法の場合は年1回しか減損損失を計算する機会はありませんので、特に商法の場合、中間でわざわざやるということは想定しておりません。

○辻山部会長

今のでお答えになっていますでしょうか。逆瀬さん、一番最後のところを。

○逆瀬委員

もう一度頭からですね。市場販売目的のソフトについても、自社利用のソフトについても、対象資産から除いていいのではないかというのが私の意見であります。

それから2番目の減損損失累計額というのは減価償却とは違うと思いますけれども、そんなに頻々とやるような話ではなくて、そうすると原則法の表示を例えば控除方式としてやるとすれば、取得原価と減損累計額と償却累計と3本立てになって、ネットのブックバリューで言うとこうなるわけで、ちょっとまたこれはもう実践の開示のルールとしてはいささかという印象なわけであります。ずっと残りますからね、売却しない限り。そういう開示は必要ないと思います。これは意見です。

それから、一番最後の3番目のところは、やはり商法も大事だし、連結もまた大事という幾つものかせの中で実践をやっていくわけなので、やはり中間の処理で確定させるのが妥当ではないかという表現がいかにも実務から乖離しているなという印象があったものですからちょっと申し上げたので、基本的には年度の整理事項だろうと普通は思うわけですね、こういった大きな処理は。その中で連結も個別も商法も証取法も折り合いをつけるときに中間で確定させるというのがいささか言い過ぎじゃないかと、こう素直に思ったまでの話なんです。ですから、基本的には年度の整理事項なんだろうなと、我々がやるときに大体そういう感覚でおります。それで、中間で仮にそういう減損処理をやったときには、年度末において改めて事情の変更があるかないかというのを十二分に確定しないと商法の立場からはやはりちょっとまずいと、こういう議論も当然出るから、そこはもう少し表現が、これからでしょうけれども、練られた方がいいような気がするわけですけれども。ですから、年度決算が整理事項として行うべきタイミングなんだろうなというふうにまずは思ったわけなんです。

○辻山部会長

どうもありがとうございました。そのほかに、資料4につきましてご意見ございますでしょうか。平松委員どうぞ。

○平松委員

非常に単純な質問。まず、逆瀬委員に逆に今のご質問に対する質問です。

もしも減損損失累計額を貸借対照表本体に表示しない場合、仮にいろいろな方式があるにせよ、取得原価から減価償却累計額差し引いて、そしてネットの金額を帳簿価格として出すという場合に、そういう方式をとった場合減損の表示は一体どうなるんだろう。やはりその方式だと3本、原価、減価償却、減損損失累計額にしなければどうも表示しにくいんではないかなと思ったのと。

もう一つ荒木委員の質問なんですが、注記方式可能、これはいいとして、むしろそれならば今逆瀬委員がおっしゃったように余りやり過ぎかもしれないという気も私もするものですから、附属明細書で事足りるんじゃないかと単純に思ったんですけれども。ですから、2人の方に対する簡単な質問です。

○辻山部会長

逆瀬委員からお願いいたします。

○逆瀬委員

まず、今の先生のお話の中でちょっと関係するなと、表示だけの問題ではないのかもしれませんという意識もちょっとあって、減損をするというのは原価の書きかえであって、その後戻し入れとかそういう実務を認めるのか認めないのかという議論が一つ前提にあると思うんですけれども、私どもというか、私の意見としては土地であろうが、償却資産であろうが、一旦減損処理したものを改めてまた事後、戻入するといいますか、恐らく損益計算を通して戻入するという事務を認める必要性はないだろうと考えているものですから、それが一つ頭の中にあるということ。

それから、減損損失累計額そのものをB/Sの区分掲記の科目の内訳として書き続けるというニーズがあるのかどうかです。1回やると処分するまでずっと残るような情報になるんですけれども、どこかで一回注記があれば新しい原価だという認識の立場に立てばそれで十分なんじゃないかなということで戻し入れをすることを前提にしていないんですよね。という意味合いなんですが。それが投資情報としていかにも不十分だというならまた別なんですが、そうではなかろうというつもりでいるわけです。

以上です。

○辻山部会長

荒木委員、いかがでしょうか。

○荒木委員

このあたり、私も確実な考えを持っているわけでありませんでして、一つ減損損失累計額というのをグロスで出すという意味は、先ほど逆瀬委員の方からは原価の書きかえというか新しい取得原価ということでこういう科目を設ける必要はない、ネットでいいというお話だったと思うんですが、この部会の整理の中ではやはり広い意味の費用配分の範疇の中で減価償却と減損処理というのは完全に区別することができないんじゃないかということもありまして、ここは減損損失累計額としてグロスの表示がいいのではないかと。

ただ、減損損失累計額と減価償却累計額を分けるか、あるいは減価償却及び減損損失累計額というふうに一緒にするという考え方もあるのかなという気がしております。

それから、平松先生の方のご質問ですが、ちょっとやり過ぎかもしれないというようなご指摘は確かにそうなんですけれども、実務的にはやはり取得原価という情報は税務の関係もありますのでずっと持っていると思われますので、実務面で限ると特にこれを出すのが大変ということはないんじゃないかというふうに考えております。

○辻山部会長

では、小宮山委員。

○小宮山委員

同じようなご意見なのかもしれませんけれども、表示のところなんですけれども、減損の考え方はとりあえず今取りまとめているものは当初の投資額が回収できないという論理にとりあえず原則論はのっかっていますね。そうすると、当初の金額を頭から落とすというのが一番ロジカルでしょうし、ただ、便宜的に将来回収不納額を落っことすという形になると、減価償却累計額に突っ込んでしまうというのは、実務的には妥協ができるんだろうと思いますし、あとは品川委員のご意見を聞かないといけないんですけれども、税務対応でどっちがやりやすいか、何となく取得原価を落っことしても、税務上はもとの取得原価が引き継がれるような気がしますので、追加償却の枠でもし税務上認められる余地があるのであれば、そっちの方が料理がしやすいような気もするんですが。

要するに、どれでもいいんだと思いますけれども、何かずっと注記をするというのも確かに不思議な気がするので、圧縮記帳か何かでやったときだけ1回注記すればいいというルールがたしかどこかにあったと思いますけれども、やった年度だけその金額がディスプレーされていればあとは余りしつこく追いかけなくてもいいのかなという気がしているんですけれども。

○辻山部会長

その点、先に品川委員から答えていただいてよろしいですか。

○品川委員

税法の規定から言えば臨時償却にしても追加償却にしても税法上の規定にのっかる部分については損金算入が認められて帳簿価額は減額できるわけですけれども、当然それにのっからない部分についてどうするかという問題と、これは先ほど小宮山委員に対して質問させていただいた分も、減損それ自体が必ずしも臨時償却とか追加償却と厳格に区分できない部分、グレーゾーンというのが非常に多いので、その調整をどうするかということはやはり課題として残ってくると思うんですね。だから、ご存じのように税法の規定それ自体が極めてぎりぎりした規定になっているので、そこからはみ出てくる臨時償却なり、あるいはそれをさらにまた減損会計との境が問題になってきたりするということは、実務的に非常に問題になってくると思うんですけれども。

ただ、税務上の差額については恐らくもう別表5でいろいろな調整が行われてきて、これから実務というのは物すごくやりにくくなると思うんですね。

○小宮山委員

いずれにしろ、税法の耐用年数もだんだん短くなっていますけれども、実際の経済的な耐用年数よりも短く定められているものもあり、あとあの加減算の仕組みというのは種類ごと、年数ごとにやりますので複雑ですよね。ただ、全く認めないというものであれば、その中に組み込んで加減算してしまった方が、何となく実務上扱いやすいのかなという気がちょっとしたものですから。

○辻山部会長

では、逆瀬委員、どうぞ。

○逆瀬委員

理屈じゃないんですけれども、先ほど荒木さんの方から、オリジナルの原価も減損後の簿価も償却累計だってみんな把握しているんだからさしたる事務コストの増にはならないのではないかと、こういうお話があったんですけれども、事は連結を念頭に置いて考えなければだめなので、特に有形固定資産とか無形固定資産というのは連結ベースでも荒木先生等はつとにご存じだと思うんですけれども、期首から期末までの移動の状況を補足しないと連結計算書ができないんですね、フル情報で。というぐらいのことで、帳面ではもちろんちゃんととるにしても、これを連結で表示の段階で区分掲記までするといったような事務を考えると、為替換算、調整勘定もありますし、そう簡単な話ではないというふうな認識なんですけれども。

○平松委員

追加的に、事務コストの問題は余りかからない、あるいはひょっとしたらかかるという今の逆瀬委員のご指摘でして、私の方は附属明細書にと申しましたのは、ここに仮に減価償却累計額も減損損失累計額も表示するとかえって貸借対照表がやたら複雑になって、やはり本体はもう少し簡単な方がいいと私個人は思いましたので、ですから情報量としては減らないけれども、本体自体は簡潔な方がいいのではないかという考え方でご質問させていただいた。今のは確認だけですから。

○小宮山委員

皆さんそういうふうに思われるかどうかちょっとわからないんですけれども、中間でやるか年度でやるかという話になって、年度一本でいいよというのも一つの実務的な妥協案でしょうし、のれんの基準がそうじゃなかったかな、アメリカの新しい基準。中間はやらなくてもいいよと、何かそんなようなルールだったような記憶があるんですが。

実務的に厳しいというのは、年に一遍になりますと、ある年度年度の減損の処理が非常に厳格に厳しく見られるんではないのかなという影響が考えられるので、今までの中間、期末と両方やっていますと、期末ぎりぎりセーフ、中間で処理という世界というのがあるわけでして、これが年度一本だと企業にとって減損の判断が厳しいんではないかなという感覚を私は持っているんですけれども、皆さんどう思われるかちょっとわかりませんけれども。

○辻山部会長

この点逆瀬委員、どうでしょうか。

○逆瀬委員

年度一本の整理事項として決まればそのように事前に準備してやるということでよろしいということになりますが、第2クオーター、セカンドクオーターですよとなりますと、セカンドクオーターでもやるんだと。加えて、セカンドクオーターで行ってかつ年度末で微調整と、こういうようなことまで話になると大変だなということですね。年度と中間で処理は違わないわけですから、同じことを二度やるということがこのままでは起きるのではないかということを危惧しているだけです。小宮山先生の今の議論はちょっとよく理解できません。

○辻山部会長

わかりました。それでは、そのほか資料4につきまして。

品川委員、どうぞ。

○品川委員

ちょっと1点だけ教えていただきたいんですが、論点整理のときに私がちょっと誤解していたかもわからないのですが、減損会計の対象資産について固定資産を対象とする、ただし、金融資産等は対象資産から除いてはどうかというふうに問題提起はされているんですが、企業支配株式についてはどう取り扱うか。これは金融資産に入れて全部除くものなのか、あるいは企業支配株式の中でも金融商品に係る会計基準でフォローできるものもあるでしょうし、連結会計で調整されるものもあるでしょうし、それ以外のものもあると思うんですが、それぞれについてどういうふうにこの対象資産のふるいの中で考えるのか、ちょっと私自身には今の段階で整理がつかないので教えていただければと思いますが。

○辻山部会長

荒木委員、どうでしょう。

○荒木委員

企業支配株式、子会社株式等のお話だと思いますが、これについては対象資産のご報告を以前やったときには、IASではこういう子会社株式については減損会計の対象としているけれども、我が国の金融商品会計の基準によりますと、子会社株式を含めて金融商品という扱いにしておりますので、それとの整合性ということで子会社株式等については金融商品会計基準に従うということで対象から外すという考えで書いております。

○品川委員

金融商品会計基準で全部フォローできますか。ちょっと私はそれが確認できなかったので。できればよろしいんですが、おっしゃるとおりで。

○荒木委員

一応金融商品会計基準と実務指針で子会社株式等についても減損というか、評価減の処理については書かれております。

○辻山部会長

そのほかよろしいでしょうか。

どうぞ、太田委員。

○太田委員

2点ばかり実はお願いがございまして、1点目が、いろいろ議論が出ております中間期の処理と年度決算の処理の取り扱いのところなんですが、最近では四半期決算というようなことも方向性としては出てきているようですので、そのときに一緒に、では四半期決算の場合にはどうなのかというような検討もしていただけないかというふうに思います。

2つ目が、こちらも今の段階ではまだ早いということなのかもしれませんが、減損の会計基準の適用初年度において、期首の時点で存在しているという減損をどのように取り扱っていくのかということも検討の対象に入れていただければというふうに思います。

○辻山部会長

わかりました。それは検討させていただくということで。

それでは、資料5の方にとりあえず進めさせていただきまして、また時間がありましたら戻りたいと思います。

それでは、次に投資不動産の問題につきまして議論を行いたいと思います。

秋葉委員からご報告をお願いしたいと思います。

○秋葉委員

私の方から資料の5番目にあります2枚の紙を使いまして、投資不動産について、これまで議論されてきたと思われる部分を中心に、若干個人的な見解が入っているかもしれませんが、まとめさせていただきます。

まず、大きな1番目としまして投資不動産の会計処理という中の1番目ですけれども、投資不動産の特徴というのがまず1つポイントになるだろうと。ここの場合に、投資不動産とは何かという定義が問題になろうかと思うんですけれども、さしあたり論点の整理のときにも触れましたようにIAS40号を前提として考えて賃貸収益、または資本増価を目的として保有されるということでとらえて、これの特徴がどういうものがあるかということを、これもIAS40号の存在を前提にして考えることになる部分があると思いますけれども、2つぐらいが考えられるんではないかと。

1つは、こういう投資不動産については時価を把握できて、そのような時価によって換金・決済を行うことができるんではないかという理解。

それから、2つ目ですけれども、投資者にとって有用な情報とか企業にとって財務活動の成果を時価によって求められるんではないかというような2点から、時価を把握できるような資産については時価評価によるということが一つ考えられているのではないかというふうに理解されます。

ただし、この場でも議論が出ましたように、この時価評価についてはかなり問題があるんではないかという指摘がありまして、例えばそもそも時価といった場合に金融資産に比べて客観的な時価を把握することができないのではないか、ないしは難しいのではないかという指摘があったかと思います。

それから、2つ目の点としましては、販売用不動産や工場、本社建物のみならず、外形的には賃貸収益を主目的として保有されるような不動産でも、直ちに売買・換金を行うことに事業遂行上等の制約があるのではないかということで、何を投資不動産と考えるかという定義にもよってくるわけですけれども、さしあたり賃貸収益を目的とするというものが含まれるとすると、外形的な不動産について、これは対象になってきてしまう可能性がありますが、ただ保有者としては他の事業用資産と同じような位置づけで保有しているというものがあるのではないかという指摘もあったかと思います。

それと3つ目につきましては、最終的にはそういう賃貸収益とか資本増価を目的として保有するわけですけれども、20年とか30年とか超長期にわたって保有する意図があるような不動産については、実質的に毎期の価格変動リスクを認める必要がないのではないかという考えもあろうかと思います。

このような問題点を前提にすると、次の3番目のところにありますようにそもそも投資不動産ということの範囲を定めることが難しいですし、その投資不動産の定め方によりますが、一般論として時価評価を行うことが適切ではないのではないかという指摘が多かったというふうに思います。ただ、一部いろいろな目的別に場合分けをして、時価評価を行うケースもあってもいいじゃないかという意見もあったかと思いますけれども、次の部分に記してありますように不動産について保有目的を識別するような客観的基準を設けるこれもこれまた困難であるということが考えられまして、したがって個々の保有目的等に応じて細分化してそれぞれの会計手法を定めるという方法も難しいのではないかというふうに思われます。

したがって、会計処理の方法としましてはこれまで同様に取得原価基準による会計処理を行うことが妥当ではないかというふうに考えられますけれども、ただ投資不動産の時価については注記により開示することが有用ではないかというふうにも思われます。このような結論については、結局IASの40号における原価モデルと同じようなことになるわけですけれども、一つの課題である国際的な潮流との整合性という観点もこのような注記の採用によることによって対応するといいますか、即しているということも言えるのではないかというふうに思われます。

次に、投資不動産のこのような会計処理、ないしは注記とも関係するわけですけれども、次の2番目の1に行きまして、そもそもそういうふうな投資不動産を注記するというようなことに仮に考えたとしても、注記における投資不動産の範囲というのが、必ずしも明確に定まらないんではないか、すなわち会計処理の場合でも投資不動産の定義をすることが難しいのと同様に、注記という場合でも投資不動産をどのように定義するかというのが難しいのでないかという点も意見としては出たのではないかと思います。

またもう一方、本質的なものかどうかというのはありますけれども、事業用の中でも我が国の場合には土地の帳簿価額というのがかなり時価との乖離が著しいのではないか、これが財務諸表、特に貸借対照表に対する疑念をもたらしているのではないかというようなことも言われたかと思います。

このようなことを踏まえると、後先逆になりましたが、1ページ目の2の1のタイトルにありますように、すべての土地、事業用資産も含めた土地の時価情報の開示の必要性ということも言われていたかと思います。これに対しては、次の2ページ目のところに触れていますように、投資不動産のみならずすべての土地の時価情報を開示するということが言われたのに対して、これまた問題があるのではないかという指摘があったかと思います。この問題点の指摘としましては、例えば投資不動産に比べて事業用不動産の投資については、そもそも保有者といいますか、経営者の方も時価を把握していない場合が多いのではないかという点、それから、そもそも注記とはいっても時価というものを把握することが困難ではないかというような点が指摘されてきたかと思います。もちろん時価を把握していないというところの延長線上には、そもそも時価を使って何かしているわけではないので、そもそも時価の情報に意味がないのではないか、かえってミスリーディングをするのではないかという指摘もあったかと思います。したがって、もし開示するにしても開示の内容とか開示の方法、それから時価の算定方法について検討する必要があるのではないかというふうに思われますが、この点については必ずしもコンセンサスはとれていないように理解をしております。

○辻山部会長

どうもありがとうございました。

ただいまの資料5につきましてご意見がありましたら、自由にお出しいただきたいと思いますが。どうぞ、奥田委員。

○奥田委員

土地の場合に時価を把握することが困難ではないか、また、投資用不動産の方でも金融資産に比べて客観的な時価を把握することができないのではないかというご指摘なんですが、ここでおっしゃっている時価というのはどういうものなのかにもよると思うんですが、例えばIASの中を見ますと、ここで言っている市場価値が時価であるということで、マーケットバリューが時価だということで考えれば、例えば資産が利害関係のない自発的な買い主と自発的な売り主との間において適当な販売期間の後に十分な知識をもって慎重かつ強制されずに価額時点において公開されるであろう金額というような意味で考えているようなんですが、例えばこの定義でいけば、鑑定評価で出しております正常価額と実質同じということでございまして、鑑定評価の世界でまさにマーケットバリューを出すということがそれぞれ前提になっておりますので、把握することができないという意味がちょっとよくわからないので、もし私が考えております時価の定義と違うのであればそういうことだということでご指摘していただければと思うんですが。

○秋葉委員

まず、時価の考え方は同じようなことで私も思っておりますので、よろしいんじゃないかと思います。ただ、ここで言うような、把握はできないんじゃないか、ないしは難しいじゃないかというのは、私の、ないしは私だけの意見ではなくて、この場で何度か言われたことじゃないかというような理解なんですが、把握できるとしても毎期毎期、コストの面も含めて簡便に把握することができるかどうかという部分については、金融資産と差があるのではないかという指摘はあったかと思います。

○辻山部会長

奥田委員、いかがでしょうか。今のですけれども、把握できるとしても毎期末鑑定をお願いして評価するというような、そういうことが難しいという趣旨の表現だと思うんですが。

○奥田委員

例えば鑑定評価であれば、一旦評価を行った物件について定期的に時点修正ということで、全く鑑定評価のように最初からやるわけではなくて、価格のところだけ周辺の事例、あるいは土地価額の動向をかんがみて時点修正という形で実際は対応しているわけでございますけれども、困難という意味が例えばお金がかかるとか、手間暇がかかるとか、そういうことをおっしゃっているのであれば、それは何らかの形での対応というのはできるのではないのかなと。実務的には可能だと思いますけれども。

○都委員

土地の時価の把握は難しいというのは私も何度か申し上げたことがございますので、今のご質問等も踏まえて申し上げたいと思うんですが、例えば我が社は製鉄業を営んでおりまして、北は北海道から南は九州まで広大な土地を持っております。小さな製鉄所で大体四、五百万平米、大きなところでは千数百万平米という土地を持っております。この評価ということに相なるわけでございますが、もちろん今おっしゃったような鑑定というのもなくはないんですが、実務の面から見てもやはり相当程度毎期やっていくというのは大変でございます。

仮に実務では行ったとして、鑑定評価で大変大きな金額が出たものが、果たして本当に投資家にとって有用であろうか、これも一つ我々として考えなくてはいかん。特に、今申し上げたような大きな土地を使っておりますけれども、では実際そういった土地がどういうふうに評価されるかというと、近隣の住宅をベースに評価しているわけですが、実際それが金融資産のように直ちに換金可能かというと、我々がリストラで土地の一部を売ろうとしても非常にその値段で見つけるのは難しい状況にあるわけでございます。その辺の事情を踏まえた人が見るんであればそれなりに割り掛けて見るということもあるかと思うんですが、全くこの事情を知らない方がその金額をどんと見たときに、かえってミスリーディングになるんではないかというふうに我々は考えておるのであります。

投資不動産に限るという議論をしても、投資不動産の定義はなかなかはっきりしない中で、そういった土地の一部が時価評価の対象になるということは、まだ投資不動産の定義がきちっとしない中ではやはり同様な懸念を持つものであります。

○奥田委員

ということであれば、評価をすることが困難ということではなくて、これを開示すること自体が有用か否かということでおっしゃっているという理解でよろしいでしょうか。

○辻山部会長

ただいまの発言はそういう趣旨だと思いますけれども。

どうぞ、岩田委員。

○岩田委員

時価につきまして私もなかなか定義しにくいではないかと分析しております。それは、今鑑定士さんのお話からいきますと、A鑑定士とB鑑定士が同じビルを評価した場合、同じ結果が多分出るということだと思うんですけれども、実務では実際非常にその辺は困難をきわめておりまして、例えば売り手と買い手が双方で第三者の鑑定評価を依頼した場合、全く違う価額が出る可能性がかなりあります。それを、ではどこに本当に収れんさせるかというところが非常に難しい議論でございまして、そういう意味で実務の中で本当に土地を売買したりとか評価したりするときにはかなりそういった意味での難しい議論があるんではないかなと。そういったことで時価という形で価額を決めるのは難しいのではないかなということでございます。

それから、投資不動産に関しましては、やはり今までの私どもの慣行を考えますと、こういう分け方をすることについての合理性というのはなかなか考えにくいんではないかなというふうに思っておりますので。大体ここで3番にも書いてありますけれども、これまで同様に取得原価基準による会計処理等を行うのが適当ではないかなというふうに考えております。

以上です。

○辻山部会長

そのほかいかがでしょうか。品川委員、どうぞ。

○品川委員

ここの投資不動産に書かれているペーパーはそれぞれごもっともなご意見ですが、事業用資産についても全く同じようなことが言えるのであって、では事業用資産とどう区分するのか、減損会計に対して消極的な意見というのは事業用資産も同じような、事業用資産だって超長期的に持っているわけですし、時価がなかなか把握できないわけですし、時価を開示してもどれだけの意味があるのかという議論は、投資不動産の場合と同じように議論できると思うんですが、ここでは事業用資産について減損会計はそれは認める、しかし、投資不動産については認めないというのは何となく説得力がないので、私はやるなら両方同じ基盤にあるのではないか、金融資産と比べてどうかというのは、それは事業用資産も同じような議論ができるので、ちょっと事業用資産はいいけれども、投資不動産は消極だということについてちょっと説得力がないように思えるんですが、その辺はいかがでしょうか。

○秋葉委員

まず、投資不動産の今の品川先生のご指摘は、減損会計をとらないんではなくて、時価評価ではなく取得原価基準によって行う、その取得原価基準の中では事業用不動産といいますか、ほかの固定資産と同じように減損の枠組みに入れるというふうに思っておりますので、確かに減損のゲの字もないので適用ないんじゃないかと思われる節もあろうかと思います。これまで議論でも、時価評価か原価モデルかということの話が主だったと理解しておりますので、そういう意味で原価基準であって、その後に減損会計を導入するということは当然考えられることではないかと思います。

○品川委員

それなら結構です。

○太田委員

奥田委員にちょっと投資不動産というふうに区分されるであろう不動産についての時価というか、鑑定価額の出し方というか、その辺のベースを確認させていただきたいんですが、通常、こういう鑑定をされるとにきは土地の上に建物が建っている状況ということで時価を出されるということではないかというふうに思っているんですが、それは土地の時価部分と建物の時価部分というふうに区分するということは可能なんでしょうか。あるいは、可能であるとすればどのような方法で行われるのか、原則的な考え方で結構ですので教えていただければと思います。

○奥田委員

投資用不動産といっても土地と建物が一体の場合と土地だけの場合とあると思うんですけれども、まず土地と建物一体の場合には、評価手法としては基本的には原価法、取引事例比較法、それから収益還元法というものがございます。

原価法の場合には、土地と建物を別々に評価してそれを原則足し上げるという形でございます。取引事例比較法の場合には、一体として同じような不動産を取引された場合にどうかということで比較していると。収益還元法の場合には、土地と建物一体で収益がどれだけ生まれるかという考え方で評価を行うのが普通でございます。

仮にそれらの3つの方法で出された数字から鑑定評価額を決定する場合には、基本的には3つの価格を比較考量してを出すということになりますので、求められた価額が必ずしも積算価格ではないと。したがって、土地と建物が積算価格したようにはっきり分けられない場合というのがございます。そういう場合は、依頼者の方で中を分けてほしいということであれば、とられる方法としてはまず一つは積算価格を求められた鑑定評価額に掛けて価格を案分するという方法が一つございます。

あとは、理論的にはもし収益価格で決めた場合には、土地に帰属する収益、建物に帰属する収益が求められればそういった形で価格を分けるということもできるとは思いますけれども。

○辻山部会長

そのほかございますでしょうか。平松委員、どうぞ。

○平松委員

今の投資不動産の会計処理の考え方で、秋葉委員の考え方に基本的にもちろん賛成なんですけれども。といいますのは、時価評価は難しいというご意見もございますけれども、国際的な潮流からいって、今我が国が仮に取得原価主義でいって時価の注記もしないという結論は、私個人としてはとりにくいだろうと考えております。その場合に、しかし国際会計基準の原則的な方法であります時価、これが非常に難しいということもわかりますし、取得原価主義でいっても時価の注記は必要だと、この場合も同じ問題を抱えるわけですね。さりとて、時価を注記しないということは今の状況の中でも許されないんではないかという状況にあると認識しております。そしてまた、我が国の会計基準が時価の測定は難しいということを背景に持ってくることもまた難しい。つまり、そういう論拠で時価をとらないんだということは言えないだろう、国際的には言えない状況にあるのではないかという認識を、難しいのはわかっておりますけれども、それだけを理由にすれば日本だけの問題ではないと言われてしまう。非常に苦しい状況、私もこれは何を言っていいのかわからないんですけれども、非常に苦しい状況の中でやはり時価評価は注記であるにせよ、つまり国際会計基準委員会の方の代替的方法であるにせよ、入れざるを得ないのではないかと考えているという意見でございます。

○辻山部会長

ほかにいかがでしょうか。大塚委員、どうぞ。

○大塚委員

秋葉委員の文章がいろいろとありますのでなかなか理解しがたいところも私にはあるんですけれども、例えば客観的な時価を把握することができないというのが理由に書いてあって、今度は注記により開示しろと書いてあるというような。

ちょっと理解できないんですけれども、基本的には今のこのペーパーですと現状とは一つも変わらないというのが結論だろうと思うんですよ。強いて言えば、投資不動産の時価情報を注記によって開示するというところがプラスアルファとして出てくるというところなんだろうと思うんですね。そうすると、そこを言ってみれば目玉とするような形のペーパーのまとめ方というのにしないと、最初の段階で客観的な時価を把握できないと言っていながら時価を出せというのは、論理矛盾に陥っちゃうんじゃないかなという気がするんですよね。ですから、むしろ問題点の後で別な理由から今はまだできないけれども、時価情報としては必要だという形のまとめ方というのは考えた方がいいんではないかなという気はちょっとしたわけです。

○辻山部会長

秋葉委員のペーパーですけれども、ご本人が発言されるべきことですが、基準のドラフトというよりは、これまでの議論がさまざまありましたということのまとめなんですね。ある委員はこうおっしゃっていて、他の委員はこうおっしゃっていると。確かに大塚委員がご指摘のように少し読み取りづらい部分があるかなというのは率直なところ感じておりますけれども、幾つかのチョイスはあると思います。

原価評価のまま、もちろん減損会計は適用いたしますけれども、このままの状態でいくという方法、その原価モデルですけれども、時価は脚注で開示するという方向、原価モデルで脚注で時価も開示しない、そのかわりに土地の時価情報の開示という、 II で書いてありますように投資不動産の会計処理というよりはむしろ別の枠組みですけれども、そういったものではどうかという幾つかの選択肢がこの中に含まれているという読み方ができるのかなという感じがしておりますが、秋葉委員、いかがですか、その辺の解釈は。

○秋葉委員

まさにそのようにご理解していただければ幸いです。

○辻山部会長

そうしますと、そういった選択肢を念頭に置いた上で委員各位の率直なご意見を本日お出しいただきたいということで、先ほど平松委員がやはり原価モデルで時価の注記は必要だろうと、そういうご発言の趣旨というふうに承ります。

そのほかいかがでしょうか、投資不動産については。大塚委員、どうぞ。

○大塚委員

例えば投資不動産の範囲が明らかにできないからだめなんだというのは、理由としてあり得るのかと考えるんですよね。そういうのは、言ってみればこういうものを範囲にしますよと決めればできることであって、それをわからないからそれはできませんというのは理由にはならないんじゃないかという気はするわけですね。その辺のところもちょっと考えていただきたいなという気は、私はしました。

○逆瀬委員

投資不動産のくくりなんですけれども、まずそもそもこれを格別にくるる必要があるのかどうかという議論が今のところはそれほどされていなくて、通常の事業用土地であろうが、投資不動産であろうが同じように計算しましょうというような議論なのか、ちょっと違うのかいまいちはっきりしないというのが一つあるんですけれども、格別投資不動産を別格に会計処理する必要があるというようなニーズが何もIASを引っ張ってこなくてもここに存在しなければだめだと思うんですね。それが1点目です。

それから、投資不動産というのは経営者の意思で決まる、保有目的だと思いますから、経営者の意思が勝った会計基準になるというのは明らかで、もし仮にそういう区分けを格別にするときには、先ほどから連結、個別という話で耳障りで恐縮ですけれども、連結の場合と個別の場合とでは目的が変わってくるということが当然あるわけなんですけれども、その辺はどのように整理すればいいのか。個別では子会社が例えば不動産を親会社ないしグループ会社に賃貸しているんだと言うけれども、その連結ベースの利用目的はメーカーとしての製造活動に寄与しているんだということが当然あるわけですけれども、それは使い分けをするのか、個別と連結で意味合いを変えるということを前提に議論されているのか、まずそれをはっきりしていただきたいというのが2点目のお願いなんです。

それから、格別投資不動産の会計処理を時価法でもなく原価主義の中の減損の範疇で処理するのであれば、いわゆる会計事務処理的にはそれ以外の不動産と区分けする必要はないというのが論理的な帰結だろうとは思うんですけれども、その議論は今はまだサスペンドだというふうに認識していまして、このように会計処理を区別しなければならないという結論では今のところないんだろうなと。これはこれでよろしいのかどうか、確認です。

それからもう一つ別の切り口で、土地はどうかと。土地に関しては投資不動産であろうが何か保有目的がはっきりしないようなものであろうが、明確に事業用、製造業として、あるいは販売業としての事業に供しているものであろうが、とにもかくにも出してみろという議論が一つあったわけですけれども、それについてはただいま都委員の方からも話がありましたように、何のためにあるかという意味が必ずしもはっきりしないというのと、その場合に使用価値で出すのか何で出すのか、何でもありですよという話になるのか、その辺の議論がまだ今のところ整理がされていないので、なかなか作成者側としては腑に落ちないというのはあります。

当社の場合だと、連結ベースで考えると1,069社ですけれども、子会社がありますけれども、これの中身を開くと坪何十円という土地からごく最近購入したものもあるしというようなことで使われ方もさまざまだという実態の中で、これを連結ベースで時価情報として出しましょうというのは極めて困難な――困難という意味は、目的もはっきりしないし、測定の方法もはっきりしない。こういうような腑に落ちない事項が残っているのでいきなり開示が要るんだと言われても、「それが何だ」というような素朴な疑問がずっと残ったままになってしまって、これでは作成者側を説得できないと思われるので、いま少し踏み込んだ説得性のある論理がないとなかなか難しいのではないかということなんですけれども。これは印象も含めて申し上げています。

○辻山部会長

そのほかいかがでしょうか。この件につきましてアナリストのお立場で、増田委員、いかがでしょうか。

○増田委員

前回出席させていただいたときに、減損会計というのは時価評価への一つのステップではなくて、むしろ時価評価とは隔絶されたところで減損会計を議論していらっしゃるということを初めてわかったというような不勉強な状態で、また雑駁な感想を言わせていただきますと、やはり企業がどういうふうに収益を稼いでいるかという原則について考えると、例えば先ほどの話で企業は事業用資産についてはそもそも土地の地価みたいなものを把握しようとする気さえないのだということをニュアンスとしておっしゃられると、それでは企業の内部にいるわけではなくて、外部からどういうふうに投資判断をしようかと思っている主体にとってはちょっとそれは困るという率直な印象があります。企業として会社が持っている資産は一体時価で幾らになるのかということがわからないと、一体幾らの投資に対して幾らのもうけがあったのかという大前提がまず崩れてしまうので、物差しのない中で比較をしているような話になってしまう。したがって、とにかく例えば土地使用目的もいろいろありましょうし、いつまで持ち続けるものなのかということについていろいろ企業の内部ではランクづけがあるのだとは思いますけれども、ただ外部から見ている投資家にとっては、例えば事業用の土地と投資用の土地というのはそもそも判断することはできない。事情次第では事業用として持っていたものを売ることもあるでしょうし、自社の事業に使うつもりだったものを賃貸用に出して運用でということは十分あり得るわけですから、それを区別する論理というのが少なくともないんじゃないのかなという気がしています。

あともう一つ、やはり時価評価ではない減損会計というところで物すごくいろいろ実務上難しいところが出てきまして、先ほど来お話に出ていた中間決算で一度減損をやったらその後通期でやる必要があるのかないのかという話についても、例えば中間で一度減損をしてしまって、通期での減損幅が中間でやったときの減損幅よりも小さかったりすると、それは時価評価をしたことになるわけですね。つまりマイナス方向だけではなくて、プラス方向の修正も入れるということになって、議論はますます紛糾していくなという感じがしていまして、結論を申し上げると、投資用不動産と事業用不動産の区別というのは機能的に定義のしようがないんじゃないのか、それこそ事業主体の一存で変わってしまうことであって、それをあえて区別しようとすることは難しいんではないのかということと、例えば事業用でいつまでも持っているはずの土地だから企業自体も時価を認識していないし、認識しようとする気もないという状態は何とか改めていただきたい。そのためにも何らかの形で時価を、どこまで客観性を保てるか別として、少なくとも把握する努力はしていただきたいというのがアナリストの側からの希望ですが。

○辻山部会長

わかりました。ありがとうございました。

ただいまのご発言は、投資不動産に特に限らず、きょうの秋葉委員のペーパーでは土地の時価情報の開示にかかわるご発言というふうに承ったんですが。

あと笠間委員のお立場上、不動産投資の中でも金融投資に類似した投資という認識を持たれるような、まさにIASで言っている投資不動産という認識で持たれているものが実際にあるのかどうか、その辺のことをお教えいただきたいと思いますが。

○笠間委員

この間説明のときにお話ししましたけれども、やはり投資不動産そのものの投資、生命保険会社の投資不動産の運用のスタンスというのは一種のほかの金融商品と同じようなといいますか、同じポートフォリオの一部として考えているという意味ではそうでございますけれども、この間もお話ししましたけれども、やはり投資不動産の時価評価ということにつきましては先ほど来お話もございますけれども、評価差額の問題をどうするのかとか、JWGにございます金融商品をP/L直入というような問題を先に議論しないと投資不動産の時価会計そのものはなかなか難しいというふうに考えておりまして、そういう意味では投資不動産の時価会計そのものについてはやはり課題が多いというふうに考えているということでございます。

先ほど来お話がございましたことでいいますと、やはりそういうことで会計処理が基本的に投資不動産とほかの事業資産と区別しないということであれば、やはり投資不動産だけの時価情報を注記により開示するというのは若干おかしいのではないか。やはりE40で、あれは投資不動産の時価評価と原価評価というものがあって、時価評価しない場合の代替措置としてやはり時価情報の開示があるというふうに考えておりますので、そこはやはり同じ会計処理であれば投資不動産だけ注記で開示するというのはちょっとおかしいのではないかというふうに考えます。

それと、投資不動産の時価をどうするかということについて、やはり建物と土地が一体の場合にキャッシュフロー割引現在価値みたいなそういう手法が確立されないと、上物と下と別々に計算したものを開示するのかとか、そういったような課題も多いように思うということでございます。

○辻山部会長

ありがとうございました。そのほかございますでしょうか。

会長の方からご発言があるようですので、お願いいたします。

○若杉会長

長い時間にわたりましてご審議いただいてどうもありがとうございます。先週私出られませんで、そのとき既に議論がなされていたかどうか確認できませんけれども、気がつきましたことを二、三申し上げまして、これからの審議に何か参考になればと考えております。

日本の場合に土地の時価ということを考えますと、あるいはバランスシートへの記載額を考えますと、昭和25年に資産再評価法が施行されまして、そして固定資産の再評価が行われたんですけれども、土地が対象になっていませんでしたので、土地はそのときに時価評価されておりません。その後、二、三年前に土地の再評価法が議員立法の形でまとめられ、後日若干の修正が加えられましたけれども、時限立法ということで実践されました。それも時価評価を強制したわけではありませんので、それこそ何十年前に1坪1円50銭で買った土地がそのままバランスシートに載っているという状況が今でも続いております。ですから、まず国際的な視野で考える前に日本的なそういう諸状況にどういうふうに対応していったらいいかというのがまず一つの問題ではないかと思います。

それから、先ほどのお話のように、遠隔地に広大な土地を持っている新日鉄さんの場合に、それの時価を出して利用者はどういうふうにそれを利用するのか、どういう利用価値があるのかというお話も出ておりました。我々国際的な動きに対応する前に、以上に述べましたように、我が国独自の事情というものを先ず考えていく必要がまずあると思うんです。その後で、また国際的な状況とのすり合わせが当然必要になってくると思います。

それから、鑑定評価でいくのか、それとも何か別な方法でいくのかというのも、一時的にやるのか、それとも毎期やるのかという問題とも結びついてまいります。評価方法の選定にあたっては、やはりコスト・ベネフィット・アナリシスの視点で考慮する必要があるものと思われます。

要するに何か議論する前提となることが必ずしもはっきりしないで議論されているような感じを受けたものですから、私の意見を申し述べさせていただきました。要するに利用目的と、我が国独自の事情をよく考えるということ、それから、減損というものが毎決算期に時価評価を行って認識されるのか、それとも取得原価でいくんだけれども、価値の大きく下がったものについては一時的に時価への切り下げを行って帳簿価額を修正するのか、そのあたりのところをもう少し詰めておいてから議論した方が結果が出やすいんじゃないかと、そんな感じがいたしました。

○辻山部会長

どうもありがとうございました。ちょうど今会長からご指摘がありましたことは先週議論したところでございまして、減損会計の意義、それから認識と測定についてはかなり幅広く先週議論したところでございます。きょうは特に投資不動産の問題に入ってまいりましたので、これは減損とはまた異なる時価評価の問題について、特に会長ご指摘のように我が国固有の土地の問題があるという、これはご指摘のとおりだと思いますが、減損につきましては先週、意義等々につきまして議論したところでございます。

○若杉会長

済みません。それからもう一つ言い忘れたのは、事業用と投資不動産の分類に従って評価法を変えますと、事業用と投資用と不動産を区別することの必要性はどこにあるのか。

それから、同じものをどっちに分類するかについては、先ほど来いわれていますように所有している会社の意思次第だと、これはもうそのとおりです。それで、意思次第で分類できるものについて評価方法を変えておきますとこれは利益操作のいい材料になってしまうんですね。例えば金融商品については既に新しい会計基準ができていますが、企業会計原則の中では有価証券については、分類法上は流動・固定分類を市場性のある一時的所有のものを流動資産、そうでないものを固定資産と分けていますけれども、評価法についてはその分類法に従って評価法を変えますと、今申しましたように企業が自由にどっちの目的で持っているかを変えられますので利益操作につながる。それを防ぐために取引所の相場の有無でもって評価法を区別しているんですね。あれはまさに英知をもって利益操作を防ぐ対策を講じているわけです。ですから、今回の事業用と投資という2つのものを考えていく場合に、今申しましたようなことをひとつ大いに参考にして検討していただきますとよい結果が出るんじゃないかと思います。

○辻山部会長

どうもありがとうございました。

それでは、予定の時刻を若干過ぎましたので、本日の部会はこれで終了させていただきたいと思います。

次回は、本日いただいた意見を踏まえまして、固定資産の減損会計、投資不動産の問題について全体的に審議を進め、部会としての意見の集約を図っていきたいと思います。

なお、次回の当部会の日程ですが、改めて事務局から皆様方にご連絡をさせていただきます。既に6月8日に予定ということでご連絡がいっていると思いますけれども、6月8日に予定されておりました部会は本日行っておりますので、中止をさせていただきます。次回の当部会の日程につきましては、改めて事務局からご連絡をさせていただきます。

本日は皆様方には大変お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。これにて散会とさせていただきます。

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