平成13年10月31日
金融庁

企業会計審議会第16回固定資産部会議事録について

企業会計審議会第16回固定資産部会(平成13年10月12日(金)開催)の議事録は、別紙のとおり。

(問い合わせ・連絡先)

金融庁(TEL 03-3506-6000)
総務企画局企業開示参事官室
企業会計審議会事務局


企業会計審議会第16回固定資産部会議事録

日時:平成13年10月12日(金)午後4時00分~午後6時00分

場所:中央合同庁舎第4号館9階金融庁特別会議室

○辻山部会長

定刻になりましたので、ただいまから第16回固定資産部会を開催させていただきます。本日は皆様方にはお忙しいところご参集いただき、ありがとうございました。

前回は、米国の同時多発テロによりましてニューヨークに足どめされておりまして、やむを得ず欠席いたしました。申しわけありませんでした。

前回は、経過報告に対して寄せられたコメントを説明していただくとともに、それに対して意見交換をさせていただきました。今後の審議の進め方についてでございますが、経過報告において検討課題として残された事項を中心として議論を進め、方向性を集約していきながら公開草案の策定に向けて議論を進めていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

本日は、経過報告に対するコメントも参考にしつつ、固定資産の減損会計に関する基準の設定及び投資不動産の取り扱いについて、時間の許す限り全般的な審議を行いたいと思います。

まず、初めにお手元の資料のご説明をさせていただきます。

前回配付いたしました経過報告に対する各界からのコメントにつきましては、お手元の黒表紙の参考資料集にとじ込んでおりますので、適宜ご参照ください。

本日はお手元に2種類の資料を用意させていただいております。一つは、資料1でございますが、「『固定資産の会計処理に関する審議の経過報告』に対する意見」と題するペーパーです。これは1ページ目の欄外の(注)にありますように、経過報告に対し問題点や要検討事項等を指摘している意見について事務局でご参考としてまとめさせていただいたものです。この資料も、審議に際し適宜ご覧いただきたいと思います。

次に資料2でございますが、これはご紹介した経過報告に対するコメントや、従来からの当部会における委員の皆様のご発言などを参考にしつつ、事務局に主要な問題点等について整理していただくとともに、議論を進めるために右側に若干のコメントを付したものでございます。

経過報告に対する各界からのコメントにつきましては前回ご紹介いたしましたので、資料1の説明は割愛させていただき、本日は資料2について、事務局から簡単にご紹介をいただき、これを参考にしつつ意見交換をしてまいりたいと思います。

なお、本日はやむを得ない事情、これも米国のテロ関連と承っておりますけれども、田辺委員がご欠席でございます。ただし、本日の審議事項には、土地再評価に係る問題等、銀行界にかかわりの深い問題もありますので、富士銀行の細川参考人に出席していただいております。本日はよろしくお願いいたします。

○細川参考人

よろしくお願いいたします。

○辻山部会長

それでは、事務局から資料2のご説明をお願いいたします。

○平松課長補佐

では、資料2につきまして簡単にご説明をさせていただきます。

1ページ目から順番にお話をさせていただきたいと思います。

ただいま部会長の方からご説明がありましたように、この資料2は、経過報告に対するコメントのほか、部会で議論された事項とか、経過報告の上では検討事項として残された事項等々につきまして、事務局の方で整理をさせていただいたものでございます。

問題点のところですが、これはあくまでも議論の参考として記載をしたものでありまして、これをもとに活発なご議論をいただければと考えております。

まず、一、減損の概念及び意義につきましては、関連項目に含めて記載してありますので、二、減損損失の認識及び測定の問題から始めたいと思います。

まず、1.減損の兆候の問題でございますが、三つばかり論点があるのではないかということです。

まず(1)兆候の例示の問題ですが、経過報告では減損の兆候といたしまして、資産の市場価格の著しい下落、それから資産の使用価値を低下させるような使用範囲または使用方法の著しい変化というものを例示していたわけですけれども、このほかにどのような事象を減損の兆候として例示すべきかという問題でございます。この点に関しましては、単に連続何年の赤字といったような形式基準によるべきではないというようなご意見もあったかと思います。

海外の基準などを参考として考えてみれば、例示といたしましてこのほかに営業損益の悪化とか、キャッシュ・フローの実績数値の悪化とか、あるいは予算・予測の悪化、経営環境の著しい悪化、このようなものが一つ考えられるのではないかなということでございます。

それから(2)の資産の市場価格の著しい下落についてでございます。

著しい下落ということで、何らかの数値基準を設けるべきではないかという意見がございました。書いてありますように、例えば販売用不動産に準じて時価が帳簿価格を50%以上下回った場合に限定する等々のご意見があったかと思います。

コメントの方でございますが、数値基準はそもそも必要かという問題が一つあるのかと思います。そこに書いてありますように、米国基準、国際会計基準にはこういったものはないのではないかということが1点。

それからもう一点は、数値基準を基準レベルで規定した例はないのではないかということですが、これは過去の会計基準では、そういったものまでは規定していないのではないかということでございます。むしろ、実務の取り扱いの問題になってくる余地はあるのではないかということでございます。

それから(3)の資産の使用価値を低下させるような使用範囲または使用方法の著しい変化という問題でございます。これにつきましては、例えば稼働休止や売却の計画が立てられるといった経営方針に重大な変更が生じた場合に、対象とすべきではないかというような意見がございました。

これにつきましてコメントの方でございますが、稼働休止や処分予定だけでは限定的に過ぎないかといった問題点があるのではないかと思われます。

続きまして、2.減損損失の認識でございます。

ここでは、(1)として過去のキャッシュ・フローを考慮すれば、当初投資額の回収が見込まれる場合の取り扱いという問題でございます。これはご存じのように、経過報告では検討事項とされております。この取り扱いにつきましては、前回ご紹介いたしましたように、考慮すべきであるという意見と考慮をすべきでないという意見、両論があったわけでございます。

これに関連いたしまして、2番目の「・」ですが、過去のキャッシュ・フローを考慮する考え方を取り入れた場合には、投資額とそれに対応する投資期間全体のキャッシュ・フローをどのように把握するのか明確にする必要があるといったような趣旨のご意見がございました。

右側のコメントの方ですが、まず、理論的には有力な反論はないようだがと書いてございますが、まさに理論的には有力な反論はコメントとしては寄せられておりません。

2番目ですが、過去のキャッシュ・フローは割引後の数値であることは理解されているかということで、経過報告の書き方が、こういったことを示していたわけなんですが、正確に理解されているかというところは少し懸念されるということでございます。

3つ目の「・」ですが、過去の回収額の算定方法については、事例等に当てはめて検討する必要があるということでございます。

次に2ページ目でございます。

(2)土地を含む資産グループ等に関する減損損失の認識につきましては、将来キャッシュ・フローの方で紹介させていただきます。

それから、3.減損損失の測定の問題でございます。

ここでは1点、使用価値概念の明確化というご指摘がございました。この点につきましては、まず、使用価値につきましては、経過報告の回収可能額のところにおきまして定義が行われているのではないかと思われます。また、使用価値だけではなくて、主立った概念につきましては、基準を定める上で定義をする必要があるのではないかと思われます。

次に、4.将来キャッシュ・フローの問題でございます。

まず(1)キャッシュ・フローの見積もりに関する基本的な考え方ということで、「合理的で説明可能」な範囲内で、経営者の改善努力等の判断が考慮されるような柔軟性を確保すべきではないかというご意見がございました。

右側のところですが、経過報告では、固有の事情に照らして見積もられることを明らかにしておりますので、その辺の読み方によるのではないかということではないかと思います。

次に、(2)単一の見積もりと期待値の問題でございます。経過報告が、「最も生起する可能性の高い単一の数値」を原則としていることに対して、「生起し得る金額をその確率で加重平均した期待値」を原則とし、「最も生起する可能性の高い単一の数値」を代替法とすべきではないかというコメントがございました。

この点なんですが、多分、このコメントはアメリカの基準を意識しているのではないかということで、右側にちょっとアメリカの基準のことを書いてあるわけなんですが、アメリカの基準の公開草案では、期待値アプローチのみになっていたということについては、以前この部会でご紹介したことがあったかと思うんですが、その後、これは8月末に確定したのではないかと思うんですが、その新しい米国基準では、期待値を原則としてはおりませんということですから、そこのところだけをご紹介させていただきます。

それから(3)の見積もり期間の問題です。

この見積もり期間につきましては、経過報告は、「資産グループの主要な資産の残存使用期間を上限とする方法」を提案する一方、資産グループに土地を含む場合の取り扱いなどについては、さらに検討するとしております。この点に関しましては、特に土地を含む資産グループやのれんを考慮して合理的な上限期間を設置すべきという意見と、「最高で何年間」等の一律の基準を設けるべきでないという両論があったわけでございます。

右側の欄ですが、特に、認識の際に割引前のキャッシュ・フローが用いられることを踏まえれば、土地等の永久資産についても、見積もり期間に何らかの制限が必要ではないかということを指摘しております。

それから5.割引率の問題です。

将来キャッシュ・フローが見積値から乖離するリスクの取り扱いという問題です。

経過報告は、リスクをキャッシュ・フローの見積もりと割引率、どちらかに反映させるということで、両方の方法を並列的に提示していますが、これにつきまして将来キャッシュ・フローにリスクを反映させ、割引率は無リスク利子率を原則とすべきではないかという意見が寄せられております。

この点についても米国基準を紹介させていただいておりますが、米国基準におきましても、公開草案と異なり、最終の基準では両者を並立的に規定しているということでございます。その事実だけを指摘させていただきます。

続きまして3ページ目ですが、6.資産のグルーピングの問題です。

この(1)最小の単位というところでございます。この点につきましては、セグメント等の大きな単位とか、そういったものでシナジー効果を前提にして保有・営業・管理を行っている場合には、これらをグルーピングすることができるというようなご意見がございました。

右側のコメントの方ですが、経過報告では「概ね独立している最小の単位」(管理会計上の区分、投資の意思決定を行なう際の単位等を考慮)ということが原則とされておりまして、こういった単位、実務的な単位の問題については、基本的にはそういった最小の単位といったようなものの運用の問題ではないかというコメントをとりあえず載せさせていただいております。要するに基準に反映させるような問題ではないのではないかという考え方でございます。

それから(2)一つの資産グループが連結の範囲に含まれる複数の会社にまたがる場合の取り扱いでございます。

この問題につきましては二つの論点があるのではないかということでございます。一つ目は、連結グループ内に複数の会社にまたがるグルーピングが可能かどうかという点でございます。それからもう一つは、そのようなグルーピングを行った場合に、連結決算での減損損失の認識・測定と、個別決算での減損損失の認識・測定を合致させるべきかどうかという点でございます。

まず、複数の会社にまたがるグルーピングが行われることは、これは書いてありませんけれども、あり得ないことではないのではないかという感じがいたします。

それから2番目の問題点ですが、個別財務諸表上、減損損失を認識するかどうかにつきましては、個々の会社ごとに公正な会計慣行に従って判断すべきであり、連結上減損損失が認識されないのであれば、連結仕訳により修正すればよいという見方があるがどうかということで、一つの見方をご紹介をさせていただいております。

それから(3)のグルーピングにおける業種固有の問題でございます。

これにつきましては、鉄道業、それから銀行業につきましてネットワークに適合するようなグルーピングというお話であったのかと思います。

右側のコメントの方は、やはり経過報告では、「概ね独立している最小の単位」というものを原則としているということと、ネットワーク型と事業形態別等の基準の運用の問題ということで、業種別のそれぞれの事情を反映したようなグルーピングというのは、基準の運用の問題ではないかということを指摘をさせていただいております。

それから(4)減損損失の配分(個別資産への配分の要否)の問題でございます。

これにつきましては、減損損失を明確に個別の構成資産に配分できる場合を除き、減損損失を資産グループ全体に対して計上する処理とすべきではないかと。要するに、そういう処理をグループとして行う方法も認めてはどうかというようなご指摘だったのかと思います。

これにつきましては、個別の構成資産に配分した場合と同様の結果になるのであれば、実務上、一つの方法として認められる可能性があるが、基準の運用の問題の一つではないかとコメントをさせていただいております。

それから(5)減損損失の配分(配分方法)の問題でございます。

合理的な方法という内容をさらに明確化する必要はないのか。それから時価に基づいて配分することが望ましいのではないかという意見があったのかと思います。

特に時価の問題なんですが、米国基準とか国際会計基準では原則的に帳簿価格に基づいて配分することとされているということで、時価に基づく配分に一本化するのはちょっと無理があるのかなというコメントをさせていただいております。時価に基づいて配分しますと、時価の比較的高いもの――減損の度合いが低い資産に、むしろ多くの減損損失が配分されてしまうという問題が、一つ考えられるのではないかということでございます。

それから7.共用資産の取り扱いでございます。

まず、(1)グルーピングの方法でございます。

経過報告は、二つの方法を示しておりまして、まず共用資産及び関連する資産グループをまとめて一つの資産グループとみなして、減損損失の認識測定を行う方法。それから共用資産の帳簿価格を関連する各資産グループに配分する方法、この二つの方法を並列的に規定をしているということです。いずれを原則的な方法にするのか、明確にすべきではないかという点でございます。

この点につきまして、右側の方では、まとめて一つの大きな資産グループとみなして認識と測定を行う方法を原則的な方法としてすることとしてはどうかと記載をさせていただいております。

それから、それに付随しまして配分方法等を明確にする必要はないかというような点が指摘をされております。

それから(2)でございますが、共用資産についての例外的な取り扱いということでございまして、共用資産で著しく時価が下落している場合には、別途、評価減を行うことを認めるべきではないかという指摘がございました。このような共用資産についての例外的な取り扱いが必要かという問題、それから位置づけということなんですが、回収可能価格まで簿価を引き下げるという全体の枠組みがあるわけなんですけれども、それとどのように、もしこういった取り扱いを設ける場合に、位置づけをどのように説明するのかという問題点があるのではないかと思います。

それから、あと認識測定方法をどうするのかということについても、明らかにする必要があるということでございます。

8.のれんの取り扱いでございます。

まず、(1)グルーピングの方法ですが、各資産グループへののれんの配分を行う場合と行わない場合を明確にする必要はないか。それから、のれんの帳簿価格の配分方法として、経過報告は「取得時の資産グループの時価の比率その他合理的な方法」としているが、「合理的な方法」をもう少し明確化する必要があるのではないかというようなことが考えられるということです。

右側の方ですが、識別可能な限り識別するということになるかと思いますけれども、それ以上に具体的な方法を基準に盛り込む必要があるのかどうかというのが1点。

それから、これは外国の基準に実際にあるものですが、SFAS121号では、原則として取得時の公正価値で比例配分することとされていると。それからIASでは単に合理的に配分するということだけが規定されているということだけご紹介します。

それから、こののれんのグルーピングにつきましては、アメリカの方で新しい基準が確定をしております。今は詳細までご紹介できませんけれども、142号というのが出ておりまして、グルーピングについて、従来の121号よりも少し大きなものも想定しているのではないかと言われております。それから、ほかにも違う点があるんですが、その点は機会があればまたご紹介したいと思います。

それから、(2)の第一部会との議論との調整の要否、新米国基準の検討の要否ということでございます。

のれんの会計処理を含む企業結合会計を議論している第一部会との調整が必要ではないかと。それから、今ご紹介しました新しい基準も検討すべきではないかというご意見が寄せられております。

企業結合会計は第一部会の方で今検討が進められております。そこで、のれんの償却をするのかどうかとか、あるいは減損の問題までどの程度議論するのかという問題はございます。のれんの本質について、かなり深く検討を進められるようになるのではないかと思いますので、そういった一部会の審議とどのように交通整理をするのかという問題があるということでございます。

次に、三、減損処理後の会計処理です。

まず、1.減価償却ということで、耐用年数の見直しということなんですが、減損処理後における耐用年数や残存価格の見直しの要否を明確にする必要があるのではないかというコメントがございました。

これにつきましては、実務的には、残存法定耐用年数にわたって減価償却を行うことも考えられるのではないかというコメントを付させていただいております。

それから2.減損損失の戻し入れ、戻し入れの要否の問題でございます。

戻し入れにつきましては、ここに代表的なものを三つ載せておりますが、減損損失を計上した原因自体が消失した場合には、例外的に戻し入れを認めるべきとか、土地についてのみ戻入れを認めてはどうかというようなご意見がございました。

この問題につきましては、経過報告を取りまとめる際に議論があったわけですが、結局戻し入れは行わないこととされているというところをご紹介させていただいております。

5ページ目、四、対象資産の問題でございます。

1.市場販売目的のソフトウエアを対象資産から除くべきではないというご指摘がございました。

経過報告では対象資産から除いておりましたけれども、対象資産としまして実務指針レベルで整合させることも考えられるのではないかとコメントを出しております。

それから2.自社利用目的のソフトウエアでございます。これについては、対象資産から除くべきではないかというご意見もございました。

この問題につきましては、対象資産といたしまして、実務指針レベルで調整することは可能ではないかということでございます。

ほかに、例えば金融資産とか、繰延税金資産とか、そういったものを対象から除いているわけなんですけれども、それと比べてやや問題点が小さいのかなということで、基準には含めるというのは、一つの考え方かなということでございます。

それから、五、財務諸表における表示の問題です。

まず、1.貸借対照表における減損損失累計額の表示の問題なんですが、これについては直接控除と間接控除という論点がございました。両方の意見が来ておりまして、米国基準等で一般的にされている直接控除方式が適当ではないかという意見と、間接控除が適当ではないかという意見がございました。

これは、直接控除の方は、支持が多かったのではないかということで、とりあえずですけれども、直接控除を原則とし、間接控除も認めてはどうかとしております。

次に、六、適用関係でございます。

適用関係については、たくさんの意見をいただいておりまして、そこに代表的なものを4つ並べさせていただいております。

1.適用時期。意見書及び実務指針、Q&A等が明確になってから適用初年度までの間に、最低1年間の準備期間を置く必要があるのではないか。

EUが2005年に減損会計を含む国際会計基準導入を図ることとしている点などを踏まえ、導入のタイミングを図ることが必要なのではないか。

適用までの一連のスケジュールを早期に明確化すべきではないか。

可及的速やかに基準を設定するとともに、同時並行的に実務指針の作成を関係者に要請し、減損処理を速やかに適用すべきではないかといったご意見がございました。

右側の欄には、基準の策定から実務への適用まで十分な準備期間を置くこととしてはどうかということだけを、書かせていただきました。まだ、この問題については、部会においてはほとんど議論がされておりませんので、今後、議論をしていただくというふうになるのではないかと思います。

それから、2.実務上の指針等の整備ということで、実務的な取り扱いについて詳細、かつ具体的な規定を示すべきではないか、また、早期に事例を公表するなどしてはどうかということでございます。

実務に適用する際の詳細な規定は、実務指針等で定めることとしてはどうかということでございます。

それから、3.簡便法ほかということですが、数箇所に簡便法を認めてはどうかというようなご意見があったかと思います。これは、ここでまとめておりますけれども、使用価値の算定が困難な場合には、時価を用いる等の簡便な方法を認めるべきではないかということでございます。

右側のコメントといたしまして、簡便法を設ける場合、その要否、その方法はもとより、対象企業等はどう考えるのかといった問題がある。例えば小規模会社を対象するということが書いてございますが、そういった問題を解決する必要があるということです。

それから、4.経過措置の要否という問題でございます。

土地再評価のような含み益を認識する仕組みや、減損損失の複数年での分割計上等の激変緩和のための措置を検討すべきではないかといったような意見が、複数の団体から寄せられていたのではないかと思います。

これについての問題点なんですが、再評価につきましては、商法の取得原価主義との関係上、法律的な手当てが必要になるのではないかというのが一つの問題ではないかと。

それから分割につきましては、損失の繰り延べということで、会計理論上難しい面があるのではないかというのが一つの問題ということです。

それから、ほかに考えられる方法があるのかという、これはむしろこの問題についても、これからここでご議論をしていただくことになるのではないかと思います。

5.中小企業への配慮ということでございます。

中小企業については、減損会計の対象外であることを明記する。それから、中小企業に適用する場合の簡便法を設ける。それから中小企業については適用を猶予するなど、そういった配慮も検討が必要ではないかというご意見がございました。

右側のところなんですが、会計基準が商法上「公正ナル会計慣行」となるので、中小企業は対象外とすると明記するのは難しいのではないかということだけを書かせていただいております。

それから、七、その他の問題でございます。

1.ファイナンス・リース取引の取り扱いなんですが、リース会計基準自体の見直しを検討する必要があるという意見が寄せられております。

リース基準の見直しにつきましては、減損会計との関連のみで議論することは適当ではないのではないかということで、この場合は、議論するのはどうかなということでございます。

それから、2.中間財務諸表において減損損失を計上した場合の取り扱いで、切り離し法か洗い替え法かという議論がございました。経過報告では切り離しというようなことになったと思うんですけれども、洗い替えという方が適切ではないかというご意見がございました。

ここで、三つコメントを付させていただいておりますが、まず第1点は、他の基準で中間の処理に言及しているものはなく、基準の運用の問題ではないかということが1点でございます。

それから第2点目として、考え方としては原則は切り離し処理ではないのかということでございます。強制評価減的な発想だと思います。

それから、洗い替え処理を例外的に認めた場合、特に問題はないのではないかということで、そういう考え方もできるのではないかということでございます。

それから3.再評価を行った土地の取り扱いでございます。

まず(1)再評価差額金の取り崩しの問題です。

減損処理を行った場合、土地再評価に係る再評価差額金を取り崩すかどうか、また減損損失の金額に見合った部分の取り崩しができるかどうか検討すべきではないかということでございます。

この点につきましては、議論をしていただいたことがあると思うんですけれども、土地再評価法による再評価差額金をどのような場合に取り崩すべきかは、基本的には土地再評価法の解釈の問題になりますので、議論をすることはできると思うんですけれども、基準等に盛り込むことにはちょっと無理があるのかなという感じを付させていただいております。

7ページ目でございます。

(2)再評価差額金取崩額の会計処理の問題です。

1点目は、再評価差額金の取崩額と損益計算書に計上される減損損失を相殺すべきではないかという意見。

もう1点、再評価の際に、評価を下げた土地について減損処理を行った場合における再評価差額金の会計処理という問題もあるのではないかということでございます。

右側の方ですが、再評価差額金取り崩しは、資本の部の中における振替にすぎないため、

損益計算書に計上される減損損失と相殺することには無理があるのではないかという指摘。

それから、再評価した土地についての売却損の取り扱い。これについては現在、公認会計士協会の方からQ&Aが示されておりますけれども、それとの整合性をどう考えるかといった問題を解決する必要があるのではないかということでございます。

それから、八、減損会計全般に関する事項、「経過報告」で取り上げられていない事項でございます。

まず1.税務との調整問題でございます。

減損処理を行った場合の税務上の取り扱いについて、基準導入時点で明確化することが望ましいのではないか。

それから、減損損失を税効果会計における回収可能性の検討における特例として手当てするような検討が必要ではないかという指摘がございました。

1点目につきましては、減損損失の税務上の取り扱いは、基本的にはこの審議会の審議対象にはならないのではないかということでございます。

2点目なんですが、繰延税金資産の取り扱いについては、基本的には税効果会計の枠内で検討されていく問題ではないかということでございます。

それから2.商法との調整、解釈との関係なんですが、商法における資産評価規定との関係を明確にすべきではないかという意見がございました。

この点につきましては、法律解釈の問題であり、基準に織り込むのは無理ではないかということでございまして、この場でも一度ご議論いただいたわけなんですけれども、基準に織り込むのはちょっと無理かなということではないかと思います。

3.海外基準との調和。

これについては特にコメントはございません。

4.臨時償却等との関係。

減損処理と従来の臨時償却等との考え方の違いを整理した上で、減損会計の導入の目的を明確化する必要があるのではないかということでございます。

この点については、とりあえず前文において触れることが考えられるということだけコメントさせていただきました。

5.減損に関連する会計処理の扱い。

減損会計の周辺に存在する廃止事業や事業再編費用に係る会計処理についても明らかにする必要があるのではないかというご意見がございました。

これにつきましては、財務諸表の表示、開示の問題であり、減損会計にのみ関連する事項ではないのではないかという意見。それから事業再編費用に係る引当計上は、引当金の会計基準の運用の問題ではないのかという点を指摘させていただいております。

6.その他は省略させていただきます。

最後のページ、第二、投資不動産でございます。

まず、一、投資不動産の会計処理でございます。

1.選択適用ということで、時価評価と取得原価評価の選択適用が望ましいのではないかというご指摘がございました。

これにつきましては、経過報告では、時価評価は行わないこととされているという事実だけを書いております。

2.部分的時価評価でございます。

時価評価することが適当な投資不動産、例えば投資不動産業や不動産信託の受益証券等については、時価評価することを検討すべきではないかというご意見がございました。

これにつきましても、経過報告では、細分化した上での時価評価も行わないこととされているという事実をご指摘させていただいております。

二、投資不動産の時価情報の注記の問題でございます。

まず、1.時価注記が必要であるという意見でございます。

有用な投資情報として時価を注記すべきではないかという意見でございまして、これは、まさに今後検討するということでございます。

それから、2.投資不動産を分類した上で注記を検討してはどうかという意見でございます。

これは、すべての投資不動産に時価の注記を求めるのは投資家の判断を誤らしめる、売買・換金を行う際の事業遂行上の制約の有無や、客観的な時価の有無等の観点から投資不動産を分類した上で、時価注記が適切な投資不動産については注記すべきではないかというご意見がございました。

これにつきましても、経過報告では、棚卸資産との関係の整理、類似の不動産との区別など、細分化の合理的な基準の設定は困難ということが指摘されております。

最後に、3.時価注記は不要であるという意見。

これは、投資不動産を区分する必要はなく、注記することも不適当、あるいは統一的な評価手法が定着するまでの間は、注記の強制は不適当というご意見がございました。

以上でございます。

○辻山部会長

ありがとうございました。

それでは、意見交換に移りたいと思います。

議論を効率的に行うために、区切って審議を進めていきたいと思います。

資料2の減損の兆候以下でございますが、まず、1.減損の兆候から2.減損損失の認識、ページをめくっていただきまして、3.減損損失の測定までのところを一区切りとして意見交換を行いたいと思います。

ここまでのところで、特に問題点等で事務局の方でまとめていただいたものも参考にしていただき、ご意見がある方は自由にお出しいただきたいと思います。

特に、ここまでのところでコメントを寄せていただいている委員のなかで、特にこの段階でつけ加えるべきところがある方、また寄せられたコメントに対しまして問題点等として指摘させていただいておりますところと照らし合わせまして、なおご意見がある方はお出しいただきたいと思います。

奥田委員、どうぞ。

○奥田委員

鑑定協会からの意見といたしまして、処分予定の資産と継続使用する資産に分類して、明確に整理しておいた方がよろしいのではないかという意見を寄せさせていただきましたが、こちらの解釈といたしましては、処分予定の資産につきましては正味売却価額、継続使用する資産については正味売却価額と使用価値のいずれか高い金額ということで認識しておりますが、これはこのような形でいくことでよろしいでしょうか。

○辻山部会長

このような形というと、どういう形でしょうか。

○奥田委員

今申し上げましたように、処分予定の資産については正味売却価額ということで、継続使用する資産については正味売却価額と使用価値のいずれか高い金額において判断するということでよろしいのでしょうか。

○辻山部会長

内容としては、そういうことでよろしいのではないかと思いますけれども、経過報告あるいは論点整理の段階から、日本でこれまで整理されておりますのは、いわゆるアメリカ方式のように、まず入り口で二つに分ける方式ではなくて、一つにまとめた上で、結果としてそうなるという整理のされ方がされておりますので、今のご質問は、入り口のところでまず二つに分けて議論しなさいということであれば、そうはなっていないということでございます。

ただ、内容につきましては、処分予定の資産であれば、正味実現可能価額の方が高くなるということで、結果的には同じことになるという整理でございます。

○奥田委員

わかりました。

○辻山部会長

品川委員。

○品川委員

ちょっとこれは経過報告の段階で確認しておくべきことだったんですが、兆候の例示の中で、資産の市場価格の著しい下落といった場合には、このマーケットの価値が下がった上がったという問題が認識されると思うんですが、実際の個別の資産の陳腐化とか機能低下で、その資産だけの価値が下落した場合には、このマル1で読むべきなんですか、それとも経過報告の「等」で読むべきなのか、そこをちょっと確認させていただきたいんですが。

この市場価格の下落といいますと、一般的な市場価格は下落していると読めるんですけれども。価格の低下というと、その財産自体の価値が下がったと読むのか、ちょっとそこがどういうふうにふるいに分けられていたのか、ちょっと確認させていただきたいんです。

○辻山部会長

ただいまのご指摘でございますが、恐らくこの市場価格の著しい下落というのは、文字どおり価格が著しく下落した場合で、品川委員ご指摘の陳腐化による場合で、かつ市場価格が下落していない場合というのはどうかという、こういうご指摘ですか。

○品川委員

ええ。当該機械のいわゆるマーケットバリューは変わっていないんだけれども、その機械がもう陳腐化したり、故障したり、あるいは機能がおかしくなって、その個別の機械自体の価値が下落しているという。それを全部くるめて市場価格の下落の中で読んでいいのかどうか、そこをちょっと確認したかったんです。

○辻山部会長

その場合に、市場価格は下落しないのでしょうか。

○品川委員

当然、個別の機能低下ですから、趨勢的な価格は変わらないにしても、その個別の機械の価値は下落するわけですね。

○辻山部会長

そうしますと、企業が保有している、その個別の資産の価格は下落しているというふうに考えるのだと思いますけれども。

現に企業が保有している資産の価格が、そういう価値の減少にもかかわらず価格が下落しないケースをご指摘なんでしょうか。

○品川委員

価値は下落するんですけれども、しかし機械の市場価格自体が、一般的な市場価格は下落しなくても、個別の機械が陳腐化あるいは機能低下で下落した場合に、マル1の中に全部入ってくるのかどうかと。もちろん、価値は下落しているんですね。

○辻山部会長

恐らく、ここで言っている資産の市場価格というのは、企業が保有しているその資産の市場価格の下落を指しておりますので、先生ご指摘のように、企業が持っている資産の価値が下落し、かつ市場価格も下落しているんだけれども、その資産の一般的な価格が下落していない場合というのを指しているのではないのではないでしょうか。

○品川委員

今、法人税法で、これはほかの企業も同じような臨時償却を行う場合に、これは資産が陳腐化した場合というふうな言い方をして、それでその陳腐化した部分について一時償却を認めるという制度を、法人税法は採用しているんですね。

ですから、これは今の企業会計的には、ほとんどそういう制度で臨時償却やっていると思うんですが、市場価格という言い方をすると、その個別の価値の下落ではなくて、通常の市場の趨勢の価格というふうに解釈する可能性があるので。ここでは個別も全体の趨勢も両方入るんだということであれば、それはそれで結構なんですが。

○辻山部会長

わかりました。そういう解釈ではないかと思いますけれども。

○品川委員

わかりました。

○辻山部会長

そのほかございませんでしょうか。

高野委員。

○高野委員

1ページ目の2の減損損失の認識の(1)のところなんですけれども、右側の方に過去のキャッシュ・フローは割引後の数値であることは理解されているかとありますけれども、過去のものを割引後で、これはいつの時点に割り引いてそろえるということなんでしょうか。

例えば、過去のものですと、逆に複利でふえていきそうな気もしますけれども、私の誤解でしょうか。

○辻山部会長

ご指摘のところでございますが、お手元の経過報告の5ページの2の減損損失の認識のところの三行のところを指しているわけですが、ここの意味を再確認させていただきますと、「見積もられた将来キャッシュ・フローの総額(割引前)が帳簿価額を下回って」いる、これがまず認識のフィルターの2番目といいますか、まず兆候に引っかかって、認識するかどうかもう一度見きわめましょうというところで、そこで下回っていた場合です。

しかし、「過去のキャッシュ・フローを考慮すれば当初投資額の回収が見込まれる場合」という、この意味は、概念のところで整理されておりますように、当初投資額は取得原価を指していて、その取得の時点にさかのぼって、過去のキャッシュ・フロー及び将来のキャッシュ・フロー、つまりその投資の全体のキャッシュ・フローを投資の始点まで割り引いて、その両者を比較して十分に回収可能だということが確認されていれば、これは測定に進まないという趣旨だと思いますが。

○高野委員

わかりました。

○辻山部会長

そのほかいかがでしょうか。

この後の方で、また議論も多いと思いますので、それでは、次のところに進めさせていただきます。

次に、4の将来キャッシュ・フロー及び5の割引率についてはいかがでしょうか。

ご自由にご発言いただければと思います。

奥田委員どうぞ。

○奥田委員

見積もり期間につきましては、まさにこちらに書かれておりますように、特に土地の場合にはこういった問題が起こりますので、必ず制限を設けなければ永久にキャッシュ・フローが膨らんでいってしまうという問題がありますので、このようにしていただきたいというふうに思っております。

あと、見積もりの期待値の問題なんですが、新米国基準にありますように期待値を原則としていないということなんですが、期待値を原則としてしまいますと、果たして加重平均した期待値がすべてのケースにおいて求められるのかという問題が出てしまうのではないかというふうに懸念されますので、やはり原則としない方がよろしいのではないかと個人的には考えております。

○辻山部会長

どうもありがとうございました。

今の奥田委員のご指摘は、こちらにあります問題点の事務局の整理に、そこにあります2点において賛成だという理解でよろしいでしょうか。

○奥田委員

はい。

○辻山部会長

そのほか。

秋葉委員、どうぞ。

○秋葉委員

私自身も余り整理されていないんですけれども、多分、減損で一番大きい問題になるのが、土地の問題だろうというのが当初のころから言われてきていますので、この2ページ目の4の(3)の見積もり期間、これについて検討するということは必要かと思うんですが、その際に土地の扱いも経過報告までのところでは、償却資産と減損の考え方を特段区別してはいないので、そのコンセプトをどういうふうに生かしていくのかということ。

それと見積もりキャッシュ・フローのところが、今もお話ししましたように、どの程度リスクを織り込むか否かというところが、まだ確定的ではないので。その際に、単純に何年間ということを設けると、将来キャッシュ・フローのところにリスクを織り込むか織り込まないかということによって、一律に年数を設けた場合には、かなり程度が違ってくるのかなと。つまり、使用価値を求める際には、分母、分子の関係で整理がされると思うんですが、減損損失の認識の時点で使う将来キャッシュ・フロー、これについてどの程度リスクを織り込むかということの度合いによっては、単純な年数ということを定めると、ちょっと弊害があるのではないかなと直感的には思っておりまして、今後の検討はその辺も考慮するべきではないかと思います。

○辻山部会長

どうもありがとうございました。

どうぞ、岩田委員。

○岩田委員

土地の問題でございますけれども、年限につきましては最初のキャッシュ・フロー見積もりに関する基本的な考え方のところで、経営者の「合理的で説明可能」な範囲で、柔軟性を確保すべきではないかという議論がございますので、こうした固有の事情もかなりありますので、特に使用する形態とか、この土地の上にあるものによって相当違ってくると思いますので、単純に何年と、一概に土地に年限を設けるのは適当ではないのではないかと思います。

仮に、例えば100年とか150年といった場合に、それはそういう計算はできますけれども、実際、企業は市場やアナリストの目にさらされておりますので、少なくともそういうところではある程度経済的合理性が証明できなければ、大体そういう企業は市場から消えていくことになりますので、そういったことを考えれば、経営者なり会社の保有事情の中で、説明可能であればその年数でいいのではないかと思います。

以上です。

○辻山部会長

そのほかのご意見ございますでしょうか。

太田委員。

○太田委員

私も今の岩田委員のご意見に、どちらかというと賛成なんですが、やはり土地をそのまま更地で使用してキャッシュ・フローが得られる状況というのは、なかなか想定しにくいかなと思っておりまして、やはりその上に何かをつくって、それで使ってそこから収益が上がってくるというのが原則だと思いますので、やはりその上に建っているもの、ないしはその上で使っているものの経済的な耐用年数というのが、一応キャッシュ・フローの見積もりの期間というふうに、理論上はなるのではないかと思います。

ですので、やはりそこで一たん投資というのは終了して、土地はある程度そこの終わった段階で処分するという前提において見積もっていくのが合理的なのではないかなと思っております。

○辻山部会長

どうもありがとうございました。

品川委員どうぞ。

○品川委員

今のお話と同様な問題なんですけれども、確かに上物があれば、上物の残存年数や何かで見積もってやるべきだと思うんですけれども、ただ、問題は更地とか、あるいは投資用に抱えている土地等が結構あると思うんですけれども、そういうものをどういうふうに評価するかという問題がありますが、二、三日前に道路公団の返済の年数を計算する場合に、50年というのは、今責任を持っている人がカウントできない年数で、最高30年以下にすべきだという主張がされていました。当然土地の使用についても、これは50年使えるんだ、100年使えるんだという年数を決めても、極めてコントロールできない話だと思うんですね。

仮に10年とか20年とかというコントロール期間を設けても、それはその10年後の残存価格を見積もれるわけですから、やはりここはある程度コントロール可能な年数をきちんと決めておかないと、かなり恣意的な測定に流れてしまう可能性があると思うんですね。

○辻山部会長

そのほかいかがでしょうか。

ただいまの点に関連して確認しておかなければならないと思いますが、一つは先ほどの秋葉委員のご指摘に関連しますけれども、経過報告の段階ではキャッシュ・フローが1本で説明されていた点です。これが、この段階では1本ですけれども、ここに書かれておりますように、キャッシュ・フローというのは2種類で使用される。一つは認識のフィルターとしての割引前の将来キャッシュ・フロー、それから使用価値を算定する基礎となる将来キャッシュ・フローですが、その2種類のキャッシュ・フローが一つにまとめて説明されております。

一方で、割引率の方は、使用価値の算定の基礎になる割引率を指していて、これは経過報告のところでも議論されたところです。

そうしますと、リスクの問題というのは認識の前提になるキャッシュ・フローのときに、反映させてもいいし、反映させなくてもいいということなのか、あるいはこれは割引前の、すなわち認識の前提として使う将来キャッシュ・フローの場合には、リスクを反映させないということで統一しておくのか、この辺は整理しておく必要があるのかなという感じがするんですけれども、この点は秋葉委員、いかがでしょうか。

○秋葉委員

そのように思います。

○辻山部会長

それから土地の問題でございますが、日本の場合は土地が非常に大きな中身を占めておりますけれども、期間を切るということを支持されるご発言というのが一方でありますし、もう一つは新しいアメリカ基準でも、見積もり期間は必ず主要資産によって判断し、その主要資産は償却性資産でなければならないという規定を設けることによって、償却性資産の耐用年数で認識の年限を切るという方式も採用しているようです。この点については、先ほどの太田委員のご発言はそれに近いご発言だったと思いますが、この点についてはいかがでしょうか。

○品川委員

私もそちらの方はおっしゃるとおりだと思っていますが、ただ、更地とか、そういう特に駐車場に使っているとか、あるいはゴルフ場を開発しようと思ってだめになってそのままほうり出しているような土地とか、そういう土地が結構あることに対してどう対応するかという問題で、更地のキャッシュ・フローをどういうふうに計算するかの方がむしろ問題になってくるのではないかと思われたので、先ほど申し上げたんですが。

○辻山部会長

これは伊藤委員にお伺いした方がいいのかもしれません。

更地の場合で、キャッシュ・フローがとりあえず生み出されていないものは、遊休というふうに判断されるんでしょうか。この辺、いかがでしょうか。

この場合は、更地というのは、もう売却を予定しているというふうに考えたうえで、キャッシュフローを考えるんでしょうか。

○伊藤委員

基本的には会社の意思決定だと思うんですが、業種によってそういうふうな売れる能力を持っていれば、事業用資産から販売用不動産に行くケースもあるだろうとは思いますけれども。

ですから、そういう事業用資産から販売用不動産に行ったり、あるいは休止している、何も貸していない、利用していないというのは、やっぱり基本的にはキャッシュ・フローは見込めない、時価でやるしかないんだろうと思います。

○辻山部会長

伊藤委員、どうぞ。

○伊藤委員

見積もり期間の話ですが、私もある種の基準といいますか、方向性を出すような基準が要るんではないかと思います。過去に幾つか実務指針とかそういうのを作らさせられていまして、確かに精神論としては経営者の判断だと一番きれいだろうと思うんですけれども、個別の業界といろいろお話をするときに、実務的に動かすときには、何らかの大きな基準が要るだろうと思います。

年数をここに織り込むかどうかは別にして、見積もり期間の考え方のようなものを経営者の判断だけでもなくて、合理的で、かつ実現可能なとか、そういうふうに少し狭めていただいた方が実務的には動きやすいのではないかと思います。

○辻山部会長

ありがとうございました。

そのほかございますでしょうか。

奥田委員、どうぞ。

○奥田委員

土地については、基本的に日本の土地価格というのは半永久的に使用できるという潜在的な価値を見込んで、形成されているものですので、その中で期間を区切るというのは、本来の土地の価格形成の考え方にはそぐわないものなんですが、そういう考え方からすると、先ほど伊藤先生がおっしゃったように、基本的にはもう時価評価、売却は市場価格で評価していくのが、最も客観性にすぐれた方法ではないかと思うんですが、多分土地によっては、短期間収益を生ませておいて、短期間後に土地価格は下がるだろうけれども、その分の下落をキャッシュ・フローで回収したりとか、そういったケースも場合によってはあるのではないかと思いますので、一律に時価評価ということでもなくて、一定期間収益を生ませておいて、その後の例えば5年後なり、10年後の市場価格を見込んで、その価格を加算するというような方法もあり得るんではないか、したがって、ある程度柔軟的に適用できるようにしておくことも考えられるのではないのかなというふうには思います。

○辻山部会長

ありがとうございました。

そのほかご発言ございますでしょうか。よろしいですか。

それでは、3ページに進ませていただきます。

6.資産のグルーピングの問題、それから7.共用資産の取り扱い、次のページの8.のれんの取り扱い、ここまでのところでご発言ございますでしょうか。

小宮山委員どうぞ。

○小宮山委員

減損損失の配分のところですけれども、これもやっぱり今までの議論を引きずっているところがあって、(5)の減損損失の配分のところで、基本的には帳簿価額に基づいて配分するということでいいんだろうと思いますけれども、やはり土地のケースをどうするかというのは、別の配慮が必要なのかなと。

例えば建物は減価していないけれども、土地の値段は2割になっているというのに、帳簿価格で配分していいのかなという話は出てくるわけでして、土地はターミナルバリューを便宜的に用いるという方法も考えられるのかなと。これは、さっきの土地のところとつながった話だろうと思いますけれども、その辺は必要かなと思います。

○辻山部会長

どうもありがとうございました。

そのほかのご意見ございますでしょうか。

都委員どうぞ。

○都委員

共用資産についての7の(2)ですが、共用資産で著しく時価が下落している場合に、別途評価減を行うことを認めるべきではないかということなんですが、共用資産というのは、まさに共用資産と言われるとおり、それ自身でキャッシュを生むということの最小単位とは見られていないわけですから、これをまた改めてここだけが著しく下落している場合には、別途評価を行うという必要はないのではないかと思います。

そもそも減損というのは、著しく時価が下落しているものについて見ようということですから、それをどの単位で見るかということで一つの関連する資産グループをまとめて見ようというときに、改めてこれだけを取り出すというのは、実際、多分経営に携わっている人から見れば全く理解できないことになると思います。

また、理屈の上から言っても、ちょっと理解できないと思います。

○辻山部会長

どうもありがとうございました。

そのほかございますでしょうか。

秋葉委員どうぞ。

○秋葉委員

今の4ページの上の(2)の共用資産についての例外的な扱いなんですが、多分全体のコンセプトからすれば、例外的取り扱い、ないしは位置づけというのは非常に難しいというのは、私もそう思っております。ただ、一般的に問題の所在としては、本社ビルとか、全社で使っている研究所とか保養所とか社宅というのが、これは業種を問わず皆さん気にしているところであるのも確かでありまして、特に時価が半分どころか2割、3割になっているというのも結構あるというのも、これもまたよく見られることでありまして、それが直感的にどうかというのが、多分、ここで会計士協会でコメントされているところなんだろうと。ですから、これについては理屈づけからすると非常に難しいということで、それでコメントのところも位置づけをどう考えるかというのがされているのかと思うんですが。

もう一つ、これは別に肯定したり、否定したりするわけではなくて、ちょっと参考の材料としての話ですが、しばしば減損の事前的な対応というような形で実務的に見られる話として、子会社等に本社ビルとかいわゆる共用資産を売却して、連結上は未実現損失の消去をしないというところを使って、実際上は連結ベースで減損ないしは評価減と同じ効果を出すということがありますし、これとの関係をどうするかと。これもファクトがあるので、サブスタンスとファクトを分けるということであれば、そういう割り切りもできると思いますけれども、なかなか難しいというのが一方にある。間接税も払ってやっているんだからそれは一つの意思決定だとかいう見方もあると思うんですけれども。

ですから、ファクトを重視すれば、それはサブスタンスが同じでも違うということが言えると思いますし、また一方で流動化とか、これはオフバランスとなりますので、評価減というよりも売却損になりますけれども、将来、仮に時価で買い戻されると、これも極めて近い効果になるので、その辺のところをどうするかというのが、特に比較の問題としていいのかなということが、一つの気になるということで、多分挙げられているのではないかなと思いますので、参考までにちょっとお話し申し上げました。

○辻山部会長

どうもありがとうございました。

この意見は、こちらのもう一つの方のペーパーにもありますように、公認会計士協会からの意見なんですが、特にご発言ございますでしょうか、伊藤委員。

○伊藤委員

これは私が作ったわけではないんですが、今おっしゃったとおりの「そうはいっても」という感じの心配をしているような配慮でして、個人的には私は必要ないのではないかと、減損のスキームの中でやればいいのではないかと思っています。

これは、もしかすると小宮山委員の方が……。

○辻山部会長

小宮山委員、いかがでしょうか。

○小宮山委員

ここに書いてあるとおり、やっぱり位置づけが難しいんだろうと思うんですね。それで下がっている事実があるのに落してはいけないのかと、何も規定しないとそういう結論になるんだろうと思うんですね。基本的に、キャッシュ・フローが全体で見て賄えないような企業の場合には落としなさいという話になるので、十分なキャッシュ・フローで潤っている会社は絶対に落とさないという、同じ事実について非常に異なる結論になるんですね。

ただ、通常の減損会計の論理で言うと、落とさなければいけないという結論にはどうしてもならないものですから、ニーズがあるということは、実務サイドからすると確かですね。本社土地と福利厚生施設とでは、やっぱり果たしている機能が違うから、正直言ってレベルは違うと思いますけれども。私は、個人的には、何かこれをやってはいけないということを言わないでできるようにする方法はないかということを期待しているんですけれども。

○辻山部会長

どうもありがとうございました。

ほかにはいかがでしょうか。

太田委員どうぞ。

○太田委員

ちょっと今のお話と共用資産に関する部分ということで関連するんですけれども、本社資産、研究施設等で非常に時価が下落している土地があるという、そういう状況もありますし、それからもう一つは、よく聞かれるのはAとBとあって、こっちの共用資産の土地は非常に下落しているけれども、こっちは含み益があるんだというような、そんな状況もあるようですので、この辺をやはり一律に減損の会計基準の枠の中で考えていくのは、ちょっと難しい部分はあるのかなと思います。

○辻山部会長

どうもありがとうございました。

そのほか、いかがでしょうか。

川村委員どうぞ。

○川村委員

今の問題に関連してなんですけれども、グルーピングのやり方をちょっと工夫して、例えば本社が、本社に関連する人事その他のサービスを他の部門に提供していると、それに対して、そのサービスに対応するキャッシュ・フローを他の部門から得ていると、つまり、本社ビルを一つの独立のキャッシュ・フロー生成単位と見て考えると。その際に土地価格が下落しているときに減損させるなどという、本社の部分を別に切り離す、あるいは保養所なんかも同様に、保養所の提供するサービスを他の部門に提供しているというようなキャッシュ・フローを、内部的に、架空とは言いませんけれども、内部的に振替価格的なものを計算して構成することは可能だと思うんですね。そうした場合に、減損させることはテクニック的には可能ではないかと。

ただ、その際に問題になってくるのは、キャッシュ・フローの生成単位の定義で、外部からのキャッシュ・フローを識別するというのを原則にするのか、それとも内部的なキャッシュ・フローのやりとりも独立のキャッシュ・フローとしてみなすのかどうか、そういったところと問題が連動しているような気がいたします。これも感想です。

○辻山部会長

どうもありがとうございました。

そのほか、いかがでしょうか。

逆瀬委員どうぞ。

○逆瀬委員

3ページのグルーピングの(2)の連結のところで、右の問題点等の欄ですけれども、ここでは個別財務諸表上、減損損失を認識するかどうかは、個々の会社ごとに判断しましょうとなっていますが、連結減損損失が連結上は認識されなければ、連結仕訳により修正すればよいという見方があるがどうかということで、かなり色がついてきたような状況になっているんですが、やはり作成者の気持ちになれば、個別計算書類で減損損失は認識いたしますが、連結ではいたしませんと、こんなわけのわからないことは、ちょっと難しいなという場面があるんではないかという気がするんですね。

米国の企業ならこんなこと気にしないわけです。日本の場合は、商法は個別もあり、連結もありと、今度は商法に連結も入ってくるということですから、ずっと前の方で認識のところで少しさばいていただければいいんではないかという気はいたします。まずもって、そういうケースもあるんではないかということですね。

だから、日本でよく個別は個別、連結は連結仕訳で、その使い分けを今までやってきましたけれども、事ここに関しては認識は同じでいいのではないかと。だって信じられないですよね。個別では減損しているけれども、連結では減損していないと、そういう事象はあり得ないと思うですよね。ちょっと、私素直にそう思うんですけれども。この表現ぶりだと、もう連結で仕訳してしまうと言わんばかりの表現にも読みとれなくはないですね。

これは念のための発言です。よろしくお願いします。

○辻山部会長

品川委員、どうぞ。

○品川委員

今の(2)の問題点のところで、「個別財務諸表上減損損失を認識するかどうかは、個々の会社ごとに公正な会計慣行に従って判断すべきであり」と書いてあるんですけれども、この公正な会計慣行というのは、まだないわけですよね。減損損失の認識に関する公正な慣行。これはどういう趣旨でこう書かれたんですか。

○辻山部会長

これは事務局の方から、どうですか。

○平松課長補佐

これはもちろん、減損の会計ができた後の話です。

○品川委員

でき上がった後の話ですか。わかりました。

○辻山部会長

この点についてはいかがでしょうか。

一応逆瀬委員の方から、議事録にとどめておいてほしいというご発言がありましたのですが、特に秋葉委員は、ご発言ありますでしょうか。

○秋葉委員

個人的には、問題点というよりも、実務上は余り意味がないという話なのかなと受け止めています。

具体的に言えば、例えば100%子会社なんかのケースでは、100%子会社の個別財務諸表上減損認識して連結ベースで戻すということは、私自身も余り意味がないかなとは思います。もともとその場合には、子会社の個別財務諸表を作らなきゃいけないのかどうか、特に商法上の大会社ですと、今の現行制度ですと作る必要もあるし、監査もする必要があると。そういうことになると、その制度そのものの是非という話にまでなっていきますし。仮に株主が100%であっても、商法の精神が債権者に対しても配慮するといいますか、債権者保護の観点もあるとすれば、株主が100%だけでもだめなのかなという気もしますし。

原理原則は多分ここにある問題点といいますか、右側のコメントにあるよということなんだろうということなんですが、それを超えた、今、逆瀬委員がおっしゃったようなお話が、どういう形でコンセンサスというのか、ある程度賛同者が得られるのかというところ次第なんだろうなという気はいたします。

若干、シンパシーを感じるとすれば、そういう点が挙げられるということは言えるかと思います。

○辻山部会長

どうもありがとうございました。

逆瀬委員。

○逆瀬委員

今、シンパシーというお話だったんですが、サポートまでまだ行ってないんですか。

個別で減損しているけれども、連結で減損していない、要するに一つの事象なのに二つで使い分けるということがいいかどうかということを言っているだけなんですね。確かに今言われたように、100%子会社の場合どうのこうのという、そういう次の議論はまたありますけれども、素直に考えると、こういうことってあるんだろうかというだけなんです。

だから、それは個別で見れば、仕訳はこうなって、会計手法はこうあって、こうあってと、それはわかりますけれども、認識のところでこれは減損なんだというときに、実際はグループで動いて、すべて連結ベースで物事は動いているのに、資産も利用されたり価値を生んだりしているのに、個別のテクニックでやると減損となりますよと言っているだけなんですね。それは実態ではないんではないかという、そういう単純な話なんですね。

○辻山部会長

小宮山委員、どうぞ。

○小宮山委員

この連結ベースの話というのは、何か場合分けしなきゃいけないような気がしているんですけれども。これは親の個別で減損は生じるけれども、連結ベースでは生じないという話をしているのか、それとも例えば製造子会社なんかのレベルで減損が生じているけれども、連結ベースで考えると減損なんか生じないというケース、どちらを想定されて議論するかによって答えが違ってくる部分があると思うんですね。

親会社では減損が認識されるけれども、販売子会社での利益を足すと減損はしていないと。これはもともと個別財務諸表の限界の話をしているので、要するに子会社株式が原価法で評価されているから、その中に内包されてしまっているという含み益分を考えると、減損の部分はないという話で、割りとそれはしなくていいですよという方向に議論しやすい話だと思うんですね。

ただ、製造子会社レベルで出る減損の話だと、こういう説明が難しくなってくると。それは、先ほど秋葉委員の100%子会社ならば、その財務諸表はだれが利用するかと考えたら、親会社だけなんだからいいじゃないですかと。では、少数株主持分が45パーセントあったらどうなるという議論になると思うんですね。

これは場合場合によって話が違うのかなという感じがして、一括して議論するよりも、どの時点で個別財務諸表で減損損失が出てくるのかというのを、少し場合分けしないといけないと思っているんですけれども。

○辻山部会長

ありがとうございました。

これから公開草案に向かっていくわけですけれども、細かいところにつきましても、できるだけ数値例、事例で場合分けをして確認しながら考えておくということが、前々からこの部会では議論されておりますので、その点はご意見として承っておきます。

そのほか、よろしいでしょうか。

逆瀬委員、特にこのことにつきましてサポートを得るような何か数値例等はお考えですか。

○逆瀬委員

まだ、そういうことまで用意していませんけれども。

○辻山部会長

太田委員どうぞ。

○太田委員

今の論点に関連するんですけれども、ちょっとサポートとまで言えるかどうかよくわからないんですが、やはり私も個別財務諸表上、減損を認識しておいて、それが連結上は不要なんだという結論は、会社の方からすると、親子間の取引価格が歪んでいるんではないかと、そういうとらえられ方をされてしまうと思いますので、やはり原則的には個別財務諸表上減損が認識されれば、それはやはり連結上もそういう状況なんだろうなと考えるのが、原則的には素直ではないかと思います。

特殊な事例で、例えば親子間の値段の決め方がかなり市場の決め方――なかなか市場を比較するものがないという状況が多いかとは思うんですが、それと離れているようなケースでは、連結上やはり修正するという事態もあり得るのかなとは思いますが、原則的にはやはりしていくものではないかなと思います。

○辻山部会長

ただいまの原則的にはしていくというのは、どういうことでしょうか。

○太田委員

親会社、子会社間での取引価格の決め方が、ある程度市場価格を考慮した決め方になっているとすれば、個別財務諸表上で減損が認識されたものは、やはり連結上も認識されるだろうなという意味でございます。

○辻山部会長

ありがとうございました。

今のご発言は、むしろ逆瀬委員のご発言の趣旨に対して、むしろ反対であるという、そういうご発言の趣旨のように思いますが……。

○太田委員

いえ、賛成と。

○辻山部会長

賛成ですか。

○太田委員

すみません。逆瀬委員は個別財務諸表上減損が認識されれば、それはそのままやはり連結上も認識されるべきであるという趣旨の発言をされたのではないですか。

○辻山部会長

反対ですね。

逆瀬委員、今の解釈に対して、もう一度明確にご発言いただきたいと思います。むしろ反対のご発言だったというふうに理解しておりますので。

○逆瀬委員

そうですね。個別で仮にそういう結果が出たとしても、連結全体で見たときに、そういう事実、つまり減損の要件に当てはまらない場合には、個別計算書類においてその減損手続を元へ戻すというか、認識しないと、こういうことの方が合理的ではないかと申し上げたんです。

○辻山部会長

よろしいでしょうか、太田委員。

○太田委員

すみません。

○辻山部会長

問題は今二つあると思うんですけれども、逆瀬委員のご発言の中で、子会社で減損が生じていても、キャッシュ・フローの単位のくくり方によって、親会社を含めた親会社の決算上、グルーピングをすることによってそれが打ち消されるのであれば、連結上、その修正仕訳ができるということと、もう一つは子会社の単独決算においても減損の計上が必要ないと、逆瀬委員はそこまで考えてはどうかというご指摘でした。

○辻山部会長

そのほか、いかがでしょうか。

よろしいでしょうか。大分順調に進んでいるようなんですが。

今後、公開草案の起草に入ると思いますので、ご発言がある場合には、ぜひこの段階でご発言いただきたいと思うんですけれども、よろしいでしょうか。

それでは先に進ませていただきまして、次に、4ページの三の減損処理後の会計処理、それと四の対象資産、それから五の財務諸表における表示、そこまで一括りにさせていただきまして、適用関係の前のところまででございますが、ご意見を承れればと思います。

品川委員どうぞ。

○品川委員

最初の1番の耐用年数等の見直しですが、この見直しについて、税法の規定と一切切り離すかどうかということについて、ここには若干わかりにくく書かれていまして。

と申しますのは、問題点のところに「実務的には、残存法定耐用年数にわたって」云々と書いてあるんですけれども、この場合は法人税法上の耐用年数を指していると思うんですね。実際実務的には、今の法人税法の上では耐用年数の圧縮を国税局長の承認を求めて短縮して、それで臨時償却を認めているわけでありますから、もし、そういう実務にのっかるというのであれば、短縮後の耐用年数で減価償却を行うということになると思うんですね。

ただ、法人税法はこの場合関係ないんだということであれば、これは会計上の見積もり耐用年数でやればいいわけであって、どちらの土俵に乗っているのか、何となく片足は会計の方、片足は税法の土俵に乗っているようで、ちょっと危ういかなという感じはするんですけれども、その辺、もう完全に税法を切り離すというのであれば、法定耐用年数という言葉が出ること自体問題があると思うんですけれども。

私は、実務的には法定耐用年数を放棄するというのは、なかなか難しいとは思うんですけれども、でも、会計基準としてそれが正しいということであれば、特に反対はしませんけれども。

○辻山部会長

ありがとうございました。

この点につきましては、もう一つの方のペーパーにございますように、経済産業省の方からも意見が出ておりますが、特に経済界から出ている委員の方々の中でご意見ございますでしょうか。

逆瀬委員どうぞ。

○逆瀬委員

今の品川先生のお話、よくわかりますけれども、ただいま現在では日本の税法上では、やっぱり減価償却費というのは、確定決算といいますか、損金経理が要件になっていますから、そこはまず非常に悩みごとがベースとしてありますし、実際に今は短縮のお話を言われましたが、逆に事実を述べれば法定耐用年数は5年でも、実際には10年使っているということが、それはごく当たり前のごとくありますが、監査上は一定の宥恕がされていると、我々つくり手側は勝手にそういう認識でおりますし、そういう実務が今ベースにあります。

ところが、この減損の会計では物の使われ方をよく見ましょうというルールですから、会計テクニックとしてそれを暴き出すわけですね。そのときに、前段で議論しましたようなキャッシュ・フローの見積もりなんかは、少なくとも法定耐用年数でやるわけにはいかないと。実際に商売する期間をもってキャッシュ・フローは見積もるわけですから。そうすると、それは10年だということになる。片や原価配分の方は、法定の5年でやっているなんていう自体が、目の当たりに出てくるわけですね。これはただいま現在では解決できないと。

だから、企業がやっている減価償却の耐用年数は、実際と違う。かつ、キャッシュ・フローの見積もりは実際の使用期間でやると。こういうちょっと平仄の合わないようなことを認めないと、実務はうまくいきませんねと言っているわけです。

でも、本当は税の方で損金経理の要件から外していただいて、申告でやってもらえればいいんですよと言っていただければ、もう帳簿は会計と税務を完全に分けましてね、この減損の実態に応じた耐用年数で会計上の事務処理をやればいいと、そういうことなんですけれども。そこが、このテーマがピックアップされたときから、つくり手側の方では頭にこびりついていまして、それで経団連の方では、最近、平成14年の税制改正に対する要望なんかで、この減価償却に関する損金経理の話を外してくださいというのを正式に文書にしました。これはもう9月に公開されていますが。

それから3月末時点では、会計制度に対する提言という中でもこの辺のところを正式に取り上げてお願いしているところです。それが解決しないと、なかなかそう簡単にいきませんから、減損に当てはまって減損手続をやったというような資産についても、では耐用年数は延ばしましょうかとかということをそう簡単にやるわけにいかないという事情に企業側はあると。減損処理は、これは有税でしょうね、税務署にはそう簡単に認めていただけないというのも、また別途ありますし。そこはどう解決するんだという問題は、何とも言えないから、今先生が言われたようにどっちに立っているのかわからないような状況になっているわけです。

ここにさっと答えが出れば、みんなハッピーなんですよね。

○品川委員

ちょっと補足させていただきますと、法定耐用年数よりも、実際の耐用年数が長いというのであれば、その損金経理は限度額の枠内で償却できるわけですから、確定決算に何ら影響を及ぼさないと思うんですね。逆に、法定耐用年数の方が長過ぎるんだと、実際にはそんなに使えないのに、法定耐用年数がばかに長いから、それを短くすべきだということであれは、それは今、税法上は耐用年数を短縮する制度ができていて、その事例もかなり幅広く政令で規定されていますので、それを活用するとそれほど不都合はないと思うんですね。

今、ご指摘のように、会計上の耐用年数の方が長いというのであれば、それは自由に限度額の枠の中で100万円限度があれば、50万円ずつ償却すればいいわけですから、余り不都合がないようには思えるんですが。でも、観念的にそもそも税法がそういう耐用年数を決めていたり、損金経理を決めること自体がどうもうっとうしくて、それは排除せいというのは、気持ちとしてはよくわかりますけれども。

○辻山部会長

先ほどの逆瀬委員のご発言は、品川委員が当初ご指摘されていたものと、むしろ逆のケースで、経済的耐用年数が長い場合に、それでキャッシュ・フローを見積もって減損後に会計上長い方の耐用年数を使うと税法上の特典は放棄せざるを得ないという問題意識ですね。そこのところはいかがですか。

○品川委員

それは自由にできるわけですよね。短い場合は、償却限度額が100万円であれば、長ければ50万円になるわけですから、50万円ずつ損金計上すれば、別に何ら差し障りがない話で。

別に、特に税法を擁護する立場で言っているわけでもないんですけれども。ただ、会計との調整を考えた場合に、不都合があるかないかということだけをちょっと指摘させていただいたわけです。

○辻山部会長

逆瀬委員何かご発言ございますか。

○逆瀬委員

ご趣旨は理解いたしましたけれども。会計のためにタックスを負担するかという、ただそれだけの話。そこは、できればそこまで影響を及ぼさないような会計ルールにしていただきたいということでございます。

○辻山部会長

どうもありがとうございました。

そのほかございますでしょうか。

特にペーパーの中で、戻し入れについては経過報告の取りまとめの結論的なことが出ておりますが、この点を含めていかがでしょうか。

それでは少し先に進めさせていただきます。

次に、5ページの六、適用関係のところでございます。

ここは比較的新しいところでございますので、この適用関係のところで区切りましてご意見をちょうだいできればと思います。

品川委員どうぞ。

○品川委員

これは私の意見というよりも、この間説明させていただきました日本租税研究協会からの意見の趣旨をもう少し述べさせていただきますと、簡便法の採用に関して、土地の時価として公示価格を原則とし、公示価格のない地点は相続税の路線価を80%で割り戻した数字とすべきではないかということで、右の方に、例えば、簡便法を用いる場合小規模会社を対象と書かれているんですが、これはむしろ大会社の方がそう言っいて、土地がたくさんあるからこそ、一々鑑定士さんにお願いして評価ができないから、公示価格自体は1月1日現在で鑑定士の方お二人の意見を調整して国土交通省が発表しているわけですから、それを一応はメルクマールとしてもいいではないかと。

ここで、固定資産税の路線価を使わなかったのは、固定資産税については各3,000幾つある市町村がやるわけで、全国的なバランスというのはうまくないけれども、相続税については、既に閣議で公示価格の8割で評価するということが明確にされているわけですから、それで、現実にそういうふうに一応バランスはとれているわけですから、そこは8掛けでやるべきではないか。ここは小会社の問題ではなくて、土地をたくさん持っている大会社の希望であるということをちょっとコメントさせていただきます。

○辻山部会長

どうもありがとうございました。

奥田委員どうぞ。

○奥田委員

路線価等の公的評価を使う方法というのは、確かに簡便法ということに即した方法だと思いますけれども、鑑定協会からご指摘させていただきましたように、路線価については基本的に土地の個別的な要因というのは考慮されていないんですね。すなわち、その土地が大規模であったり、極めて小さかったり、あるいは道路づけが悪かったりとか、あるいは不整形であったりというような個別的な要因というのが、なかなか反映できないような価格になっておりますので、もし簡便法を使うのであれば、会計士の先生に判断していただいて、会計上重要性が低いと判断される資産ですとか、何か制限を設けた方がより有益な情報開示という面では望ましいのではないかと思っております。

○辻山部会長

ありがとうございました。

大塚委員どうぞ。

○大塚委員

ちょっと質問させていただきたいんですけれども、適用の実務上の指針なんですけれども、これは一体どこで作るということを想定されているのでしょうか。どの機関で……。

○辻山部会長

この点は、参事官からお答えいただきます。

○細田参事官

この基準ができた後ということになろうと思いますが、今、新しい財団ができましたので、多分そこで作るんではないかと考えております。

○大塚委員

従来、とかく基準と実務指針の間で乖離が見られることがあったので、そういったことがないように、ぜひこの基準の中でできるだけ考え方をよく前文等でお書きいただいて、実務指針というのはあくまでも実務上の適用というところに限るというような、そういうスタンスを明確にしていただきたいということを要望させていただきます。

○辻山部会長

ありがとうございました。

そのほかいかがでしょうか。

都委員どうぞ。

○都委員

土地の評価のための、先ほど来、鑑定というお話も出ておりましたが、ただ企業としては、結構たくさん土地を持っている会社もありますし、この減損会計のためにいろいろな評価のコスト、保有コストが、また新たに相当程度付加されるということについては、ぜひ考慮していただいて、そういったことのないようにしていただきたいと思います。

もともと減損というのは、先ほど兆候のところにもありましたけれども、著しい下落があったというようなこと等、相当程度、ある意味では言葉が適切かどうかわかりませんが、割り切ったところでいろいろな評価をしていくわけですので、そこにある部分で非常に厳密性を求めるというのは、やっぱりねらっていることとの関係で言えば、ちょっと趣旨が違うのではないかと思います。余り過大なコストをかけるべきではないと思いますので。今後、実際、その設計を行っていくところでぜひご配慮をいただきたいと思います。

○辻山部会長

ありがとうございます。

そのほかいかがでしょうか。

逆瀬委員どうぞ。

○逆瀬委員

5ページの適用関係の1の右側のところで、「十分な準備期間を置く」と記載がありますが、この十分というのは、左側のコメントを見たところでは1年ぐらいとなっているんですが、そのぐらいを想定してお書きになっているのかどうかということをお聞きしたいと思います。十分という意味は、そういうことでよろしいんでしょうか。

○辻山部会長

「してはどうか」ということですが、この点いかがでしょうか、事務局の方では。

○細田参事官

では、私から。

十分という抽象的な言葉でありまして、特に、具体的に何かスペシファイする意味ではございません。そういう点を含めて、端的にお答えすれば、1年というのと必ずしもリンクしているという意味でもないということです。

○逆瀬委員

1年では足りないという意味ではないですよね。

○細田参事官

いえ、そういうことではなくて、とにかくここでは抽象的な文言であって、具体的な年限には触れておらないという趣旨でございます。

○品川委員

もう1点よろしいですか。

5番目の中小企業への配慮ですが、中小企業の今の会計慣行は、一応商法と法人税法の規定に従った帳簿処理をやっているわけですよね。それぞれ「公正ナル会計慣行」の商法の解釈はどうするか、あるいは税法上の一般に公正妥当と認められる会計処理の基準という、それに従えと書いてあるものですから、それとの関連でどうするかということで、それぞれの商法、税法の規定の解釈に基づいた会計処理をやっていると思うんですけれども、となると、減損会計が「公正ナル会計慣行」として導入されてくると、中小企業は「公正ナル会計慣行」に従うべきではない、むしろ商法とか税法の解釈の問題になってきて、ここの審議会でどうこうというテーマとは、またペーパーの後ろの方に審議会で議論するテーマでないというご指摘もあるんですが、こちらの方こそ審議するテーマでもないように思えるんですけれども、その辺はいかがでしょうか。

○辻山部会長

この点は、右側の方に「中小企業は対象外と明記するのは難しいのではないか」ということになっておりますので、中小企業も含めてという解釈でございます。

○品川委員

失礼しました。問題点がまさにそのとおりだと思うので、配慮するのはちょっと難しいのではないかと。どうも、ちょっと失礼いたしました。

○辻山部会長

ということは、ここに書かれてあるとおりだというご指摘ですね。わかりました。

そのほか、いかがでしょうか。

適用時期につきまして、産業界等の委員の方々で特にご発言があればこの機会に承りたいと思いますが。

高野委員どうぞ。

○高野委員

ここに書いてあることの繰り返しになりますけれども、一番最初にありますように、意見書とか実務指針、それからQ&Aが明確になってから、やはり適用初年度までは最低1年間ぐらいの準備期間を置いていただけるとありがたいと思います。

○辻山部会長

ありがとうございました。

太田委員どうぞ。

○太田委員

適用時期に関してなんですけれども、ちょっとこれはご参考程度なんですが、先日、ちょうどアメリカで減損会計が適用された直後ぐらいにアメリカに赴任していたという会計士の人の話を、雑談程度なんですけれども、聞きまして、やはりそのときも、監査では、最初の何年かは会社側と相当議論が重ねられたと聞いております。

ですので、減損会計は、基準ができて、実務指針ができて、それが適用になっても、割と実務的にはかなり議論を重ねながら、徐々に浸透していくという側面があるのかなという気がしております。

例えば、そのときによくなされた議論というのが、アメリカの経営者の場合に、この機械とか投資を今自分が保有しているんだから、そんなものが減損しているわけないじゃないかというような反論なんかが相当出たようで、その辺、例えば初年度はその主張を取り入れてそのままにしたとしても、2年度目以降、いろいろ実績が積み上がってきますので、そういうものを踏まえてどの資産について減損を認識すべきかというような、実務的なレベルでの浸透に少し時間がかかったということも聞いております。

○辻山部会長

どうもありがとうございました。

そのほかございませんようでしたら、先に進めさせていただきますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、次の七のその他、それから八、減損会計全般に関する事項等で、ここでは特に経過報告で取り上げられていない事項について、項目を限定していただいてまとめていただいております。この七、八につきましてご意見がありましたら、伺いたいと思います。

よろしくお願いいたします。

どうぞ、品川委員。

○品川委員

税務との調整で、前回、租税研究協会の意見を申し上げたわけですが、そのときに申し上げたのは、確かに会計基準としてそういうことを議論することはできないでしょうけれども、過去昭和20年代から、企業会計審議会では税法との調整意見をずっと何回も出してきたわけで、法律の附則みたいな形で、何かそういうことを税務当局に対して言えないのかどうか。全く税は税、会計は会計で知らないというふうにするというのは、それは今までの企業会計審議会の果たしてきた役割からいって、いささか解せないような気もするんですけれども。

そこで、租税研究協会では、基準に盛り込むとか何とかというのではなくて、実際、そういうことは、これは別に租研だけではなくて、前回、かなりの多くの団体が税務との調整を意見の中に入れていたと思うんですね。それで、減損というのは税法上の所得概念にもマッチする話なんですね、それは所得から控除するということで。そういうことを考えると、全くあずかり知らないというのも、いささか今までの経緯から言っても、第三者から見ると、企業会計審議会の果たす役割が随分変わってしまったねということになりかねない。変わったのなら変わったなりで、もうこういうことはやらないんだということをきちんと説明すべきではないかと思うんですけれども。

○辻山部会長

ありがとうございました。

この点について、会長の方からご発言ありましたら。

○若杉会長

ただいまの品川委員のお話につきましては、かつてまだ日本の会計制度全般が、税法の会計も含めまして、現在のように整備されていない状況のもとで、企業会計原則が当時としましては最も先進的なものとして出現しましたので、商法に対する意見、それから税法に対する意見ということで、ご案内のようなステートメントが出ております。

それは、やはり商法や税法の、端的に言いまして、遅れといいますか、これから経済復興して証券資本制度を中心にして、敗戦国から立ち直っていこうというときに、今までと同じ商法、税法のままではだめだということで、最も新しい基準としてでき上がった企業会計原則の立場から意見を述べ勧告をしているわけです。その後、税法、商法ともに、50年間にわたり、時代の発展に呼応して改正を重ねまして、近代的な商法や税法に発展してきております。そして特に重要なことは、商法が総則第32条第2項において、公正なる会計慣行の斟酌規定を設け、また法人税法は第22条第4項において一般に公正妥当と認められる会計処理の基準への準拠規定を設けたことであります。これによって証取法会計における会計基準と商法および法人税法とが太いパイプで結ばれることになりました。商法における会計関係規定やそれ以外の会計実務も法人税法における別段の定め以外の会計処理もともに一般に認められた会計基準に従うことになります。

ですから、最近ではもう余り税法に対してこうした方がいいんではないかというようなことは、言う必要はなくなっていると考えているんです。商法の場合には、二つの企業会計が違うものを持っていたのでは困るというので、実質的統一化のための努力を払って、経理の一元化を20余年にわたって続けてまいりました。税法については、余りこちらからそのような働きかけをしないでもいいのではないかと、そういう理解があったと思います。

だからといって、もう何にも言わなくてもよいというのではなくて、意見を述べるべきことがあったら言う必要があるかもしれませんけれど。当面、現状では改めてこうしたらいいんではないかという必要はないのではないかと考えております。

○品川委員

今会長のおっしゃったのもよく理解できるんですが、ただし、これは税法の方がむしろかなり会計の理論を無視した租税政策をとっている部分が非常に多いわけですね。平成7年に税制調査会に法人課税小委員会というのができて、まずそのメンバーに会計学者がだれもいない、つまり今までは会計学的なアプローチが非常に重視されていたわけですが。その法人課税小委員会の審議を経た後、相次いで引当金を全部――それまで6項目設けられた引当金については、企業会計との調整を図るために逐次増やしていって、企業会計上認められる負債性引当金を税法上も容認してくる仕組みをとってきたわけですね。

象徴的なのは、引当金を大幅に修正し、今回連結納税を入れるということで、退職給与引当金を全廃するというところまで来ていて、むしろ平成10年以降の税法と企業会計との関係というのは、ものすごく乖離してきているわけで、その場合に実際実務をやっている人は、何でこんなにばらばらにする必要があるのかという、そういう危機感というか、あるいは実務上のいろいろな煩わしさを感じているのて、私は今こそ、何か会長がおっしゃったようではなくて、むしろ会計とか税務とか商法の一つの危機的な状態にあるように思えるんですけれども。

○若杉会長

税法は、ご案内のように我々企業会計とは違った基本的な理念や使命を持っておりますから、その経済政策の一環としての役割については、我々も当然のこととして認めております。独自の社会的、経済的使命を持っている税法が、いろいろな面で、例えば引当金の適用される範囲を減らすということをやる、これは企業の立場からすればいろいろ不満もあろうかと思います。我々企業会計の立場からすると、本来、確定決算基準というものは絶対的なものではありませんから、アメリカ式に企業会計と税法会計とが二本立てであることだって考えられるわけです。そこのところは基本理念や社会的使命を異にする両会計がいつも同じ理論とか同じベースに基づいて実施されなければならないと考える必要はないのではないかと思います。

ですから、おっしゃるように企業会計と税法会計、これが分離してきてしまったから一本化する方向の努力が必要ではないかという点については、私はその必要はないのではないかと考えています。

ただ、当審議会としては我々に課された社会的責任がありますので、これにどういうふうに対応していくかについては、金融庁の方針を反映させていかなければならないと思われます。

○辻山部会長

そのほかございますでしょうか。

どうぞ清水委員、よろしくお願いします。

○清水委員

ちょっと戻ってしまって申しわけないんですけれども、2ページの将来キャッシュ・フローのところで、土地等の考え方が出てきましたけれども、土地の上に例えば建物等の償却資産が建って使用している場合に、土地の見積もり期間を主要な資産の耐用年数で一たん考えるというのは合理的だと思うんですけれども、その場合に土地のターミナルバリューをどう考えるかということを、ある程度指し示しておかないと、実務的にはどうなのかという疑問が出てくるのではないかなと思います。

例えば、将来のお金は割り引いてくるわけですけれども、そうだとすると逆に言えば、今の資産は減価しない資産は上がっていくという考え方だってなきにしもあらずで。今みたいな状況ですから、土地はそうは上がらないだろうとか、下がるだろうとかと考えてしまいますけれども、10年以上前でしたら逆だったわけで。そういうことから考えると、やはり土地のターミナルバリューの考え方を何らかの形で示さないと、ちょっと混乱するのではないかなという気がいたします。

○辻山部会長

どうもありがとうございました。

そのほかにご指摘ございますでしょうか。

それでは、最後の七、その他以降につきまして、特に再評価を行った土地、再評価益の取崩し額の会計上の表示等につきまして、まだご意見を承っていない状況でございますが、予定の時刻が参りました。この問題は引き続き議論を続けさせていただきたいと思います。

次回でございますが、本日残された七以降の問題を引き続き審議する予定でございます。

次回は本日残された点、さらに本日議論尽くされなかった点につきまして、公開草案の策定に向けてさらに方向性を集約させてまいりたいと思っております。

なお、私ごとで大変恐縮ですけれども、次回以降、海外出張のため何回か欠席することがあると思います。その場合には、部会長代理の中島委員に進行役をお願いしたいと思います。中島委員には大変申しわけありませんが、よろしくお願いいたします。

また、次回以降、さらに問題点を整理した上で、公開草案の策定に向けて項目や文章を作っていく必要があります。これはかなりの作業量になることが想定されますので、中島部会長代理のほか、数名の方に検討のための資料を作成していただきたいと思います。その委員として、小宮山委員、川村委員、逆瀬委員にご協力をいただきたいと思います。

なお、秋葉委員並びに荒木委員にも、補助者としてお手伝いいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

最後に、次回の当部会の日程でございますが、11月9日金曜日の午後4時からを予定しておりますので、よろしくお願い申し上げます。正式には、改めて事務局から皆様方にご連絡をさせていただきたいと思います。

本日は皆様方には大変お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。

これにて散会とさせていただきます。

サイトマップ

ページの先頭に戻る