平成14年10月2日
金融庁

企業会計審議会総会議事録について

企業会計審議会総会(平成14年8月9日(金)開催)の議事録は、別紙のとおり。

(問い合わせ・連絡先)

金融庁(TEL 03-3506-6000)
総務企画局企業開示参事官室
企業会計審議会事務局


企業会計審議会総会議事録

日時:平成14年8月9日(金)午後2時00分~午後3時00分

場所:金融庁9階特別会議室

○斎藤第一部会長

それでは、定刻でございますので、ただいまから企業会計審議会総会を開催いたします。

委員の皆様方には、ご多忙のところ、かつまた炎暑の中をご参集いただきましてまことにありがとうございます。

本日は、若杉会長が海外出張のため、私が代理として議事進行役を務めさせていただきます。

議事に入ります前に、前回の総会以後の委員等の異動につきましてご報告いたします。

まず、平成14年6月13日付で角田博臨時委員が退任され、後任として遠藤博志氏が臨時委員に就任されておられます。

また、平成14年7月30日付で大塚宗春委員が退任され、後任として加古宜士氏が委員に就任されておられます。

さらに、同じく7月30日付で始関正光幹事が退任され、後任として相澤哲氏が幹事に就任されておられます。本日はご欠席でございます。

次に、事務局も7月に異動があったと伺っております。せっかくの機会でありますので、本日ご出席いただいております金融庁の方をご紹介いただきたいと思います。

羽藤参事官から紹介いたしますので、立礼をお願いいたします。

○羽藤参事官

金融庁長官の高木でございます。

総務企画局長の藤原でございます。

審議官の三國谷でございます。

審議官の大久保でございます。

そして、私、本審議会の事務局を務めさせていただきます企業開示参事官の羽藤でございます。どうぞよろしくお願いをいたします。

○斎藤第一部会長

それでは、本日の議事に入ります。

本日は、まず平成11年10月から審議を行っておりました「固定資産の会計処理について」に関しまして、固定資産部会におきまして、「固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書」について成案がまとめられましたので、ご審議の上、ご承認いただければと思います。

初めに、意見書案につきまして、固定資産部会の辻山部会長からご説明いただければと思います。

○辻山固定資産部会長

辻山でございます。

それでは、「固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書案」についてご説明申し上げます。お手元の資料1の案というスタンプが押してある冊子に基づいてご説明をさせていただきます。

まず初めに、審議の経過についてでございますが、減損会計を含む固定資産の会計処理に関する検討は、平成11年12月から第一部会、平成12年9月からは固定資産部会において行われました。第一部会では8回、固定資産部会では25回の審議を行っております。

その間、第一部会における審議のまとめといたしまして、平成12年6月に「論点整理」を公表いたしました。さらに、固定資産部会に審議の場が移りましてからは、平成13年7月に「経過報告」、平成14年4月に「公開草案」を公表いたしました。公開草案に対しましては、各界からご意見をいただきましたが、草案の趣旨に賛成の意見が多かったことから、公開草案の考え方や基準の骨格は修正しておりません。その上で、主に文章表現に関してより論旨が明確になるように修正をいたしました。また、基準や前文の項目の順序や項目立てについても、一部見直しして修正し成案を得たところでございます。

今般の固定資産の会計処理に関する審議におきましては、第一部会で減損処理に関する基準の整備が最優先の課題とされ、また投資不動産についても、国際会計基準への対応という観点から検討が必要であるとされたことから、減損会計と投資不動産が中心的な論点となりました。意見書案については、この2つの論点が論じられております。

以下、お手元の冊子に従ってご説明をしたいと思います。

まず、意見書案の「経緯」でございますが、ここではただいまご紹介したような審議経過をまとめております。

2ページに参りまして、「会計基準の整備の必要性」、さらに3ページでは、「基本的な考え方」についても触れております。この基本的な考え方は、平成12年6月の論点整理において示された考え方をほぼ踏襲しております。

次に、減損会計の基準に関する内容についてご説明いたします。冊子では5ページになりますのでお開きいただきたいと思います。

まず、減損会計の対象資産でございますが、固定資産に分類される資産を対象資産としまして、他の基準に減損処理に関する定めがある資産については対象資産から除くこととしております。具体的には、金融資産、繰延税金資産、前払年金費用などが除かれることになります。

次に、本基準案の中心となる部分でございますが、減損損失の認識と測定についてご説明いたします。

まず、対象資産について減損が生じている可能性を示す事象、減損の兆候でございますが、これがある場合には、減損損失を認識するかどうかの判定を行うこととしております。減損の兆候につきましては、基準及び注解において、資産が使われている営業活動から生じる損益やキャッシュ・フローが継続してマイナスとなっていること。事業の廃止や再編成、経営環境の悪化、資産の市場価格の著しい下落などが例示されております。

次に、5ページの下でございますが、減損損失を認識するかどうかの判定、兆候がある資産について、減損損失を認識するかどうかの判定を行いますが、これは資産が生み出す割引前将来キャッシュ・フローの総額と資産の帳簿価額を比較することによって行います。割引前の将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回るときには、減損損失を認識することになります。

この割引前の将来キャッシュ・フローにつきましては、6ページのマル2マル3で書かれておりますけれども、見積り期間を決めております。具体的には資産グループの中の主要な資産の経済的残存使用年数と20年のいずれか短い方としてございます。6ページのマル3に書かれておりますように、経済的残存使用年数が20年を超える場合には、20年経過時点の回収可能価額をこれに加算することとなります。

7ページに移りまして、減損損失を認識すべきであると判定された資産につきましては、帳簿価額を回収可能価額まで減額いたします。減少額は減損損失として当期の損失となります。この回収可能価額ですが、本基準案におきましては、注解1で定義が示されております。正味売却価額と使用価値のいずれか高い方というような定義が行われております。正味売却価額は、資産の時価から処分費用を控除した金額、使用価値は資産の継続的使用と使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャッシュ・フローの現在価値というように、それぞれ定義してございます。このうち高い方が回収可能価額となります。

このように、減損損失を認識するかどうかの判定及び使用価値の算定におきましては、将来キャッシュ・フローの見積りが必要となります。そのことに触れておりますのが7ページの一番下の方の(4)でございます。

まず、見積りに際しまして、原則的な考え方として、企業に固有の事情を反映した合理的で説明可能な仮定及び予測に基づくこととしております。また、現時点における資産の回収可能性を反映させるという観点から、現在の使用状況や合理的な使用計画等を考慮するとしております。さらに、見積金額といたしまして、生起する可能性の最も高い単一の金額、最頻値でございますが、それと、生起し得る複数の将来キャッシュ・フローをそれぞれの確率で加重平均した金額、期待値のいずれかをとること。さらに、利息の支払額、法人税の支払額、還付額を含めないことなどを定めております。

次に、使用価値の算定に際しては割引率が用いられることになりますが、これは9ページの(5)で示されておりますとおり、貨幣の時間価値と将来キャッシュ・フローがその見積値から乖離するリスクを反映した割引率とする方法と、そのようなリスクについては、将来キャッシュ・フローの見積りに反映させた上で、割引率は無リスクの割引率とする方法のいずれも認めております。

10ページに参りまして、固定資産の場合、複数の資産が一体となって独立したキャッシュ・フローを生み出すような場合がほとんどであると思いますけれども、そのような場合には合理的な範囲で資産のグルーピングを行う必要がございます。その際は、他の資産または資産グループからおおむね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位でグルーピングを行うことを定めております。

本社ビル、研究所等の共用資産については、原則として共用資産が関連する複数の資産または資産グループに共用資産を加えたより大きな単位でグルーピングすることとしております。そのことが11ページ、共用資産の取扱いで定められております。

ただし、このような共用資産の帳簿価額を関連する資産または資産グループに合理的な基準で配分することができる場合には、配分した上で減損損失の認識測定を行うこともできるとしてございます。

次に、本基準の対象資産にはのれんも含まれますが、12ページに参りまして、そののれんにつきましては、のれんが認識された取引において、複数の事業を取得した場合には、その帳簿価額を事業の単位に応じて合理的な基準で配分することとしてございます。

そして、分割されたそれぞれののれんについては、共用資産と同様に、原則としてのれんが関連する複数の資産グループにのれんを加えたより大きな単位でグルーピングを行います。ただし、のれんの帳簿価額を関連する資産グループに合理的な基準で配分することができる場合には、配分した上で減損損失の認識測定を行うこともできるとしております。

なお、現在、当審議会の第一部会で企業結合会計を審議しておりますので、のれんの減損処理については第一部会において別途の検討を行う必要性が生じることをこの前文で触れております。それが14ページのマル5のところでございます。

以上、減損損失の認識と測定に関して簡単ではございますが、ご説明をいたしました。

次に、意見書案では、減損損失後の会計処理について触れております。15ページでございます。

減損損失を行った資産については、減損損失を控除した帳簿価額に基づき減価償却を行うこと。また、減損損失の戻入れは行わないことを定めております。

このほか、財務諸表における開示、ファイナンス・リース取引の取扱いについても規定しております。

16ページでございますが、以上ご説明しました減損会計の基準の実施時期については、平成17年4月1日以後開始する事業年度、2005年度からでございますが、実施するよう措置することが適当であるとしております。また、平成16年4月1日以後開始する事業年度についても任意適用を認めております。

さらに、その1年前でございますが、平成16年3月31日から平成17年3月30日までに終了する事業年度に係る財務諸表及び連結財務諸表についても、これは年度決算でございますが、適用できることができるものとしております。

最後に、もう一つの論点として、冒頭でご説明させていただきました投資不動産についてご説明させていただきます。

17ページでございますが、まず投資不動産の会計処理につきましては、国際会計基準では、原価モデルと時価モデルのいずれかを選択することになっておりますが、取得原価基準による会計処理を継続すべきであるというのが今回の結論でございます。したがいまして、投資不動産につきましても、他の有形固定資産と同様に、本基準による減損会計が適用されることになります。

また、投資不動産の時価情報注記についても検討いたしましたが、国際会計基準に準じて注記すべきであるという意見と注記は必要ないという意見の両論がございました。今回は結論は出さずに今後の課題としております。

以上、意見書案について簡単にご説明させていただきました。

○斎藤第一部会長

ありがとうございました。

それでは、ご質問、あるいは今後のご要望等でも結構でございますので、ご自由にご発言をいただきたいと存じます。

特にご発言ないでしょうか。

山田委員、どうぞ。

○山田委員

すみません。18ページの最後にあります投資不動産の注記の末尾に、「要点を示すに止め、今後の課題とすることとした」というくだりがございますが、この点についてご質問したいんですが、現在、国際会計基準審議会の方で議論しております点としては、この投資不動産の会計基準は、できた時期が近いこともあって、当面の間見直しはしないということなんですが、基本的には数年たった時点で、投資不動産の現在の原価モデルと、それから公正価値モデルについて、今の両論併記を見直そうという予定がございます。ここで言われている今後の課題とするというのは、そういう時期を見定めて、そういう国際的な動きと連動して対応するということでございましょうか。

○斎藤第一部会長

それでは、辻山部会長からどうぞ。

○辻山固定資産部会長

具体的には、国際会計基準を念頭に置いて今後の課題とするという、そういう時期を見定めたという表現ではございません。ただ、今後、引き続きそういった国際的な動きに対応して見直すこともあり得るという、その程度の表現でございます。

○斎藤第一部会長

よろしゅうございましょうか。

ほかにご発言ございませんか。

安藤委員、どうぞ。

○安藤委員

これは、確認なのですが、3ページあたりに関係するかと思いますが、企業会計原則との関係、例えば、金融商品会計基準の場合には、企業会計原則には紹介してあるけれども、当基準が優先して適用されるという一つのくだりがあるんです。減損会計の場合には、これは企業会計原則は抵触しないという前提で書かれていると読みましたが、それでよろしいでしょうか。

○斎藤第一部会長

辻山部会長お願いします。

○辻山固定資産部会長

特に金融商品のように、大きく評価について企業会計原則と抵触するようなところはないというような認識でございますが、明確にその点を確認された上でこういう表現になっているというわけでもございません。特に抵触しないという解釈だと思います。

○斎藤第一部会長

よろしゅうございますか。

○辻山固定資産部会長

追加的に、どなたか、固定資産部会の委員の方で、この点についてご発言があればお願いしたいと思います。

○斎藤第一部会長

関連してご発言ございますか。

特にご発言なしということでよろしゅうございますか。

それでは、ほかに。

しばらく沈黙が続きますと衆議一決ということになりますが、よろしゅうございましょうか。

それでは、特にご発言がないようでございますので、本案をご承認いただくということでよろしゅうございましょうか。

〔「異議なし」と言う声あり〕

○ 斎藤第一部会長

ご異議なしとお認めいたします。

それでは、ご承認いただいたということで、お手元の意見書案の「案」をとっていただければと思います。

○斎藤第一部会長

それでは、柳澤大臣がお見えになりましたので、ただいまご承認いただきました「固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書」を大臣にお渡しして、ごあいさつをいただきたいと思います。

それでは、企業会計審議会総会におきまして、この固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書を取りまとめましたので、ご報告申し上げます。よろしくお願いいたします。

○柳澤金融担当大臣

どうも大変ご苦労さまでございました。またありがとうございました。皆さんどうもありがとうございました。

柳澤でございます。

ただいま金融担当大臣を仰せつかっておりますが、企業会計審議会の総会の開催に当たりまして、一言ごあいさつを申し上げさせていただきます。

企業会計制度やディスクロージャー制度は、申すまでもございませんが、投資家の自己責任原則に基づき、公正・透明な市場を構築していくための基盤となる重要なインフラであると、こういう認識をいたしております。適正なディスクロージャーを担保するためには、財務諸表の作成の規範である会計基準が十分に整備されているということが不可欠でございます。

ここ数年の間に、国際的な動向も踏まえまして、数多くの会計基準が整備されてまいっておりますが、本日は、当審議会におきまして、今、斎藤部会長の仰せられましたとおり、「固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書」をお取りまとめいただいたところでございます。これによりまして、固定資産の減損に係る会計基準が設定されることになりまして、この分野におきましても、国際的な水準と遜色のない会計基準が整備されるものと認識をいたしております。

財務諸表の信頼性を確保することは、投資家保護の観点から極めて重要な課題でございます。今回の固定資産の減損に係る会計基準の整備によりまして、財務諸表の信頼性が一層高まることは大きな意義があることだと、このように考えております。

これまで、先生方には精力的にご審議をしていただいているわけでございまして、委員の先生方にはこの場をおかりして、改めて厚く御礼を申し上げるところでございます。

当審議会では、現在、企業結合会計に関する会計基準や中間監査の基準などの課題にも鋭意取り組んでいただいておるところでございますが、企業会計の分野に高い見識を有しておられる委員の先生方におかれましても、今後とも、こうした面におきまして格段のご協力をお願いするところでございます。

非常に卒爾でございますけれども、以上、一言ごあいさつとさせていただきます。

どうも本当にありがとうございました。

○斎藤第一部会長

大変ありがとうございました。

柳澤大臣には、この後、ご都合があるとのことでございますので、ここでご退席なさいます。

○柳澤金融担当大臣

恐縮でございます。どうもありがとうございました。よろしくお願いいたします。

次に、この機会に各部会の審議状況及びその他の企業会計に関する内外の動向につきまして、ご報告をしたいと思います。

初めに、第一部会の審議状況について、私から、第一部会長としてご報告させていただきます。

第一部会では、一昨年の9月に企業結合会計についての審議を開始し、昨年7月に検討すべき課題を論点整理として取りまとめて公表いたしました。

この論点整理の概要につきましては、前回、この場でご報告いたしましたので、ここでは省略させていただきます。

その後、昨年9月より、論点整理に対して各界から寄せられましたご意見を踏まえまして、審議を再開いたしました。再開後は、論点整理の中では、企業結合の会計処理方法であるプーリング法とパーチェス法のそれぞれについて複数の論点を提示しておりましたので、それらについてさらに検討する作業を行ってきたところであります。

プーリング法というのは資産・負債を簿価で引き継ぐ方法であり、パーチェス法は、時価に評価替えする方法であると一般には簡単に理解されているようでありますけれども、パーチェス法だけにつきましても、例えば、のれんの額をどのように決定するかなど、議論の少なくない論点が複数ございまして、何回か部会を開催して審議を行ってきたところであります。これらにつきましては、検討が一巡した段階にあります。

また、審議の参考にするために、複数の企業の実際の担当者の方をお招きして、企業結合の事例についてのヒアリングも実施したところであります。

ところで、最近の国際的な企業結合会計の動向を見ておりますと、プーリング法を廃止して、会計処理方法をパーチェス法に一元化し、かつ、のれんの規則的な償却を廃止して、減損処理だけにすると、そういう方向が強まってきております。ちなみに、アメリカでは、このような内容の基準が昨年成立しております。また、国際会計基準につきましても、現在の基準をこのような内容に改定する公開草案の作成作業が進められていると聞いております。 第一部会におきましては、このような国際的な動向についても審議の参考にするため、適宜ご報告を受ける形で進めております。

現状では、このような国際的な動向についてどう考えるのか、また、今後どのような方向で議論を集約していくかと、そういった重要な課題について検討を開始した段階にありますので、さらに各委員のご協力をいただいて、公開草案の取りまとめに向けて着実に作業を進めていきたいと考えております。

簡単ではございますけれども、第一部会の審議状況につきましては、以上のとおりでございます。

次に、第二部会の審議状況について、脇田部会長からご説明をお願いいたします。

○脇田第二部会長

第二部会長の脇田でございます。

それでは、第二部会の審議状況につきまして、ご報告させていただきます。

第二部会では、本年1月に開催いたしました総会におきまして、「監査基準の改訂に関する意見書」を取りまとめ、公表いたしました。その後、引き続き、本年2月から中間監査基準の改訂につきまして審議を進めているところでございます。

第二部会では、中間監査基準につきまして、これまで7回の部会を開催し、監査基準の改訂に伴い必要となる事項を中心に改訂を行うとの趣旨で検討を行ってまいりました。

資料2をごらんいただきたいと思います。

既に、議事録も公表されておりますので、審議内容の詳細は省かせていただきますが、基本的に、中間監査の位置づけは現行の考え方を踏襲することといたしました。その上で、監査基準の改訂内容との平仄を踏まえ、中間監査においても、監査の実施におけるリスク・アプローチの明確化、継続企業の前提に関する対応の導入、中間監査報告書の記載要件の見直しなどを行う方向で改訂案の検討を行ってまいりました。

その結果、7月4日に開催されました部会におきまして、委員の方々のご意見が集約され、文言の修正などにつきましては私にご一任いただくこととされました。その後、私の責任で公開草案の形に整えさせていたたき、本日、お手元に配付させていただいております。

本日の総会終了後に「中間監査基準の改訂に関する意見書(公開草案)」として公表し、各界からの意見を求めることといたしたいと思います。一応9月13日までにご意見をいただくこととしたいと思っております。

以上でございます。

○斎藤第一部会長

ありがとうございました。

それでは、引き続いて、国際会計基準審議会の動向につきまして、事務局からご説明をいただきたいと思います。

○羽藤参事官

それでは、お手元の資料3に基づきまして、国際会計基準審議会の動向についての今の状況をご説明を申し上げます。

前回の総会でもご紹介をさせていただきましたけれども、昨年、国際会計基準審議会の組織改正が行われておりまして、この4月から新しい国際会計基準審議会ということでの活動が動いております。

当初、この3つのカテゴリーで9つのプロジェクトが予定され動いておりましたものが、現時点では、お手元に配らさせていただいておりますように、まず冒頭の上の2つでございますけれども、現行の国際財務報告基準の改訂、これにつきましては、5月に公開草案が発表されておりまして、2003年の第1四半期に国際財務報告基準という形での作業がテーブルされております。

それから、IAS39の金融商品の認識及び測定の見直しということで、これにつきましても、6月に発表済みということになっておりまして、このように既存の国際財務報告基準の改訂を目的としたプロジェクト、まず1つのカテゴリーが着実に動いておるということであります。

それから、もう一つのカテゴリーである国際財務報告基準の適用を目的としたプロジェクトで、ここにもございます3番目と4番目の2つでございますけれども、これにつきましても、国際財務報告基準の適用初年度に関するガイダンスについては、この7月に公開草案が発表されており、2003年の第2四半期に向けての作業が進んでいくという段取りになっております。また金融機関の活動についての開示及び表示、これにつきましては、2003年の第1四半期に草案が発表されるという方向で今進んでおります。

このように、2つ目のカテゴリーである国際財務報告基準の適用を目的としたプロジェクト、そして、もう一つのカテゴリーとして、統合化の促進を目的としたプロジェクト、ここでその企業結合、第1段階とありますけれども、また株式報酬制度の改訂、業績報告、それから企業結合についてのパーチェス法の適用について、保険会計の第1段階、これらについてそれぞれここに示されているような予定で活動が行われているところであります。

さらに加えまして、この保険会計の第2段階、収益、負債及び資本にする概念、連結及び特別目的事業体、それから国際財務報告基準と各国会計基準の収斂についてということで、これらについてはこれから日程が定められるということでありますけれども、新たに追加をされた形で動いております。こういう形で国際会計基準審議会での活動が着実に展開をしておるということでございます。

以上が、資料の3の国際会計基準についてでありますけれども、あわせて、国際的な監査の状況につきましても、資料の4でご報告をさせていただきたいと思います。

国際会計士連盟(IFAC)のもとでの国際監査基準につきましても、前回のこの総会の場でご報告をさせていただきましたけれども、組織の改正が行われ、組織強化という方向で検討が行われておりましたところ、この3月ですけれども、この表の一番下の左から2番目の箱にございます国際監査実務委員会(IAPC)これが国際監査・保証基準審議会(IAASB)という形で再編され、発足をいたしております。

この組織の構成でございますけれども、ここに書いてございますように、18名の委員からなっておりまして、それぞれ委員の構成につきましても、3名が監査人以外の学界・財務諸表利用者、公共部門の方々、それから5名がTACの推薦に基づく大手会計事務所のメンバー、そして10名が、それぞれリエゾンの役割を担う各国の職業会計士団体のメンバーというような形で組織の構成が既に成り立っております。そして、この活動目的は、このリエゾン国設定主体と協力をして、基準の統合を推進するということでございます。

あわせて、第三者的機関として、国際会計士連盟のこの機構の改革(案)という真ん中にあります公的監視委員会(POB)が品質管理レビューの内容についての助言、監督を行うという機能を担う、そういう機構を設立する構想でございますけれども、その後の、いわゆるエンロン事件などを踏まえまして、アメリカにおける一連の動きを受けて、国際的な議論の動向を見きわめるというような状況になっていると承知をしておりまして、現在、組織のあり方については、さらに再検討が行われているという状況にあるというように承知しております。

以上、国際会計基準、それから監査をめぐる国際的な状況についてのご紹介をさせていただきました。

○斎藤第一部会長

ありがとうございました。

それでは、せっかくの機会でございますので、ただいまの説明につきましてご質問などがございましたらご発言いただきたいと思います。

特にご発言ないでしょうか。

安藤委員、どうぞ。

○安藤委員

この資料4、私、初めて拝見するんですが、変更するのはいつからかということとと、それから日本はどういうもくろみというか、何か情報があればお聞きしたいんですけれども。

○羽藤参事官

これは、この3月に国際監査実務委員会がIAASBに変更したというようにまず聞いております。

それから、全体につきましては、先ほども申しましたように、アメリカの動向などを踏まえまして、組織のあり方についての再検討というのが今も続いておるというように承知をしております。

我が国といたしましても、このような国際的な動向を踏まえまして、監査のあり方、この監査の監視機関のあり方等々については、こういう国際的な動向の中で現行制度などについての見直しなどを適切に行っていくのも必要だろうというように思っております。

○斎藤第一部会長

よろしゅうございましょうか。

どうぞ、伊藤委員。

○伊藤委員

それに関連してなんですけれども、この国際監査実務委員会(IAPC)は、どちらかというと民間をベースとしたものですね。最近の新聞紙上で、SECというか、新しいそういった機構をアメリカが検討しておるとも聞いておりますが、そういったものとの関連性というのはあるんですか、全くこれは独自のものと考えてよろしいんですか。もしおわかりであれば教えていただきたい。

○羽藤参事官

このIAPCの中において、具体的に、今のアメリカの動向を踏まえた議論がどのような状況になっているのかという点については、まだ詳細については認識をしておりませんけれども、基本的に今おっしゃられましたように、民間の団体でご議論をなさっていることだろうというように思います。ただ、ご指摘のとおり、アメリカでの動きは明らかに非常に公的な色彩での監視体制を強化するというような動きであるというようにも認識をしておりますので、そういった議論が、このIAPCの中においてどのような議論として影響してくるのかという点についても注意深く注視していこうというように思っております。

○斎藤第一部会長

よろしゅうございましょうか。

ほかにご発言ないでしょうか。

辻山委員、どうぞ。

○辻山固定資産部会長

同じく資料4でございますが、リエゾン国というのは、具体的にはどういう国が挙がっているのか、もしわかりましたらお教えいただきたいと思います。

○羽藤参事官

これは私の手元にあります資料では、ブラジル、中国、フランス、ドイツ、イタリア、日本、オランダ、南アフリカ、アメリカ、イギリスというようにございまして、恐らくそういうようなことだと思いますけれども。

○辻山固定資産部会長

ここにございます整備された監査基準設定プロセスを有する国がそれらの国という理解でよろしいんでしょうか。

○羽藤参事官

整備された監査基準設定プロセスを有する国として、このIAPCの中での議論の結果として、そういう国々の方々が選ばれているんだなというように私も認識をしております。

○斎藤第一部会長

よろしゅうございますか。

○辻山固定資産部会長

ありがとうございました。

○斎藤第一部会長

ほかには。

よろしゅうございましょうか。

伊藤委員、どうぞ。

○伊藤委員

私ばかりしゃべって申しわけないんですが、先ほど来、第二部会の脇田部会長からお話等もございましたんですが、この中間監査基準の公開草案の後、どのようなスケジュールをお考えなのか、それが一つと、もう一つは、今は産業界とか経済会では、先般金融庁の方とそれから東京証券取引所の方との話を、きょう遠藤さんがお見えになっていますが、遠藤さんからお話があろうかと思っていたんですがないので、私が申し上げるのも変なんですが、その前に出ておりましたんですが、四半期の開示の問題も出ておりまして、そういったことはどのように考えておられるのか。いやこれは全く関係ない話として考えおるのか、そのあたりのところをもしわかれば教えていただきたい。

○脇田第二部会長

今、2つのご質問でございましたので、第1の点につきましては、9月13日まで、この公開草案についてご意見を求めるということになっております。その後、9月中にでも部会を開くなりいたしまして、基準の設定に関する審議を再開する予定にしております。

後者につきましては、参事官からご説明いただけるとありがたいと思います。

○羽藤参事官

四半期開示につきましては、ここでご議論いただいている中間監査基準とは、これは直接関係しないというように考えております。

東京証券取引所において上場会社の基準、上場会社に関して四半期開示について検討が行われていると承知しております。また、それに対して今もお話がございましたように、経済界、経団連の方々を初めとして、いろいろな意見があるというようにも承知をしておりますけれども、基本的には、適切にタイムリーに開示をしていただくということが望ましいということが基本でもございますので、そういう中で具体的な開示の運営のあり方につきましては、引き続き各界の意見も踏まえていただいて、取引所において、具体的な運営について決めていただけるものだというように思っております。

○斎藤第一部会長

よろしゅうございましょうか。

遠藤委員、ご指名がございましたけれども、どうなさいますか。

○遠藤委員

第二部会の方でもう既に発言をしておりましたので、きょうは控えていようと思ったんですが、せっかくの機会ですので。

今、タイムリーディスクロージャーの観点から、四半期開示が求められるというお話があったんですけれども、タイムリーディスクロージャーの必要性はわかるんですけれども、何らの基準もなくて出していいものかどうかということについて我々は大きな疑問を持っておりまして、やるのであればしっかりした基準、会計の基準、あるいは監査法人の関与の基準、それを明確にした上でやっていただきたいというのが我々のスタンスでございまして、四半期報告はやりたくないという意味ではなくて、やるからにはきちんとした基準を早期に設定してほしいと、タイムリーディスクロージャーでも何でもいいから早目に出してほしいというのでは余りにも無責任ではないかというのが私どものスタンスでございまして、その点について十分ご理解いただければと思っております。

以上でございます。

○斎藤第一部会長

ありがとうございました。

ほかにご発言ございませんでしょうか。

奥山委員、どうぞ。

○奥山委員

ただいまの四半期報告の件ですけれども、私ども大変重要な関心を持っておりまして、今遠藤さんがおっしゃったように、監査上もどう対応していくかということについては、それなりのきっちりした考え方を示さないと機能しないだろうというように思っておりますので、この辺は今後東証さん、あるいは経団連さん、いろいろとご相談をさせていただきたいというふうに思っております。

○斎藤第一部会長

ありがとうございました。

ほかにはよろしゅうございますか。

奥山委員、どうぞ。

○奥山委員

やはり言うのはやめようと思っていたんですけれども、1つだけ確認させてください。

この場が適当かどうかわかりませんけれども、業績報告をIASBで議論をして、相当程度詰まってきているような話も聞いているんですが、これについて、私どもとしては、若干聞く限りではいろいろな問題点が相当あるなという理解をしているんですけれども、これはASBなり、あるいは金融庁なり、それについての何らかの対応策、あるいは検討しているということで理解してよろしいんでしょうか。

○斎藤第一部会長

参事官からどうぞ、お願いいたします。

○羽藤参事官

その点につきましても、具体的な内容をどういうタイミングでどこまで決めていくのかということで、これは勉強なりをしておるわけでございまして、いずれにしましても、国内との関係においては適切な場でご議論をいただいて、これから検討を深めていただくということで、我々も繰り返しになるんですけれども、こういう国際的な動向をよく注意深くフォローしてまいりたいというように思っております。

○斎藤第一部会長

ASBというご発言があったのですが、私は司会役ですので、西川副委員長がおられますので、西川委員からお願いいたします。

○西川委員

ASBとしては、国内のプロジェクトとして業績のプロジェクトというのを取り上げていますけれども、それは中長期的なテーマということで、辻山先生がリードしているわけですけれども、そういう中で、IASBの業績報告がどんどん先に進んでいくと、特にボトムラインが包括利益になって、現在の当期純利益が飛んで行くような内容ということで非常に問題があるのではないかということで、ASBの委員である辻山先生の名前でIASBに対して、それから各国の会計基準設定主体に対して、非常に問題点を指摘していたコメントを出したというところでございます。

このほかに、またリエゾン国会議という機会がございますので、あるいはSACという機会もありますので、引き続き問題点について日本の意見を繰り返し主張していくというようなことを考えております。

○斎藤第一部会長

よろしゅうございましょうか。

ほかにご発言ございましょうか。

加古委員、どうぞ。

○加古委員

業績報告という非常に重要な課題がテーマに上ってくるわけですけれども、言葉じりをとらえるわけではありませんが、西川副委員長に、日本の考え方を繰り返し国際的にも発言していきたいというお話があったんですが、それは、日本としてはIASBなどの方向性についてやや批判的であるというようなことが根底にあるんでしょうか。こういう話は審議会の場に適するかどうか知りませんけれども、もしお答えできるようでしたらお聞かせいただきたいと思います。

○斎藤第一部会長

西川委員、どうぞ。

○西川委員

基本的には、IASBの新しい業績報告、開示の基準というように位置づけられておりますけれども、現実には、その基準ができ上がると実際の会計処理にも相当影響が出てくるのではないかということで、非常に基準との関係というのも明らかでない部分が多いということもあって、非常にわかりづらいということもあるんですけれども、批判的ということが当たっているかどうかわかりませんけれども、非常に注意して見ないといけないなということで考えております。

○斎藤第一部会長

よろしゅうございますか。

○加古委員

ありがとうございました。

○斎藤第一部会長

ほかに。

山田委員、どうぞ。

○山田委員

先ほどから業績報告プロジェクトについての議論が出ておりますので、IASBとして日本の懸念についてどのように考えているかについて、私の知る限りで若干ご報告させていただきたいと思います。

先月開かれましたIASBの会議の場において、その直前に日本の、先ほど西川副委員長の方からお話がありましたように、辻山先生の名前で出ましたレターについては、全ボードメンバーに配られております。ただ、会議は最終日にこのプロジェクトの検討が行われた関係がありまして、時間の関係があって、日本のレターそのものを全体で議論するということは、そこまで時間はございませんでしたが、日本がこのプロジェクトに非常に関心を寄せていること、それから日本の考えている懸念ということを、日本が大きな懸念を持っているということを一応ボードのメンバーは理解しております。ただ、その日本の考え方に賛同するかどうかという点については、数人のボードメンバーといろいろ意見交換をしてきましたけれども、必ずしも皆さんが日本の考え方と同じ考え方を持っているというわけにはいかないという印象を持っておりますけれども、日本の懸念、それから日本が考えているような特に当期利益という概念がなくなってしまうということに対する懸念については、十分ボードメンバーの中で理解が進んでいるものと理解しております。

○斎藤第一部会長

ほかにご発言ございますか。

伊藤委員、どうぞ。

○伊藤委員

せっかく長官もいらっしゃることですから少し視点の違うご質問というか、ご意見を拝聴したいと思っているんですが、今、アメリカで企業会計の不信をベースにいたしました資本市場に対するある種の手直しとか、あるいはSECの抜本的な見直しとか、経営者の署名とかいろいろなことが起こっておりますが、翻って日本の-私、経済界に身を置く者の一人ですけれども、基本的にはこういう問題というのはやはり経営トップの倫理感と使命感というのがベースにあるというように思います。しかしながら、やはり先ほどの柳澤大臣の話のように、会計というのは国のインフラの極めて重要部分を占めるということも事実でございますので、企業会計だけでこの問題を解決するわけにはいかないと思いますけれども、もちろんコーポレートガバナンスの問題とか、企業会計の問題とか、あるいは監査も含めて対応を国としてSECみたいなものをどうやってやっていくかとか、いろいろなことがあろうかと思うのでございますが、金融庁としては現段階において、こういうエンロンの問題を踏まえて、日本として何か今後強力にてこ入れをしなければならないというようにお考えでいらっしゃるかどうか、長官の話をお伺いいたしたいというように思っています。

○高木長官

いずれにしてもアメリカの事件も踏まえながら、広く勉強をしたいと思っております。それで、先週の金曜日に公表した証券市場の構造改革の中にもそういう気持ちを込めて書いてあります。ただ、SEC云々の話については、これは、あの中にも入っているんですけれども、SECの機能を強化する必要があるというように思って内容的には入っております。ただ、これまで、昔からの業態別の管理が国際的にもそうであって、そういう縦割りになっている状況になってきたわけです。それで、日本の場合は、いろいろ不幸な事件もあって、それをがらっと見直して基本的に機能別な組織になっているんです。ですから、この機能別の金融について横断的、機能的に見なければならない時代になっているわけで、この基本は維持しながら、その中でどういったことができるか、それも広く検討したいというように思っております。

○伊藤委員

どうもありがとうございました。

○斎藤第一部会長

よろしゅうございますか。

ちょうど長官にご発言をいただいたところでおおむね予定した時間が参りましたので、特にぜひともこの機会に一言というご希望がなければ、これで議事を終了させていただきたいと思います。よろしゅうございましょうか。

それでは、委員の皆様方には、お忙しいところをご参集いただきまして、まことにありがとうございました。

これで閉会させていただきます。

ありがとうございました。

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