金融審議会金融分科会「基本問題懇談会」(第6回)議事要旨

1.日時:

平成21年10月21日(水)15時00分~17時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

3.議題:

  • 論点の整理

4.議事内容:

  • 事務局からの説明の後、討議が行われた。

  • 討議の概要は以下の通り。

    • 金融行政の主たる任務は産業政策といったものよりも制度の整備ではないかと考えられるが、制度を整備すれば複線的な金融システムがすぐに育つとは限らず、金融機関等が複線的な金融システムに向かう動機付けをどのようにして行っていくかが課題である。また、銀行部門に預金が流入しても運用先が少なく、結果として銀行が国債を多く保有していることも留意すべき点である。

    • 金融システムのあり方については、経済の成長のために必要な資金、例えば起業資金などを適切に供給できる仕組みが十分かについて考えていく必要がある。また、金融業のあり方に関しては、我が国の金融業が海外で業務展開をしやすくなるような環境を整備していくべきではないか。

    • 複線的な金融システムの構築のために必要な制度は、2006年の金融商品取引法の制定や2007年の「市場強化プラン」(金融・資本市場競争力強化プラン)の策定・実施によりようやく整ってきたが、その矢先に今回の金融危機を経験したと認識しており、更に具体的な取組みを進めていく必要がある。また、我が国において、今回の金融危機の影響が相対的に軽微であった原因は、複線的な金融システムの構築が進んでいなかったことと評価して良いのかを確認すべきである。産業政策については、他の先進国でも行っているものであり、我が国でも行うこと自体は差し支えないと考える。

    • 銀行等に預金が集中する状況が続いているが、低インフレ環境の下、安全でプラスの利回りが付く預金を個人等が選択するのは合理的な判断とも考えられる。

    • 我が国が目指すべき複線的な金融システムは、持続的な経済成長に資するようなシステムであると同時に、銀行部門にショックが加わった時に市場部門が機能し、市場部門にショックが加わった時には銀行部門が機能するような、銀行部門と市場部門が補完的にショックに対する耐性を持つシステムである。米国の金融システムが、真に我が国が目指してきたものかどうかは確認する必要がある。

    • 我が国の銀行中心の金融システムは非常に高度に発展しており、これを複線的な金融システムに変革することは、更地から構築することよりも却って大変なことである。また、米国における金融危機は、市場型金融が発展していたことに問題があったというよりも、金融システムにおいて大きな影響を持つにも拘わらず、規制を事実上受けていない金融機関が存在したことが問題であったのではないか。

    • 金融グループに関しては、企業等に資金を供給する際、グループの中において、銀行の貸出を通じて行うことと、投資信託など市場を通じて行うことを組み合わせることで、グループ内のシナジーを発揮することが重要である。

    • 今回の金融危機時において、各国で社債・CP市場が機能不全となった際に、我が国では貸出市場がこれを補ったほか、我が国の金融機関では厚い預金基盤を背景に資金流動性の問題が相対的に軽微であった。一方、我が国では、市場参加者の裾野が狭いことから、海外投資家の取引減少によって市場流動性が極端に低下したほか、金融機関の収益性も、経済全体の収益に影響されることもあって低いという課題がある。

    • 今回の欧米の金融危機で問題となったのは、市場型金融システムそのものではなく、金融機関の投資内容である。また、銀行部門の貸出のみではリスクマネーを供給できないという課題は現在も残されており、複線的な金融システムの構築は今後も進めるべきと考える。

    • 我が国の金融業は、企業の価値創造を支援し、経済の持続的な成長に資する金融システムの構築を目指すということで良いと考える。経済の持続的な成長に資する金融の核となる部分は、オリジネーション機能(良質の金融資産を作り出す機能)であり、社会において希少であるオリジネーション機能を有効に活用するためには、同機能と資産保有機能との分業、すなわち市場型間接金融が必要である。

    • 複線的な金融システムを指向する方針については、修正の必要はないと考えるが、重要なのはそれをどのように具体化していくかということである。これに関して、銀行部門への預金の集中を止めることは難しいので、この資金が市場に流れるように仕向けることが必要であるが、その際、今回の危機で問題となったような証券化商品等に資金が流れないような仕組みが考えられないか。また、金融行政のあり方については、個々の金融機関の収益性をみるよりも、健全性や流動性リスクに焦点を当てていくべきではないか。

    • 複線的な金融システムを目指す方向性を変える必要はないが、今回の危機では市場流動性が問題となっており、市場の厚みを確保するなどの流動性に配慮した対応が必要である。

    • 我が国では個人等による預金以外の金融資産での運用がなかなか広がらないが、米国のMMFの例をみると預金以外の資産の利回りが良ければ自然に選択されていくものである。また、海外での資産運用については、例えばアジア市場において、欧米の金融機関は現地スタッフをうまくマネジメントして情報収集を行った上で運用を行っているが、邦銀の海外業務は日系企業とのビジネスに偏っており、こうした点は改善の余地があるのではないか。加えて、社債市場については、下位格付け企業も含めた市場の厚みが必要である。

    • 複線的な金融システムを指向する場合、複線的な金融システムの経路の一つである銀行部門を通じた金融仲介機能は、中小企業金融を含め引き続き重要であり、その強化も必要である。銀行業の収益性に関しては、その業務に係るリスクに応じたものに必ずしもなっていないことが問題である。リスクに見合った貸出利率の設定が進めば、企業の資金調達も借入から社債等にシフトしていくであろう。また、預金取扱金融機関の株式保有については、リスクを適切に管理する必要がある。

    • 複線的な金融システムを指向するのは今後も必要であると思われるが、今回の金融危機から得られた教訓は、複線的な金融システムの構築を推進すれば問題が全て解決するわけではなく、今回欧米で見られた問題に対応する制度整備も併せて行う必要があるということである。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課調査室(内線3524)
本議事要旨は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

サイトマップ

ページの先頭に戻る