アクセスFSA 第171号(2017年9月)

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Contents

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9月21日 フィンテック・サミット2017にて挨拶する麻生大臣 
  
9月21日 フィンテック・サミット2017にてアブダビ・グローバル・マーケット金融サービス規制庁
リチャード・テンCEOとフィンテック推進協力に関する書簡を交換する越智副大臣 
  

9月21日 フィンテック・サミット2017にて挨拶する村井大臣政務官


トピックス

(1)カードローンホットラインの開設について

 平成29年9月1日に、預金取扱等金融機関(銀行、信用金庫、信用組合等)が取り扱うカードローンに関するホットラインを開設しました。
 本ホットラインは、カードローンに関する情報を幅広く把握するために、利用者等の方々からの声をお聞きする受付窓口であり、お寄せいただいた情報は、今後の検査・監督に活用させていただきます。
 カードローンに関する不適切な広告・宣伝、勧誘、取立てや、銀行等がカードローンにより多額の貸付けを行った結果、返済が困難になっている事例等、カードローンに関する情報をお寄せください。
 
名称  :「カードローンホットライン」
受付時間:平日10時00分~17時00分
電話番号:0570-00-6825
     (IP電話からは03-5251-6825)
受付内容:預金取扱等金融機関(銀行、信用金庫、信用組合等)のカードローンに関する情報等
 
 なお、利用者の皆様と金融機関との間の個別トラブルにつきましては、お話を伺った上で、他機関の紹介や論点の整理などのアドバイスは行いますが、あっせん・仲介・調停を行うことはできませんので、予めご了承ください。
 
※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「各種窓口のご案内」の中の「カードローンホットライン」にアクセスしてください。


(2)多重債務者相談強化キャンペーン2017の実施について

 内閣に設けられた「多重債務者対策本部」においては、深刻な社会問題である多重債務問題を抜本的に解決するため、平成19年4月20日に「多重債務問題改善プログラム」を決定し、相談窓口の整備などの「借り手対策」をとりまとめました。これに基づき、全国の地方公共団体における相談体制の整備・強化が進められております。
 平成22年6月の改正貸金業法完全施行後、多重債務問題は一時と比べ落ち着きをみせているところですが、多額の借入残高を有する層は現在も相当数存在し、継続的に多重債務者対策を講じていく必要があるところです。
 このため、潜在的な相談者の掘り起こし及び常設の相談窓口の認知度向上等を目的として、本年9月1日~12月31日までの4ヶ月間、「多重債務者相談強化キャンペーン2017」を多重債務者対策本部と日本弁護士連合会、日本司法書士会連合会及び日本司法支援センター(法テラス)との共催で、実施するものです。(なお、これまでにも同様の趣旨により、平成19年度の「全国一斉多重債務者相談ウィーク」(平成19年12月10日~16日実施)、平成20年度~平成28年度の「多重債務者相談強化キャンペーン」(平成20~28年の9月1日~12月31日実施)を実施しているところです。)
 

 


(キャンペーン周知のためのポスター)


 キャンペーンでは、期間中に都道府県、当該都道府県の弁護士会、司法書士会、中小企業団体(全国の商工会議所、商工会、都道府県中小企業団体中央会)が共同で、消費者及び事業者向けの無料相談会等の取組み(電話による相談の受付けを含む)を行います。併せて、各地方財務局においても、無料相談会の開催等を行います。このほか、ヤミ金融の利用防止について、周知・広報を行うこととしています。
 各地の相談窓口、キャンペーン期間中に各地で開催される無料相談会等については、下記の電話番号にてご案内します。また、金融庁ウェブサイトの「多重債務者相談強化キャンペーン2017における相談会の開催予定等について」でも、随時、関連情報を提供しています。

 

《法テラスコールセンター》
0570-078374(おなやみなし)
※受付時間 平日/9:00~21:00
      土曜/9:00~17:00
(日曜祝祭日、年末年始休業)


※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「報道発表資料」から、「多重債務者相談強化キャンペーン2017の実施について」(平成29年9月1日)にアクセスして下さい。


(3) 「企業会計審議会総会」の開催について

 平成29年9月8日に企業会計審議会総会を開催し、会計・監査をめぐる動向及び企業会計審議会の今後の運営について議論が行われました。

○会計をめぐる動向について

 金融庁から、会計基準の品質向上に向けたこれまでの取組みやIFRS任意適用企業数の推移について説明しました。また、財務会計基準機構から、国際会計人材の育成(国際会計人材ネットワークのシンポジウムの開催等)について、企業会計基準委員会(ASBJ)から、日本基準の高品質化(収益認識基準の開発等)やのれんの償却等IFRSに関する国際的な意見発信について報告されました。その後の議論においては、個人投資家等を含む我が国全体としての会計リテラシーを向上させていくことが重要との指摘がありました。

○監査をめぐる動向について

 金融庁から、平成28年3月に公表された「会計監査の在り方に関する懇談会」提言を受け、平成29年3月に「監査法人のガバナンス・コード」を策定し、同年7月に「監査法人のローテーション制度に関する調査報告(第一次報告)」を公表したことを報告しました。また、「監査報告書の透明化」について、同年6月に公表した関係者間での意見交換の取りまとめ内容及び諸外国の導入状況を説明しました。その後の議論においては、会計監査の透明性を向上させていくことが重要との指摘がありました。

○企業会計審議会の今後の運営について

 引き続き会計部会、監査部会及び内部統制部会の3つの部会及び審議事項の下で審議を進めること、並びに、「監査報告書の透明化」について、今後、監査部会で審議を行うことが決定されました。また、会計部会長及び監査部会長の指名が行われました。
 
※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「審議会・研究会等」の中の「企業会計審議会」から企業会計審議会総会(平成29年9月8日開催)の「資料」及び「議事録」をご覧ください。


(4)偽造キャッシュカード等による被害発生等の状況について

 金融庁では、偽造キャッシュカード、盗難キャッシュカード、盗難通帳及びインターネット・バンキングによる預金等の不正払戻し等の被害について、各金融機関からの報告を基に、被害発生状況及び金融機関による補償状況を取りまとめ、定期的に公表しているところです。
 今般、平成29年6月末までに発生した被害について犯罪類型ごとに取りまとめ、9月15日に公表しました。
 
1.対象期間
■偽造キャッシュカード犯罪:平成12年4月から平成29年6月
■盗難キャッシュカード犯罪:平成17年2月から平成29年6月
■盗難通帳犯罪:平成15年4月から平成29年6月
■インターネット・バンキング犯罪:平成17年2月から平成29年6月
 
2.被害発生件数
                                  (単位:件)

  26年度 27年度 28年度 29年度
(4~6月)
対象期間計
偽造キャッシュカード 301 382 290 60 6,610
盗難キャッシュカード 3,062 2,877 3,797 1,686 60,845
盗難通帳 101 86 55 13 3,302
インターネット
・バンキング
1,426 1,596 756 93 6,809

 
※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「金融機関情報」から「銀行等預金取扱機関」の中の「偽造キャッシュカード等による被害発生等の状況」にアクセスして下さい。
 

 金融庁職員や銀行員、警察官等を名乗り、言葉巧みにお客さまの口座情報を聞き出そうとする事件や、暗証番号を聞き出してキャッシュカードをだまし取ろうとする事件等が発生していますのでご注意ください。

 上記のようなケースに限らず、不審に思った場合は、安易に個人情報等を伝えたりせず、最寄の警察や金融庁金融サービス利用者相談室に情報提供・ご相談をお願いします。

(5)IOSCO(証券監督者国際機構)APRC(アジア太平洋地域委員会)による議長選出の公表について

 9月21日、IOSCO(証券監督者国際機構)は、アジア太平洋地域委員会(Asia-Pacific Regional Committee:APRC)において、金融庁 水口 純 審議官を議長として選出したことを公表しました。
 IOSCOは、200を超える国・地域における証券監督当局や証券取引所等から構成される国際的な機関です。
 APRCは、IOSCO内に設立された4地域委員会のうちの1つで、資本市場における諸問題に係る情報交換や協力の促進に係る地域共通の議論を促すことを目的としています。メンバーは、アジア・オセアニア地域から22の国・地域から構成されています(他の3地域の委員会として、米州地域委員会、欧州地域委員会、アフリカ・中東地域委員会が設立されています)。
 議長選出の公表に先立って、9月にコロンボ(スリランカ)で開催されましたAPRC会合では、国境を跨ぐ国際的な問題として、仮想通貨を利用した資金調達であるICOs(Initial Coin Offerings)、有害だが違法ではない行為(harmful but legal conduct)、アジア太平洋地域において共通する法執行の問題、EUの規制がアジア太平洋地域の市場に与える影響、等について議論が行われました。

証券監督者国際機構(IOSCO)組織図


(6) 来年1月から「つみたてNISA」がはじまります!「ガイドブック」もできました!

 来年1月から、少額からの長期・積立・分散投資を後押しする制度として、「つみたてNISA」がスタートします。
 「つみたてNISA」は、月々一定額を少しずつ(例えば、毎月1万円)投資するもので、年間40万円まで、20年間の非課税運用ができる制度です。対象商品も手数料が低水準であるなど、長期・積立・分散投資に適した投資信託に限定されているため、投資初心者をはじめ幅広い年代の方にとって利用しやすい仕組みとなっています。
 なお、「つみたてNISA」の対象となる投資信託は、本年10月2日以降、金融庁ウェブサイトの「NISA特設サイト」にて公表、随時更新しています。
 この「つみたてNISA」のスタートを念頭に、金融庁では、NISA推進・連絡協議会とともに、初心者向けの投資教材「つみたてNISA早わかりガイドブック」を作成し、公表しました。
 本ガイドブックは、広く利用されることを前提に作成していますので、ご自由にご活用ください。
 
※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「報道発表資料」から「「つみたてNISA早わかりガイドブック」の公表について」(平成29年9月12日)にアクセスしてください。


(7) 今月行われたフィンテックに係るイベントについて

 平成29年9月21日(木)、丸ビルホール(東京・丸の内)において、フィンテック(金融とテクノロジーの融合)をテーマとしたグローバル・イベント「フィンテック・サミット2017」(金融庁主催)が開催されました。本イベントは9月19日~22日の4日間にわたり、金融庁・日本経済新聞社・Fintech協会の共催で開催した「フィンサム・ウィーク2017」の一環として、シンポジウムの形で開催されました。
 また同日、金融庁において、「FinTech実証実験ハブ」を設置しました。
 
(1) 「フィンテック・サミット2017」について(開催レポート -共通価値の創造-)

写真1   写真2
写真3  

 フィンサム・ウィークの期間中は、日本、アジア、欧米等の有識者や当局者等を招聘し、オープン・イノベーション、ブロックチェーン、規制当局の役割、金融技術の新領域(銀行・保険・証券分野)、アジア地域での取組み等について議論等を行う当庁主催の本シンポジウムが行われたほか、日本経済新聞社やFintech協会主催による新たなビジネス展開に向けたスタートアップ企業のプレゼンテーション・コンテスト、体験型の展示スペース「フィンサム・ランド」、学生が金融ビジネスについてアイデアを競うイベント、その他各種ワークショップが開催され、イベント全体にはおよそのべ1万人が参加しました。(本イベントの概要等については専用ウェブサイト(http://finsum.jp/ )ご参照。)
 
 シンポジウムの冒頭、村井大臣政務官より開会のご挨拶がありました。政務官は、金融庁が「近年のフィンテックの進展を前向きに捉え、新たな挑戦を応援していくことを宣言したい」と述べられました。また、フィンテック企業や金融機関による新たな挑戦を後押しするため、「フィンテック実証実験ハブを設置すること」を公表しました。金融庁ではこうした取組みに加え、今回のフィンテック・サミット2017において議論されたことから得られる様々な知見も踏まえ、今後もフィンテックを通じた共通価値の創造に向けた貢献をしてきたいという旨、お話がありました。
 引き続き、パネルディスカッションにおいて活発な議論が行われました。(各セッションの概要は以下の通り。)
 
● セッション1:オープン・イノベーション -金融機関とFinTechの協働-
 本セッションにおいてはオープンAPIを通じて、金融機関とフィンテック企業が現状どのように協働しているか、また各国当局がどのようにイノベーションの進展を後押ししているのか等の取組みについて議論が行われました。
 英国の金融機関からは、オープン・イノベーションによる新しい技術は顧客の利便性と価値を高めることに繋がると考えられることから、銀行もフィンテック企業、研究者や当局と協働して取組みを進めることが大事であると述べ、英国の当局者からはそうしたイノベーションや技術を後押しする環境を整えるための取組み等について説明がありました。日本のフィンテック関係者及び金融機関からは、日本のフィンテックの現状、実用化に向けて進展しているフィンテックのプロジェクトやAPIの取組みについて紹介がありました。
 その後、新しいイノベーションを推進するためには、供給者側の論理ではなくユーザーに合わせたサービスの提供、消費者保護やサイバーセキュリティなど金融の安全性と健全性の確保が重要であること、イノベーションを発展させていくためには各国の文化や慣習(消費者保護の考え方や銀行の預金業務のあり方等)等について考慮することも必要である点について議論が行われました。
 
● セッション2:ブロックチェーン -変革への助走-
 本セッションにおいてはフィンテックの中でも特にブロックチェーンに関する技術(分散台帳技術、Distributed Ledger Technology(以下、DLT))の実用化に向けた取組みや課題等について議論が行われました。
 ブロックチェーン技術について研究・開発している企業や研究者からは、DLTとはツールであり、貿易金融、顧客認証、保険、決済など金融サービスの様々な分野において利便性向上の契機となりうるが、セキュリティ、プライバシー、性能、コストの面で最適なバランスを見つけることが大きな課題であり、実用化のためには時間がかかるという意見が述べられました。日本の金融機関関係者からは、民間のイノベーションに関する取組みを促進することが重要であり、既に効率的で信頼できるシステムがある場合にはそれを活かしていくことも望ましく、様々な技術の最適な組み合わせを模索することが必要であると述べました。
 顧客保護に関する議論では、データ管理の責任の明確化とサイバーセキュリティの確保が重要であり、日本銀行からは金融リテラシーを高めることが必要であり、今後、DLTの技術が一定の信頼を得て実用化されるためには、一定の基準を満たすこと、即ち「標準化」が必要であるという話がありました。今後、ブロックチェーンは金融業界だけではなく広く産業を変革していく可能性を秘めており、その技術を発展させていくためには、研究者、規制当局、金融機関などの協働が必要である点が強調されました。
 午後の部は、金融庁とアブダビ・グローバル・マーケット金融サービス規制庁(FSRA)によるフィンテック推進に関する協力枠組構築の発表、及び越智内閣府副大臣とリチャード・テンCEOによる書簡交換式から始まりました。
 本協力枠組みの構築により、両当局間の企業紹介や情報共有が容易になります。越智副大臣とテンCEOから、両当局がフィンテックによるイノベーションの促進と利用者利便の向上という共通の目標を有していることが表明され、今後一層の連携・強力を深めていくことを約束しました。
 続いて、午後のセッションにおいて活発な議論が行われました。

写真4   写真5

● セッション3:規制当局の役割 -金融当局によるイノベーションの加速-
 本セッションにおいては各国の金融当局がフィンテックについてどのような戦略を持ち、対応しているか等について発表及び議論が行われました。
 セッションの冒頭、英国のFCA政策担当ディレクターによるビデオメッセージにおいて、イノベーションの進展に合わせて規制もついていくことが重要であり、また企業の活動は国境を越えることから当局による国際的な協調も必要だとお話がありました。その後、他の当局から各国におけるフィンテックに関する取組みが紹介され、ASEAN地域においてもフィンテック政策の整合性を確保することが重要であるとの考えや、人口が増加している中東及びアフリカ地域において金融包摂を推進していくためにはフィンテックが重要な戦略となることが述べられました。
 また、イノベーションと市場への信頼の両立を確保することが当局の役割であり、規制が新しく導入されることによって公平性を欠くことがないこと、即ち規制が中立的であることが重要であるとの発言がありました。その他、新しい規制緩和の枠組みの一つとして、幅広い産業分野が関わる協働的な実験の枠組み(いわゆるインダストリー・サンドボックス)を検討しているとの説明がありました。
 
● セッション4:金融技術の新領域
 本セッションにおいては銀行業に加え、規制、保険や市場インフラが新しいIT技術をどのように活用して新しいサービスを提供しようとしているか、そうした取組み等について議論が行われました。
 フィンテック企業からは、IT技術の活用により金融機関への規制のコストを削減し、より効率的かつ効果的な規制による対応(RegTech)が可能なサービスについて紹介がありました。金融機関からは、生体認証技術を用いたサービスの実用化、AIを用いた基幹業務システムのプラットフォーム、及びクラウド環境の連携について紹介がありました。国内の証券取引所からは、ブロックチェーン技術(分散型台帳)の金融市場インフラへの適用に関する実証実験について説明がありました。
 続いて、フィンテックに取組むモチベーションに関する質問については、フィンテックは新しいビジネスに参入する機会をもたらし、フィンテック企業との協働によって新しいビジネスをより早く創造することができること、またRegTechに見られるように、情報の共有がより効率的に行えるようになることが挙げられました。今後どのようにイノベーションを促進していくかという質問には、市場インフラから関係者との協働が不可欠であることが強調されました。

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● セッション5:アジアのFintechフロンティア
 本セッションにおいては各国の現状とフィンテックへの取組み、フィンテックを通じた金融包摂の推進等について議論が行われました。
 インドネシア当局からは、同国は2億5千万人超の人口があり、携帯電話やインターネットの普及率が高い一方で成人のおよそ70%が銀行口座を保有しておらず、また国土も広いことから、フィンテックを通じた金融包摂の推進が国家戦略となっており、中央銀行と規制当局が協働して取組みを進めていることが説明されました。インド中央銀行はフィンテックに関する取組みとして、全国民に個人識別番号を振り、指紋と目の虹彩とともに登録するAADHARというシステムの整備、指紋認証による送金、クレジットカード、デビッドカード、またモバイル・バンキング等様々な支払方法に利用できる統一された決済インターフェース(UPI)について紹介しました。日本銀行からは、日本は銀行口座やクレジットカードの保有率は高いが、現金の使用率が高く、キャッシュレス化が進んでないことが指摘されました。これには、日本では現金を好む文化的側面があるのと同時にATM網が充実しており現金の利便性が高いこと、店舗側にとってはキャッシュレス化に対応するためにはコストがかかることが理由として挙げられるものの、今後は人口が減少する中においては変化が不可避であり、当局としても顧客保護、サイバーセキュリティの確保等に留意しつつ、金融のイノベーションをサポートしていきたいと述べられました。タイ中央銀行からは、政府が経済のデジタル化を推し進めており、中央銀行の取組みとして個人識別番号や携帯番号の登録によって送金が行えるPromptPayの整備、カードの利用拡大、決済システム法の施行等の取組みが紹介されました。また、大手クレジットカード会社5社が参加するQRコードの標準化により、スマートフォンを使って屋台やバイクタクシーへの支払をQRコードで行えるサービスが近く始まる予定であることを発表しました。
 金融包摂に関する議論では、インドやインドネシアのように国土が広く、銀行の支店がない農村部ではビジネス・コレスポンデンスや代理人を指名して農村部の住民が銀行取引を可能とする仕組みを設けていること等が紹介されました。新しいイノベーションが起こる中で、顧客保護を確保するためには金融教育が重要であるとの認識が示され、インドネシアでは中央銀行に専担の部署を設けて金融教育を推進していることについても紹介がありました。セッションの纏めでは、各国の金融システムはそれぞれ異なるものの、アジアの各国当局が協働していくことが非常に重要であるとの認識が共有されました。
 
 最後に、麻生金融担当大臣より閉会のご挨拶がありました。日本には卓越した技術力があると述べられた上で、そうした技術を開発する人、それを何に使うのかを考える人たちとの間における意思疎通がきっちり出来上がることが必要であると強調されました。フィンテックの分野でも、タクシーのアプリを例に、技術力によってこうしたことも出来るのだと売り込みを行ったことによって新しいサービスが生まれて成功したことを例として挙げ、技術とその活用を一つに繋げていくことをどんどん進めてほしいと期待を述べられました。
 また、金融庁も「金融処分庁」から「金融育成庁」へと変革を進めているところであり、銀行法の改正等を通じてオープン・イノベーションを促進する環境を整備する等の努力を行っていること、そしてこのフィンテック・サミットも情報を広く集めて活かしていくための場の一つとして貢献することにより、今後我が国のイノベーションが一層推進されることを期待したいと述べられて、閉会の挨拶を締め括られました。
 
(2) FinTech実証実験ハブの設置について
 「未来投資戦略2017」(平成29年6月閣議決定)においては、フィンテックを活用したイノベーションに向けたチャレンジを加速させる観点から、金融庁において、フィンテックに係る実証実験を容易化するための措置を講じるとの方針が示されています。
 これを踏まえ、金融庁では、フィンテック企業や金融機関等が、前例のない実証実験を行おうとする際に抱きがちな躊躇・懸念を払拭するため、9月21日、「FinTech実証実験ハブ」を設置しました。
 FinTech実証実験ハブでは、フィンテック企業や金融機関等が、実験を通じて整理したいと考えている論点(コンプライアンスや監督対応上のリスク、一般利用者に向けてサービスを提供する際に生じうる法令解釈に係る実務上の課題等)について、個々の実験毎に庁内に担当チームを組成して継続的な支援を行います。
 金融庁としては、こうした取組みを含め、フィンテックを活用したイノベーションに向けたチャレンジを支援する観点から、環境整備を進めて参ります。
 
※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「報道発表資料」から、「FinTech実証実験ハブの設置について」(平成29年9月21日)にアクセスして下さい。


(8)仮想通貨に関する情報の掲載について

 平成29年4月1日から、「仮想通貨」に関する新しい制度が開始され、国内で仮想通貨と法定通貨との交換サービスを行うには、仮想通貨交換業の登録が必要となりました。
 金融庁では、9月29日に仮想通貨交換業者11社を登録し、登録した事業者を公表するとともに、仮想通貨の利用者のみなさま及び仮想通貨に関連する事業を行うみなさま向けに特設ページを新設しており、以下のような情報を掲載しております。

【利用者向けページ】
・仮想通貨交換業者登録一覧
・詐欺的なコイン等に関する注意喚起文
・仮想通貨に関する相談窓口
  (金融サービス利用者相談室、消費者ホットライン、警察相談専用電話)

【事業者向けページ】
・登録申請書様式
・登録に係る手続きの流れ

 また、仮想通貨の利用者の方においては、取引を行う際は、以下の点に御注意ください。

【利用者の方への注意喚起】
●仮想通貨は「法定通貨」ではありません。
●仮想通貨は、価格が変動することがあります。
●仮想通貨交換業者は登録が必要です。利用する際は登録を受けた事業者か確認してください。
●仮想通貨の取引を行う場合は事業者から説明を受け、内容をよく理解してから行ってください。
●仮想通貨や詐欺的なコインに関する相談が増えています。詐欺や悪質商法に御注意ください。


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