アクセスFSA 第186号

アクセスFSA 第186号


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「仮想通貨交換業等に関する研究会」報告書の公表について

 昨年12月21日、仮想通貨交換業等をめぐる諸問題について、制度的な対応を検討するため金融庁に設置されていた「仮想通貨交換業等に関する研究会」において、報告書が取りまとめられました。
 
 仮想通貨(暗号資産)に関しては、マネーロンダリング・テロ資金供与対策に関する国際的要請がなされたことや、業者の破綻などを受け、犯罪収益移転防止法における本人確認義務等のマネーロンダリング・テロ資金供与対策や、資金決済法における説明義務等の一定の利用者保護規定の整備が図られ、平成29年4月から施行されています。
 その後、昨年1月、不正アクセスにより、仮想通貨交換業者が管理する顧客の仮想通貨が流出する事案が発生したことに加え、行政当局の立入検査を通じて仮想通貨交換業者の内部管理態勢等の不備が把握されました。また、仮想通貨の価格が乱高下し、仮想通貨が投機の対象になっている、との指摘もなされたほか、仮想通貨を原資産・参照指標とするデリバティブ取引(以下「仮想通貨デリバティブ取引」)や仮想通貨による資金調達(以下「ICO(Initial Coin Offering)」)などの新たな取引が登場する動きも見られました。
 
 こうした状況を受け、当庁では、昨年3月に学識経験者、金融実務家等を集めて「仮想通貨交換業等に関する研究会」を設置しました。仮想通貨交換業等をめぐる諸問題について、制度的な対応を検討するため、海外の事業者を含む関係者からのヒアリングなども行いながら、昨年12月まで11回にわたり会合を開催しました。
 今回取りまとめられた報告書には、仮想通貨交換業等をめぐる諸問題への対応として、主に、「仮想通貨交換業者に関する規制」、「仮想通貨デリバティブ取引に関する規制」、「ICOに関する規制のあり方」といった内容が盛り込まれています。

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「政策・審議会等」の中の「審議会・研究会等」から、「仮想通貨交換業等に関する研究会」にアクセスしてください。
 

平成31年度税制改正の大綱における金融庁関係の主要項目について

 昨年12月21日、平成31年度税制改正の大綱が閣議決定されました。大綱における金融庁関係の主要項目の概要は、以下のとおりです。

(1)NISA等の利便性の向上・充実
 NISAは、家計の安定的な資産形成と経済成長に必要な成長資金の供給拡大の両立を図ることを目的として、平成26年1月より導入された制度です。
 NISA口座保有者(一般NISA、つみたてNISA)が海外転勤等により一時的に出国する場合、既にNISA口座で保有している商品は課税口座に払い出されてしまいます。また、帰国後においても、一旦課税口座に払い出された商品は、NISA口座に戻す(移管する)ことはできません。
 そのため、海外転勤等により一時的に出国する場合においても、引き続きNISA口座での保有を可能とすることを要望し、措置されることになりました。

NISA等の利便性の向上・充実
(2)クロスボーダーの債券現先取引(レポ取引)に係る非課税措置の拡充及び延長
 クロスボーダーのレポ取引(本邦金融機関が外国金融機関に債券を売却し、一定期間後に買戻す取引)については、そのレポ差額が非課税(レポ特例)とされています。
 平成29年度税制改正により、外国ファンドとの間のレポ取引についても非課税措置の対象と認められましたが、当該措置は2年間の時限措置である上、対象は日本国債レポのみに限定されていました。
 そのため、海外ファンドが国内金融機関等と行う日本国債レポ取引について、受け取る利子等を非課税とする措置を2年間延長し、本措置の適用対象を外国債券(米、ユーロ圏、英、豪州の国債等)へ拡充することを要望し、措置されることになりました。

クロスボーダーの債券現先取引(レポ取引)に係る非課税措置の拡充及び延長

(3)火災保険等に係る異常危険準備金制度の拡充及び延長
 損害保険会社では、大型台風、雪害、洪水等の自然災害への保険金支払いが近年増大しており、異常危険準備金の大幅な取崩しが発生したことから、残高が低水準となっています。
 巨大自然災害に対する保険金の支払いに耐えうる、十分な残高の確保・維持が必要不可欠であるため、火災保険等に係る特例積立率を6%(現行5%)に引き上げた上、その適用期限を3年延長することを要望し、措置されることになりました。

火災保険等に係る異常危険準備金制度の拡充及び延長

(4)番号の告知に関する所要の措置
 平成28年1月1日より前に証券口座を開設した顧客に係るマイナンバー告知義務について、同日から3年の経過措置が規定されていましたが、その告知期限を3年間延長することを要望し、措置されることになりました。

番号の告知に関する所要の措置

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「報道発表資料」から、「平成31年度税制改正の大綱における金融庁関係の主要項目について」(平成30年12月21日公表)にアクセスしてください。


企業情報の開示の充実に向けた取組みについて

 金融庁は、有価証券報告書における、経営戦略、経営者による経営成績等の分析(MD&A)、リスク情報などの記述情報について、ルールへの形式的な対応にとどまらない開示の充実に向けた企業の取組みを促すため、昨年12月21日、「記述情報の開示に関する原則」案を公表し、本年2月1日まで広く意見を募集しています。

 本原則案は、
  ①経営の目線による経営戦略やリスクに関する議論の開示への適切な反映
  ②深度あるセグメント情報の開示
  ③より分かりやすい開示の実現に向けた方策など
 について、プリンシプルベースのガイダンスを提供するものです。

 当庁としては、今後、お寄せいただいた御意見を踏まえ、本原則の取りまとめに向け取り組んでいきます。

【本原則策定の背景】
 企業情報の開示は、投資家の投資判断に必要な情報の提供を通じて、資本市場における効率的な資源配分を実現するための基本的インフラであり、投資判断に必要な情報を十分かつ正確に、また適時に分かりやすく提供することが求められます。
 こうした考えの下、投資判断に必要な情報提供の確保や企業と投資家の建設的な対話の促進のため、平成29年12月から、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループにおいて、企業情報の開示のあり方について総合的な検討が行われ、昨年6月に報告書が取りまとめられました。

 報告書では、有価証券報告書における企業情報の開示の充実のため、
  • 財務情報、及び、財務情報をより適切に理解するための記述情報(例えば、経営戦略、MD&A、リスク情報など)の充実
  • 企業と投資家との対話の観点から求められるガバナンス情報(例えば、政策保有株式、役員報酬に係る情報など)の提供
  • 情報の信頼性を投資家が判断する際に有用な情報(例えば、監査人の継続監査期間など)の充実と情報の適時な提供
  • EDINETの利便性の向上 等
 が提言されています。

 当庁においては、これらの提言を受け、投資判断に必要な情報提供の確保や企業と投資家の建設的な対話の一層の促進に向け、以下の取組みを進めています。
  • 役員報酬や政策保有株式の開示の充実を含め、報告書に盛り込まれた諸施策の実現のため、「企業内容等の開示に関する内閣府令」の改正案を昨年11月に公表し、意見募集を実施しました。当該改正については、本年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書から、順次適用する予定です。
  • あわせて、ルールへの形式的な対応にとどまらない開示の充実に向けた企業の取組みを促すため、企業が経営目線で経営戦略・MD&A・リスク等を把握・開示していく上でのプリンシプルベースのガイダンス(本原則)を策定するとともに、
  • 一部企業のベストプラクティスを全体に浸透させるため、開示内容や開示への取り組み方に関するベストプラクティスの収集・公表を行う予定です。
 内閣府令の改正に加えて、本原則の整備やベストプラクティスの積上げ・浸透を踏まえて、充実した開示が行われることを通じ、企業に対する投資家の理解が深まり、企業と投資家の対話が実効的なものとなる好循環の確立が期待されます。
 
※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「報道発表資料」から「『記述情報の開示に関する原則(案)』の公表について」(平成30年12月21日公表)にアクセスしてください。
 

「中小企業等の金融の円滑化に関する意見交換会」の開催について

 年末の資金需要期を迎えることを踏まえ、金融庁は、昨年12月10日に、金融機関等の代表者を招き、「中小企業等の金融の円滑化に関する意見交換会」を開催しました。
 その際、麻生大臣から金融機関等の代表者に対して、年末や年度末の資金需要への対応に加え、担保・保証に過度に頼ることなくいわゆる「目利き」を発揮した資金供給を行うこと、資金繰りに関する相談に親身になって対応していただくことなどを要請するとともに、金融機関の金融円滑化への取組み等について意見交換を行いました。
 併せて、同日付にて、金融関係団体に対し、年末の中小企業者等の金融円滑化について、書面で要請を行うとともに、当該要請文を公表し、要請内容の周知徹底を図りました。
 
挨拶をする麻生大臣
挨拶をする麻生大臣

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「報道発表資料」から「年末における中小企業・小規模事業者に対する金融の円滑化について」(平成30年12月10日公表)にアクセスしてください。
 

「第12回多重債務問題及び消費者向け金融等に関する懇談会」の開催について

 昨年12月26日、第12回多重債務問題及び消費者向け金融等に関する懇談会を開催しました。
 当懇談会は、改正貸金業法完全施行後の貸し手・借り手の状況をフォローしつつ、今後取り組むべき施策等について検討するため、平成24年9月に多重債務者対策本部の下に設置されたものです。
 第12回懇談会においては、多重債務者対策を巡る現状及び施策の動向として、直近の多重債務者数の趨勢等や、銀行カードローン及びギャンブル等依存症への取組み、ヤミ金融事犯や生活困窮者自立支援制度に係る関係省庁の対応等について、政府から報告が行われたほか、有識者で構成される各構成員から、これらの課題等に関連した資料の提出や報告があり、その後、自由討議が行われました。
 
※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「報道発表資料」から「「第12回多重債務問題及び消費者向け金融等に関する懇談会」の開催について」及び首相官邸ウェブサイトの「多重債務問題及び消費者向け金融等に関する懇談会」にアクセスしてください。なお、当懇談会の議事録については、首相官邸ウェブサイトにて後日公表予定です。


「金融庁の1年(平成29事務年度版)」の公表について

 金融庁は、日本の金融の安定を確保し、預金者、保険契約者、有価証券の投資者等の保護を図るとともに、金融の円滑を図ることを任務として、透明かつ公正な行政の実施に努めています。
 今般、平成29事務年度の取組みをとりまとめ、「金融庁の1年(平成29事務年度版)」を公表しました。
 主な内容は、以下のとおりです。

○人事改革等
・組織文化(カルチャー)及びガバナンスの改革
○ITの進展等への対応
・「仮想通貨交換業等に関する研究会」の開催
○家計の安定的な資産形成に関する取組み
・投資信託の販売会社における比較的可能な共通KPIの公表
・つみたてNISAの普及・利用促進の取組み
・高齢社会における金融サービスのあり方の公表
○預金取扱等金融機関の検査・監督
・「地域銀行モニタリング結果とりまとめ」、「地域銀行有価証券 モニタリング中間とりまとめ」、「経営者保証に関するガイドラインの活用実績」等の公表
・企業アンケートの実施、金融仲介機能のベンチマークの取組み
・「金融仲介の改善に向けた検討会議」にて、地域金融の競争のあり方等を議論
・銀行カードローンに関し、検査の検証結果を「中間とりまとめ」として公表、全国銀行協会の申合せの対応状況の調査の実施
○その他金融機関等をめぐる動き
・高速取引行為者、仮想通貨交換業者、電子決済等代行業者の概況

 当庁では、この他にも、金融行政が何を目指すかを明確にするとともに、その実現に向け、いかなる方針で金融行政を行っていくか、また、その進捗や実績などを評価し、現状分析や問題提起などと合わせて「変革期における金融サービスの向上に向けて~金融行政のこれまでの実践と今後の方針(平成30事務年度)~」として公表しておりますので、こちらもご覧ください。
 
※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「公表物」の中の「白書・年次報告等」にアクセスしてください。

 
 

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