五味金融庁長官記者会見の概要

(平成18年6月5日(月)17時30分~17時41分 場所:金融庁会見室)

【質疑応答】

問)

村上ファンドのインサイダー事件の関係ですけれども、今後のファンド規制のあり方等々含めて御所見をお伺いします。

答)

村上ファンドに関しましては、個別の案件ではございますけれども、証券市場において、その正常な運用と投資家が自己責任に基づいて投資行動をすることの前提となります適正なディスクロージャーと公正な取引、この公正な取引という部分において問題が生じたということで大変残念なことに思っております。証券取引等監視委員会が東京地検と合同で強制捜査に入っていると聞いておりますので、証券取引等監視委員会がその任務を万全に果たしてくれることを期待したいと思います。

ファンド規制に関しましては、これは一般論でお答えを申し上げますけれども、現在国会で審議をいただいております金融商品取引法の中に、投資家或いは利用者を保護する観点から、幾つかの措置を講ずることにしております。第一に、新たに包括的な定義を設けてファンド全般を規制の対象とする。第二に、大量保有報告制度について、機関投資家に認められます特例報告の報告期限・頻度を短縮する。同時に報告書の電子提出を義務付けまして、電子開示手続きを通じた公衆縦覧を行う。第三に、公開買付規制におきまして、脱法的な態様の取引に対応するために、市場内外における買付等の取引を組み合わせた急速な買付の後、所有割合が3分の1を超えたような場合、公開買付規制の対象となることを明確にする。第四に、ファンドの自己募集について、新たに業者としての登録又は届出の対象業務とする。第五に、ファンドによる主として有価証券又はデリバティブ取引に対する投資運用について、業者としての登録又は届出の対象業務であることを明確にする。第六に、主要株主等による短期売買等に係る規制について、組合型のファンドが、組合財産として上場会社等の議決権の10%以上を保有する場合を規制対象とする。こういった措置が、いわゆるファンド規制に関連して金融商品取引法に盛り込まれております。こうした措置を通じまして、ファンドの活動の公正性・透明性を確保して、投資家保護に万全を期したいと思います。この法律が、早期に国会で成立することを強く希望したいと存じます。

問)

先週、損害保険ジャパンの平野社長が、行政処分後に一旦会長職に留まると言われていたのが、その後白紙撤回して一切の職から退くことになりました。こうした経営陣の人事を巡る混乱についてお考えがありましたら教えてください。

答)

会社の人事は、その会社の経営判断によるものでございますから、そのもの自体に対して、当局としてのコメントは控えたいと存じます。損害保険ジャパンにおいては、5月25日当方から業務改善命令を発出しておりまして、これを踏まえて、現在経営管理態勢などの抜本的見直し・改善の為の業務改善計画を策定しているところでございます。当局といたしましては、当社からの業務改善計画の提出を受けましたところで、その内容について精査・検証をしていきたいと考えております。

問)

ファンドについて、色々な形態のファンドがあって、企業の再生を促したり、村上ファンドでしたら企業の内部管理等もありますし、株主への対応の仕方とか、色々な功罪、功の部分もあったかと思いますが、今回罪の部分もクローズアップされてきたと思いますが、功罪という点について長官どのようにお考えか教えて下さい。

答)

資産運用の形態というのは色々な形態があるわけでございまして、その選択の幅が広いというのは、投資家にとって望ましいことであろうと思います。また、高度な技術を駆使して、例えば多少リスクの高いものであっても高いリターンが得られるというような手段もあるということであれば、それは投資家の方の選択によって投資の対象としてこれを選んでいけばよいのであろうというふうに思います。ただ、どのような資産運用手段を提供する場合であっても、証券取引法令において要求されております取引を公正に行うこと、或いは情報開示を正しく行うこと、こうした当然の規定に違反する法令違反というのは、これはあってはならないことでありまして、それはファンドという形態であれ、なんであれ同じことでございます。この点を特に強調したいと私は思います。

問)

先週末、三井住友銀行から旧経営陣も含めた社内処分ですとか、報酬の自主返上という形で、事実上の処分について、金融庁に対して業務改善計画が提出されたと思いますが、この御感想と言いますか御所見をお願いします。

答)

6月2日に業務改善計画書の提出を頂きまして、計画には役職員の責任の所在の明確化、また、金利スワップ商品を購入した顧客への対応、更には経営管理態勢を始めとする態勢の見直しといった点が盛り込まれております。それぞれ業務改善命令の趣旨を真摯に検討した結果として出されてきた内容であるというふうに理解をしておりますが、大切なことはこうした改善措置を確実に実施し、実効性のあるものとしていただくことであろうというふうに思っております。特に顧客対応の部分については、今後の中小企業融資といったようなことを考えるうえでも、銀行の信任そのものに深く関わるものでございますので、十分な顧客対応というものをこの計画に沿って行っていただきたいというふうに思っております。金融庁はこの実施状況を今後定期的に報告を受けることによってフォローアップをして参ります。

問)

村上ファンドの事件について、色々な論点を挙げられて、金融商品取引法で対応がなされている趣旨かと思いますけれども、今回の事件などで更に必要なことはないのかどうかというようなことについて何かあれば。

答)

今回の事件そのものは、捜査の途上ということですからその内容を詳しく引用するわけにはいかない、そうした情報もないわけですが、伺うところによりますればこれは証券取引法第167条違反のインサイダー取引という疑いであるということのようでございます。これは証券取引における取引の公正を確保するという点から設けられております禁止行為、それも罰則の付いた犯罪ということで設けられている行為であり、かつその構成要件というのは本人の意図などを問題としない極めて明確なものであります。従って、このような事件が起こったということは、そのことをもって何か証券行政のあり方、或いはルールの作り方に問題があるというよりも、元々してはならないことをしたということでありますから、今後もこうしたことが起きれば厳正に対応するということに尽きるのだろうと思います。

(以上)

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