五味金融庁長官記者会見の概要

(平成18年6月26日(月) 17時02分~17時13分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

アメリカへ出張してまいりましたので、簡単に御説明を申し上げておきます。先週ワシントンDCとニューヨークに出張しております。目的はSEC(証券取引委員会)と金融庁のハイレベル職員による定期対話ということで「日米ハイレベル証券市場対話」、これに参加するということでありまして、それを機会に様々な金融当局者との意見交換も併せて行うということでございました。

証券市場関係ではSECのコックス委員長とお会いしました。その他ニューヨーク証券取引所の自主規制部門のケチャムCEO、それから監査法人の監督機関でございますPCAOB(公開会社会計監視委員会)、このグラディソン委員長代行、これらの方々とそれぞれ会談を行いました。双方の現時点の関心事項について意見交換、情報交換を行いました。この市場関係では本来の目的でございます「日米ハイレベル証券市場対話」、こちらにも参加しておりまして、会計基準、或いは証券会社等の監督、クロスボーダーでの取引所の統合再編等、様々な課題について意見交換が行われました。私も個別の会談と重ならない部分について参加しております。

それから銀行関係でございますが、これにつきましてはニューヨーク連銀のガイトナー総裁、そしてFRB(連邦準備制度理事会)のバイズ理事、OCC(通貨監督庁)のドゥガン長官と会談を行い、それぞれの関心事項についての意見交換、情報交換を行ってまいりました。

考えてみますとヨーロッパやアジアの監督当局、或いは取引所の方とは個別にお会いする機会もこれまであったのですが、アメリカの方というのはあまり機会がありませんでした。今回短い日程でしたけれども、それぞれある程度まとまった時間、お話し合いをすることができましたので、相互の理解、或いは信頼醸成ということに役立ったのではないかと思っております。

私からは以上でございます。

【質疑応答】

問)

先週、三井住友海上火災保険に業務停止命令を行いましたけれども、昨年来、明治安田生命、損害保険ジャパンと保険業界が相次いで厳しい処分を受けています。これに関連して改めて長官の御所見をお願いします。

答)

保険というのは安心を届ける仕事だと言われているのですが、この安心が届く基本は支払われるべき保険金が、支払われるべき時に正しく支払われるということによって支えられているわけであります。そうしたことを考えますと、今お話がありましたように昨年来明らかになってきております、生命保険会社の保険金の不適切な支払拒否、或いは損害保険会社における付随的な保険金の支払い漏れ、これは膨大な件数であったということでございますが、こういうことが相次いでおり、今回は三井住友海上火災保険について、不当支払い拒絶と、そして支払い漏れと、それぞれ多数発生しているというようなことでございまして、利用者保護に欠けるということで、大変に遺憾であると考えております。各社におかれてはもう一度保険業というものの原点に立ち返っていただいて、適切な保険金等支払態勢というものを自ら洗い直して、その再構築というものに努めていただきたいと考えております。

当局としては、保険会社における保険金等支払管理態勢の改善整備を促進するという観点から、先般監督指針の改正を行っております。今後ともこの指針等に基づきまして、検査、或いは監督のそれぞれの場面を通じて各社が保険金支払管理態勢の整備を図っているかどうか、これを検証していくということにしております。一般論でございますが、保険会社において、保険金等の支払について問題があると認められました場合には、その原因と程度に応じて適時適切な監督上の対応をしてまいりたいと考えております。

問)

関連してですが、医療保険の不払いがないか一斉報告を求めるという一部報道がありました。或いは明治安田生命では無期限停止にしていた部分について、その部分を外すという報道もございました。この2点について如何でしょうか。

答)

今、お話のあった2点、どちらについても現時点ではそうした方針を固めたという事実はありません。

最初の一斉報告徴求に関連しましては、先ほども申し上げましたように、6月2日、監督指針改正を行ったということで監督上の着眼点を明確化しております。これを受けまして、各社において、どんな態勢で保険金や配当金等の支払い管理が行われているか、その現状を改めて把握しようということで、6月16日に生損保全社、生保38社、損保48社に対しまして、アンケートを実施しております。こうした実態把握に加えまして、損害保険各社に対して、統一的な形で更に一斉報告というような形で検証を行う必要があるのかどうか、或いは仮に行う必要があるとしてどのような形で実施するのが適当か、こういった点を含めまして、今後検討していきたいと、これが現状であります。

それと、明治安田生命の無期限停止処分の解除に関連してのお話ですが、この会社については、当局に既に提出されております業務改善計画に基づいて、これまでも色々な取組みを実施してきておられます。当局としましては、この業務改善計画の進捗、実施状況全般を検証していく中で、例えば経営管理態勢や顧客保護に対して実行性のある取組み、或いは仕組みなどが構築されることで抜本的改革が確実に行われていることになっているかどうか、その進捗の具合はどうかというようなことを、現在見極めをしているという段階でありまして、最終方針は現状では決定をしておりません。

問)

冒頭の御説明の関連ですけれども、今回アメリカに御出張なされて何か合意したことだとか、或いはPCAOBの方ともお会いになられたとのことですが、ここではどのようなお話があったのかということを、もう少しよろしいでしょうか。

答)

非公式なトップ同士の会談ということですので、個々の話し合いの内容は御報告できないということは御理解いただきたいと思います。また、交渉に行ったわけではありませんので、合意事項があることではございません。全般に銀行監督、これはバーゼル II という大きな課題を全世界的に持っておりますし、市場関係でも様々な動きがクロスボーダーで起こっているという状況でありますので、お話を申しました中でも、全く一般論としてでございますけれども、当局間の情報交換や意見交換というのをより密接・緊密にしていくということは、大変重要だということについては共通認識をお互いに持っているということがよく分かりました。PCAOBに関しましても、個々の話題というのは余り申し上げにくいのですが、中央青山監査法人に関連してPCAOBは様々なお仕事があるわけでございまして、7月に先方の方が来日してPCAOBの仕事をなさっていく上で、日本の当局とどういった体制を築くかということについて、公認会計士・監査審査会或いは金融庁と意見交換をするということが明らかにされております。

問)

今のPCAOBについての話ですが、もう少し噛み砕いて教えていただきたいのですが。中央青山の処分に絡んで、何か仕事で7月に先方が来日して、日本の当局と意見交換をするという、そういうことですか。

答)

これは、そこでどういうお話をしたのかということを別にして御解説しますと、中央青山監査法人は米国のPCAOBにも監査法人として登録をしておりますから、PCAOBはその監督の責任を負っているわけであります。しかし、実際には中央青山監査法人は日本にある監査法人でありますので、もちろん当局同士の協力体制というものが一番の基本になるわけですが、登録を現にしている当局として果たすべき責任はあるということで、その中央青山監査法人の実態把握等についてもこちらとよく意見交換をしておきたいということです。

(以上)

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