五味金融庁長官記者会見の概要

(平成18年11月6日(月)17時03分~17時20分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

私からは特にございません。

【質疑応答】

問)

足利銀行の株式の売却の公募が2日に始まりました。金融庁としては、「地域における金融仲介機能の発揮」など3つの公募条件を掲げています。改めての質問にはなりますが、この条件をさらにかみ砕いて、どのような金融機関が受皿として望ましいか、長官の考え方をお聞かせ下さい。

答)

受皿に求める基本的な条件を踏まえてできるだけ意欲のある多数の方にご応募いただきたいというのがこの段階の話ですので、その視点から言いますと発表した基本的条件というのは十分かみ砕かれているように思うのですけれども、多少敷衍して申し上げますと、繰り返しですが、読めば分かるという話かもしれませんが、最初の大項目の金融機関としての持続可能性、それから質の高い経営管理の確保です。この点については公募要領の中には、金融機関としての使命・役割を十分理解した経営理念・方針、あるいは経営管理態勢、これが確立できること。自立性のあるリスク管理態勢が構築できること。財務の健全性の維持・向上ができること。大まかに言うとそのようなことが書いてありますが、これをかみ砕くとどうなるか。銀行として当たり前にできなければいけないことができること、ということになりそうです。敢えてかみ砕けばそういうことだろうと思います。

それから2つ目の大項目は、地域における金融仲介機能の発揮。これは地域金融への明確なコミットメントが存在すること、あるいは一時国有化の下で進められてきた改革の成果、これがベースになって、これをさらに発展させることができる。そういう営業態勢や人事管理政策を確立できること、それから地域密着型金融の推進、あるいは利用者利便の向上、地域の活性化への貢献ができる。これをさらにかみ砕くと、もう答えは皆さん予想しておられると思いますが、地域銀行として当たり前にできていなければならないことができる受皿であること、ということになりましょう。

3つ目の大項目、企業価値の適正な評価に関しては、足利銀行の企業価値の適正な評価ができること、あるいは譲り受けに必要な資金の確実な調達ができることということになりますが、これは国民の皆さんの信用を背景にしてここまでこの銀行を立ち直らせてきたわけですから、これを買い取ろうというのであれば、買い手として当たり前にできなければいけないことがちゃんとできる受皿であること。こういうことになるだろうと思います。

よく見ていただくと、そんな特別なことを求めているわけではないのですが、これまでの色んな破綻事例とか見てみますと、当たり前のことが当たり前にできている金融機関というのは、どれくらいあるかというのは、よくチェックしておく必要がありそうな気がいたします。

いずれにしても、金融庁として受皿について、この段階でどのような受皿が相応しいかと予断を持っているわけではありません。地域の利用者の信頼が確立できる、そして金融仲介機能を持続可能な形で発揮できる、こういうような適切な受皿の選定に向けて今後、手順・段取りを踏んで行きたいと思います。段取りが進むごとに、もちろん、さらに要求される条件というのは具体化し、厳しいものになっていくということであります。

問)

先程の質問とも関連しますが、地域金融機関については預金に対する貸出しの比率が伸びないなど、現実には地域での金融仲介機能がなかなか発揮しにくい状況が生じているという印象があります。再チャレンジの施策では、動産融資などの拡大を地域金融機関に求めていく動きもあるようですけれども、長官として今後、地域の金融機関にどういったビジネスモデルを望むのか、ご所見をお聞かせ下さい。

答)

以前、ちょっと違った視点からではありましたが、似たようなご質問があってお答をしていますので、ちょっと同じようなお答になるかもしれませんのでご容赦をお願いしたいと思います。

地域金融機関には、その地域金融機関独自の特性というのがあるわけです。それは、1つは営業地域が限定されているということ。そしてそこから当然出てくることですが、特定の地域ですとか、あるいは特定の業種ですとか、こういったものに密着した営業展開にならざるを得ない、あるいはなっているということです。それからもう一つは、主な融資対象というのは中小企業とか個人であるという特性があるわけです。

その特性から地域金融機関の役割というのを見ていきますと、それは、そこから導き出されますのは、地域に根ざして、地域の利用者ニーズにきめ細かに対応する、そして、地域経済に貢献をしていく、そのことが自らのビジネスの機会もまた増やしていく。それに今、金融仲介機能が発揮しにくいというようなお話がございました。外的な用件は多かれ少なかれどんな営業体でも制約条件は持っているわけですが、その中で地域金融機関としてその存在を意義あるものとして発展していくということであれば、今申し上げたような役割を果たせるように経営をしていく、それによって自ら経営の機会を広げていくということだろうと思うのです。そういう役割を持っているとすれば、ビジネスの進め方として一つのモデルになるのが、地域密着型金融であろう、というのが考え方として金融審議会のワーキングでも示されたりしているわけです。この地域密着型金融を進める際のいくつかの例としてアクションプログラムには、例えば、創業・新事業支援機能、こういうものを強化するとか、あるいは経営相談や経営支援の機能を強化していく、あるいは、事業再生、これに取組む、さらには担保・保証に過度に依存しない融資、お話にありました動産担保融資、こういったものもその選択の一つなのでしょうが、そうした融資を推進していくというような取組みがあるということが掲げられているわけです。

当局として地域金融機関は、こういうビジネスモデルでなければいけないということを示すつもりはありませんし、その地域金融機関の置かれている地域の特性などによって当然画一的に、こういうモデルでやれば地域金融機関は一番上手くいくとか、一番役に立つとかということを示せるわけではないということです。そういうことですから、一般的に少し大括りに申し上げるとすれば、以上申し上げたことから、一つは、地域の特性とか、地域における利用者のニーズとか、そういうものをきちんと踏まえたビジネスモデルを考える、そしてそれを明らかにするということ、これが非常に大事ということと、競争するということですね。健全な競争を、そうしたビジネスモデルを引っ提げて、健全な競争をしようという、そういう発想でもって経営に取組む、これが必要だろうと思います。それで経営が上手く行っているかどうかというのは、例えば検証するためには、地域の利用者の皆さんから十分な評価が得られているかということ、あるいは様々な健全性指標というのが十分合格点を取れるような推移を示しているかどうかというようなこと。こういったことで検証をしていく、そこに黄色い信号が灯るようであればどこかやり方が間違っているのだから、多分地域の特性ということとの関係で上手く行っていないのでしょうから、そこをもう一度見直してビジネスモデルの再構築をしていただく、そういうことであろうと思います。

問)

開示ルールが定める内部統制について、監査基準の取りまとめが大詰めを迎えているようですが、上場企業及び監査法人にとって内部統制ルールが持つ意味は何なのか、改めて長官のお考えをお聞かせください。

答)

まず内部統制報告書制度が導入されることになった趣旨を申し上げる必要があると思います。ディスクロージャーを巡って、昨今、不適切な事例が幾つか出ているわけです。社会的にも話題になった、問題視された事例が出ているのですが、その背景に内部統制が有効に機能していなかったからそういうことが起こったのではないかという指摘がございます。こうした背景から考えまして、ディスクロージャーの信頼を高めるためには、財務報告に係る内部統制を強化することが重要だというのが基本的な認識です。こうした観点から、6月に成立した金融商品取引法で、上場会社に対して財務報告に係る内部統制の有効性について、経営者の評価、それから公認会計士の監査を義務付けるという内部統制報告制度が導入された訳です。

そうした趣旨で導入されたということを踏まえた上で、その持つ意味を申し上げれば、上場企業及び監査法人にとってということでございますが、個々の企業にとって財務報告に係る内部統制の充実というのは、業務の適正化とか効率化に大きな効果があると考えています。そのことは、その企業のマーケットからの評価ですとか、あるいは様々な営業上のレピュテーションに恐らくいい効果をもたらす、利益をもたらすものであろうと思います。そのことが企業の経営の選択の幅を広げることになるであろうと思います。

それから監査法人等にとっては、今一番監査法人の大事な仕事であります財務諸表監査、この大事な仕事を充実させるという意味で、この内部統制ルールは大きな機能を果たすと考えます。

ただ、一番大きな意味というのは、こうしたことを通じて市場におけるディスクロージャー全体の信頼性、更にそれを通じての証券市場そのものに対する内外の信頼が高まるという効果があるはずだと私は思っております。これが恐らく最も大きな意味であろうと思います。

この内部統制の監査基準の取りまとめが大詰めというお話でございましたが、企業会計審議会の内部統制部会でご検討いただいております。年内或いは年初辺りには、実施基準等を取りまとめていただきたいと考えています。実際に経営に当たられる皆様からも、心構えをし、準備もするという視点から、監査基準がまとまるのを心待ちにしているという声も聞こえておりますので、鋭意ご審議を頂いて今申し上げたようなスケジュールでおまとめを頂くようにしたいと考えております。

問)

犯罪収益を被害者に返還しやすくする仕組みについて自民党などでも議論されていますが、たまたま今日一部で報道がありましたが、金融庁での検討状況と、今後の方針、そういった制度整備の必要性と合わせてご見解をお聞かせ下さい。

答)

確かこれは再チャレンジ施策にも掲げられていたと思います。金融庁として必要な検討を進めるべく心構えはしておりますが、まだ具体的にどういう場でいつまでにというところまでは段取りが出来ておりません。しかしながら、安倍内閣の一つの柱になっております再チャレンジの中に位置付けられた項目でありますから、今後関係する省庁ともよく連携をしながら、検討をしたいと考えております。

(以上)

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