佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成19年9月3日(月)17時05分~17時28分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

私のほうからは特にございません。

【質疑応答】

問)

足利銀行の受皿選定が昨年9月に始まってから1年経ちました。選定作業を巡っては、まだ、第3段階には入っていないと承知しております。選定作業は民間金融機関関係者等から、選定作業は長期化しているのではないかという指摘も聞こえてまいりますが、現段階における状況、そして、第3段階入りの時期の見通し、並びに最終決着がいつごろになるのかという目途も含めてお聞かせください。

答)

足利銀行の受皿選定作業につきましては、ご案内のとおり、3段階で進めるということにしております。現在その第2段階で、各受皿候補から提出された事業計画書について厳正な審査を進めているという段階でございます。足利銀行につきましては、受皿への移行後においても栃木県を中心とする地域において、利用者の信認を得て金融仲介機能が持続可能な形で発揮できることが、極めて重要だと考えております。第2段階では、こういった観点も重視しながら、事業計画書の内容について、詳細かつ深度ある審査を行っているというところであります。金融庁といたしましては、今後、受皿候補の絞込みを行った上で、第3段階に移行し、各受皿候補に対して、譲受け条件等の提出を求め、その審査を行っていくこととなりますが、現段階でこの第3段階への移行、或いは受皿の最終決定の時期について、確たることを申し上げられないことをご理解いただきたいと思います。

問)

先週のことですが、金融庁が税制改正要望を出したかと思いますが、配当にかかる軽減税率の恒久化を初めて求めるなど、新しい要望も入っております。どのような考え方に基づいて、こういった要望を作成したのか、その理由などについてお聞かせください。

答)

金融庁の平成20年度税制改正要望ですが、金融・資本市場の国際競争力の強化、そして、持続的で安心できる社会の実現と、こういった観点から必要な税制上の措置を要望するものでございます。現行の証券税制は、「貯蓄から投資へ」の流れの第一歩として、大きな役割を果たしておりますけれども、その流れはまだ道半ばであると思っております。例えば、我が国の個人金融資産に占める株式、投資信託の構成比は諸外国と比較して、依然として低い水準にあるということでございます。また、配当に係る軽減税率の恒久化という内容とも絡みますけれども、「貯蓄から投資へ」、或いは市場の国際競争力の強化といった課題に取り組んでいく際には、個人投資家を始めとする多様な投資家によってリスクテイクが行われる、いわば、厚みのある市場を形成することが必要でございまして、そのためには長期・安定的な投資の促進が重要な課題であるというふうに思っております。配当所得につきましては、さらに、法人税、所得税の二重課税の問題というのも内在しているわけでございまして、例えば、国際金融センターを有する諸外国、典型的には米国、英国でございますが、何らかの調整措置が講じられているということでございます。このため、金融庁としては、上場株式等の配当所得に係る10%の現行税率を特別措置ではなく、本則として要望をしているところであります。今後、平成20年度の税制改正に向けた議論の中で、関係者のご理解を得られるよう努力してまいりたいと思っております。

問)

金融商品取引法の本格施行まで1ヶ月を切りました。金融界では当法の施行に備えるための準備を進めておりますが、混乱も目立ってきたと聞いております。特に商品販売の際に確認を求める作業がかなり混乱していると聞いていますが、金融庁として、こうした事態に何らかの対応をしていくお考えがあるのか、法律の円滑施行にも向けてどのようなことを今お考えなのかお聞かせください。

答)

昨年6月に成立した金融商品取引法は、幅広い金融商品取引について、横断的な利用者保護の枠組みを整備するということと、そして、金融資本市場の公正性、透明性の確保を図るという大きな目的を有しておりまして、その円滑、かつ適切な施行ということは、極めて重要な課題だと思っています。同法では、適合性原則の考慮要素として、判例や英米の例も参考にしつつ、現行の証券取引法の「顧客の知識、経験、及び財産の状況」という部分がございますけれども、これに加えて、「金融商品取引契約を締結する目的」というものを追加しております。また、先般公表いたしました金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針におきましては、適合性原則に関する監督上の着眼点として、顧客属性や取引実態の的確な把握のための手続きに関する留意点を記載しているところであります。金融商品が多様化し、複雑化し、また、投資家層が拡大するという状況の中で、投資目的も含めて、顧客の属性、ニーズ等を的確に把握し、適合する金融商品を提供するということは、金融商品取引業者等に求められる重要な責務でありまして、本年9月末の同法の施行に向け、各社において、適切な態勢整備が図られつつあるものと考えています。金融庁といたしましては、こうした各社の取組みによって、投資者保護のための業界の慣行であるとか、文化がさらに向上していくことを期待しているところであります。

この話は、いわゆるルールの話とプリンシプルの話が関係してくると思いますけれども、ご指摘ご質問の趣旨は、例えば、追加された「投資目的」という項目について、金融庁がその詳細や把握方法をルールに定めて、現場の混乱を回避するべきではないかというこういったご議論も暗に含んでいらっしゃるのかもしれません。この点につきましては、利用者保護のための措置というのは、本来、各金融機関が、ミニマムスタンダードとしての法令等が定める基準を遵守したうえで、そこから先は各社創意工夫をして、自主的な取組みの中でよりよい方法を見出していただくという観点も重要ではないかと思います。金融商品取引が非常に多様化、複雑化する、そしてそういう中で、あらゆるケースの販売行為をあらかじめ詳細にルール化するということは非常に困難でございます。金融商品取引業者等においては、法令を形式的に遵守すればよいという考え方ではなくて、利用者保護の観点から望ましいことは何かという考え方の下で、適切な投資勧誘を行っていただく。また、そのための態勢を整備していただくということが重要であろうかと思います。いわば、横並びの発想ではなくて、利用者利便の向上、利用者保護の実を取るためにはどうしたらいいのかという、こういう発想で態勢整備に取り組んでいただきたいというふうに思っております。

問)

先週、渡辺大臣が会見の時に格付会社の実態把握について発言されていましたが、サブプライム問題の関係で、CDOなどの格付が急激に変更されたようなことが背景にあるかと思いますが、金融庁として格付会社の実態把握に対して、どのように取り組んで、どういった考えをお持ちでしょうか。

答)

格付機関の規制のあり方、或いはそもそも規制をするのかどうかという点につきましては、投資家保護、市場の公正性の維持、さらには、金融システムの安定性の確保といった観点から、様々な形でこれまでも議論されているところだと承知をいたしております。国際的には今般のサブプライム問題をきっかけとして、格付機関が果たしている役割について、疑義が呈され、その実態について調査をするべきである、或いは必要があれば、何らかの規制を考えるといった主張もなされているというふうに承知しております。金融庁としては、これまでも日常的にヒアリング等によって、格付機関の実態把握に努めているところでありますが、こうした国際的な動向等を十分注視しながら、格付機関を巡る制度的なあり方については、幅広い観点から研究していく必要があると思っております。

現在、ご案内のとおり、格付機関というのは、金融庁の直接の規制監督等の対象にはなっていないということであります。開示制度の中で、或いはバーゼル II のリスクウェイトの計算の枠組みの中で、一定の要件を満たした格付機関というものの格付けが利用可能となっていると、その意味で間接的に、例えば格付機関の客観性であるとか、独立性であるとか、透明性、さらには組織の構成のあり方、そして全体としての信頼性といったことに、あるべき方向性が間接的に示されているということではございますけれども、直接の規制監督の対象にはなっていないという現状でありますが、先ほども申しましたように具体的な動向も十分注視しながら、研究していく必要があるというふうに認識しています。

問)

昨日の報道でありました山梨県民信用組合の件ですけれども、こちらの救済スキームについて、報道されている限りですが、お考えをお聞かせください。それと全国の地域金融機関の、地域が苦しいという選挙の結果が出ましたけれども、地域金融機関の現状、その認識というのを改めてお聞かせください。

答)

ご質問の件につきましては、まさに個別金融機関に関わる話でございますので、私から直接コメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。あくまでも一般論として申し上げますと、協同組織金融機関の中央機関の果たす役割というものは極めて大きいというふうに認識をしております。これまでも役割を果たしていただいているわけですけれども、今後とも、信用組合の場合には全信組連でございますけれども、全信組連において、傘下の信用組合に対する経営相談であるとか、或いは資本増強支援の制度の活用といったことを通じて、個別信用組合の経営強化に向けた取組みが一層強化されるということを期待しているところでございます。

それから、地域金融機関全体の財務の健全性の動向についてのお尋ねについてでございますけれども、これはこれまでもしばしばお答えしているとおりでございますけれども、地域金融機関の財務の内容は趨勢的に着実に改善してきているということであります。それは、不良債権比率という指標で見ても、或いは自己資本比率という指標で見ても言えようかと思います。その一つの大きな要素として、ご案内のとおり、リレーションシップバンキング、地域密着型金融というものを、これまでは金融庁が旗振りをしながら、各金融機関においてご努力をいただいてきたということでございますし、今年度からは、より個々の金融機関の自由度が高まった形の中で、さらに、地域における金融仲介機能をそれぞれの地域特性や顧客のニーズにマッチした形で展開していただくことによって、例えば融資先企業の財務の健全化も進み、それが、金融機関自身の財務の健全化にも貢献するということ、またそれらが金融機関自身の収益性の向上にも資するということで、このリレーションシップバンキングの取組みを進めていく中で、財務の健全性を進めていくという形で、これまで取組みがなされてきているということでありまして、今後ともこういった努力の中で、さらに地域金融機関全体としての財務面の健全化が進んでいくということを期待しているところでございます。

問)

関連としまして、一般論としてですが、今回は中央機関の果たす役割というのは公的資金とは違うスキームの話ですが、やはりこのお金というのも限りがあると思うのですが、それほど積み立てられていないと思うのですが、仮に不良債権比率が下がってきていると言えども、苦しい地域金融機関がいくつもあると、その金融機関が今後、財務をより健全化するためにお金が必要となった時に、中央機関の果たせない役割といいますか、能力を超えることが出てくるかと思いますが、そういった場合をまず想定しているのかということと、そういう事態に関するお考えをお聞かせください。

答)

全体として着実に改善している中で、仮に改善が必ずしも芳しくないという金融機関があるとすれば、そういう金融機関について、特に大事なことは問題を早めに見つけだす、早めに認識してそのための様々な取りうる手段というのを、早めに経営判断をして、その改善に向けた取組みをやっていただくということが大事だと思っております。そういう中で、中央機関の、先ほど申し上げましたような様々な形でのサポートということも重要であろうかと思いますので、そういった全体としての努力というものをトータルで見ていくということが大事だと思います。

問)

足利銀行ですけれども、丁度一年ほど前に当時の与謝野大臣が、選定に着手するに当たって、概ね1年を目途と、丁度今頃を想定して決まるというふうなことを会見でおっしゃっていたのですが、現時点では第3段階に入っていないということは、最終的な決定時期はわからないにしても、去年の今頃、想定していたよりは少し遅れ気味だというふうなことなのでしょうか。

答)

一年前にこの選定作業をスタートさせる時に、私どもから申し上げましたのは、確か、過去の様々な破綻処理のケースを見てみますと概ね少なくとも1年ぐらいはかかっているというケースが多いので、参考として申し上げれば、そういうことだということで、確かお話をさせていただいたのではないかと記憶しております。受皿の選定という作業は、皆さんご案内のとおり3つの基準に沿ってやっているということでございます。1つ目は、受皿移行後も足利銀行が独立した金融機関として、財務の健全性を維持しながら、持続可能な形で営業が行われるということ。2つ目には、栃木県を中心とする地域において、的確な、また密度の濃い金融仲介機能が果たされること。また、そのためのコミットメントがなされること。そして、3つ目には公的負担を極小化するということ。いわば、足利銀行の将来に向けた企業価値をきちんと評価してもらえるということ。この3つの基準に沿って、選定をしていくということを申し上げたわけであります。まさに、その3つの基準に沿った中身の濃い審査を現在続行中ということでございます。今現在、第2段階に入っておりますが、この第2段階はご案内のとおり、各候補者から提出された事業計画の中身を精査している段階でございます。まさに、企画競争の部分でございますので、念には念を入れて、私どもは最大限の精密な審査をしなければいけないと思っておりまして、いわば、今、この一番重要なプロセスの一つ、この第2段階に少し時間がかかっているということでございまして、あらかじめ、いつまでに決めなければならないということを優先させることによって、この審査の過程が疎かになるということは避けなければならないと、優先順位はそちらのほうにはないというふうに思っております。

(以上)

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