佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成19年9月27日(木)17時01分~17時29分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

私のほうから一点だけ申し上げます。今朝の事務次官等会議では、総理、官房長官のご臨席を賜りました。総理からは「大変緊迫した状況での政権のスタートであって、行政の信頼を確立することが急務である。そのため、国民の立場に立って政策をしっかりと遂行してほしい。その際に公務員一人一人が高い志を持って、職務に精励するとともに、一人一人が倫理観をしっかりと持って進めていっていただきたい」、このようなご訓示をいただきました。また、官房長官からも、ほぼ同じ趣旨のお言葉をいただいたわけですけれども、各省の事務次官等に対して、事務方のリーダーとしてしっかりやってほしいということと、それから必要があれば、相談等、官邸へいつでもお越し下さいという、こんなお話を賜ったところでございます。金融行政に関しても、改めて国民の立場に立ってしっかりと諸課題に取り組んでいかなければならないということで気持ちを新たにしたところであります。私からは以上です。

【質疑応答】

問)

福田内閣スタートということで、金融行政について影響はあるのか、また、新たに総理から指示があったことなどありましたら教えて下さい。

答)

総理が代わられたことによる金融行政への影響ということでございますけれども、これは、渡辺大臣がすでに記者会見においてご発言されているとおりでありまして、金融行政の基本路線に変更はない、と考えています。総理から渡辺大臣に対しては、我が国の金融・資本市場の国際競争力の強化、また、多重債務の防止・救済のための貸金業制度の改革の円滑な実施、そして金融商品取引法の適正な運用など国民が金融商品を安心して利用できるような制度の整備・運用、こういった課題についてのご指示をいただいたと承知しております。こうした諸課題を中心として、引き続き的確に対応していきたいというふうに思っておりますし、いずれにいたしましても、金融庁としては引き続き、渡辺大臣、山本副大臣、戸井田大臣政務官のご指導を賜りながら、金融システムの安定、利用者保護・利用者利便の向上、公正・透明で活力のある市場の構築という金融行政の3つの大きな行政目的に向けて、職員一丸となって取り組んで行きたいと思っております。

問)

金融商品取引法の施行がまもなくですけれども、民間金融機関の準備状況、中でも、10月1日に民営分社化される日本郵政についてどのようにお考えでしょうか。

答)

今月末に全面施行される金融商品取引法でございますが、利用者保護の徹底といった観点から、販売勧誘規制等を大幅に強化しているということでございます。10月1日からは、ゆうちょ銀行は登録金融機関として、郵便局会社は金融商品仲介業者としての業務を行うことになるということだと思いますが、日本郵政株式会社においては、金融商品取引法の趣旨を十分にご理解いただいた上で、現在準備対応を進めていただいているものというふうに思っております。今後の監督方針でございますけれども、郵政に関して言えば、10月1日からゆうちょ銀行は銀行法による銀行、あるいは、かんぽ生命は保険業法上の保険会社となりますので、金融庁において他の民間金融機関と同様の監督を行うということになります。より具体的には、適切な経営管理が行われているかどうか、適切なリスク管理が行われて財務の健全性が確保されているかどうか、更にはコンプライアンス面を含めて業務の適切性が確保されているかどうか、こういったことをしっかり見ていくということになるかと思います。ご案内のとおり、このゆうちょ銀行とかんぽ生命保険会社につきましては、新規業務の認可といった郵政民営化法上の観点からの対応も必要になってくるということでございますので、ご案内のとおり、監督局に専担の郵便貯金・保険監督参事官室を設けて適切な監督に取り組むということにいたしております。これは、何度も申し上げていることですけれども、郵政民営化につきましては、民間金融システムの中に混乱を起こすことなくうまく溶け込むことによって、日本の金融システム全体としての安定と活性化に寄与し、さらには利用者利便の向上に資するということが大事だというふうに思っております。今後も、こうした観点を踏まえて、金融監督の立場から適切に対応していきたいと思っております。

民間金融機関の金融商品取引法の施行への準備は、これまでもいろいろ報道がなされているところですけれども、金融商品が非常に多様化をしている、あるいは、販売チャネル等も多様化している、こういった中で、広く国民各層に様々なリスク商品が適切な方法で販売されるとこういう金融システム、利用者保護の大きな枠組みが確立されるということがこの新しい金融商品取引法の最大の狙いでございます。そうした大きな狙いに即して、この金融商品取引法施行の趣旨を十分に体していただいて、各社において、自己責任に基づく創意・工夫も含めて、万全の準備を行っていただき、こういったいわば、安心できる金融商品の販売体制といったものを大前提として、様々なリスク商品、多様な金融商品が、適切な方法で広い範囲の顧客に提供される、こういう世界に近づいていくということを期待したいと思っております。

問)

ゆうちょ銀行について関連なのですけれども、ゆうちょ銀行の業務の拡大、スルガ銀行との住宅ローンの提携ですとか、これまでも新規業務参入ということがされてきましたけれども、このゆうちょ銀行の在り方、そういう市場に混乱をきたすことなく入り込んでいくという意味で、今後どういうペースで他の銀行と同じような形態をとっていくのがベターだと思われるのか、あと地銀への影響というのはどのように考えていらっしゃっているのかお聞かせ下さい。

答)

ご案内のとおり、郵政民営化法に基づく移行期間としては最大10年間という期間が設定されているわけです。どういったペースでというお尋ねに関して言えば、これは、申請をなさる郵政の側(日本郵政、その傘下の各社)でどういう業務を行いたいという頭の整理がまずあって、それで申請を受けて私どもが総務省と一緒に認可をする、という枠組みになっておりますので、こちらの方からあらかじめこういう段取り、こういうペースということを申し上げるべき筋合いでは必ずしもないというふうに思っております。一部復習になりますけれども、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の業務範囲については、ご案内のとおり、民営化当初は日本郵政公社と同様にするということ、そして移行期間中においては、民営化委員会のご意見を聴取した上で、他の金融機関とのイコールフッティングの状況、またゆうちょ銀行、かんぽ生命の経営状況等を勘案しながら、段階的に緩和していくということ、そして移行期間終了後は制限を撤廃するということ、こういう枠組みが規定されています。金融庁としては、こういった枠組みを踏まえながら、新規業務の申請があった場合には、新規業務を行うに足る業務遂行能力、業務運営体制の整備状況というものもよく見ながら、判断をしていくということになろうかと思います。

それから、地域金融機関への影響ということでございますけれども、これは郵政民営化の枠組み自体が、今申し上げたような形で段階的に移行期間の中で進んでいくと、こういう枠組みになっているわけであります。こういったことを前提として、地域金融機関の側においても、是非それぞれの地域の特性を踏まえて、それぞれの地域金融機関の特性を活かした競争力の発揮ということを行っていただく中で、競い合っていただき、結果としてさきほど申しあげた全体としての金融システムのさらなる活性化、あるいは最終的には金融サービスの利用者の方にとっての利便性の向上、信頼性の向上に結びつけていただきたいというふうに展望をしているということでございます。

問)

サブプライムローンについてですけれども、各地銀や地域金融機関など一部サブプライムローンに組み入れられた商品をもっていると言われていますが、金融庁が把握している限りではその被害はどの程度の規模か教えていただけますか。

答)

これまでも申し上げておりますように、金融庁としては日常的な各金融機関との情報交換や、やりとりを通じて全体としての個々の金融機関のリスク管理状況を含めて状況をフォローアップしてきているということでございます。そういったモニタリングやフォローアップの結果を踏まえた上で、これまで皆様方には、いわゆるサブプライム問題の日本の金融システムへの影響については、日本の金融システムそのものに深刻な影響を及ぼすような状況にはなっていないということを申し上げているわけであります。他方で、この問題はご案内のとおり、グローバルに見たときに、単にサブプライムローンという商品の問題だけではなくて、それを組み込んだ証券化商品の問題、さらには幅広くクレジット市場全般にも影響が及んでおりますし、さらに間接的に株式市場への影響あるいは為替市場への影響ということも起きておりますので、今後の状況の変化や展開ということを引き続き注意深くみていく必要があるというふうに思っておりまして、この点についても変更はないということであります。規模ということに関しては、これまでのお答えと同じですけれども、我が国の全体の金融システム、あるいは金融機関の業務の規模に比してこのサブプライム関連の金融商品に対するエクスポージャーというのは非常に限定をされているというのが私どもの一般的な認識でありまして、そういったこともありまして、我が国の金融システムに深刻な影響を及ぼすような状況にないと申し上げているところであります。

それから、欧米で一部問題が顕在化した金融機関がいくつかあるわけですけれども、こういった事例に照らしてみると、もう一つリスクの寄ってくるところとして、いわゆるABCPコンデュイット(導管体)、あるいは関連のSPCなりファンドなり、このコンデュイットといわれるところが、サブプライム関連商品へのやや長めの運用をしつつ、その資金調達をABCPを中心とした短期の市場性資金で調達しているという構造がありました。そこへきてこのサブプライム問題に絡むリスクの所在がはっきりしない、あるいはサブプライムを組み込んだ証券化商品のプライシングの信頼性が極端に低下した、こういったことも背景となって、クレジット市場全般が銀行間取引も含めて非常にタイトになった。そういうもとで今のABCPコンデュイットにおけるABCPのロールオーバーができない流動性の問題が顕在化したということがあるわけでありますけれども、こういったビジネスモデル、構造は、我が国の金融機関の場合には(持っているというのは一部あるわけですけれども)、サブプライム関連でこういった短期調達、長期運用というマチュリティー・ミスマッチを組み込んだようなビジネスモデルというものは極めて限定をされている、少なくとも国内では極めて限定的であるという状況であります。したがって、こういった観点からみても、日本の金融機関に与える影響は非常に限定をされているのではないかというふうに思っております。

問)

金額であげますと、国内でどれくらいになるのでしょうか。

答)

金額については、様々な試算が出たりしているわけです。しばらく前に、アメリカのバーナンキ議長がおっしゃった数字もありましたし、近いところでは、IMFが、また別の数字を出しているということでございますので、恐縮ですけれども、現段階では、具体的な数字を申し上げることについては、少し慎重であったほうがよいかと思っております。いずれにいたしましても、日本の金融機関のエクスポージャーというのは、全体として非常に小さいということであります。

問)

郵政民営化に関連して、運用について、ゆうちょとかんぽの運用資産は300兆円とも言われておられまして、かなり巨額で、そのうち国債の運用がほとんどということで片寄っているというふうにも言われておりますが、この運用のあり方について、株式市場に流れれば、活性化につながるかなという考え方もできるかなと思いますけれども、一方で国債を売るということについては、マーケットに影響を与えるという考え方もあると思います。民営化後のゆうちょ銀行、かんぽ生命についての運用のあり方について、どのようにお考えでしょうか。

答)

いわゆる新勘定と旧勘定に分かれます。その旧勘定の部分については、郵政民営化法、ないし関連法の枠組みの中で、一定の考え方が整理されているのだろうと思います。他方、新勘定のほうについては、民間金融機関としての運用の自由度がある程度あるということだろうとは思いますけれども、ポートフォリオとして有している有価証券等の処理の仕方、処分の仕方、或いは運用の仕方については、おそらくゆうちょ銀行なりかんぽ生命保険のほうで、自らの図体が大きいということを十分認識した上で、自らが起こすアクションというのが、マーケットに影響を及ぼし、その及んだ影響が自分のところに跳ね返ってくると、こういう側面も十分に踏まえて、行動することになるのだろうと思います。郵政民営化法の枠組みの中で、それぞれの金融会社、つまり、ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険に委ねられている業務について、金融監督当局として必要以上の介入をすべきではないというふうに思っております。先ほど申し上げたような意味で、非常に大きな市場参加者としての立場を踏まえた行動を考えられるのではないかというふうに思っております。

問)

足利銀行の受皿選定についてですが、今回、最終段階に移りましたけれども、どういうプレイヤーがいて、なぜ、その一部が選ばれて、そうじゃなかったのかと、選び方が一切公表されておらず、今回第二段階に応募した企業からも、理由がわからない、どういう選定でやっているのかもよくわからない、ということをよく聞きますけれども、まず、こういう選定のあり方をどう思っていらっしゃるのかと、今後、適切に説明させるならば、いつ、どの時点でどのように説明いただけるのか、そのへんをお聞かせください。

答)

今、お尋ねのあった選定の進め方、手順、情報管理のあり方については、昨年の9月に、この選定のプロセスを開始させていただいて以来、一貫しているわけです。その中で、私どもとしては、当初から申し上げていますとおり、受皿候補の審査にあたっては、金融機関としての持続可能性、そして、栃木県を中心とした地域における金融仲介機能の発揮及びそのことへのしっかりとしたコミットメント、そして、公的負担の極小化という三つの基本的な審査基準に則って、かつ、念のために申し上げておきますが、内外無差別で、厳正かつ公平な審査を進めてきているところであります。その過程で受皿候補の数であるとか、名称について、一切公表しないこととしておりますけれども、これは、次のような点を意識しているということであります。一つは、これまでの破綻処理の最終プロセスにおいて、途中経過を途中で明らかにするということはしていないというふうに承知しています。仮に受皿候補の名称とか数が明らかになるといった場合には、例えば、受皿候補同士の不適切な情報交換が行われるおそれ、また、受皿候補自身や、或いは競争相手からの意図的な情報流出による世間の誤解や混乱をもたらすおそれ、また、さらには、選から漏れた受皿候補の競争上の地位、その他正当な利益を損なうおそれ、こういったいくつかの弊害が生じるおそれがあるということで、こういった対応を取らせていただいているわけであります。従いまして、この基本的な方針に変更はございませんし、私どもとして厳正かつ公平な審査の手続きを進めていくと、この基本方針にも何ら変更はございません。

問)

最終的に一つに決まった時に、それまでの過程を振り返って、他の陣営とどういう部分が違って、このところが最適だったというような比較を踏まえながら、説明していただけますでしょうか。

答)

最終決定に至った段階で、今申し上げましたような、それぞれの候補者の競争上の地位に損害を及ぼすといったような話であるとか、様々な要素を勘案してどのような説明責任を果たしていくかというところについては、今後検討していきたいというふうに思っております。

(以上)

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