佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成19年10月1日(月)17時02分~17時28分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

こんにちは。私の方からは特にありません。

【質疑応答】

問)

今日スタートしたゆうちょ銀行、かんぽ生命ですが、トラブルの報告は入っていますでしょうか。

答)

今時点は、特段の問題が発生したというようなことは聞いておりません。

問)

生保の不払いの問題が一部で大きく報道されていますが、この不払いについて、生保側から報告などありますでしょうか。現時点で、生保の業務の改善は進んでいるという見方でしょうか。

答)

9月末をメドに調査を終了するというような目標を各社が持っていましたが、現時点で、当局に報告が行われたということはまだ聞いていません。それから、保険会社の業務改善の状況ですけれども、これまでご案内のとおり、かなりの期間にわたって、またそこそこ広い範囲にわたって、不払いや支払い漏れの問題が認められた会社に対して、業務改善命令等の行政対応を行ってまいりました。その中で保険金支払い管理態勢の整備など各種の再発防止策、そして業務態勢の再構築ということをお願いをし、問題が認められた場合には、当然、個別の対応もありました。こういったこれまでの官の側からのアクション、そしてそれを受けて、あるいはそれを受けずに各社における自助努力という部分もあると思いますけれども、民の側の努力、この両方の大きな流れの中で一連の対応が講じられ、そういう中で適切な支払いを行うための会社の組織の改革であるとか、あるいは、支払い漏れが起きにくいようなコンピュータシステムの開発であるとか、あるいは商品開発から保険金支払いまで各段階を通じた全体の部門横断的な管理態勢を構築するとか、そういった取組がなされてきているというふうに、全体としては受けとめております。経営者の皆さんの意識も2、3年前に比べると、相当変わってきているのではないかというのが私の実感でございます。

顧客によいサービスを提供するために守るべきコンプライアンスというのは、全体の業務を支える大前提であって、利益第一主義といったような経営姿勢からは、現時点において相当大きく是正が加えられたものになっているのではないかと思いますし、おそらく、各社それなりの努力をしてきている中で、また似たような問題が発生するというような場合には、競争もそれなりに激しい中で、顧客から見放されるということでしょうし、またマーケットから見放されるということだと思います。そういった点も含めて、経営陣の皆さんの意識、そしてその意識を社内で浸透させるための努力、こういったことが、全体として見ると相当進んできているというふうに思っております。ただいずれにいたしましても、金融庁としては、これまでの取組やその具体的な成果が出ることが大事ですから、その取組状況とその成果について、引き続きフォローアップをしていくということでしょうし、業務改善が足りないところについては、さらなる業務改善を促していくというようなことも、場合によってはあるかもしれないという状況かと思います。

問)

保険の窓販の全面解禁の問題ですけれども、解禁の与える顧客側のメリットはいろいろとあると思いますが、解禁によって生保レディが、かなり競争が厳しくなって人手が減るのではないか、とか、そういう業界の構造に与える影響とか、そういった生保業界に与える影響は、どのようにご覧になっているのでしょうか。

答)

もともと極めて大きな視点と申しましょうか、日本の金融システム全体を考える際の枠組みとして、各業態及び各業態の中における各社がそれぞれ特徴のあるビジネスモデルを掲げて、顧客のニーズにマッチした様々な商品を開発し、工夫をし、提供していくという健全な競争が行われることを通じて、全体としての顧客の利便性が高まり、金融仲介も効果的に行われると、こういう大きなイメージがあるということです。そういうことを進めていくために、段階を踏んでこれまで規制緩和が進められてきたということだと思います。この保険商品の銀行窓販というものも典型的に、段階を踏んでかなり時間をかけてこれまで進めてきているということだろうと思います。

現状をいわば、止まった状態、スタティックな状態で捉えて、その状態をできるだけ維持するというか、そういう形での展望を描くというのは、先ほど申し上げた大きな日本の金融システムの活性化、顧客への利便性向上というものと、マッチしないのではないかというふうに思っています。生命保険の募集人の皆さんの存在意義というのは、その特徴のある販売チャネルとして、それぞれの持っている強さ、あるいは顧客にとっての使い勝手のよさ、便利さというのがあるわけですから、それを活かしつつ競争の中で競い合っていただくということではないかというふうに思っています。

問)

先ほど、保険会社の経営陣の意識であるとか、その意識を浸透させるための努力ですとかが、かなり進んでいるというのが全般的な評価だったと思うのですけれども、春先から夏にかけて、(当時の五味)長官の会見でかなり保険会社に対して、保険の取組がなっていないという発言があったことを記憶しているんですが、ここ数ヶ月の保険会社の取組によって、相当状況が改善されたと、金融庁側としても認識が変わってきたという理解でよろしいのでしょうか。

答)

ここ数ヶ月だけで劇的に変わったのではなくて、不払いの問題、支払い漏れの問題については、私も監督局長の立場にいた3年間通じて相当長い時間にわたって関わってきておりますので、いわば、2年、3年というようなオーダーで大きく捉えたときに、そういうトレンドとしてかなり変わってきているということを申し上げたわけであります。五味前長官の会見のタイミングというのが、比較的最近であったということですけれども、そのときに、前長官がおっしゃっていた部分というのは、何を対象としておっしゃっていたか、手元に正確な記録がございませんから、わかりませんけれども、明るみに出てきた実態というのが、少し前の状態で、相当酷いものであったと(いうことであれば)、実際に相当酷い時期があったのは事実だと思います。その辺を捉えておっしゃったのであれば、私の認識とそれほど違わないということだろうと思います。これは、態勢整備とか経営者の意識とか、そういう部分ですから、縦横きっちりこの時期にこういう点数、といったような評価の仕方はなかなか難しいわけですけれども、相当酷い時期があったのは事実でして、これがこの2、3年の間に相当改善してきているということもおそらくあると思います。基本的には、認識は違っていないと思っています。

問)

もうまもなく出てくると思われる生命保険の不払い問題について、これは(各社が)報告した後、金融庁として内容を精査されていくかと思いますが、精査した結果、数字がドンと増えるようなことがあれば、これは、経営陣の姿勢が問われるということになるのでしょうか。

答)

仮定のご質問ですので、将来における行政対応について、予断を与えるようなことは申し上げるべきではないと思います。我々としては、予断を持たずに粛々と対応を検討していくということだろうと思います。数字が増えたら、単純に数字が増えたことだけで何かを判断するということではなくて、数字が増えた原因、理由ということも含めて、そのことが、例えば先ほど申しあげましたような、様々な業務執行態勢の改善の結果出てきたものなのか、それとも、およそ改善が行われていなかった結果、改めて把握されたことなのか、あくまでも例示ですが、そういった原因、実態というものの究明と併せて、今後の対応を検討していくということが大事だと思っております。

問)

生保の窓販ですが、先にモニタリング結果が出まして、今、各方面にご説明をして、明日は自民党の部会が開かれるようですが、一方で生保業界の一部から、不払いを踏まえて銀行と生保の責任分担のあり方を検討するべきだという意見が既に出ているのですが、こういったことは改めて議論する必要があるのでしょうか。長官のお考えをお聞かせください。

答)

今の状況というのは、金融庁としてモニタリング結果の概要をお示ししたということで、結果的に12月の全面解禁に大きな支障はないという意味合いも含んでいるわけですが、そういった点も含めて、ご質問のような様々な議論がありますので、そういった議論にもよく耳を傾けて、その意味あいなり狙いなりをよく伺ったうえで、そのことが12月の全面解禁を再検討しなくてはいけないというような要因に当たるのかどうかという点も含めて、よく議論をしていくということだろうということですが、基本的には先般金融庁から金融審議会にお示しした考え方、すなわち12月の全面解禁に支障はないという現状認識には変わりはないというところかと思います。

問)

郵政民営化ですが、西川社長を始め、いろいろな場所でいろんな方が、郵政のコンプライアンス問題というのはかなり懸念される、あるいは総務省からも指摘があるということで、改めて、金融庁としての姿勢と、それからスタート発足直後、かなり早い段階からビシビシやっていかれるというか、こういうのは一定期間、若干推移を見て、そういった対応を考えていくべきなのか、あるいは、顧客保護に関する問題がいろいろとあれば、ごく初期に早めにいろいろとやっていくべきなのか、そのあたりの考え方も含めてお伺いできればと思います。

答)

日本郵政公社のうちのコンプライアンスという側面に関しては、これまでご案内のとおり総務省において監督をしていただき、今日の民営化に向けて、コンプライアンス態勢が適正なものになるよう努力をしてきていただいていると思います。ご案内のとおり、これは繰り返し申し上げておりますとおり、ゆうちょ銀行は銀行法上の銀行、かんぽ生命保険は保険業法上の保険会社ということでありますので、他の民間金融機関と同じ目線で、法令遵守態勢を含めてチェックをしていくということであります。この点については、粛々と淡々と対応をしていくことであります。ただ、これまではご案内のとおり、主務大臣から委託を受けるという形で、リスク管理の分野についてだけ検査を行っていましたけれども、本来の意味での検査権限、本来の意味での監督権限というものが金融庁に発生したのは今日でございますので、今日以降、通常の検査・監督をやっていく、そして、もし重要な問題が確認されたというような場合には他の民間金融機関と同様の対応を行っていく、ということに尽きると思います。

問)

関連ですが、今日から銀行法上の管理に入ってくるわけですが、いわゆる銀行法上の管理の下で起きたものに対するものが、行政処分やそういったものの対象となるのか、昨日までもいろいろな問題が指摘されていますけれども、これが今後も一定期間の後にやはり改善されていないというようなときに10月1日前の事案が、処分等の対象となるのか、という質問に対してお答えください。

答)

おそらく、個別の事例について言えば、日本郵政公社の下で行われた権利義務関係というのは、貯金業務であればゆうちょ銀行に、保険であればかんぽ生命保険に引き継がれるということですから、そこの連続性というのは保たれているということで、そこは、ゆうちょ銀行なり、かんぽ生命保険において、問題が生じた場合には、責任を持って個別の顧客対応を行う等々の対応をしていくことが重要だと思います。他方、私どもが一番重視するものは、リスク管理の態勢、あるいはコンプライアンスの態勢、それらを含んだ全体としての経営管理態勢、ガバナンスというところであります。そういうところは、民営化後のゆうちょ銀行、かんぽ生命保険において、現状がどうなっているのかということを中心に見ていくということだろうと思います。それは、仮に公社時代に努力が足りなかったために、現状、ガバナンスなり、リスク管理態勢なり、法令等遵守態勢なりが欠如しているという場合であっても、あるいはその後の事情であっても、とにかく民営化された後の現状に即して、我々は判断をしていくということになるのではないかと思います。

(以上)

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