佐藤金融庁長官記者会見の概要
(平成20年2月4日(月)17時03分~17時28分 場所:金融庁会見室)
【長官より発言】
お待たせしました。私の方からは特にございません。
【質疑応答】
- 問)
-
今週末、G7が8年ぶりに東京であります。一義的には財務大臣の会合でありますが、最近は格付会社の規制ですとか、証券化商品のプライシングの問題ですとか、金融庁に関わるマターというのも結構多くあるかと思いますが、週末のG7にどのような議論を期待されるかという点についてお聞かせください。
- 答)
-
G7はご案内のとおり財務省の所管でございますので、直接のコメントは差し控えさせていただきたいと思います。一般論で申し上げますと、G7では通例その時点での世界経済の諸課題について議論が行われるわけであります。おそらく、今回の会合においても、最近の世界的な金融市場の混乱等についても率直な意見交換が行われるのではないかというふうに推測されます。G7において、広く世界的な金融市場・金融動向の問題について有益な議論が行われることを期待したいと思っております。
またこれに関連いたしまして、昨年10月に開かれたG7で、このテーマについて金融安定化フォーラムに対して、今回のこの世界的な金融市場の混乱の背景にある要因を分析し、それに対する処方箋を研究するようにという指示がなされたところでございます。これを受けて、金融庁としてもこれまでこのFSFでの議論に積極的に参加をし貢献をしてきたつもりですけれども、今回のG7において、この金融安定化フォーラムから中間的な報告を受けるという段取りになっているというふうに承知をいたしております。この報告の大きなテーマとしては、一つには流動性とリスク管理。二つ目に金融派生商品、証券化商品も含めての会計処理、あるいは価格評価。三つ目に金融仕組商品に関する格付機関の役割、格付手法及びその活用のあり方。四つ目に、オフバランスの投資手法の扱いを含めて、金融機関の監督に関する基本原則。とこういった項目がカバーされるというふうに聞いております。
金融庁としては、今後とも引き続き、今週末のG7を始めとする国際的な動向や取組も踏まえつつ、金融機関のリスク管理の状況や金融市場の動向等について、関係当局とも連携しながら十分注視していきたいというふうに思っております。
- 問)
-
EDINETの虚偽問題に関して、先週末に(EDINET運用改善)検討チームが発足しまして、今議論が始まりましたけれども、当日、主に事後規制の効果的なあり方等そういったことが議論されたようですが、金融庁としてはどのような議論を期待されるかということと、時期についてはその時点では決まっていなかったということですが、金融庁としては大体いつごろまでに議論の取りまとめを求めていらっしゃるのか、その点についてお願いいたします。
- 答)
-
この「EDINET運用改善検討チーム」につきましては、先週の私の会見のおりにこういうチームを立ち上げますということを発表させていただき、人選が固まったところで速やかに開催するということで、先週の金曜日に第1回会合を開催したところであります。検討チームは、虚偽の大量保有報告書がEDINETに掲載されるという今般の事態を受けまして、再発防止策と危機管理策について実務的・専門的な見地から検討していただくことを目的としております。会合においては、このような目的に沿って、各メンバーの実務経験、専門知識に基づいた多面的な議論が交わされることを期待しております。事柄の性格上、できるだけ早く結論をまとめていただくということが望ましいわけでありますけれども、他方で、議論を深めていただく必要のある項目もございますので、現時点で具体的な取りまとめの時期について、見通しを申し上げるのは差し控えたほうがよいかと思います。今後のスケジュールとして、とりあえず今週の水曜日、明後日の6日に第2回の会合を予定しておりまして、引き続き精力的に検討を進めていただけるものというふうに思っております。
- 問)
-
今国会で、国土交通省が提出予定の空港の外資規制改正案についてですが、金融庁としての見解と今後の対応についてお聞かせください。
- 答)
-
お尋ねの件は、現在政府部内で調整中の事案でございますので、コメントは差し控えさせていただきたいと思います。業務や事業の公共性ということに応じた公的規制が必要になるということのケースは十分考えられるわけですが、同時に我が国の金融・資本市場の国際競争力を強化するという優先課題を抱えている状況でもございますので、そういったことにも配慮をしていただくということが大切ではないかというのが、金融庁の基本的な考え方であります。
- 問)
-
関連して、国土交通省からは外資がやりたい放題しているというような指摘もありますが、正当な株主の権利の行使として、株式市場の自主性、主体に任せておくということに対しては、どのようにお考えでしょうか。
- 答)
-
先ほども申しました理由で、本件に関しては先ほど申し上げました以上のコメントは差し控えさせていただきたいと思います。
- 問)
-
先週の大臣会見にも金融庁として国土交通省に反対の意向を伝えてあるというお話だったかと思いますが、これはいつの段階でどういう内容、今おっしゃったように法的な規制を考えた上でも、今回のケースは反対であるとおっしゃったのか、どの辺まで具体的な話をおっしゃっていたのでしょうか。
- 答)
-
先般、渡辺大臣が会見でおっしゃいましたように、反対の意見を金融庁として出しているというのは事実でございますけれども、先ほども申し上げましたようにまさに現在政府部内で調整中の事案でございますので、それ以上の詳細についてコメントは差し控えさせていただきます。
- 問)
-
いわゆる毒餃子問題で話題になっているJT株に関してですが、重要な事実が今回公開される前に、大量の売りの注文が入ったり、不自然な値動きをしているということで、証券取引等監視委員会が調査に乗り出しているという報道もございますが、この事実関係はいかがでしょうか。
- 答)
-
ご指摘のような報道があったことは承知をいたしておりますが、個別事案に関する事項でありますし、また独立した権限を持つ証券取引等監視委員会に関する事項でございますので、コメントは差し控えさせていただきます。全くの一般論で申し上げれば、監視委員会は常日頃から幅広く証券市場に関する様々な資料・情報を収集分析しているところでございまして、そうした中で仮に法令違反に該当する事実があると疑われるような場合には、必要に応じて調査を行うというのが一般的な対応かと思います。
- 問)
-
東京スター銀行についてなのですが、アドバンテッジパートナーズというファンドが本日TOBをすると正式に発表しました。成立すれば、全株取得ということで東京スター銀行の上場廃止ということになるのですけれども、株主が移るということで金融庁は大株主の認可を既に出していると承知をしていますけれども、ここで改めて、東京スター銀行の元のファンドの株主からまたファンドに新しくなるということと、2年前に上場したばかりの東京スター銀行をファンドが買収するということでまた上場廃止になる、という2点について、金融庁内で認可をするに当たってどのような議論がなされたのか、あるいは長官はどのようにお考えになるのかということについてお聞かせください。
- 答)
-
銀行というのは他の一般の業態・業種の会社と同じように株式会社という形態を有しているわけですけれども、一方で非常に高い公共性を担っているという特徴があろうかと思います。それ故に金融行政上、他の産業にはないような公的規制がかかっているということだと思います。私どもの金融行政の立場からしますと、銀行についてはどのようなビジネスモデルであれ、それぞれの銀行がきちんとしたガバナンスを持った上で必要なリスク管理態勢を整備し、また所要のコンプライアンス、法令等遵守の態勢をきちんと整備した上で利用者のニーズにきちんと応えられる業務運営を行っていただくということが重要であろうかと思います。
他方で、先ほども申し上げましたように、株式会社という形態を有している。その中で株主としての行動というのは、我が国の法令に則って行動が行われる、判断が行われる、ということは当然あり得るということであろうかと思います。その際に、当然のことながら市場ルールは守っていただかなければならないということかと思います。また、株主との関係では、制度上、先ほど申し上げたように銀行法に基づく公共性ということに着眼して主要株主の認可といった制度があるということでございまして、主要株主の認可をする際には、金融庁としては先ほど申し上げたような銀行業としての公共性を全うできるような、あるいは全うする上で障害にならないようなそのような主要株主であることをチェックするという流れになっているということかと思います。
ご質問の個別のケースについては、これ以上のコメントを申し上げるのは差し控えたいと思います。
- 問)
-
一般論で結構なのですが、上場会社の株主が変わることによって上場廃止になるということについて、問題であるという認識は、主要株主認可の中であったのか、あるいは長官はどのように考えるのかということをお願いいたします。
- 答)
-
個別事案についてのお答えは差し控えさせていただきたいと思いますが、ご質問のような株主の変更ということが、先ほど申し上げたような公共性を全うしながら利用者のニーズにマッチしたサービスをより的確に提供し、そして企業価値を高めていくといった取組であることが期待されているということであろうかと思います。
- 問)
-
大手銀行をはじめ金融機関のサブプライム関連の損失が拡大していると思うのですけれども、金融機関の評価が甘かったのではないか、あるいは今も甘いのではないかという見方もできると思いますけれども、長官はその点についてどのように見ていらっしゃいますか。
- 答)
-
個別銀行の見通しがどうであったかということについては、おそらくそれを見る立場によって様々な評価があり得るのだろうと思います。ご質問の平成19年度第3四半期の決算、すなわち平成19年4月から12月までの9ヶ月の決算で、サブプライムに関連する損失は、各銀行によって定義や分類が必ずしも一致しているわけではないのですが、敢えて単純に合計すれば6,000億円程度という計算になると承知しております。この結果、こうした損失の拡大を主たる要因として、各行とも前年同期に比べて相当程度の減益になっているということかと思います。
9月期の決算以降、サブプライムに直接、間接に関連する損失が拡大した要因でございますけれども、グローバルな金融市場の混乱による影響が10月以降さらに拡大し、サブプライム関連商品等の価格がさらに大幅に下落したということが第一であろうかと思います。また、現在の市場の混乱は、サブプライム関連商品以外の幅広い証券化商品や、いわゆるモノライン保険会社(金融保証専門保険会社)の格下げなどといったことにも波及しているという状況でございまして、さまざまな因果関係のチャネル、さまざまな範囲で損失が発生する、拡大するという状況であるかと思います。先ほど申し上げた各行が公表しているサブプライム問題に関連する損失の中には、サブプライム関連商品以外の証券化商品にかかる損失であるとか、あるいはモノライン保険会社の格下げに伴う損失というのも含まれているのであろうと思っております。
ただし、我が国の金融機関については、欧米の金融機関と比べたときに、サブプライム関連商品を中心とした、今般の市場混乱の影響によって大幅に価格が下落している商品の保有額、あるいはこれらの商品から生じる損失額は、グローバルな比較をしたときに相対的には少ないということがありましょう。それからもう一つは、これもいつも申し上げていることですが、これらの金融機関の自己資本の厚み、期間利益の水準などとの比較をした場合においても、十分対応可能な領域ではないかと思っております。したがって、この問題が我が国の金融システムに深刻な影響を与えるという状況ではないという認識は、現時点において引き続き有しているということでございます。
当然のことながら、同時に、グローバルな金融市場の混乱は続いているわけでありまして、こうした状況の正常化には相当程度の時間がなお必要であると認識をしております。したがって、引き続き警戒を怠ることなく、金融機関の決算状況やリスク管理の状況、それらを取り巻く金融市場の動向等に、国内外の関係当局とも連携しながら注意深く見ていきたいと思っております。
- 問)
-
サブプライム関連損失については、単純合計すると6,000億円程度ということですけれども、9月に政府として、金融庁として集計した数字がありますけれども、12月時点でまたまとめ直すような必要といいますか、まとめ直して公表するということについてお考えはありますでしょうか。
- 答)
-
あれは11月でしたか、9月期を捉えて、金融庁の方で我が国の預金取扱金融機関をカバーした集計ベースでの金額を公表させていただきました。その趣旨は、マーケットに対してタイムリーな情報を提供することによって、市場に蔓延している疑心暗鬼、少なくとも日本のマーケットにおける疑心暗鬼を少しでも減じていきたいという趣旨でございました。どの程度の頻度で、どれくらいの作業を行い、どれくらいの対外公表を行うか、まだ最終決定はいたしておりませんけれども、先ほども申し上げましたような大きな趣旨からすれば、ある程度内容がまとまれば、そのようなものについて対外公表していくということは、十分検討に値する話であろうかと思います。
(以上)