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佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成20年4月28日(月)17時01分~17時24分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

こんにちは。

冒頭、私の方から一点ご報告がございます。お手元に関係のPDF資料が配付されているかと存じます。

ご案内のとおり、先週22日、証券会社職員によるインサイダー取引の容疑により逮捕者が出る事態が発生したことは極めて遺憾に存じております。

証券会社は、投資家及び資金調達者、すなわち有価証券の発行体が市場にアクセスする際に、市場仲介者としての機能を果たす公共的な役割を担っております。こうした役割に鑑みれば、証券会社は金融・資本市場における他の参加者以上に厳格な法令等遵守態勢、内部管理態勢の整備が求められています。またその役職員においても、証券会社の有する公共的な役割を個々に認識し、高い法令遵守意識、高い職業倫理と自己規律を持って業務を行うことが求められており、金融取引や個々の会社の業務等が多様化する中で、そのことを確実に担保するための実効性のある社内の管理態勢が不可欠となっております。

金融庁としては、こういう観点から、従来より証券会社の経営管理態勢や業務運営態勢等についての監督に努めてまいったところでございますが、今般の事例も踏まえ、本日、監督局より有価証券関連業を行う第一種金融商品取引業者に対し、以下の五つの事項について早急な対応を文書で求めたところであります。

第一、法人関係情報を入手し得る立場にある証券会社の役職員及びその関係者による有価証券等取引の実態の把握をすること。

第二、証券会社内部における情報管理態勢の再検証と必要な整備を行うこと。

第三、証券会社の社内規則の内容及び実効性の検証と必要な整備を行うこと。

第四、証券会社の役職員に対する法令遵守の徹底のための研修等の実施を行うこと。

第五、その他今般の事例を踏まえ、類似事案の発生防止のための必要な措置を検討すること。

各証券会社の代表の方々には、こうした対応を経営陣のリーダーシップの下で早急に進めていただき、我が国金融・資本市場の公正性・透明性に対する信頼向上に努めていただきたいと考えております。

またみなさまご承知のとおり、日本証券業協会におかれては、先日25日、「内部者取引防止に関する内部管理等検討ワーキング」を立ち上げ、協会員における法人関係情報の管理態勢等について検討を始めることを決定し発表されたところであります。また、東京証券取引所におかれては、本日、取引参加者代表者に向けて「インサイダー取引の未然防止の徹底にかかる取引参加者への要請について」という文書を発出し、証券会社における情報管理態勢の再点検や役職員に対する教育・啓発等によりインサイダー取引の未然防止の徹底を図ることを要請されています。

各証券会社におかれては、こうした各自主規制機関からの要請等も踏まえ、適切な内部管理態勢の構築に向けて、引き続き取り組んでいただきたいと考えております。

私からは以上でございます。

【質疑応答】

問)

今の野村證券のインサイダー事件の逮捕者が出たことについての関連ですが、現状では個人の方3人が逮捕されておりますが、法人の情報管理態勢、過去には逮捕者が出た事案で法人の行政処分というのがあったかと思いますが、今後、金融庁として野村證券の情報の管理態勢というのをどのように処分と言いますか、検討されていくのか、そのことについてお考えをお聞かせください。

答)

まず改めまして、高い公共性を担っている証券会社において、今般のようなことが起きたということについては極めて遺憾でございます。他方、本件そのものにつきましては、現在捜査当局及び証券取引等監視委員会において事実関係の解明が進められている段階でありますので、個社への対応についてのコメントは差し控えさせていただきたいと思います。

一般論として申し上げますと、金融庁としてはこれまでも証券会社の業務運営等に問題が生じた場合には、その時々の事案の内容を精査し、必要に応じ法令に則って適切に対応してきたところでございまして、その方針に何ら変更はございません。

先ほど冒頭でも申し上げたとおり、これに関連いたしましては本日、全証券会社宛に内部管理態勢の検証等についての対応を求めたところでもございます。市場仲介者として公共的な役割を担う証券会社においては、今般のような事例が再発することのないよう、引き続き適切な内部管理態勢の構築に努力をしていただきたいと考えております。

問)

先週の金曜日にホームページ上でアップされたかと思いますが、新銀行東京への検査の予告といいますか通知の件ですが、なかなか個社のことで話し難いかと思いますが、世間的な注目も大きいと思うので、もし検査のポイントなどをお聞かせ願えるならお願いします。

答)

新銀行東京に対しましては、先週4月25日金曜日、銀行法に基づく立入検査を実施する旨、検査の予告を行ったところであります。

他方、今回の検査を実施する上でのポイントといった点については、個別金融機関に関する検査に関わることでございますのでお答えは差し控えさせていただきたいと思います。一般論として、検査では、金融検査マニュアルに沿って経営管理態勢、法令等遵守態勢、リスク管理態勢を検証しているところであります。いずれにいたしましても、検査の実施にあたっては、監督サイドからの情報やデータのみならず、その他外部から寄せられている各種情報も用いながら所要の検証を的確に行っていく所存であります。

問)

野村(證券)社員によるインサイダー事件に関して、二点お伺いしたいのですが、2002年、2003年にかけてですか、前回野村の元社員が刑事告発を受けたときに処分を見送った経緯があるかと思うのですが、見送った理由、どのような経緯があるのかという点が一点。今回、結果として再発防止がされずに二度目を起こしてしまったということなのですが、行政としての責任というのでしょうか、そこのあたりをきちんと見ることができていたのかという点を踏まえて、現在のこの事案に関する金融庁としての対応をどう総括しているのか、そこを教えて欲しいのですが。

答)

一般論としてのお答えになると思いますが、金融庁としてはこれまでも証券会社等の業務運営等に問題が生じた場合には、その時々の事案の内容を精査し、問題となった行為の重大性、悪質性やその背景にある経営管理態勢の適否、また業務運営態勢の適切性等を勘案した上で必要に応じて法令に則って適切に対応してきたところでございまして、その方針に変更はございません。平成15年のニチメン・インフィニティ株式に関するインサイダー事件の際も、このような観点から対応してきたところでございます。いずれにいたしましても、市場仲介者として高い公共性を有する証券会社においては、法令遵守の徹底を含む適切な内部管理態勢を構築することが重要であると考えております。

なお、平成15年の野村證券の元課長に対する証券取引等監視委員会の告発等を踏まえ、金融庁としては同年法令に基づく報告徴求命令を発出し、この報告内容を踏まえ判断をしたということでございます。

先ほども申し上げましたように、その時々の事案の内容を精査し、問題となった行為の重大性、悪質性やその背景にある経営管理態勢の適否、業務運営態勢の適切性等を勘案した上で、改善に向けた取組みを金融機関の自主性に委ねることが適当かどうかという点について検討を行い、行政対応の内容を検討するという流れになっているところでございます。

問)

平成15年の例が出たのでお聞きしたいのですが、そのときも監督局長名など行政からの文書は出たのでしょうか。今回の対応が異例なのかどうかということお聞きしたいのですが。

答)

当時、同様の文書を出しているということは、この場で私自身が確認できておりませんので、後ほど確認いたしますけれども、多分そのような対応はしていないのではないかと思います。事実関係確認の上、もししているということであれば、またみなさんにお知らせしたいと思います。

問)

この五項目ですが、改めて読むと正直申し上げて当たり前のことが書いてあるような気がします。要するに今更、証券会社がこのようなことはやっているのではないかと思うのですが、これはやっていない可能性があるということなのでしょうか。あるいは、これは例えば(証券取引等)監視委員会の検査でもこれくらいのことは当然見ているだろうと想像しているのですが、見ていないのでしょうか。この二点についてお願いします。

答)

第一の当たり前のことではないかという点でございますが、この業務運営態勢、内部管理態勢という態勢面の話というのは、単純なある出来事が起きた、起きないということとは違って、単純に白・黒、単純にイエス・ノーでやっている、やっていないと判断することが難しい性格のものではないかと思います。問題は、それぞれの証券会社における業務内容やその組織のあり方に照らして、きちんとした法令等遵守、きちんとしたファイアーウォール、きちんとした情報管理というものがなされるような仕組みになっているのかどうかという点が大事なのではないかと思います。そのように考えますと、最近の証券会社の業務というのも非常に多様化をしてきておりますし、M&A(企業買収)、TOB(公開買付け)などと言ったいわゆる投資銀行業務というもののウエイトが高くなっている証券会社も存在しているところでございまして、そのような業務内容の多様化やその高度化にマッチした経営管理態勢、業務執行態勢というものができているかどうかということが重要なのであろうと思っております。

それから検査でありますが、検査に限らず検査・監督を通じてこのような業務執行態勢に重大な欠陥がないかという点については、従来から検証すべき項目として掲げてきているということであろうかと思います。また、改正後の金融商品取引法、確か第51条におきましては、証券会社の業務執行態勢に問題がある場合には、そのことを事由として行政処分を打てるような法的枠組みに変わったということでございます。以前の証取法(証券取引法)の体系が基本的には行為規制を中心とした体系であって、法令違反に該当する事実があるかないかという点を非常に重視していたわけでございますけれども、改正後の金融商品取引法はそれに加えまして証券会社、金融商品取引業者の業務執行態勢の適否ということにも着目した行政対応が可能になったということでございます。

問)

この2枚のペーパーで今日、報告命令を出されたということですが、いつまでに報告して、その結果はどのような形でまとめられて公表されるのかどうかという点について、もしお考えがあればいただければと思います。

答)

お手元にお配りしております紙は、報告命令という内容にはなっていないわけであります。お読みいただくとわかりますように、とりあえず早急にこの五点についての検討をしていただく、実態把握をしていただく、検証をしていただく、必要ならば所要の態勢整備や研修等を実施していただくということを促している、要請しているというものでございます。

先ほども申し上げましたように、自主規制機関である日本証券業協会においては、これに関連する自主規制ルールの策定作業に入るということがございましたし、また東京証券取引所においては同様の要請を自主規制機関として発出しているということでございまして、日本証券業協会、東京証券取引所といった自主規制機関と連携しつつ、当局としてもとりあえず同様の対応を促していくというのが本日の要請でございます。

問)

この文書は法律的には通達ということになるのでしょうか。

答)

通達という講学上のカテゴリーについて、それに該当するかどうかということについては、この場で判断しかねますので後ほど監督局の方へ確認をしていただければよろしいかと思いますが、監督局長名で文書番号も付して発出しているものでございますので、公文書であることは間違いないということであります。

一言で言うと、行政当局からの要請ということでございまして、直接法令に基づく権限の行使というものとは少し違うということかと思います。

【長官より発言】

先ほどお尋ねのあった平成15年のニチメン・インフィニティ株式の関連の事案の際の当局対応としては、今確認してもらいましたところ、今回のような要請は発出していないということでございます。

(以上)

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