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佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成20年5月19日(月)17時01分~17時27分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

こんにちは。冒頭、私の方から二点ご報告がございます。

第一点は「ベター・レギュレーションの進捗状況について」でございます。ご案内のとおり、金融庁では昨年夏以来、金融規制の質的向上を目指した取組み、すなわち「ベター・レギュレーション」への取組みを進めてきたところであります。四つの柱、五つの当面の具体的な取組みというのを掲げてございました。この「ベター・レギュレーション」の取組みについて、これまでどのくらい進捗したか、または進捗していないかといった点について、自らチェックし今後の取組みの参考とするといった観点で、昨年の7月から本年4月までの進捗状況を中心に取りまとめ、本日公表をさせていただくことになりました。

「ベター・レギュレーション」の取組みについては、その考え方が定着し効果が発揮されるには時間がかかることを覚悟する必要があると思っております。したがって、持続的・継続的な取組みとして、たゆまぬ努力を行っていきたいと考えておりまして、こうした息の長い取組みの進捗状況を測る意味で、ある程度定期的に、その進捗状況をチェックしていきたいと思っております。今後もおおむね半年ごとに進捗状況を調査していきたいと考えているところであります。

今回の進捗状況の取りまとめといたしましては、以下の取組み等を中心に四つの柱、五つの当面の具体的取組みごとに取りまとめをしております。

一つは先月公表いたしました「プリンシプルの共有」でございまして、「ルール・ベースの監督とプリンシプル・ベースの監督の最適な組合せ」という課題を進めていく上で非常に重要な役割を果たすもので、私どもとしては大きな成果と考えております。

もう一つの取組みは「サブプライム・ローン問題への対応」ということでございます。優先課題の早期認識と効果的対応、四つの柱のうちの二つ目の柱ですが、この対応が特に求められる政策課題でありました。問題の広がりと深さを認識した上で、我が国金融システムへの影響を分析し把握するといった作業、また、我が国の金融機関のリスク管理状況を注意深くフォローする等の取組みに行政資源を重点的に投入してきたところでございます。また、これらの対応に当たっては、海外当局との連携の強化、市場動向の的確な把握、情報発信の強化の取組みを併せて進めてきたというふうに思っております。

また、進捗状況の取りまとめの一環として、銀行、保険会社、証券会社等や、あるいは取引所、監査法人等、監督対象機関の方々に対して匿名形式でアンケート調査を実施し、その結果についても参考資料として公表することといたしました。アンケートにつきましては、「金融行政の透明性・予見可能性の向上」という課題、「金融機関等との対話の充実」という課題、そして、「情報発信の強化」という課題、これらを項目として取り上げております。今回のアンケートの一つの特徴としては、法人単位での答えではなくて、同一の組織に属する異なるランク、具体的には社長・頭取クラスと取締役クラスと一般職員の課長クラスの方々のそれぞれのレベルからご回答をいただいて、延べ1,500人を対象としております。こうしたアンケート結果等、外部からの評価を見ましても、「ベター・レギュレーション」のこれまでの取組みについては、相応に進捗してきているというふうに思っております。また、今後の課題としては、アンケート結果から、「ベター・レギュレーション」の考え方の我が金融庁職員への周知徹底、そして、実務者レベルでの対話の充実、更には説明会等情報発信の機会の拡充といったことが上げられようかと思います。

繰り返しになりますが、「ベター・レギュレーション」の取組みについては、その考え方が定着し効果が発揮されるには時間がかかることを覚悟すべきであると思います。今後、引き続き、財務局の職員も含め当局の職員一人一人の意識改革に継続的に取り組む等、たゆまぬ努力を行っていきたいというふうに考えております。

私のご報告の第二点目は、インサイダー取引の関係でございますが、先般公認会計士がインサイダー取引を行い、行政処分の対象となるという事案が発生いたしました。この件については、既に日本公認会計士協会が3月18日、全ての監査事務所に対して内部管理態勢の整備等を要請したところであります。しかしながら、その後、証券会社の職員等によるインサイダー取引の容疑により逮捕者が出るといった事案が発生し、金融資本市場のインフラを担う者における実効性あるインサイダー取引の防止策の徹底ということが一層強く求められる状況となっております。かかる状況に鑑みまして、本日、日本公認会計士協会に対し、更なる対策の実施を要請したところであります。要請の具体的な内容については、お手元にお配りしたPDF要請文書に記載されているとおりでございます。詳細については総務企画局企業開示課にお問合せください。

私からは以上でございます。

【質疑応答】

問)

「ベター・レギュレーション」の進捗状況について報告されましたが、特に金融機関のアンケート調査をどのように受け止めていますでしょうか。「ベター・レギュレーション」の進捗で足りない等の指摘があったとお考えでしょうか。また、こういった結果を踏まえて、金融規制の質的向上に向けてどのような具体策を今後とっていけばよいとお考えでしょうか。

答)

アンケートの結果を見てみますと、例えば「透明性・予見可能性」につきましては、「改善した」あるいは「やや改善した」という答えを合計しますと8割近くになる。また、「金融機関等との対話」については、これも「改善した」、「やや改善した」を合計すると、6割近くのシェアを占める。その中で国内の金融機関と比較して、外資系金融機関の評価が相対的に高く、先ほど申し上げた三つのランク別に見てみると、ランクの高い方が評価が高かったという特徴が出ているかと思います。また、更に「情報発信の強化」については、これも「改善した」、「やや改善した」の合計が8割近くに及んでいるということでございます。このうち、英語での情報発信についても外資系金融機関の方々に伺ったところ、「改善した」、「やや改善した」の合計が6割を超えるといった結果になっております。

こういった状況を見てみまして、相応の進捗はしているのではないかというふうに思っているわけでございますが、他方、今後の課題としては、先ほども申し上げましたけれども、この「ベター・レギュレーション」の考え方について、当局サイドで職員一人一人への徹底を図るといったこと、あるいは、対話の充実に関して言えば実務者レベルでの対話を充実させること。あるいは、自由に意見交換できるような機会を拡大させること、といったことが課題になろうかと思います。金融庁による情報発信の拡充といたしましては、説明会等の拡充、あるいはウェブサイトの利便性の向上といったことが課題として浮かびあがっているというふうに思っております。

いずれにいたしましても、この「ベター・レギュレーション」の取組み、時間がかかることを覚悟すべきだと思っておりまして、例えば、プリンシプルに関しても、先月行われた金融サービス提供者とのこのプリンシプルの共有ということは一つの大きな成果ではありますが、これはゴールではなくて、今後これを基に共有されたプリンシプルの趣旨を職員一人一人がしっかりと理解するということを目指す必要があるわけでありますし、さまざまな法令やルールの運用にあたって、背後にある大きな理念、すなわちプリンシプルに立ち返った適切な判断を行うよう努力していく必要があるというふうに思っております。

問)

先週、山形県に本拠地を置いている荘内銀行と秋田県に拠点を置く北都銀行が統合の方針を発表されました。地域金融機関がおかれている現状を踏まえて、両行の統合について、また、今後の地域金融の再編の可能性についてどのようにご覧になっているかお聞かせください。

答)

荘内銀行と北都銀行は5月14日に将来の経営統合を視野に入れた資本提携について、基本協定書を締結したという旨の公表をしたというふうに承知しております。両行によりますと、今般の荘内銀行による北都銀行の増資の引き受けを契機として、更に平成22年4月を目途に両行のミドルオフィス及びバックオフィスの機能を共有化するオープンプラットホーム型の持株会社を共同設立するということとしており、今後、両行において統合に向けて真摯な協議が進められていくという状況であるというふうに承知をいたしております。

地銀の再編の可能性につきましては、各地域銀行において、自らの経営判断の下で、将来を見据えた経営戦略の構築や経営強化に向けた対応等について真剣に取り組まれることが重要でございまして、再編をいわばあらかじめ想定するような、そういった対応を金融庁は行っていないということでございます。勿論、再編や経営統合というのは各地域銀行が経営戦略・経営の強化に向けた検討をされる際の一つの選択肢として重要であると思いますが、あくまでも各地域銀行の自主的な経営判断に基づき決定されるべきものというふうに認識をしております。

問)

先週、みずほフィナンシャルグループや三井住友フィナンシャルグループなど大手銀行グループの2008年3月期決算の開示がありました。今週もいくつか進んでいるようですが、サブプライム問題以後の市場の混乱を受けて、開示された決算内容や、開示の状況をどのように評価されていますか。また、現時点でのサブプライム問題以後の市場の混乱と、日本の金融機関に対する影響について、どのようにご覧になっているかお聞かせ下さい。

答)

主要行等の平成20年3月期決算については、まだ公表していない銀行が存在しているわけですが、これまでに公表された結果をみてみますと、まず、本業の利益を示す実質業務純益は、第一に利ざやの改善、貸出残高の増加がともに限定的であったこと、第二に、市況の悪化により手数料収入が減少したこと、第三に、他方で将来をにらんだ前向きな支出などにより経費が増加したこと、などから、前期比で微減となっていると承知しております。

他方、最終的な利益、すなわち当期純利益については大きく減少をしております。その原因は、まず、第一にノンバンク関連の損失が前年比で減少した一方で、第二にサブプライム・ローン関連を含む証券化商品等に関する損失が発生したこと、第三に株式の減損や与信関係費用が増加したことなどが要因でございます。また、グローバルな市場の混乱を受けた株価の下落によって株式の含み益が減少しているということも承知しています。

このような状況にございまして、サブプライム・ローン問題を契機とするグローバルな市場の混乱は、我が国の金融機関の決算にも相当程度の影響を与えていると認識をしております。しかしながら、1社で3兆円から4兆円にものぼっている損失を計上している欧米の巨大複合金融機関と比較いたしますと、我が国の金融機関の損失は相対的には限定をされている、もちろん個社によるバラツキはございますが、相対的に限定されている。また、全体として実質業務純益の範囲内にその損失が収まり、年度でみますと、グループ全体としては黒字を計上していることなどから、現時点においてサブプライム・ローン問題が我が国の金融システムに直接、深刻な影響を与える状況にあるとは考えておりません。この認識に、今のところ変更はございません。

それからもう一つは、開示の状況についてでございますけれども、証券化商品などに関する開示状況につきましては、先般4月11日に公表された、金融安定化フォーラム(FSF)の報告書において、「金融機関は、現在の市場の状況に関して最も関連の深いリスク・エクスポージャーについて、先進的な開示事例も踏まえつつ、適切な開示を行うべき」というふうにされたところであります。ただし、このFSFの報告書は、先進的な開示事例に沿った画一的開示を求めるものではございませんで、エクスポージャーの大きさによって、開示の詳細さの程度に差をつけることや、決算発表時においてポイントを示し、後にIR資料やディスクロージャー誌等において詳細な情報を開示する、といった柔軟な対応も想定されているものというふうに考えられます。法令で定められた項目以外の開示内容については、各金融機関において判断されるべきものでありますが、金融庁としては各金融機関がFSFの報告書の先進事例も参考にしつつ、自らの判断のもと適切な開示を行うことが重要であると考えております。これまでの各行の決算発表では、全体としてみますと、以前と比べて開示の充実が図られていると考えておりますが、今後公表を予定している金融機関の決算や各行のIR資料、ディスクロージャー誌などにおける開示の状況についても注視してまいりたいと考えております。

問)

先週の三菱東京UFJ銀行に続いて、今日の午前中、住友信託銀行でもATMのシステム障害があったようで、最近ちょっと続いているなという印象があるのですが、こういったことを受けて大手銀行のシステムの監督と検査をもうちょっと強化したいとか、最近のシステム障害を受けてのお考えをお聞かせ願えますか。

答)

住友信託銀行において、本日朝のシステムの起動時からATMが不安定な状況となるといった障害が発生した、というふうに聞いております。現在、同行においては、店頭に状況を開示するとともに顧客を窓口に誘導するといった対策をとったというふうに聞いておりますが、いずれにいたしましても、顧客に影響が及ぶような障害が発生したことは遺憾でありますし、主要な銀行で相次いで、このような顧客に影響の及ぶシステム障害が発生したということについても遺憾に感じております。金融庁としては、まずは顧客に影響のあった部分についてしっかりと顧客対応をすること、そして、障害の原因を正確に特定すること、また、それに基づいて再発防止をきちんと講じること、これが極めて重要だと思っております。

検査・監督上の対応につきましては、金融庁に与えられた行政資源をできるだけ効果的に使っていきながら、できるだけフォワードルッキングな対応を促していく、という取組みを継続していきたいというふうに思っております。

問)

住友信託銀行については、銀行法上の報告徴求を求められたのでしょうか。あるいは、求める方針なのでしょうか。

答)

これは、三菱(東京UFJ銀行)の時にもちょっと申し上げましたけれども、銀行のシステム障害が発生した場合には、既に一般的な形で出してあります包括的な(銀行法第)24条報告の命令というのがございますので、それを受けて、まずは銀行の方からその24条の報告が提出される、こういう仕組みになっているわけであります。個別事案ごとに更に追加的な詳細な報告を求める必要があれば、これは一般論でございますけれども、追加の対応をすることもありうべし、ということでございます。

(以上)

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