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佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成20年6月9日(月)17時03分~17時29分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

こんにちは。

冒頭、私の方から一点申し上げたいと思います。

深夜帰宅の際のタクシー利用に関しまして、金融庁職員においても運転手の方からビールやおつまみ等の提供を受けたといったケースが判明したところでございまして、国民からの疑念や不信を招いたことについて残念に思っております。現在、金融庁では事実関係をもう少し正確に把握するために、再度調査をやっているところでございますけれども、本日、とりあえずの防止策として以下の四点を全職員に周知をしたところでございます。

第一、業務の効率化、早期退庁等の励行によって、深夜タクシーの利用を抑制すること。

第二、公費で深夜タクシーを利用した際にタクシー運転手から金品、-これは飲食物の提供を含むわけですけれども、こういったもの-の提供があった場合には一切この受領をお断りするということ。

第三、特定のタクシー運転手との固定的な関係による深夜タクシーの利用を禁止するということ。

第四、料金メーターに表示された額の職員自らによるタクシーチケットへの記載を徹底すること。

以上の四点でございます。私からは以上でございます。

【質疑応答】

問)

今のタクシーの件で、再度調査しているということですが、これは一つまとまるまでにどのくらい時間がかかるのでしょうか。

答)

現時点でいつということは申し上げにくいですけれども、できるだけ早くまとめたいと思っております。

問)

証券化商品の情報開示についてですが、先週金融庁の方で銀行と協同組織金融機関のサブプライム以外の証券化商品の保有額・損失額を公表されました。4月のFSF報告を受けた対応ということですけれども、各金融機関が自主的な判断で行っている開示とは別に、当局がまとめて集計して開示するということの狙いと意義をお聞きしたいと思います。また、各金融機関は自主的な判断でこれまで開示をしてきたわけですけれども、金融庁は先日示された開示基準が今後の基準になるという理解でよろしいのでしょうか。

答)

先週の金曜日、6月6日に、金融庁におきまして、昨年9月末、12月末に引き続いて、我が国の預金取扱金融機関について本年3月末時点のサブプライム関連商品等の保有額、また評価損益・実現損益を取りまとめて公表させていただいたところであります。また、今回の公表に際しましては、サブプライム関連商品だけではなくて、より広くサブプライムとは直接関係しない証券化商品、具体的にはCDO(資産担保証券)、RMBS(住宅モーゲージ担保証券)、CMBS(商業用不動産担保証券)、レバレッジド・ローンといったカテゴリーでございますけれども、これらについてもその保有額等を取りまとめ、また、損失率も含めて公表をさせていただいたところでございます。

証券化商品等に関する開示、ディスクロージャーにつきましては、先般4月11日に公表されました金融安定化フォーラム(FSF)の報告書において、「金融機関は現在の市場の状況に関して最も関連の深いリスク・エクスポージャーについて、先進的な開示事例を踏まえつつ、適切な開示を行うべき」という旨の指摘がなされているところでございます。こうした中で、この3月期における各金融機関の決算の開示状況を見てみますと、各金融機関によって若干の対応の違いはあるわけですけれども、このFSFの報告書の先進的な事例を参考にしつつ、各金融機関のリスク特性に応じて、概ね当該報告書の先進的事例に沿った開示になっているものというふうに評価をしているところであります。

そのことにつきまして、金融当局でいわば集計ベースで取りまとめて公表したことの意義でございますけれども、これまでも金融庁は、いわば世界に先駆けて、サブプライム関連商品等について、我が国預金取扱金融機関全体の保有状況を統一の共通の基準によって集計をし、合計額を開示をするということで、我が国預金取扱金融機関がどれくらいの大きさのエクスポージャーを有しているのかということについてお示しをすると同時に、そのことによって我が国金融システムへの影響についてその規模を計測することに資するということで対応してきたところでございます。これは、こういった取組みはサブプライム・ローン問題が我が国の金融システムに与える影響についての正確な理解を促す、あるいはグローバルな金融市場の混乱が続く中で不透明感の除去に資する、といった狙いを持って行っているものでございます。こういった対応はベター・レギュレーション(金融規制の質的向上に向けた取組み)の中にも入っております情報発信の強化という趣旨にも沿ったものであるということでございまして、今回はサブプライム関連金融商品以外のより広い証券化商品全般について、そういった情報提供をさせていただいたということで、その取組みを更に一歩進めたものだというふうに自負しているところでございます。

それから、今回のこの基準が各金融機関が個別に行う開示の基準になるのかという点でございますけれども、法令で定められた項目以外の開示内容につきましては、各金融機関においてそれぞれ判断されるべきものであると思います。それぞれ、金融機関によってリスクプロファイルも異なりますので、開示のニーズについてもウエイトが微妙に違ってくるということはあり得ようかと思います。金融庁としては、各金融機関がFSF報告書の先進的な事例や今般の金融庁からの公表内容を参考にしていただいて、自らの判断の下、適切な開示を行っていくということが大変重要だと思っておりまして、今後とも各金融機関のディスクロージャーの取組みについて注視してまいりたいと思っております。

問)

先週、野村證券のインサイダー事件に関して、同社が社内調査報告書をまとめたということがありまして、基本的には幹部社員の幹部の方の処分及び当該部署の情報管理の徹底であるとか、人事研修であるとか社員教育を中心とした再発防止策ということが柱だったかと思いますが、この調査報告書から、再発防止策についての評価と実効性について長官はどのように見ていらっしゃるのかということをお聞きしたいと思います。

答)

まず事実関係のおさらいですけれども、去る6日、先週の金曜日に、野村證券が設置いたしました特別調査委員会がその調査結果の取りまとめを行い、これを受けて野村證券が以下のような再発防止策を含む対応を公表したということでございます。その中には、案件のコードネームを使用することの徹底や、あるいはアクセスログ(いつ、誰が、当該情報にアクセスしたかの記録)の定期的な検証、これらの情報管理態勢を徹底するということ。また、職業倫理を最上位とする人事管理や研修の強化。更には、悪質な株式取引に対する厳格な処分等の取組み、といったことがその柱として盛り込まれているということかと思います。

個別金融機関が公表した調査報告、あるいは再発防止策でございますので、これについて直接評価を加えるということは差し控えたいと思いますけれども、一般論として申し上げますと、証券会社、その非常に高い公共性を担っているという点にかんがみても、厳格な法令遵守態勢、内部管理態勢の整備が求められているわけでありまして、更に、その役職員も証券会社の有する公共的な役割を個々に認識をし、高い法令遵守意識や職業倫理と自己規律を持って業務にあたっていただくということが求められていると思います。

ちなみに、金融庁としては先般4月28日に全ての証券会社宛に内部管理態勢の検証等についての早急な対応を図るということで要請を行ったところでございまして、自主規制機関とも連携しながら、業界全体として、このような事案が発生しないような実効性のある再発防止策が策定・実行されることを期待しているというところでございます。

その実効性ということに関して申し上げますと、これは先般も言及させていただきましたけれども、証券会社の業務の内容というのも非常に多様化し国際化をしているということでございまして、そのために必要となってくる人材も多様性あるいは国際性ということが高まってきているということでございますので、そういった実態にあった実効性のある情報管理、職員の倫理規範の確立及び業務の遂行ということが求められてくるということであろうかと思います。今般の再発防止策というのもある程度そういった認識をベースにしているものであるのではないかというふうに思っております。

問)

FSF(報告書)に沿った証券化商品の開示ですが、これは預金取扱金融機関以外の証券会社や保険会社といったところについても集約・集計していかれるのでしょうか。

答)

そこは、我が国の実態に即して考えていくのが妥当だろうと思っております。これまでも申し上げてきているところでございますけれども、預金取扱金融機関以外でも一部の大手保険会社、また一部の大手証券会社において、サブプライム関連、あるいはより広く証券化商品のエクスポージャーがある、あるいはそこから相当規模の損失が発生しているという実態はあるわけでございますが、今申し上げた大手証券会社のうちの一社は、先ほども申し上げました預金取扱金融機関の大きなグループの中に入っているということでもあり、保険会社の業態、証券会社の業態ということでとらえてみますと、特定の少数の大手の機関に限られておりますし、そういった実態を踏まえますと、これについて集計をするということについては現時点ではそれほど高い優先順位を置かなくてもよいのかなというふうに思っております。もちろん、今後の事態の変化によってそういう必要が出てくれば、また、別途検討していきたいというふうに思っております。

問)

証券化商品ですが、サブプライム関連以外の証券化商品の含み損の部分が地域金融機関や協同組織金融機関で、計数を見た感じでちょっと多いような気もしたのですが、改めてそのような部分についてどのように認識されていらっしゃるかお聞かせください。

答)

今回、サブプライム関連以外の証券化商品を幅広く捉えたという中で、全部を合計しますとエクスポージャーで22兆7,930億円ということで、この数字自体はそこそこ大きいわけでございますけれども、サブプライム関連以外でございますので、例えば商品別の毀損率を見てみると、3月末でサブプライム関連商品の場合は48%にも達しているのに対して、CLO、CDO(資産担保証券)で14%、サブプライムを除いたRMBS(住宅モーゲージ担保証券)で4%、そしてCMBS(商業用不動産担保証券)については3%、さらにレバレッジド・ローンについては1%ということで、毀損率も非常に限定されているということがあります。この背景の一つとしては、我が国金融機関が保有している証券化商品の中には、日本国内の債権をオリジナルアセット(原資産)とする部分も相当大きいということでございましょうし、米国におけるオリジナルアセットを含むものもおそらくあると思いますけれども、サブプライムに比べれば相対的に毀損率の小さな分野であると認識いたしております。

業態別に見たときにそれぞれ特徴があろうかと思いますが、全体として見ると圧倒的に大きなウエイトを占めているのは大手銀行等であるという認識をいたしております。計数的に、例えば協同組織金融機関のエクスポージャーがそれなりの規模になっているということはあろうかと思いますけれども、協同組織金融機関の中には信金中金といったところも確か含まれていたかと思います。大事なことは、それぞれの金融機関がそれぞれのリスクプロファイルに即して、自らの保有しているリスクバッファー(リスクに対応して積み上げている自己資本等)にも照らして、きちんとしたリスク管理をしっかりとやっていただくということであろうかと思います。

問)

タクシー利用に関してですが、「業務の効率化」ということをご指摘されましたけれども、かなり人が少ない中で業務をされているのだと思うのですが、業務の効率化は可能なのでしょうか。

答)

それぞれの部署で各人が工夫を積み重ねていくことによって改善できる部分が全くないとは言えないのではないかという気がしております。とにかくそのような努力をしてみるというところでしょうし、そのような試行錯誤をやってみて、全庁的にこのような工夫をしたら効果的ではないかという項目が見つかれば、全庁的に広めていくということはできないかと思っているところであります。

問)

先ほど和訳が出たIOSCO(証券監督者国際機構)の格付機関の行動規範についてなのですが、基本行動指針といいますか規範ルールがまとめられたわけです。日本の市場規制当局として、日本で活動する格付機関に対して、今後どのような働きかけなり指導なりをしていくご予定でしょうか。

答)

ご質問の格付機関の基本行動規範の改定というのがIOSCOで5月28日にまとめられたということでございます。現時点において金融庁としては、今回の改訂後のIOSCO基本行動規範を踏まえて、まずは各格付機関自身において行動規範の見直しが速やかに行われることを期待したいと思っております。単に期待するだけではなくて、現実に各格付機関でどのような改善努力がなされているかという点について動向を注視していくということかと思います。

格付会社の位置づけについては、ご案内のとおり、大手の格付機関というのはグローバルに活動をし、ビジネスをやっておりますので、一国だけで単独行動を取っても実効性が出てこない、あるいは国際的な整合性が失われる可能性があるということでございますので、当局として関与をより強めていくべきなのかどうかも含めて、国際的整合性を踏まえつつ、現時点においては研究を深めていくというのがとりあえずのスタンスでございます。もちろん先ほど申し上げましたように、格付機関自身による努力をしっかり注視、フォローしていくということは積極的にやっていきたいと思っています。

問)

野村證券の特別調査委員会が先日出した調査結果に関して、長官は内容についてサプライズなど感じられたところはあったのでしょうか。また先ほど、「実態に合った実効性のある情報管理が求められる」というご発言でしたけれども、彼らがやろうとしている再発防止策は、そこに沿ったものであるとの一定の評価をしていらっしゃると我々は解釈してよろしいのでしょうか。

答)

どのような実効性があるかということについては、この再発防止策を実施に移して、今後どの程度効果が上がっていくかという点を注意深く見ていく必要がありますので、現時点であまり断定的な評価をすることは避けたほうがよろしいかと思います。

ただ、先ほども申し上げましたように、証券会社の業務は非常に多様化・国際化をしており、それに合わせて役員・職員も様々なエクスパティーズ(専門性)を持った多様な人間を使うということが一般化していく中で、その多様性に見合った実効性のある再発防止策が求められております。ざっと見た感じではそのような問題意識も背景に意識されているのかなという印象はございます。一つは、人間の性善説を前提とした対応がまず非常に大事だと思いますし、個々人の職業倫理、行動規範を高めていくというのは非常に大事なことだろと思いますけれども、それだけに依存するのではなく、あえて言えば人間性悪説に立った対応もある程度織り込まれているという印象を受けておりまして、そう意味では新しい実態にある程度光を当てているのかなという感じがいたします。先ほどのアクセスログの定期的なチェックは、そのような側面も有していると思っています。

(以上)

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