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佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成21年2月9日(月)17時31分~17時53分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

時間を調整していただいて、ありがとうございました。

冒頭、私の方から一点、先週金曜日(6日)に公表させていただいた、行政文書の所在不明につきまして、改めてお詫びを申し上げます。再発防止に向けて、改めて文書管理について注意を徹底していきたいというふうに思っております。

【質疑応答】

問)

大手銀行6グループの2008年4-12月期の決算が先週出揃い、株価の下落による減損処理とか不良債権処理の拡大などで、純損益が前年同期に比べて9割近い減益になりましたが、今後、経済情勢とか株価次第では2009年3月期を通年で見ても減益幅が拡大するという恐れもありますが、まずこの点について長官のご所感をお願いします。

それとこれは銀行から申請する話でありますが、今後、メガバンクとか大手銀行に公的資金の注入といいますか、そういう可能性があるのかどうかということ、資本不足といいますか貸出余力を高めるということで、そういう可能性があるのかどうかご見解をお願いします。

答)

先週末までに、6大銀行グループの平成20年12月期決算が出揃いました。公表された計数を見ると、各行とも前年同期比で大幅減益となっておりまして、一部では赤字に陥っているということでございます。6大銀行グループの合計で見てみますと、当期の純利益は1,352億円ということで、前年同期比で約9割の減少となっているところでございます。

その要因としては、第一に株価下落に伴う株式等関係損益の大幅悪化でありましょうし、第二に与信関係費用の増加ということであろうと思います。こうした状況がもたらされた背景としては、もちろんグローバルな金融・資本市場の混乱が我が国の株式市場や実体経済に悪影響を与え、これらを通じて金融機関の収益状況やバランスシートに影響を及ぼしているというふうに捉えることができると思います。グローバルな金融市場の混乱が、我が国の金融システムそのものに与える直接の影響は、欧米と比較すれば相対的には限定されているわけですが、その悪影響が広がりつつあるということかと思います。金融庁としては、高い警戒水準を維持しつつ、金融機関の財務状況やリスク管理の態勢について早め早めの情報収集に努めるなど、金融市場の動向などについてきめ細かくフォローしていきたいというふうに思っております。

公的資金についてのお尋ねでございますが、言うまでもなくリスク管理や財務基盤の維持・強化というのはまずは各行が自己責任できちんと取り組むべきものであるかと思います。特定の業態についてコメントを申し上げるというのは差し控えるべきであろうと思います。

問)

まだ正式には発表になっていないかもしれませんが、今週末くらいにイタリアでG7(七か国財務大臣・中央銀行総裁会議)が開かれるという観測があるのですが、4月に金融サミットがロンドンで開かれますがその準備的な会合の色彩が強いのかなと思いますが、その中で今の国際金融の議論の中で国連の下に金融の国際監視機構みたいなものを設けるべきではないかという声もありますが、長官は常々当局間同士の連携の強化も唱えていらっしゃいますが、その辺の国際監視機構とかそういうものの設置とかについては、現状ではどのようなご感想をお持ちでしょうか。

答)

G7につきましては、直接は財務省の所掌でございますが、今週末の2月13日、14日に、イタリアのローマでG7の財務大臣・中央銀行総裁会議が開催される予定であると承知をいたしております。

議長国であるイタリアからアジェンダ(検討課題)が公表されていないため、アジェンダについて具体的なコメントを申し上げることは差し控えたいと思います。G7の一般論として申し上げれば、世界経済の状況や金融・資本市場、為替市場の動向などについて議論が行われる場でございますので、世界経済の減速を受けた政策対応や金融市場における信認を維持する、あるいは回復させるための方策などについても意見交換が行われるのが一般的だと思います。

それからお尋ねの国際的な監視機関につきましては、確かドイツのメルケル首相がダボス会議などの場において、4月の(金融・世界経済に関する)首脳会合に向けて、金融危機の再発防止等のため何らかの規約を合意すべきであって、このための枠組みとして、例えば、国連に安全保障理事会のような、「経済理事会」といったものを新たに創設するということも考え得る、とこんな発言をなさったというふうな報道がなされている、というふうに承知をいたしております。こうしたご提案は、金融危機の再発防止に向けた国際的な連携を強化するという取組みのための一つの提案、アイディアではないかと受け止めておりますが、この国際的な連携強化については昨年11月のG20サミット首脳会合において、金融市場改革のための5原則の一つとして合意され、また5原則に基づく行動計画も示されているところであります。

金融庁としては、各国当局等と協調しつつ、国際的に事業展開を行っている我が国の大手金融機関を対象とする監督カレッジを設置するなど、先般の首脳宣言における行動計画を着実に実施していくという実務的な対応を図っていくことで努力をしているところでございまして、まずはこういった首脳宣言の行動計画を着実に実施していくということが大事ではないかというふうに思っております。

いずれにいたしましても、金融庁としては、今後とも金融安定化フォーラム(FSF)などの場における、金融危機の再発防止、金融システムの強化に向けた国際的な議論には積極的に参画していきたいというふうに思っております。

問)

そろそろまた年度末が近いのですが、中小企業の資金繰りの状況の現状と、今後の資金繰りの対策に向けて何か考えていることがありましたらお話しいただけるとありがたいのですが。

答)

年末金融に向けて、昨年の秋以来様々な取組みを行ってまいりました。年末の金融対応についてどういう評価をするかという話とは別に、とりあえず年末は通り過ぎたという状況の中で、次は年度末金融ということが一つの節目になるかと思います。いずれにいたしましても、日々我が国の金融システムができるだけ円滑に機能をし、実体経済に対して必要とされる金融仲介機能をきちんと果たしていけるように、きめ細かく中小企業金融の状況をモニターしフォローすると同時に、足りない部分があれば何らかの工夫をしていくと、そういう心構えで引き続き臨んでいきたいというふうに思っております。現時点でまとまった形での具体策のパッケージのようなものをお話しできる段階ではないと思います。

問)

中小企業金融に関連してですが、昨年の10月に政府が緊急保証制度ということで、中小企業向け融資を100%保証するというのが始まっておりますが、これに関係する金融機関の対応の問題として、例えば取引先の既存の融資を保証付き融資に借り換えさせるとか、この制度を利用できる企業にもかかわらず融資を断るといった問題がいろいろな方面から指摘されていますが、こういう問題に対する金融庁としての現状認識並びに問題認識を、どのようなものをお持ちなのか長官のご見解をお願いします。

答)

年末あるいは年度末に向けて緊急保証の枠組みを強化したという対策に関して、これは是非、中小企業の皆さんの側でも積極的にお使いいただきたいと思いますし、その狙いや趣旨にかなった対応を、融資をする金融機関の側でも十分に努めていただきたいと思っています。

この緊急保証の付いた融資が、ご質問で挙げられたような、いわゆる旧債振替のために使われるようなことは、この制度の本来の趣旨からずれていると思います。

それから、金融機関においてはこれに加えて、今般の緊急保証というのは責任共有制度の原則を一時的に外して100%保証ということですので、金融機関から見ると信用リスクがほとんどないというものですが、各金融機関においては、この緊急保証の世界だけに安住するのではなく、これまでリレーションシップ・バンキング(地域密着型金融)への取組みの中で努力を続けてこられた融資先企業に対する目利きの能力を発揮していただいて、きちんとした積極的な金融仲介に改めてご努力いただきたいと思います。

問)

先週、日本銀行が銀行保有株の買取り再開を発表しました。再開に当たっては金融庁長官の認可取得後ということですので、これに対する受止めと、関連して日銀総裁が「銀行保有株式の絶対額は減っているが、保有リスクは大きなリスクだ。」と発言していますが、長官は銀行の株式保有について現状どのようなご認識をお持ちなのか改めてお伺いします。

答)

先週2月3日の火曜日に、日本銀行は政策委員会において金融機関からの株式の買入れの再開を決定し、私ども政府としては日本銀行からの認可申請を受けまして、同日中に認可を行ったところでございます。

本件に関しては、最近の金融・資本市場の状況を踏まえ、金融機関による株式保有リスクの削減努力を支援し、金融システムの安定を図る観点から日本銀行は決定を行ったものと考えています。金融庁としては、日本銀行による今般の取組みは、現下の金融・資本市場の状況を踏まえた時宜を得たものであると思っておりまして、政府・日銀によるこれまでの一連の対策とあいまって市場に安心感を与えることになると期待しているところでございます。

それから、銀行による株式保有リスクについては、もともと株式という金融商品は価格変動がかなり大きい商品ですので、そのボラティリティ(価格変動)に伴うリスクというものに対しては、保有をする銀行においてきちんとリスク管理が行われる必要があろうかと思います。銀行株式の保有制限は既に何年か前に導入し、その基準はクリアしているところが大部分の銀行であろうかと思いますが、それとは別に、一定規模の株式を保有し続けるということであれば、その株式の保有に伴うリスク管理をしっかりとやっていく必要があると思っています。

問)

銀行の保有制限法がありまして、ティア1(自己資本の基本的項目)比率に抑えるというルールについては、ほとんどの銀行がクリアしていますが、このルールの見直しということについてお考えでしょうか。

答)

現時点においてそういうアイディアは持っておりませんが、先ほど申し上げたように、経営判断として相当規模の株式を保有し続けるということであれば、先ほど申し上げたボラティリティも踏まえて、損失吸収バッファーの保有も含めたリスク管理の高度化ということは当然課題になってくると思います。

問)

金曜日の書類の紛失ですが、具体的にはどのような再発防止とか、今後、処分はないにしても、職員への注意喚起を含めどのようなことが想定されますか。

答)

再発防止策としては、具体的には行政文書の適切な管理、それからこれは特に人事異動の時ですが引継ぎ、保存、それから保存期限が過ぎたものの適切な廃棄などについて庁内で再徹底するということです。それから情報管理研修を行っていますが、そこで文書管理ルールの遵守について改めて徹底をするということ。それから、これは少し時間がかかると思いますが、文書管理ルールそのものについて更に改善すべき点がないかどうかの検証を行ってみたいと思います。

(以上)

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