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佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成21年2月16日(月)17時02分~17時35分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

私の方からは特にございません。

【質疑応答】

問)

今日発表になったGDPが、10-12月期大幅な下落になりまして、政府・与党の方では追加的な経済対策の検討に入ったというような報道も出ておりますけれども、年度末に向けた中小企業金融の円滑化というのがまた焦点になるのかな、とは思うのですけれども、これについて何か追加的な施策の検討というのは今のところお考えの部分があるのかということをお聞きしたいのですけれども。それと中小企業の間では、信用保証制度なのですけれども、新規事業の融資というよりは既存融資の借換えに使えないかというような要望もかなり強いのですけれども、そういうことも含めて何かお考えがあればよろしくお願いします。

答)

我が国の景気が急速に悪化しているということは、本日発表された昨年10-12月期のGDP速報にも端的に現れているということかと思います。こういった中で、中小企業の資金繰りも大変厳しい状況となっていると認識しております。今後、年度末の資金需要期に向けて、金融機関による適切かつ積極的な金融仲介機能の発揮が益々重要になってきていると思っております。

金融庁では、これまで中小企業庁と合同で、全国153か所において約1,000社の中小企業者のみなさんと意見交換を行うなど、中小企業金融の実態についてきめ細かい把握に努めてきているということでございまして、この取組みは、今後とも継続していくということかと思います。その上で当庁では、これまでに皆様ご案内のとおり、例えば金融機関に対する中小企業金融の円滑化に向けた要請や、金融機関が安心して資金供給できる環境を整備するという視点から、改正金融機能強化法の迅速な施行、貸出条件緩和債権に該当しない場合の取扱いの拡充、そして自己資本比率規制の一部弾力化といった措置を講じてきているところでございます。また、中小企業庁では、緊急保証制度の開始・拡充などの措置が講じられているところでございます。今後の取組みにつきましては、まずは足下の状況を先ほど申し上げましたようにきめ細かく把握するということがまず大事でしょうし、またこれまで講じてきた様々な措置の効果がどの程度出ているか、といった検証も大事だと思っております。

お尋ねの信用保証制度の運用の緩和については、直接は制度を所管する中小企業庁にお尋ねいただくのがよろしいかと思いますけれども、一般論として申し上げれば、既存融資を保証付き融資に振り替える、いわゆる旧債振替については、本来のこの制度の趣旨、また今般の緊急保証制度の趣旨に沿うものではないと基本的には思っておりまして、法令上も原則は禁止されていると理解しております。例外的なケースとして、債務者である中小企業者にとっての返済条件が有利になるといったような特別の事情がある場合であって、信用保証協会が承認した場合には認められるという制度になっていると承知をしているところです。

いずれにいたしましても、中小企業に対する円滑な金融というのは、金融機関の最も重要な役割の一つでございますので、各金融機関におかれては積極的な金融仲介に努めていただきたいと思いますし、金融庁としてもその辺の実態を引き続ききめ細かにモニターしていくと、実態を把握していくということをやっていきたいと思っております。

問)

先週末のG7なのですけれども、中身はさて置いて、G7終了後に中川大臣が、終了の会見で、見ている感じでは、かなりろれつが回らないように見えたりとか、かなり体調が優れなかったというご様子だったのですけれども、直接と言いますか、財務省の方が今回G7に関わりが深いという面もありますけれども、金融庁も事務方を出しておられると思うので、何か大臣の身体といいますか、そういう部分において何か重大なことがあったというようなご報告というのは、長官の方に何か入ってきていらっしゃいますでしょうか。

答)

ご案内のとおり、中川大臣におかれましては、2月13日金曜日、14日土曜日、この2日間の日程で、イタリアのローマで開催されたG7財務大臣・中央銀行総裁会議に出席をされ、会議終了後の14日土曜日の夕方4時頃、宿泊先ホテルに設置された会見場において、日本銀行総裁との共同記者会見に臨まれたと承知をいたしております。この記者会見については、本日の国会等において中川大臣から、風邪で体調が良くなかった、風邪薬を多めに服用されたなどのご説明があったと承知をいたしております。

G7全体につきましては、直接は財務省の所掌でございます。その点もございますし、大臣ご本人のご説明に加えて、金融庁の事務方として、本件について特段何か申し上げるべき立場にはないと考えております。

問)

その会見の様子がニュースとかでいろいろ流れていたのですけれども、もしご覧になられていたら、何かご感想みたいなものがありますでしょうか。

答)

風邪で体調が良くなかったというご説明については、なるほどそうかな、そうなのかなという印象は抱きましたけれども、G7の本会合等においては、日本としての現状認識や、日本として主張すべき論点については、きちんと発言等をなさったと財務省事務方から聞いているところでございます。

問)

それに関して、以前から国会でも中川さんは体調が悪かったりする時があったと思うのですが、財務省だけではなくて金融庁も事務方として、大臣が適切な体調で公務に臨むことができるというのをサポートする役目があると思うのですが、事務方から見て、そういうサポートが不十分だった、もしくはもうちょっとこうした方が良かったのではないかということはなかったのでしょうか。

答)

本件に即してというお尋ねであれば、先ほども申し上げましたように、本件につきましては財務省の方で所掌している話でございますので、これ以上のコメントは差し控えたいと思います。

全体として我々事務方は、大臣の下で、大臣のご指導を仰ぎながら、金融庁は金融行政に努めているというところでございますので、日頃より大臣との意思疎通に努めると同時に、事務的にできるだけのサポートを申し上げていくということは当然のことだろうと思います。

問)

会見で見られて、ご体調が悪いと長官もお感じになるような会見だったと思うのですが、国際的にも、日本の金融担当・財務大臣が不適切な会見をしたのだということで問題になっていると思うのですが、長官はそのあたり、大臣の会見が、国際的な評価も含め、波紋を広げているとはお感じになりませんか。

答)

先ほども申し上げましたように、このG7そのものは財務省の所掌でございます。財務省が全体のハンドリングを行っておりますので、いわば金融庁の事務方として、これ以上の言及を申し上げるというのは差し控えたいと思います。

問)

(金融機能)強化法についてです。既に3つの銀行が検討の表明をされたわけですけれども、これまで巷間言われてきたのが、年度内の注入をする場合は、定款変更であるとか審査の手続きを考えると、2か月ぐらいの余裕が必要なのではないかと、逆算すると2月10日とか、この辺がタイムリミットなのではないかというようなことは言われていたわけですけれども、既に2月の後半に入ってきて、公的資金の年度内注入に関しては、とりあえずこの3行で打止めということになるというご認識でよろしいのでしょうか。また、あるいは今後まだ手を挙げるところがあるとすれば、例えば金融庁の方の審査期間を短縮して対応することができるのでまだ大丈夫だとか、その辺の見方を教えてください。

答)

お尋ねのお気持ちは良く分かるのですけれども、我々金融行政当局としては、「いつ頃のタイミングまでに何行ぐらい注入」といった発想はしていないわけでございます。一番大事なことは、とにかく地域金融機関を中心として、中小企業に対する金融仲介機能を適切かつ積極的に果たしていっていただくということでございまして、そういう意味では、お尋ねの中にもございました年度末というのを意識しつつ、この金融仲介機能の積極的な発揮を引き続きお願いしたいと思っておりますけれども、金融機能強化法の活用というのは、そのような積極的な金融仲介に努める結果、あるいは努めようとしたときに、資本基盤について現状のままでは必ずしも十分でないといったような状況があったときに、その資本基盤の整備に、経営判断として各銀行が、あるいは金融機関が努められる、その努力をなさるときに、市場での調達、民間ベースでの調達だけではなかなか難しい、あるいは、条件が非常に厳しいといった状況が出てきたときに、当該銀行の経営判断で機能強化法を活用していただくということでございます。(そういうことです)ので、その我々が、この機能強化法の活用について、全ての預金取扱金融機関に対して検討をお願いする、検討をお願いする前提として、制度について丁寧な説明をさせていただいているのも、そういう仲介機能を果たしていただくということが前提であって、いわば機能強化法による資本注入を受けていただくということが政策目標ではございませんので、いわば結果として出てくるものと考えております。そういう意味では、今後どういった展開になるのか、そこについて特定のイメージを抱いているということではないということでございます。

他方で、定款変更についてのお尋ねもございましたけれども、定款変更に取り組んでいただくということは、いざ資本増強が必要だという状況になったときに、各銀行の経営陣限りで迅速な対応が可能になるという意味で、いわばインフラを整備するという点で大変大事なことだろうと思っておりますので、こういった定款変更の動きということは、これはこれとして歓迎を申し上げたいと思っております。

問)

定款変更をする臨時株主総会とか金融庁の審査であるとか、手続きに要する期間というのは物理的に決まっているということだと思いますが、若干伸び縮みするということですか。

答)

その点についてはお答え漏れでした。申請が具体的にあったときに、いつ頃までにどういった条件でどれぐらいの規模の資本注入を受けたいという、申請してきた金融機関の要望等も踏まえ、なるべく要望に沿うように、急ぐ場合には審査の手続き等についてできるだけ速やかに集中的に作業を進めるという判断というのはケース・バイ・ケースでありうる話だと思います。したがって、画一的に最低限これぐらい審査に時間がかかるので年度内は打切りという捉え方は現時点ではしていないかと思います。もちろん、金融機能強化審査会にご審議いただくというプロセスもありますので、今日申請して明日ということは物理的に不可能ですが、速やかに手続きを進めるということはケース・バイ・ケースで努力をするということも我々当局の心構えであろうかと思います。

問)

G7の関係で、基本的にこれは財務省の担当であるということですが、中川大臣は金融担当大臣も兼務されているので、ああいう映像を見ますと、事情を知らない外国人の方は「日本の金融当局は大丈夫か」という懸念も抱く方もいらっしゃるかもしれませんが、先ほど「日本としての現状認識はきちんと発言された」と聞いていらっしゃるということですが、ああいうことによって日本の金融当局の国際的な信用が低下するようなことは現時点では起きていないというご認識を持たれているということでよろしいですか。

答)

一般論としてお答えさせていただきたいと思います。今回の金融危機はみなさんご承知のとおり、証券化商品という形で金融のリスクというものが世界中に分散し、国境を越えて様々な問題が発生しているということで、これに対する対応については短期的に足下の状況を改善するという対応においても、それから中期的にこういった問題を再び起こさせないような規制の枠組みの再構築をするという対応においても、国際的な連携が不可欠になっているということだと思います。その中で、一昨年の秋以降、相当な頻度でこの問題についての主要な規制当局間のかなり密度の濃い意思疎通や意見交換が行われてきまして、そういった国際的な枠組みの構築あるいは国際的に協調して対応すべき措置等について海外当局と連携して取り組んでいく、日本国内ではもちろん日本銀行を始めとする国内の金融当局とも連携を取りながら進めていく、ということに努めているということです。

こういったこれまでの積み重ねや事務的なレベルを含む様々なレベルでの様々な専門性のある分野での国際協調、国際協力というものがなされてきていると認識しています。

問)

GDPの関連で、与謝野(経済財政担当)大臣は戦後最悪だという話ですが、与党幹部から追加経済対策について具体的な数字があがっていますが、具体的に金融庁事務方に何か追加的な対策を検討しろとか、もしくは検討するとしたらこういうアイディアがあるとか、何かお考えはありますか。

答)

先ほども申したように、金融面の対応についても足下の状況をきめ細かにモニターしながら、当面は特に年度末金融も念頭に置きつつ、問題が存在している部分についてはできるだけ速やかにきめ細かく対応していくという心構えであろうかと思います。

今朝発表された(昨年)10-12月期のGDP速報は、我が国の実体経済が極めて急速に悪化していることを改めて再確認させる内容であったと思います。そういう厳しい状況の下で、金融セクターへの悪影響というものも生じてきているのは事実でありますが、欧米の金融機関や金融システムと比べると、なお相対的には金融システムそのものは比較的健全であるという側面もありますので、こういう状況の中で、金融機関による適切かつ積極的な金融仲介機能の発揮というものが改めて重要になっていくと思っています。こういった観点から、先ほどから申し上げているように貸出条件緩和債権の話、金融機能強化法の話、自己資本比率規制の一部弾力化の話など様々な施策を講じてきているところでありまして、こういった政策の効果も見極めつつ、改めて各金融機関に、実体経済を支えるという心構えで適切な金融仲介機能の発揮をお願いしていきたいと思っています。

問)

先週の半ばにアメリカの財務省が発表した金融安定化策ですが、まず安定化策についての評価をお聞きしたいということと、安定化策の内容を見るとストレス・テストをしてその上でバッド・バンクという不良資産を切り離す対策があって、場合によっては公的資金を注入するという中身ですが、1月に長官が都内で講演された時に金融危機への処方箋(せん)として4つ挙げていて、損失の把握、公的資金、バランスシートから切り離すということで大体これに沿ったものだと思いますが、一つだけ例外的な措置として国有化ということを1月の講演では挙げていましたが、国有化については金融安定化策の中で盛り込まれていませんが、そのことについての見方も併せてお願いします。

答)

私の講演の中で国有化ということを申し上げたとすると、広く米国あるいは欧州諸国でこれまで取られた措置の中に国有化と呼ぶことのできるような処理が含まれていたという趣旨か、あるいは我が国自身の90年代末の危機対応について言及したかという気がします。

外国の当局が自国の金融システムの安定のために様々なご努力をされているところに、それに対して何か押し付けがましい処方箋を掲げてお話しをするつもりはございません。今回の、先週10日に発表された金融安定化策はご案内のとおり、資本注入に際しては損失の確定やストレス・テストをした上で行うといった考え方や、官民共同出資による不良資産買取りファンドを設け、これによって将来の損失発生リスクを切り離すといったこと、それからFRB(連邦準備制度理事会)による資産担保証券等を担保とした融資制度の規模の拡大、そしていわば借り手対策として差押えの軽減策への参加要請とか住宅ローン借換えプログラムへの参加要件の緩和、金利支払いの軽減等による住宅ローン借り手支援策といったパッケージ、これが四つめの柱として挙がっているということだと思います。

私自身が様々な機会に講演等でお話ししていることは、今の質問の中でも触れていただきましたが、損失額を確定するということ、そして必要な場合には公的資金による資本注入も有効であること、それから不良債権を銀行のバランスシートから切り離すことによって将来に向けて更に追加損失が生じるということがないようにもっていく、それによって市場の信頼も確保するということがポイントであると思います。

それで、資本注入をする中で、いわば議決権の過半あるいは100%を当局が握るという形態になった場合にはそれを国有化と呼ぶことがあるということだろうと思います。国有化の意味は、おそらく議決権を当局が握るということですので、経営陣の任命等、より強い公的関与が織り込まれるということかと思います。

我が国の場合には、金融再生法に基づく特別公的管理、あるいは改正後の預金保険法に基づく特別危機管理というスキームがあり、それぞれ具体的な事例もありますが、今回のアメリカの措置にはそういった意味での国有化ということは含まれていないと思います。

問)

いずれ必要になるというご認識はありますか。

答)

アメリカの状況を一番よくわかっておられる米国当局において検討される話かと思います。基本的には市場経済というものをベースとする全体の経済運営の中で、民間主体のイニシアティブを引き出すことによって経済全体を活性化するという大きな哲学があるということだと思いますので、そういった点も含めて米国当局において検討されご判断される話と思います。「検討なさっている」という意味では全くありません。

(以上)

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