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佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成21年2月23日(月)17時02分~17時35分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

私の方からは特にございません。どうぞ。

【質疑応答】

問)

今朝、商工ローン大手のSFCGが民事再生法の適用を申請しました。事実上の経営破綻(はたん)ですが、この会社については債権回収のやり方について問題視される部分もあり、その反面中小企業を中心に一定の資金ニーズもあったというふうに思われます。今後のこの会社の経営破綻の与える影響について、今現在、長官はどのようにお考えなのか教えてください。

答)

商工ローンSFCGにつきましては、本日、2月23日に民事再生手続きの申立てを東京地裁に対して行い、受理されたというふうに承知しております。個社についてのコメントは差し控えたいと思いますが、一般論として申し上げれば、民事再生を申し立てた企業については、申立て後も引き続き業務を継続しつつ企業の再生を図るという趣旨であるというふうに承知しています。現下の貸金業者の経営環境に関しては、利息収入の減少や過払金返還請求の高止まりなどによって、厳しい状況にあるというふうに認識しております。当局といたしましては、引き続き、貸金業者をめぐる状況、また借り手サイドの動向について十分注意深く状況を見ていきたいと思っております。

問)

与謝野経済財政政策担当大臣が金融担当大臣を兼務することになって、財務大臣と併せると3大臣兼務ということになりましたが、与謝野大臣は、これは半分冗談かもしれませんが、「どこの役所へ行ったらいいか分からない」というふうなこともおっしゃっていますが、金融担当大臣としてのウエイトが与謝野大臣の中で少し小さくなるというような、3大臣兼務なので、そのあたりのところで事務方としてご心配な面というのは何かありますでしょうか。

答)

ございません。

問)

そうですか、全くありませんか。

答)

はい。

問)

昨日、欧州の主要国が、緊急首脳会合を開いてヘッジファンドの法規制とか市場に対する監視の強化で一致したということですが、この会合についての長官のご所感をまずお伺いしたいのと、それと、ひるがえって日本からですが、こういう金融監督上の提言が日本からちょっと少ないのではないかという感想を持っています。せっかくと言いますか、反面教師にする部分で10年前の教訓もありますから、今後、国際会議等を通じて金融監督上の提言等を積極的に訴えていくということも可能かと思いますが、そのあたりについてはどうでしょうか。

答)

まず一つめは、欧州の主要国が緊急に首脳会合を開かれたという点でございます。英・独・仏・伊などの欧州主要国が4月にロンドンで開催予定の第2回のG20首脳会合に向けて首脳レベルでのいわば準備会合を開かれたという趣旨かと思います。その中で、システムリスクを引き起こし得るヘッジファンドなども含め、あらゆる金融市場・金融商品・市場参加者は、適切な監督や規制の下に置かれなければならない、という点が合意されたというふうに承知をいたしております。

こうした動きは、グローバルに見たときに、今般の米国サブプライム・ローンを契機とするグローバルな金融混乱に対して、再びこういった混乱を起こさせないように、金融システムあるいは金融市場の強靭性を再確立する必要があるという問題意識で、規制の枠組みの再構築ということが各国共通の課題になっていると、その中での一つの取組みだろうというふうに思っております。こういった方向での取組み、またその背景にある問題意識については我が国もまったく共有しているということでございます。それから、我が国としてもこういった重要なテーマについて関係各国と連携しつつ次回の首脳会合に向けた国際的な議論に積極的に参画していくこということが大事だと思っております。

それから、第二点めでございますが、日本からの提言と申しましょうか情報発信が足りないのではないか、というお尋ねについてでございます。金融システムの崩壊を避けるため苦労を重ねた我が国の経験というのは、現下のグローバルな金融危機に対して、各国当局が取り組むべき方策についていくつかの有益な教訓を示唆している点があると思います。主要なものを掲げさせていただければ、第一に、不良資産の増加と信用収縮による実体経済の悪化という負のスパイラルを断ち切るためには、迅速かつ正確な損失の認識が不可欠だという点。第二に、追加損失の懸念を払拭するために巨大な不良資産を抱えている場合には、それをいわばバランスシートから切り離すということが望ましいという点。第三に、金融機関の自己資本不足には速やかな増資によって対応することが重要ですが、その際に市場ベースだけでは回りきらない場合には公的資金による資本注入が必要であるという点。さらに、第四に、預金の全額保護や問題が生じた銀行の一時国有化といった極めて例外的な措置も危機的な状況においては選択肢となり得るという点。そして第五に、短期的な危機対応の措置と中長期的な規制の枠組みの再構築、これを両者のバランスを取りながら同時に取り組む必要があるという点などでございます。我が国におけるこうした経験に基づく教訓というのは、これまでもG7(七か国財務大臣・中央銀行総裁会議)や金融サミット(金融・世界経済に関する首脳会合)などの国際会議等の機会を通じて世界に発信してきたところでございます。今後とも、現在なお取組みの途上でございますので、様々な国際会議等の場で関係各国と連携しながら、グローバルな金融危機への国際的な対応に当たって役割を果たしていくということが大事だと思っております。

なお、華々しいイベントとして公表されニュースとして流されるもの以外にも、実務レベルを含めた様々なレベル、あるいは様々なチャネルで金融庁は情報発信を行ったり意見交換を行ったりしております。欧米の当局、議会関係者などとの、あるいは市場関係者などとの意見交換をやっているところでございます。この文脈でいきますと、私自身も、ベター・レギュレーション(金融規制の質的向上)の中で「情報発信の強化」ということを掲げてあることも意識しつつ、情報発信には努力しているつもりです。英語でのスピーチにも相当力を入れてきているつもりですし、その英語のスピーチの中に先ほど申し上げました日本としての教訓というようなものも織り込んでいるところでございます。こうしたスピーチのうち主だったものについては金融庁のウェブサイトに掲載しておりまして、それなりの数のアクセスがあるということだと思います。

問)

中川前大臣の件ですが、G7は一義的に財務省の所管ではありますが一応金融庁からも3名の随行の方が行っていらっしゃったと。結果としてご自身の健康管理といいますか、ああいった行動の失敗から、ああいった国際的に醜態をさらす記者会見につながってしまったわけですが、どうしてああいう形になってしまったのかという部分で、金融庁としてやれることは最大限やりつくしていたのか、つまり大臣の飲酒か薬か分かりませんが止めることはできなかったのか、大臣と秘書官というか官僚との関係も含めて、長官としてのご所見はいかがですか。

答)

先日もお答えいたしましたが、G7は主要国の財務大臣・中央銀行総裁会合ということで、これ自体は、全体を我が国でも財務省が取り進めているものでございます。議題となる議論の中身に関していいますと、その中に金融に係る部分もある程度含まれておりますので、その議論の中身についていわば財務省の取進めをサポートするということで、金融庁からは秘書官を含めて3名の者が随行したということでございます。そういう関わりの中で、金融庁の随行者は必要な対応をしていたと思っております。

問)

その関係ですが、G7に限らずこれまでも中川さんと酒をめぐる報道は今までもいろいろありましたが、やはり官僚側、金融庁の側から大臣に意見を申しあげるようなことは無理だったのでしょうか。

答)

様々な金融行政上の事案について、大臣に報告を申し上げる、あるいはご判断を仰ぐ、ご指導いただくというプロセスの中では、当然様々なディスカッションが行われて、事務方は事務方としての意見を申し上げているということです。そういった金融行政上の中身の話について、事務方として事務方としての意見を申し上げるということは日常的にあることでございます。

問)

金融というよりも大臣の健康管理について、秘書官が随行していたわけですから、何らかのことが言えたのではないのかなというのが一般的な国民の見方だと思いますが。

答)

そういう点については、おそらくその時々における状況において、大臣ご自身の健康状態であるとか言動であるとか、そういう状況に応じて何かを申し上げることができるようなことであれば申し上げることは一般論で有りうると思いますが、今回のG7に随行した金融庁の随行者に関して言えば、先ほど申し上げたように、議題となる内容のうち金融行政に関わる部分について財務省を補足するという意味で対応していたということでございます。

問)

SFCGの件ですが、借りている中小企業が、会見では5万社あるということで、借りられなくなって連鎖倒産するのではないかというような危惧の声も出ていますが、これについて何か金融庁として何か考えていらっしゃることはありますか。

答)

事業者金融が我が国の経済活動全体の中で果たしている金融仲介機能というのは一定の重要性を持っていると思っています。そういう意味では中小企業金融に関して、これが甚大な悪影響を及ぼすことにならないことを願っているということでございます。本日の民事再生法申請の直接の影響というのは、まだ本日の話ですので、先ほども申しましたように今後その影響を注意深く見ていきたいと思っています。

問)

事業者向け商工ローンなど資金を円滑に進めるという観点から、貸金業法の改正を再び見直しを行うべきだという意見も国会議員の先生の中で口にする人も出てきていますが、この点について必要性も含めてご見解をお願いします。

答)

改正貸金業法に関しては、今まさに段階を踏んで実施していくという途中のプロセスにあります。そもそも改正貸金業法というのは、借り手である利用者サイドの保護といった点について、それまでに発生していた様々な問題を認識した上でそれへの解決、そういった問題をできるだけ小さくしつつ、消費者金融・事業者金融のより望ましい姿に移行していくという趣旨でできた法的枠組みであり、その枠組みのうち既に実施に移されている部分もありますが、これから実施に移されていく部分もありまして、まずはこの法的枠組みに沿った取組みを進めていくということが一番大事であろうかと思います。その中で先ほども申し上げましたように、過払い金返還請求の高止まり等の要因もあって、貸金業者の経営が全般的に苦しくなっているということはあろうかと思いますが、先ほど申し上げましたように貸金業者を通じた金融仲介というものができるだけ弊害が生じないような形での姿に近づくように努力していくということだと思います。

法的枠組みに関して言えば、今与えられている法的枠組みに沿って粛々と対応していくということが行政サイドの務めであり、また、法律の施行ということと合わせて実態面の状況を注意深くフォローしていくということも大事なことであろうかと思います。そういう意味で、貸し手の側である貸金業者の側、借り手の側である消費者あるいは中小・零細事業者の側の状況の双方を注意深くフォローしていくことが大事であると思います。

問)

SFCGの経営破綻に関連して、一部には相当深い取引のあった金融機関があると認識しておりますが、例えば他の金融機関の経営状態に影響を及びかねないという認識を現時点でお持ちかどうかお願いします。

答)

個別金融機関の個別取引先に発展しかねない話ですので、具体的なコメントは差し控えたいと思います。いずれにしましても、本件を受けて、それぞれの金融機関において、適切な処理を検討され、的確なリスク管理上の対応を図られるものと考えています。

問)

世界的な株安の中で、日経平均が昨年のリーマン以降最安値を更新する勢いで下落していますが、それに関して邦銀の3月期末の自己資本への影響をどのように見ていらっしゃるのでしょうか。また、企業の期越え資金調達にも影響が出てくるのでしょうか。

答)

本日の東証株価指数TOPIXの終値は735.28ポイントということで、昨年10月27日に記録したバブル崩壊後の最安値を下回ったということで、1983年12月30日の731.82ポイント以来の安値ということになります。

市場の動向については、様々な市場参加主体がそれぞれの判断に基づいて投資行動を行った結果として決定されるものですので、その辺について断定的なコメントを申し上げることは差し控えるべきだと思います。

金融機関の財務への影響については、我が国の銀行の場合、今この時点で欧米と比較するとサブプライムの関連や不透明な証券化商品といったものへのエクスポージャーは相対的に小さいということで、今回の金融危機でも相対的に傷は浅いですが、他方で相対的に株式の保有が大きいということも事実です。一般的に株式というのは、不透明な商品ではないですが、他方で価格のボラティリティー(変動)が大きいという特徴も持っています。

したがって、経営判断として比較的高い水準の株式保有を続けるという銀行におかれては、そのボラティリティーも含めた、そのリスクに対応するきちんとしたリスク管理が必要でしょうし、リスクバッファーを保有するということも大変重要だと思います。他方で、経営判断として株式保有を減らしていこうと判断された場合には、そのことが我が国の株式市場に甚大な影響を及ぼさないように、先般日本銀行のほうで銀行からの株式買取りを再開していただくということになったわけですし、現在参議院でご審議いただいていますが、政府の銀行等保有株式買取機構の業務再開に向けた準備も進められているところですから、こういったスキームを活用していただくということだと思います。

いずれにしましても、それぞれの金融機関において、先を読みつつ、しっかりとしたリスク管理を行っていただくことを通じて、年度末金融を含め金融機関の最も重要な役割である金融仲介機能をきちんと果たしていただきたいと強く念願しているところです。

問)

シティグループやバンク・オブ・アメリカの国有化観測がかなり広がっていると思いますが、個々の件でお答えにくいと思いますが、万が一国有化になった場合の日本の金融機関への影響についてのご所感をお願いします。

答)

仮定の話でございますし、米国の市場における動きですのでコメントは差し控えさせていただきます。

問)

少々ローカルな話で恐縮ですが、1月末に静岡県の中堅住宅メーカーの富士ハウスという会社が破綻したと思いますが、全国で1,000件を超える未着工建設土地の物件が発生して、本来ならばメーカーの経営が危ういと知っている金融機関が建築主に対して1,000万円や2,000万円といった多額のつなぎ融資に応じていたということで、メーカーの状況を金融機関は知っていながら建築主に融資をしていたのは問題ではないのかという議論が地元では起きていますが、メーカーの状況を知りえる金融機関に対して金融庁というのは指導なり何なりを本来行っていくべきかどうか見解をお願いします。

答)

金融機関の経営に関して、各金融機関がきちんとしたリスク管理を行いつつ、同時に法令等遵守の態勢もきちんと整備されて、日々の業務に関してコンプライアンスを保たれるということは一般論として大変重要なことだと思います。今の質問の件については、そもそも個別の事案ですし、事案の持っている性格について知識がございませんので踏み込んだ答えは申しあげようがないですが、金融機関は法令に則って契約関係にたった上で業務をやっているということですので、取引関係にある当事者間で結んでいる契約に則ってきちんとした対応をしていくということがまずは大事なことだと思います。

(以上)

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