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佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成21年3月16日(月)17時01分~17時31分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

どうぞ。

【質疑応答】

問)

週末のG20についてなのですけれども、採択した共同声明の中で、「金融システム問題に真正面から取り組む」ということを最優先課題として、不良資産処理による金融機能回復が重要であるという認識を明確にしました。会合全般への評価と、新たに明記されたヘッジファンドへの「登録制導入」などについて、今後日本の当局としてどう対応していくのか、予定などをお聞きしたいと思います。

答)

先週末に開催されたG20(20か国財務大臣・中央銀行総裁会議)ですが、世界の成長を回復し、不良資産の処理を含め貸出を支えるための更なる行動ということと、中長期的な観点から、世界の金融システムを強化するための改革の内容について合意したものと承知をいたしております。

今般の会議では、G20の枠組みの下で、流動性支援継続や銀行の資本増強などを通じた貸出しの回復といった短期的な金融安定化の取組み、ヘッジファンドへの登録制の導入など中期的な金融規制の再構築という両方の面について合意に至った、あるいは再確認されたということかと思います。これは当然のことながら、世界経済と国際金融市場の安定に資するものであるとともに、4月のG20サミットに向け、より強靭な金融システムの構築のために各国当局及び関係する国際機関が連携して取り組んでいくという、そのコミットメント(決意)が再確認されたものということで、高く評価されるのではないかと思っております。

ヘッジファンドにつきましては、ご案内のとおり我が国においては、金融商品取引法上、ヘッジファンドに特定した規制というものは設けられておりませんけれども、ファンドについては、当局への登録やあるいは報告を求める一定の枠組みが整備されているわけであります。すなわち、プロの投資家に対する販売、勧誘、運用を行う業者については届出制、プロ以外の一般投資家を対象とするファンドの販売、勧誘、運用を行う業者については登録制とする、という枠組みが整備されているということでございます。当局としては、今後とも、ヘッジファンドが市場の流動性を供給するといった役割にも配慮しつつ、他方でヘッジファンドの存在及びその行動がマーケットに及ぼしうるリスクということにも留意して、注視していくことが大事だと思っております。

一般的には、ヘッジファンドについては、資金の規模がかなり大きい、あるいは投資行動などの動きが非常に早い、かつその行動はクロスボーダーと申しましょうか、国境をまたがって迅速に動くということで、グローバルな側面もあるということでございますので、その適切な規制を考える際には、 当然のことながらその実効性を確保するために、国際的な連携や各国間の情報共有といったことは、当然重要な課題になっていくのであろうかと思います。

いずれにいたしましても、4月のサミットに向けて最大の成果が得られるよう、金融危機の再発防止、金融システムの強化に向けた国際的な議論には、金融庁としても引き続き積極的に参画してまいりたいと思っております。

問)

先週発表されました第二地銀3行への公的資金の注入に関してなのですけれども、3行は公的資本の導入を前提に保有有価証券の損失処理などを実施するということを発表しておりまして、公的資金の目的というのは中小企業向け金融の円滑化というところにあると思うのですけれども、単に財務基盤の強化をしたり、銀行救済にならないように今後していくために、金融庁としてどういった監督をしていくのかという点についてお聞きしたいと思います。

答)

ご案内のとおり先週13日金曜日に、改正金融機能強化法に基づいて、北洋銀行、福邦銀行、及び南日本銀行の、合わせて3行に対して資本参加の決定を行ったところでございます。3行においては、平成21年3月期決算で有価証券の積極的な減損処理を行い、いわば将来の有価証券価格の下落のリスクというものを極力排除するといった取組みを行った上で、かつ財務基盤の安定をより確実なものにするという趣旨で資本参加の申込みを行ったと承知しております。銀行にとっては、リスクを取って信用供与を行うということは最も基本的な役割の一つですけれども、それを行うにあたりましては、当然のことながらそれぞれの財務の健全性を維持しながらやっていくということが前提になるわけで、今申し上げたような取組みの中で、財務の健全性について心配をすることが必要ないという前提を確かなものにした上で、3行において、今後積極的に金融仲介の役割を果たしていっていただけるということではないかと思っております。

それで、後段のご質問に関して言えば、当然のことながら、各銀行には経営強化計画をお出しいただいておりますので、その確実な履行に努めていっていただきたいと思っておりまして、計画の履行状況をフォローアップするということを通じて、金融庁としても、この資本注入の本来の趣旨がいかされるように注意深く見ていきたいと思っております。

問)

3行が示した経営強化計画の中小企業向け貸出というのは、増加幅が資本参加額をいずれも下回っているという状況で、その銀行にとって経営努力というのは一体どこにあるのかというのがよく分からないのですが、要するにあまり増えていないのではないかという印象を持ったのですけれども、その点について、その水準について長官どのように見ていらっしゃるのでしょうか。

答)

3行それぞれの具体的な、かつ定量的な貸出目標そのものについては、それぞれの銀行の事情もあるかと思いますし、またそれぞれの銀行が営業を行っている地域の経済の状況ということもあろうかと思います。これまでの中小企業向け融資の実績を踏まえて、実現困難な、あまりにも勇猛果敢な計画を作るというよりは、ある程度実現可能性ということも意識しつつ、そういう意味では、その地域経済が厳しい状況にあるということも織り込みつつ、その中でできる限りの金融仲介機能を積極的に果たしていっていただくという、両方の要請のバランスの中で出てきた数字であろうかと思います。計画で出された数字を、「中小企業向け貸出」として計画で出された数字を(実績が)上回ることについては、何の問題もございませんので、そういったことが起きるようなこともあればいいなという願望は抱いております。

問)

先週、損害保険会社の損保ジャパンと日本興亜損害保険が経営統合を発表しました。その先には三井住友海上を含めた3社が経営統合を発表していまして、来年には3つの大きなグループに集約されることになると思いますが、これについて長官のご所見をお願いします。

答)

損保ジャパンと日本興亜損保ですが、先週13日の金曜日に、来年の4月の経営統合を目指すということで合意した旨発表されたと承知いたしております。

経営統合をはじめとする金融機関の再編については個々の金融機関の自主的な経営判断に基づくものでありまして、個別のケースについて逐一コメントすることは差し控えたいと思います。一般論として申し上げれば、各保険会社においては、現下のグローバルな、非常に厳しい金融市場の動向等、あるいは保険サービスに対する市場におけるニーズの変化、こういったことも踏まえた上で、各社が直面する課題を適切に抽出し、いわば将来を見据えた経営に取り組むということは大変重要なことだと思います。その中で自らの経営判断によって、将来を見据えた経営戦略の構築や、あるいは経営基盤の強化に向けた真剣な取組みを通じて、各保険会社の競争力が強化され、かつ、利用者利便の向上、サービスの質の向上が図られるということにつながることを期待しています。

問)

先週、郵政民営化委員会の報告書が出されまして、公的金融のあり方とか監督のあり方とか、だいぶ当初と感じが変わってきているような気がしてきました。今後の少しロングタームでの金融監督のあり方や公的な金融市場との関係、そういうことを含めてお話しいただけますでしょうか。

答)

従来から申し上げているように、郵政民営化というテーマは、そのうち金融庁が直接関わりを持ちますのはゆうちょ銀行とかんぽ生命保険という金融2社ですが、いずれにしましてもこのテーマは郵政民営化法に基づく大きなプロジェクトでございます。その中で、この金融2社について申し上げれば、我が国の民間金融システムに大きな混乱をもたらすことなく溶け込んでいくことを通じて、銀行業、保険業において競争が活発化し、そのことを通じて我が国全体としての金融仲介機能の強化、利用者から見たサービス水準の質の向上、こういったことに結びついていくということが大事であって、そういった大きな方向感というものを心構えとして抱きつつ、金融庁としては金融2社の金融機関としての監督及び郵政民営化法に基づく民営化プロセスの的確な処理ということに取り組んでいくということであろうかと思います。

ご質問の趣旨は、おそらく先般の民営化委員会が出された意見書の中に、例えば「両社の上場前でも新規業務を認めるべきだ」といった見解が示されていることについてのお尋ねかと推測しますが、一般論として申し上げますと、今の点に関して言えば、金融2社から新規業務の認可申請が出された場合、郵政民営化法に基づき総務省とともに認可の可否を検討していくということが金融庁の役割であろうかと思います。その際に勘案すべきポイントとして、郵政民営化法には、日本郵政株式会社が保有する金融2社の議決権割合、その他、他の金融機関等との競争関係に影響を及ぼす事象、そして金融2社の経営状況、―ここには業務執行態勢の整備度合いといったことも含まれますが、―こういった点を勘案することが定められていまして、この法律の趣旨及び枠組みに沿って適切に対応していくということだと思います。

問)

G20の話の中で、銀行の自己資本の質の話が出ているように見受けられますが、金融庁に訳していただいた言葉で言うと「一貫性のある資本算定及び適正資本を実現するため、資本の定義を調和させる」という文言になっていますが、しばしばティア1(基本的項目)の質というところで邦銀はティア1の質が欧米銀行と比べて劣後しているのはないかという指摘がありますが、ティア1の質について長官は現段階でどのようにお考えですか。

答)

今般のG20の声明において直接言及されておりますのは、いわゆるプロシクリカリティ(景気循環増幅効果)に対処する、すなわち好況時における資本バッファーの積み増しやレバレッジを制限する措置等によって、金融規制が経済循環を増幅するのではなく抑制するようにするといったことが織り込まれていますし、さらにそこに続いて、ただし、回復、これは経済の回復あるいは市場の安定とかですが、回復が確実になるまで所要自己資本を変更しないことが重要だということも入っています。

他方で、先週12日にバーゼル銀行監督委員会がプレスリリースを出していまして、銀行の自己資本の水準を今後強化していくということが報道されていますが、このプレスリリースを正確に読んでいただきますと、もちろん自己資本の水準を将来的に金融システム強化のために充実していくということも含まれていますが、より具体的には以下のような施策を通じて銀行システムにおける資本水準の強化を図っていくということでして、その施策とは第一にストレス時に取崩しが可能な資本バッファーの構築を促すような基準の導入、第二に自己資本の質の強化、第三にリスクの捕捉の改善、第四にリスクベースではない補完的な指標の導入、こういったことが謳われていまして、かつ、先ほどのG20の声明にも含まれていましたけれども、最低所要自己資本の引上げは現下の厳しい経済・金融情勢が続く間は行わないとしているわけでございまして、この点においてはバーゼル銀行監督委員会のプレスリリースも共通しているということでございます。

自己資本の質の問題については、かねてより、自己資本比率規制全体の枠組みの中で自己資本について何のために規制が設けられているのかと言えば、銀行業務を行うにあたって損失が発生したときに、なお銀行の財務の健全性を維持しながら業務が継続される、いわばそのための備え、バッファーとしての性格を持つからこそ自己資本が重要である、これは規制当局の立場ですが、そういう位置づけになっています。こうした規制目的に照らしたときに、損失が発生したときに債権者、他の優先株主、劣後債権者など様々なステークホルダー(利害関係者)がいるわけですが、いわば他のステークホルダーに先行して損失を負担するということが自己資本の役割であるかと思います。そういった目的に照らしたときに、その役割を十分に果たせる、そういった性格を備えているかどうかということが、非常に大きく捉えたときに自己資本の質という議論が出てくると思います。この点については今までも何度も様々な局面で議論され、バーゼル銀行監督委員会でも議論され、それ以外の場でも議論されていますが、それぞれの銀行あるいはそれぞれの監督当局の問題意識、それぞれの銀行や監督当局が置かれている金融市場の状況、また、これは分母の話と切り離して議論できないわけで、分母のアセット(資産)の質、そこから損失が生じるボラティリティ(変動性)の大きさ、そういったことを含めてトータルに検討すべき課題であると思っています。そういう意味では、特定の方々があえて自己資本の質というものを自らの流儀で定義をされ、それに則って議論をしていらっしゃるということは承知していますが、全体として今申し上げたような大きな枠組み、位置づけ、大きな文脈の中で議論すべきものであろうかと思います。

問)

公的資金ですが、利回りが1%台の後半であったり、含み損が出た場合であっても10年目以降、注入額での返還を認めるなど、かなり使い勝手が良い制度だと思いますが、与謝野大臣も閣議後会見の中で、資本を充実させたい金融機関は金融庁として大歓迎である、ということをおっしゃっていますが、メガバンクなんかが使いたいというところが出てきてもウェルカムということですか。

答)

与謝野大臣が、今後の資本政策の検討及びその検討の中でこれが有利だという経営判断をされた場合には申請をしていただくことは大歓迎だ、とおっしゃったのは金融庁全体の気持ちです。

当然のことながら、金融機能強化法は法令の枠組みに則って運営がなされていくものでございまして、特定の業態を排除するという枠組みにはなっていないと承知しております。

(以上)

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