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佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成21年4月13日(月)17時01分~17時31分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

私の方からは特にございません。どうぞ。

【質疑応答】

問)

先週の政府・与党の追加経済対策についてですけれども、金融の分野に関して、銀行等保有株式取得機構の買取り対象の拡大のほか、臨時・異例の措置ということで、新設する政府機関が市場から直接株式を買い取る仕組みを整備すると、あわせて50兆円の政府保証をつけるという内容を発表しました。金融分野に関する経済対策について、長官の見方、評価をお聞きしたいということと、新機関が株式買取りを実施する際の要件として挙げた、「市場の価格発見機能に重大な支障が生じる状況」というのは、どういう事態を指しているのか、金融庁の見解、あるいは解釈をお聞きしたいと思います。

答)

ご案内のとおり、4月10日に開催された政府与党会議・経済対策閣僚会議の合同会議によって、「経済危機対策」が取りまとめられたところです。この対策の金融分野のうち、金融庁が所管する施策について申し上げれば、一つは、民間金融セクターを通じた金融仲介機能の発揮ということで、金融円滑化のための特別ヒアリング、あるいは集中検査、また金融機能強化法の活用促進などが盛り込まれているところです。また、上場企業あるいは市場対策というカテゴリーの中に、一つは、開示制度・会計処理に関する対応として、継続企業の前提に関する注記の制度の改善などが盛り込まれております。これらについては、既に実行に着手済みのものも含まれておりますが、引き続きしっかりと取り組んでいきたいと思っております。

今の後段の二つ目の柱である市場対策のカテゴリーに属する分野といたしましては、これは与党において検討される施策という位置付けになっておりますけれども、銀行等保有株式取得機構による、金融機関等からの買取対象資産の拡大と、もう一つ、臨時・異例の措置としての株式市場への対応ということが盛り込まれております。

このうち、取得機構による買取対象資産の拡大につきましては、銀行等の保有する優先株式、優先出資証券、J-REIT(上場不動産投資信託)、ETF(上場投資信託)、また事業法人の保有する銀行等が発行した優先株式、優先出資証券、これらを対象に加えるという措置が盛り込まれております。これは、銀行等が保有する株式がその健全性に影響を与え、過度の信用収縮につながることを防止する、というもともとの機構の設立趣旨、あるいは「金融システムの脆弱化や動揺を軽減するための資産の買取り」を検討するとうたわれております、さきの法改正のときの参議院財政金融委員会による附帯決議による趣旨も踏まえたものと理解しております。

それから、市場からの株式等の買取りにつきましては、市場の価格発見機能に重大な支障が生じる状況が継続するような例外的な場合に備えた臨時・異例の措置として、政府の関係機関が市場から株式等を買い取る仕組みを整備するということとされておりまして、そのための法律改正を与党において検討することとされたものでございます。

お尋ねの「市場の価格発見機能に重大な支障が生じる状況が継続するような例外的な場合」というケースにつきましては、これは確認ですけれども、そもそも株価というのはその発行体である企業の企業価値によって決定されるものであると思いますし、また、多様な見方を持つ多様な投資家が取引することを通じてこの価格が発見されていくプロセスであると思います。そういう意味からすれば、株価の形成というのは市場に任せるというのが、そもそもの本来のあり方でございます。他方で、昨今の極めて不安定な経済情勢、金融情勢の下では、以下のような事態が生起することがあり得ないとは言えないのかと思います。すなわち、株価の水準が企業のファンダメンタルズ(基礎的条件)から著しく乖離していて、それを裏付けるかのような、例えば投資ファンドなどの大規模な投売り等が続いているということで、市場の需給バランスが著しく崩れている、更にはこうした状況が相当期間継続していると、こういった事態があり得ないとは言い切れないという認識があろうかと思います。したがって、今申し上げたような事態が生じている状況というのが、いわば「例外的な場合」として想定されるものでございます。その具体的な要件等につきましては、引き続き与党において検討が進められることになっておりますので、現時点で政府の立場から具体的に言及することは差し控えたいと思っております。

いずれにいたしましても、こういう極めて例外的な臨時・異例の措置でございますので、厳格な要件と厳格な手続きを織り込むという方向と承知をいたしております。

問)

先週、三井住友フィナンシャルグループが、2009年3月期の連結業績の下方修正を発表し、あわせて財務基盤強化を目的とした普通株による最大8,000億円の公募増資を実施すると発表しました。金融庁の金融機能強化法は大手行も排除しないということでしたけれども、国際的に銀行の資本の質というものが問われる中で、大手行の一角が公募増資を決断したことについて、長官のご所見をお聞きしたいと思います。

答)

先週、4月9日木曜日に、三井住友フィナンシャルグループが、平成21年3月期の業績予想の修正、具体的には、連結ベースの当期純利益がそれまでの1,800億円の利益から3,900億円の損失に変わるということの公表を行いました。また、あわせて新株式、普通株式の発行に係る発行登録の公表を行ったということでございます。

個別金融機関の資本政策でございますので、今般の公表そのものについて直接コメントすることは差し控えたいと存じます。

あくまでも一般論として申し上げますと、もともと、財務の健全性を維持しつつ金融仲介機能を発揮していくということは、銀行の持つ社会的使命であろうかと思います。そういったことを前提に、かつ現下のグローバルな経済・金融情勢を踏まえて、「先を読む経営」、すなわち将来の様々な営業環境等も適切に見据えた経営判断の下、財務基盤の強化に向けて資本の充実を図るということは大変重要なことであって、歓迎すべきものと認識をしております。先般のG20のサミット(金融・世界経済に関する首脳会合)においても、金融機関の資本の充実ということは重視されておりまして、金融機関の積極的な資本政策は、こうした国際的な議論の潮流にも沿うものではないかと考えております。

問)

今のお話に関連するのですけれども、その前提になった増資の前の下方修正のところで、かなり大部分、与信コストの増加ということが原因になっているようですけれども、この決算を前に、銀行を取り巻く経営環境について、改めて、特に不良債権というところから状況をどう見ているのか聞かせてください。

答)

現在の日本の銀行セクターを取り巻く環境について、一番大づかみに捉えますと、大きなリスク要因として(そのうち相当部分は既に顕在化しているというふうにも言えますけれども)、二つのリスク要因があるということだと思います。一つは、株式等の保有によって、その状態が市場のボラティリティ(価格変動)の高さによって、資産評価の変動を通じて、銀行の財務の健全性に影響を及ぼすということだと思っています。それからもう一つは、実体経済の方から来るリスク要因として、貸出先企業の業況悪化に伴って債務者区分の変更や追加引当金の発生ということが起きているということかと思います。

そういう環境の中で、先ほども一般論として申し上げましたように、各金融機関においては、将来に向けて様々なリスクシナリオも意識しつつ、積極的な健全性の維持のための対応、そしてそれをベースとした金融仲介機能の発揮ということが求められているということかと思います。

今回の三井住友銀行の業績予想の下方修正に関しては、先週の当該行自身の発表によれば、その中で、いわば将来に向けたリスク要因を最大限削減していくといった趣旨の基本的な姿勢が表明されていたかと記憶いたしておりますので、銀行自身による発表というものがそのとおりであるとすれば、先ほど私が申し上げた、「先を読む経営」という趣旨に適った対応で努力をされているのかなという印象は受けるところでございます。

問)

株の資産評価の変動の影響が非常に大きいというところなのですけども、関連してちょっと伺いたいのですが、3月の末に与党が金融証券市場への追加対策というのを発表いたしまして、それが政府の追加の経済対策のベースになっているところもあると思うのですけれども、そこの最初の「1.」に、「会計基準」という項目がございまして、その中に、減損の適用基準をあまり厳格にし過ぎないと、そこは監査法人の独立した判断によることになっているが、監査法人はその判断に当たっては、過度の保守主義に陥ることなく、合理性にもより配慮すべきであるという一文が盛り込まれております。これは、具体的に言うと、もうちょっと減損処理の認定の基準を、監査法人にもう少し柔軟にしてくれとしてはどうか、という話だと私は解釈しているのですが、このくだりに関する金融庁としての見解や受止めがもしあれば、伺えればと思います。

答)

先般、与党の方でこの金融関係の対策が、たしか中間取りまとめという形でまとめられて公表されたかと思います。その中では、お尋ねの減損処理に関しては、この減損処理はご案内のとおり財務会計上の処理でございますけれども、これが行われた場合に、税務の会計の世界でも、それと整合的な取扱いができることが望ましいと、そういった趣旨の項目が入っていたかと記憶をいたしております。最終的に、たしかそういう内容のものになったのではないかと記憶しておりまして、最終バージョンにお尋ねのものが載っていましたか。

問)

今おっしゃっているのが、「(3)」のところですね。「(1)」のところ、それを金融庁としてどう受け止めて、今後、監査法人とか会計士協会にいろいろなアクションを起こすのかどうかというお話を伺えればと思います。

答)

ここの部分につきましては、この中間取りまとめそのものにも明示的に書かれておりますけれども、そういった判断は、最終的には監査法人の独立した判断によることとなっているというワンセンテンス(一文)が入っているわけであります。

したがいまして、基本的には資産あるいは業況の回復可能性の評価というのは非常に重要なことで、これは決算そのものを作成する上場企業自身が十分な吟味を行った上で、主張すべき点は主張し、外部監査人との間で十分な意思疎通を行うことによって共通の認識に収れんしていくことが期待されるプロセスということだろうと思っております。

問)

先週、三菱UFJ証券の方で、約150万人の顧客の名簿の流出があったのですけれども、極めて大きな人数であって、前代未聞かなと思うのですけれども、厳格な顧客管理を求められる証券会社において、このようなことが起きたことについて、現時点での長官のご見解をお願いできますでしょうか。

答)

多数の顧客の取引を仲介する証券会社において、今回のような大規模な顧客情報の流出という事案が発生したことにつきましては、極めて遺憾であると思います。

もともと顧客情報というのは金融商品取引の基礎をなすものでありますし、また個人情報の保護という観点からも、その適切な管理が金融機関には求められているということかと思います。

個別事案そのものについての将来における行政対応について、この時点で逐一コメントすることは差し控えますけれども、一般論として、証券会社には、日頃から、個人情報の漏えい等を防止するため、情報の安全管理、従業員の監督などについて必要・適切な措置を講じること、あるいは個人情報の漏えい等が発生した場合において、二次被害等の発生防止の観点から迅速かつ適切な対応を行うことのできる態勢を整備しておくことが求められているわけでございます。

金融庁としては、現在、関係者の対応状況を注視しているという状況でございます。

問)

先週破綻(はたん)した大和(やまと)生命のカット率が一応決まって、過去最悪レベルのカットになるということになりました。それへのご見解と、契約者からすれば、もっと早く金融庁が監督上の措置なり検査上の措置をとっていれば、ここまでカット率が膨らまなかったのではないかという思いもあると思うのですが、これまでの検査・監督上の措置で何か不十分な点や問題点があったとお考えなのかどうかも含め、お答えいただければと思います。

答)

昨年秋に破綻した大和生命の更生手続きに関しましては、先般3月23日に更生管財人が東京地裁に更生計画案を提出、公表し、この計画案に基づいて、先週、4月11日、大和生命の保険契約者に対し、契約条件変更後の保険金額・年金額のモデルケースも含めた更生計画案の要旨が送付された、ということかと思います。

この更生計画案におきましては、生命保険契約者保護機構による資金援助を踏まえた責任準備金の90%補償、逆に言うと10%カット、そして予定利率の引下げ、これは1.0%に引き下げるということですが、これらの契約条件の変更が記載されておりまして、契約者が将来受け取る保険金額・年金額は、こうした条件を踏まえて、個々の契約内容に応じて決まってくるということかと思います。モデルケースの中に相当大きくこの保険金額・年金額がカットされるケースが含まれているということは事実だと思いますけれども、この中では一般的には、もともとの当初の契約の予定利率が高くて、かつ、運用期間の長い、また貯蓄性の高い契約については削減幅が大きくなると、こういう傾向があるというふうに思っております。

いずれにいたしましても、現在の状況というのは、この契約条件の変更も含めた更生計画案について、今後、同社の保険契約者の同意を得た上で、裁判所によって認可が判断されることになるという状況にあろうかと思います。

現時点において、金融庁としては、保険契約者保護の観点から、適切な更生計画が早期に策定されることが重要と考えておりまして、今後も、更生手続の進捗に応じて、保険業法の趣旨を踏まえ、保険契約者保護の観点から適切に対応してまいりたいと思っております。

もう一つお尋ねは、これまでの、あるいは過去、破綻するまでの期間における金融庁の検査・監督が十分ではなかったのではないかというお尋ねでございます。一般論として、金融庁は、金融業を営んでいる民間会社に対して、民間企業としての自主性を尊重しつつ、ただ他方で、信用秩序に影響が出る、あるいは顧客保護、利用者保護の観点から問題が生じ得る、そういったケースを念頭に日常の検査・監督に努めているということでございます。報告の提出、ヒアリング等による監督上のモニタリング、あるいは立入検査による財務状況や法令遵守状況の確認などを、状況に応じた頻度でやってきていると思っております。

そうした中で、この大和生命の場合には、本業の収益力が不十分な中で、ハイリターンを実現するために、ややハイリスクな資産運用に偏っていたということが一つの特徴であったわけでございますが、そういった点も含めて、金融庁からはしばしばそういった点についての是正等に関して、意思疎通を図っていたということでございます。

いずれにいたしましても、結果として、この大和生命が破綻に至ったということは、誠に残念であったと思っておりますし、また大きな被害をこうむられることとなる保険契約者の皆様については、お気の毒なことというふうに思っておりますけれども、当面は先ほど申し上げた更生計画が適切なものとして裁判所から認可を受けて、それがきちんと実施されていくということを通じて、利用者保護の趣旨が実現されるように努めていきたいというふうに思っております。

(以上)

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