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佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成21年5月25日(月)17時01分~17時21分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

私のほうからは特にございません。

【質疑応答】

問)

新型インフルエンザなのですが、先週、関東でも感染が確認されるなど国内での感染が広がり、同時にその経済的な影響が出ている、観光業などに出ているという指摘もあります。これに関連して、金融機関で売上げ不振などを口実に貸し渋りなどを行っている事例を把握されたりしているのかどうか。それから、金融庁としても先週末に円滑化ということで通達を出されましたが、その狙いなどを改めて聞かせてください。

答)

ご存じのように、今回の新型インフルエンザの発生を踏まえまして、金融庁からは既に金融機関に対して、業務継続のための準備や感染機会を減らすための工夫の検討などは要請していたところでございます。他方、報道等によれば、一部地域においてホテルの宿泊キャンセルが増加するなど、厳しい経済状況の中で、今回の新型インフルエンザの発生を受けて、企業の事業活動等への影響も生じてきているというふうに承知をいたしております。

金融庁としては、もとより金融機関に対して適切かつ積極的な金融仲介機能の発揮ということを促してきているわけですが、このような新しい状況を踏まえまして、5月22日付で中小企業をはじめとした企業に対する金融の円滑化を改めて要請したところでございます。当庁としては、引き続き、情報収集等に努めつつ、政府全体の方針も踏まえて適切に対応していきたいというふうに思っております。

なお、現時点では、今回の新型インフルエンザの発生により事業活動等に影響を受けた企業に対して、金融機関が不適切な融資対応を行ったとの個別具体的な事例には接しておりません。ただし、引き続き、きめ細かな実態把握に努めていきたいというふうに思っております。

問)

先週、大手銀行の三井住友銀行から不動産会社の社長が偽造した実態のない会社の書類を使って不正な融資を引き出したという事件で、社長らが逮捕されるという事件がありました。銀行の審査というのは、今回、行員の関与も一部で指摘されていますが、この審査というのは、そうした実態がない会社など、そういうのを見抜くためにあるはずの機能だと思うのですが、それが見抜けなかったというところについて、金融庁としてはどのように考えているのか、また処分などについてどのように考えているのか、現時点で聞かせてください。

答)

先週、不動産会社の社長等が、三井住友銀行から不正に融資を引き出したとして逮捕されたことは承知をいたしております。個別金融機関に対する具体的な行政上の対応についてはコメントを差し控えたいと思いますが、一般論として申し上げれば、金融機関においては、リスク管理等の観点から、適切な与信審査態勢を構築することはもちろんのこと、公共性を有する立場を踏まえ、社会的批判を招かないよう適切な内部管理態勢を構築し、かつ、それらの趣旨に沿った業務運営をきちんと行っていくということが重要であるというふうに思います。

金融庁としては、法令遵守態勢あるいは内部管理態勢に問題が認められる場合には、法令に則り適切な対応を行っていくことになろうかと思います。

問)

先週出された三菱UFJ銀行の決算において、今期の業績見通しを今までは出していたのだけれども、これからは止めますと、「目標」という形に切り替えるということになりました。法律上義務付けられているものではないと思うのですが、業績予想というのは、投資家にとってはその企業の先行きを判断する重要な材料だと思うのですが、こういったことが企業の情報開示の姿勢などに後退というようなことにならないのかどうか。あと、証券会社では出さないのが結構あるようですけれども、そういった動きが広がっていくことがあるのかどうかということについてお聞かせください。

答)

先週19日火曜日に、三菱UFJフィナンシャル・グループが平成21年3月期の決算を公表し、その中で、平成21年度、つまり平成22年3月期決算の決算見通しについて、従来からの「業績予想」というものから「目標」というものに開示方法を切り替えたということでございます。

取引所に上場する個社に関する話として、逐一コメントすることは差し控えたいと思いますが、一般論として申し上げれば、業績予想の開示の取組みというのは、ご指摘のとおり、個人投資家などにとって有用な情報とされておりまして、できるだけ前向きな対応が期待されているというふうに思いますが、他方で、市場の状況とか、あるいは事業環境の変動などによって、的確な業績予想を作成するということが困難な局面というのもありうるわけでございまして、そのような場合には、業績予想の開示を省略することも取引所ルールでは認められているというふうに承知をいたしております。

問)

先週、公認会計士のインサイダー取引事件の勧告がありましたが、公認会計士によるインサイダー取引が、新日本監査法人に続いて2例目になるかと思いますが、高い倫理性が求められる公認会計士によってそのような事件が起きたということと、今回もともとのM&A(合併・買収)の情報を漏らしたのが野村證券の社員であったと認定されていますが、野村證券においては、既に一度社員によるインサイダー取引事件もあったわけですが、同じ会社の同じ部署が、また同じように舞台になったというところに関しての金融庁としての見立て、そして今後の、もしあり得るとしたら野村證券に対してどのようなお話を聞かれて、どのように対処していかれるのか、お願いできますでしょうか。

答)

公認会計士がインサイダー取引に関与していたということにつきましては、ご案内のとおり公認会計士法において、「公認会計士は、公認会計士の信用を傷つけ、又は公認会計士全体の不名誉となるような行為を行ってはならない」というふうにされているところでございます。公認会計士法上、問題となる事項があれば、適切に対処していくということであろうかと思います。

それから、野村證券の職員がインサイダー情報の伝達をしていたとされている件でございますが、まずは市場仲介者として公共的な役割を担う証券会社においては、十分な内部管理態勢を構築し適切な業務運営を行っていくことが重要だというふうに考えております。そうした観点から、今回のような問題が生じたことは遺憾でございます。先ほどの公認会計士の方がインサイダー取引に関与していたということも、もちろん遺憾なことでございます。それと同様でございます。

金融庁は、野村證券の元職員のインサイダー取引による逮捕・起訴を受けて、昨年7月3日に野村證券に対して業務改善命令を発出したところでございます。これに基づいて同社からは内部管理態勢の整備のための改善策の報告を受けており、金融庁としては、その実施状況等を注視しているところでございます。

野村證券の側では、今回の事案を受けて、昨年策定した防止策を徹底する旨コメントしているものと承知しておりますので、引き続きその対応状況をよく注視していきたいというふうに思っております。

問)

6月1日で金融庁のファイアーウォール規制が緩和されるということで、ファイアーウォール規制に関しては、当時議論していた時とだいぶ経済環境というか金融をめぐる環境というのは変わってしまっていて、アメリカの投資銀行なんかは銀行持株会社になると。日本ではどちらかというと、銀行が証券会社的な業務を指向するようなところがあったわけですが、日本が目指していた米国では、証券会社が銀行の方に近づいてきているというような状況になっていて、日本の改革というのはちょっと周回遅れというか、経済環境が変わってしまったのでずれてしまったかなという感じもあるのですが、改革は改革でしっかりやるべきだと思っているのですが、今回のファイアーウォール規制に関する長官の緩和に込めた思いというか、そのあたりをお聞きしたいと思います。

答)

我々としては、今回の制度改正、枠組みの構築というのは、およそ周回遅れなどとは思っておりません。

今、欧米の側でいわゆる証券業務と申しましょうか、あるいは投資銀行業務と申しましょうか、それから伝統的なコマーシャルバンキング(商業銀行業務)との間で、業者というかエンティティー(事業体)の組織のあり方に関して、形が変わりつつある、エンティティーの仕組みというか、形態が変わりつつあるというご指摘がございましたが、その金融仲介業を行う金融機関の組織形態のあり方の問題とは別に、金融仲介の様々なルート、チャネルが、いわゆる直接金融そして間接金融、投資銀行業務の中に位置づけられる直接金融の世界を仲介する仕事、それから商業銀行を通じて預金の受入れ、そして資金の貸出というようなことを中心とする商業銀行の業務の両方が存在しているということであろうかと思います。

それらの業務をどのような組織形態の金融仲介業者が担うかという点については、若干の動きがあるというのが今の状況かと思いますが、そういった両方の、短くいえば直接金融と間接金融の両方の金融仲介チャネルがある。かつ、それが利用者の立場から、利用者というのは資金需要者の立場から見ても、あるいは資金余剰主体、投資家の側から見ても、多様な選択肢があるということは大事なことであろうかと思います。そして、そういう基本認識の下で、仮に同一の金融仲介業グループが直接金融、間接金融、両方にまたがって金融仲介サービスを提供するという場合には、当然のことながら利益相反の管理ということが必要不可欠になってくるということでございます。その利益相反の管理がきちんと的確に行われていれば、それを前提として、例えば資金調達者の側から見れば様々な形の総合的なサービスをまとまった形で受けられる。あるいは様々な形の資金調達手段というものの中から選択をすることができるということで、サービスの質の向上にはつながっていくということであろうかと思います。

ファイアーウォール規制の枠組みが変わっていく、我々としては、よりよいものに進化させていくという思いですが、それがその趣旨のとおりきちんと実現されれば、この金融仲介サービスの質の向上ということにつながっていくのではないかというふうに期待しているところでございます。そういう意味でも、この利益相反の管理というは、ケース・バイ・ケースで様々な形、様々な特性を持った利益相反というのが生じ得るものでございますので、プリンシプル・ベースの趣旨というのもしっかりわきまえて、各金融機関グループにおいては、この利益相反管理の目的をしっかりと果たすような形で態勢整備、そして具体的な業務運営に心がけていっていただきたいというふうに思っております。

問)

今日、北朝鮮が核実験をしたのですが、金融庁としては、先日公表した金融機関の送金のチェックなど、今、日本政府が行っている措置について関係している部分もあると思います。そのあたりについて、お聞かせ願えませんでしょうか。

答)

本件につきましては、ご案内のとおり、本日17時30分から安全保障会議が開催される予定でございまして、関係閣僚のレベルで議論されるものというふうに承知をいたしております。

いずれにいたしましても、これまで講じている措置は既にあるわけですが、今後の対応については、政府全体としての今後の方針に沿って適切に対応していきたいと思っております。

(以上)

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