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三國谷金融庁長官記者会見の概要

(平成21年7月23日(木)17時00分~17時23分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

今月29日の水曜日に、金融審議会総会・金融分科会合同会合を開催することとし、本日、その開催通知を発出いたしました。そのお知らせでございます。

考え方でございますが、今次の世界的な金融危機を受けまして、金融庁といたしましては、その発生要因を的確に分析し、その教訓を踏まえた上で、今後の金融規制のあり方について検討を深めていく必要があると考えております。

また、我が国では、1990年代の金融危機以来、金融システムの強化に向けまして、金融規制について様々な取組みを行ってきたところであります。こうした取組みを現時点で改めて点検し、我が国として今後さらにどのような取組みを行っていくべきか、そういったことも検討していく必要があろうかと思っております。

そうした中で、金融審議会におきましても、我が国金融・資本市場のあり方につき、多面的な検討を行っていただくことが必要であると考えております。

このため、その金融審議会では、今後の金融システムのあり方などにつきまして幅広くご議論いただくべく、金融審議会各部会の部会長・部会長代理の皆様などから成ります基本問題懇談会の設置についてお諮りする予定であります。もし、そこで了承がいただければ、金融審議会に引き続きまして、基本問題懇談会の第1回の会合を開催させていただきたいと考えております。

詳細につきましては、担当課、これは総務企画局企画課でございますが、そこにお伺いいただければと思います。

総会あるいは金融分科会合同会合及び基本問題懇談会におきまして、建設的な議論が行われていくことを期待しているところであります。

私からは、以上であります。

【質疑応答】

問)

新しい基本問題を考えるということなのですが、基本問題といっても規制の強化であるとか、逆に金融の競争力強化のために緩和したりと、いろいろな考え方があると思うのですけれども、この時期にあえてこういう新たな懇談会を発足するというのは、どういう狙いがあるのかを教えてもらえませんか。

答)

一つには、1990年代以降、日本は様々な金融行政に関する制度、あるいは運用の改善に努めてきたところであります。こういった大きな縦糸はあろうかと思います。

一方で、それを今次において、もう1回点検してみる必要があるのではないかと、これは、やはり今回、世界的な金融混乱ということがございまして、そこでやはり様々な検討課題も、この時点でまた浮かび上がってきているといった横糸もございますので、そういったことにつきまして、実は私どももこれまで行政面でも様々な対応をしてきたところでありますが、さらにどういった図柄を描けるか、ということにつきましても考えていく局面であろうかと思いまして、したがいまして、金融審議会におきましても、このような議論をしていただきたいということでございます。

問)

結論は、いつぐらいまでに。

答)

まだ結論ということの時期等はございません。この金融基本問題懇談会とか、こういったものが開かれます場合には、そういったところで非常に基本的な議論をしていただきながら、必要に応じて、またさらにその先、いろいろなことを考えていくということになろうと思います。

ただ、こういった議論というのは、この時期において、やはり行っていくことも必要ではないかと考えて、こういった形でまず設定させていただきたいと思ったものです。

問)

その基本問題なのですが、例えば、来年の通常国会に向けて何がしかの成果を大枠化するようなものなのか、もしくは、もっとロングスパンで、柳澤(元金融担当大臣)時代にあったビジョン懇(日本型金融システムと行政の将来ビジョン懇話会)みたいな、日本の金融システムのあり方とか、そういったものを専門家の方に議論してもらうのか、どういった性格のものなのでしょうか。

答)

いろいろな議論が考えられると思います。今おっしゃったような、これまでのいろいろな議論というものを点検することもあろうかと思いますし、また、議論の結果によりましては、それなりの制度のあり方についても考えるという議論になることもあるかと思います。

とにかく、この問題は、最初から一つのテーマを設定するということではなくて、まず幅広く様々な角度から、いろいろな検討を掘り下げながら、みんなで今次のいろいろな経験を踏まえまして、これからの図柄といったものを考えていく、その中で必要なことがあれば、必要な対応をしていくという形になろうかと思います。

問)

アメリカの金融大手の第2四半期の決算が、ある程度出揃いました。ここにきて、金融危機がある程度、遠のいたのではないか、安定化の兆しが見えるということで、国内でも株価も上昇基調です。アメリカも含め、こういう金融安定化に向けた明るい兆しが出ているのかどうかも含め、長官のご所見をお聞かせください。

答)

まず、アメリカの動向でございますけれども、先週から今週にかけまして、米銀大手の2009年の第2四半期の決算が公表されまして、各行とも当期の純利益で黒字を確保したものと承知しております。

その内容を見ますと、概して、トレーディング業務が好調だったものの、一方では、信用コストの増加が収益を押し下げているということも見られます。また、事業の売却等における一時的な収益が貢献した側面も見られると承知しております。こうしたことから、金融庁といたしましては、引き続き、海外金融機関の収益の動向を注視してまいりたいと考えております。

次に、我が国の景気でございますが、これは一部には持ち直しの動きも見られるものの、引き続き厳しい状況にあるものと認識しております。我が国の金融システムそのものは、欧米に比べれば相対的には安定しておりますが、実体経済の悪化等、そういった影響も懸念されているところであります。このため、我が国の金融セクターが、実体経済を金融面でサポートするということも大変重要であると認識しているところでございます。

こういった認識の下、金融庁はこれまで金融機関の金融仲介機能、この環境を整備する観点から、これまでも改正金融機能強化法の施行でございますとか、銀行等の自己資本比率規制の一部弾力化、あるいは貸出条件緩和債権に該当しない場合の取扱いの拡充、特別ヒアリングや集中検査の実施など、様々な措置を講じてきたところでありますが、引き続き、内外の関係当局と連携しながら、内外の金融・資本市場や企業金融の動向を注視してまいりたいと考えております。

問)

同じくアメリカの方で、格付会社に対する規制の考え方など、規制強化の動きがまた出ています。こういう金融規制の国際的な規制の強化の動きと、あと、国内での対応も含め、現時点でのお考えを教えてください。

答)

ご質問にありましたように、米国の財務省は、7月21日に、オバマ政権の包括的な金融規制改革の一環といたしまして、格付会社規制の改革に関する法案を議会に提出したと承知しております。

具体的には、視点、観点として三つぐらいあるかと思うのですが、一つは、利益相反防止の観点から、格付対象先に対するコンサルティング業務の提供の禁止、発行体からの報酬の開示であります。次に、透明性の向上の観点から、予備格付の開示、ストラクチャード商品の格付につきまして異なる符号の使用、それから、三つ目の観点といたしまして、SEC(米証券取引委員会)の権限・監督強化の観点から、登録の義務付け、格付会社の監督を行う部署の設置などが盛り込まれていると承知しております。

我が国ですが、これは格付会社につきましては、6月17日に、「金融商品取引法等の一部を改正する法律」が可決・成立し、格付会社に対する登録制の導入を含む制度が整備され、現在、この施行に向けた政・府令の策定作業を進めているところであります。

金融庁といたしましては、国際的な議論に引き続き積極的に参画するとともに、各国における規制の動向等を見極めながら適切に対応し、国内外におけるバランスのとれた規制の構築に努めてまいりたいと考えているところでございます。

問)

札幌の業者が無登録のFX取引(外国為替証拠金取引)をしていたということで、警察の捜索を受けています。今回の事件に絡んでの金融庁の対応と、FXの規制のあり方についても、お考えを教えてください。

答)

ご質問は、個別の件とFX規制全般の話の2点かと思います。

まず、最初の方でございますが、ご指摘のように、無登録で外国為替証拠金取引に関連する業務を行っていた業者に対しまして捜査が行われている旨が報じられていることは承知しておりますが、警察当局の捜査等に関する事柄につきまして、金融庁として個別にコメントすることは差し控えたいと思っております。

なお、一般論として、金融庁としては、投資者からの苦情等を端緒といたしまして、無登録で「金融商品取引業」を行う者の存在が明らかになりました場合には、警察当局との連携や、当該者に対する警告の発出などの対応を行っているところでございます。また、利用者被害の発生防止と被害の拡大防止などに取り組むため、19年12月に、関係省庁、関係機関をメンバーとする「集団投資スキーム(ファンド)連絡協議会」を設置しておりまして、こうした場を通じまして、警察当局その他の関係機関との連携を進めているところでございます。

次に、FX一般でございますが、これは既に登録を受けているFX業者につきましても、外国為替証拠金取引に関する規制を強化する観点から様々な制度改正に取り組んできているところでございます。例えば、区分管理方法を金銭信託に一本化するとか、あるいはロスカットルールの整備等であります。

こういった意味で、引き続き、投資者保護の観点から、法令等に則り、適切な対応をしていきたいと考えているところでございます。

問)

先日、国際会計基準審議会で新しい会計基準の見直しの素案が発表されまして、日本の金融機関にとっては、銀行、生保を含めて、株式だけではなく、債券の扱いについてもかなり影響が出てくると思われるのですが、まだ実際の導入は先だと思うのですけれども、この議論に対して、金融庁としてどのように対応されていくのかということを、1点、教えてください。

それともう一つ、昨日、りそな銀行で、33万件の顧客情報が流出して、今日も先ほど、保険会社のアリコジャパンというところが、顧客情報の流出によって、カード情報を不正に利用されたという被害が出ているというような発表をしているのですけれども、こういう金融機関の個人情報の扱いに関して、何らかの報告を求めるとか、そういった措置を考えておられるのかどうか教えてください。

答)

まず、国際会計基準の話でございますけれども、これはご指摘のとおり、7月14日になりますけれども、国際会計基準審議会(IASB)から、金融資産の測定区分の見直しに関する公開素案が公表されているところでございます。この国際会計基準(IFRS)、あるいは会計基準一般でございますが、これはバーゼルの自己資本比率規制とは異なりまして、国際的にも民間・独立の会計基準設定主体において検討され、策定されているものでございます。こうしたことから、金融庁として、個別の会計基準の内容に逐一コメントすることは差し控えるべきところがございます。

ただ、現在、国際的に会計基準のコンバージェンス(収斂(しゅうれん))が進められております。国際会計基準、会計基準一般は、我が国会計基準ひいては我が国金融機関、金融・資本市場にも大きな影響を与え得るものであると考えております。したがいまして、金融機関や会計基準設定主体など、事業法人も含めまして、我が国の民間関係者におかれましては、このIASBにおける検討の早期の段階から、積極的な意見発信を行っていただくことを期待しているところでございます。

また、IASBを始めといたしまして、会計基準の設定に当たりましては、関係者からの意見を聞くデュープロセス(適正手続)が適切に行われることが重要であります。このようなデュープロセスの過程におきましても、我が国関係者が積極的に意見を述べていくことが期待されるところでございます。

引き続き、こうした我が国関係者からの意見発信と、IASBにおけるデュープロセスを経て改訂される国際会計基準、これが我が国関係者からの意見も十分に踏まえつつ、投資家に信頼性の高い財務情報を適切に提供するものとなることを期待しているところでございます。

次に、お尋ねのありました、りそな(銀行)とアリコ(ジャパン)でございますが、まず、りそなの件でございますが、これは昨日、7月22日に、りそな銀行が顧客情報の紛失について公表したと承知しております。また、アリコでございますが、これは本日、7月23日の15時でございますが、アメリカン・ライフ・インシュアランス・カンパニー在日支店、通称アリコジャパンが、「クレジットカード決済でご契約いただいているお客様情報の一部が流出している可能性が極めて高い」旨の公表を行ったと承知しているところでございます。

金融機関における顧客情報の適切な管理は、個人情報保護及び金融機関に対する利用者の信認の確保などの観点から極めて重要であると考えており、顧客情報の紛失が発生していたことは大変遺憾でございます。

金融庁といたしましては、個人情報保護法等に基づきまして、各金融機関において顧客情報の管理が的確に行われるよう、引き続き、的確な検査・監督に努めますとともに、問題があると認められる場合には、必要に応じ、監督上の対応を行ってまいりたいと考えております。

問)

21日に国会が解散されまして、事実上の選挙が始まったわけではあるのですけれども、長官として、どのような政策論議、選挙活動が進んでいかれることを望まれたいか、お伺いしてよろしいでしょうか。

答)

私どもは、国家公務員でございまして、この前も申し上げましたが、金融庁は三つの大きな任務、その下で私どもも様々な施策の展開や、日々の行政に努めているところでございます。金融というのは、大変足が速うございまして、我々の仕事も一日として休むことはありません。日々愚直に、金融行政の適正化に努めてまいりたいと考えております。

問)

顧客情報の関係で追加なのですが、金融庁としては、そういう異例の通達を出して、三菱UFJ証券でも処分を出したりしたということなのですけれども、こういうクレジットカードとか、センシティブ情報が漏れていると、長官が監督局長の時代も厳しくやっていたと思うのですが、こういうものがここに来て続いているという感覚があります。それについてのご見解はございますか。

答)

大変残念であります。こういった事件というのは、それぞれの職員の個々人の自覚の問題とともに、組織としても、そういったことがあった場合に適切にチェックするような管理態勢、両面からやはり考えていくべきだと思います。

いずれにいたしましても、このようなことが生じて利用者に迷惑をかけないよう、金融機関は自らの業務の適正化に取り組んでもらいたいと思っております。

問)

8月1日なのですが、中央三井トラスト(ホールディングス)の公的資金が、優先株から議決権のある普通株に転換されるということになっておりまして、国は、議決権比率で30%という非常に高い比率を握るということになります。公的資金の注入行で国が筆頭株主というのは、過去にも、りそなとか、例があると思うのですけれども、公的資金の出口をどう描いているのかというところを含めて、この中央三井のことで長官のご見解を伺えればと思います。

答)

なかなか個別のことについてお答えすることは難しいのでございますけれども、公的資金を過去に注入いたしまして、また、これまでの中で、相当程度返済された、あるいは完済されたというところもあろうかと思います。また、それぞれの金融機関によりましては、いまだそういう状態になっていないところもあろうかと思います。

いずれにいたしましても、この時代に、やはりきちんとビジネスモデルを確立されまして、自らの業務の適正化、それから剰余金の積み上げ等によりまして、先々を目指していただきたいと考えております。

昨今、景気がこういう状態でございまして、環境的には大変厳しい状態であったということもあろうかと思います。ただ、その環境だけではなくて、やはりその中でも、個々の金融機関によって様々な経営の結果にもおのずから差があるわけでございまして、やはりそれぞれの金融機関、この問題にも一生懸命取り組んでもらいたいと考えているところでございます。

(以上)

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