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三國谷金融庁長官記者会見の概要

(平成21年8月3日(月)17時00分~17時21分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

私の方から特にありません。

【質疑応答】

問)

国内の大手銀行や証券会社の4‐6(月期)の決算が出揃いました。黒字に転換するところが目立っていますが、どのように捉えられているか教えてください。

答)

先週までに、主要行と主要証券会社の21年の4月から6月期決算が概ね出揃ったわけでありますが、一部を除き、概ね、黒字を確保したものと承知をしております。

まず、主要行について見ますと、資金利益と役務収入は引き続き伸び悩んでおりますが、国債の売却益といった市場関連収益が増加したこと、他方、与信関連費用が一定程度に抑制されたことなどによりまして、多くの銀行において最終的な利益は黒字を確保したものと承知しているところであります。

次に、主要証券会社でありますが、足もとで株式市場が安定的に推移し、投資信託への資金流入も増加してきており、発行市場でも案件が出てきているなど、回復傾向も見られていると認識しているところでございます。

そういったことで、決算が概ね黒字ということかと思いますが、また一方、我が国の景気は、このところ持ち直しの動きが見られますものの、依然として厳しい状況にはあると思っております。今後とも、実体経済の動向は一部の指標に明るさが見られますが、また一方において、下振れや変動リスク要因も存在しておりますことから、金融機関の決算の状況につきましては、今後ともよく注視し、フォローしてまいりたいと考えているところでございます。

問)

今の証券会社のところにも絡むのですが、株式市場は安定して回復基調であるのではないかということも言われています。その中で、危機対策、今いろいろな危機の緊急対策をやっていますが、その出口戦略も注目されています。現状の株式市場の状況をどのように考えるのか、また、それに関連して、株の空売り規制を3か月延長するなど、今の危機対応をどのように続けていくのか、また、やめるとしたらどのように対応するのか、空売りの関係については、情報公開の恒久化をすべきだという考え方もありますが、そのあたりも含めて教えてください。

答)

まず、ご質問を3点ほどに分けたいと思いますけれども、まず、株価の水準動向ということかと思います。日経平均株価の7月の動きを申し上げますと、初旬には10,000円近くの水準でありましたが、値下がりを続けまして、13日に9,050円33銭となりました。また、翌日から回復基調となりまして、27日には約1か月半ぶりに10,000円の大台を回復したわけでありますが、その後も続伸して、31日の終値が10,356円83銭、本日は10,352円47銭と承知しているところでございます。

これについては、市場関係者の見方、当然株価でございますので、様々な見方がありますので、確定的な見方ということではなくて、こういった見方もあるということで言いますと、まず、上昇の要素としては、一つは、経済指標の一部、これはアメリカの方も日本も方も、その一部に改善を示しているということに対する景気への期待という点、それから米国主要企業の決算発表が、比較的好調だったということ、それから国内の主要企業の決算につきましても、業績の底打ちを期待させるような内容もあったということ、それから3点目として、海外の株式市場や商品市場が総じて堅調でありまして、また世界的に金利も安定しておりますことから、外国人投資家のリスク許容度が高まって、日本株への資金流入が期待されるのではないかといった見方がございます。

一方で、別な見方としては、相場が短期間で急上昇したことによりまして、高値警戒感、あるいは、利益確定等の売りといった要素があるのではないか、あるいは、為替相場の動向がどうなるか、あるいは、今回、世界的に株式市場や商品市場、今のところやや上昇基調なのでございますが、こういったところに何かがあれば、またこれが日本にも逆な影響を及ぼすのではないかといった様々な見方があるようでございます。

市場の動向につきましては、様々な市場参加主体がそれぞれの投資判断に基づき行動を行った結果ということでございますので、行政当局として、断定的なコメントを申し上げるということは避けさせていただきたいと思いますが、ただ一般論といたしまして、様々な指標がある一方で、世界的な金融混乱に端を発しました金融経済情勢は、引き続き様々な課題を抱えておりますので、金融庁といたしましては、市場の動向につきまして、今後、十分に内外の動向を注視してまいりたいと考えております。

その次に、2点目として、空売り規制のお話でございましたが、空売り規制に係る時限的措置につきましては、まだ、こういった我が国株式市場の状況等を勘案いたしまして、あるいは経済の状況等を勘案いたしまして、当分の間継続することが適当であると考えられますことから、本年10月末まで延長することとしているものであります。

その際、空売りの報告義務について恒久化すべきとのお考えにつきましては、そういった報道もございましたけれども、今後のあり方につきましては、諸外国の動向なども踏まえて総合的に判断していく必要があると考えているところでございます。

その上で、3点目の出口戦略全体の話でございますが、昨年秋以降、様々な臨時・異例の措置を講じてきているところでございまして、これは実体経済、あるいは経済全体を支える上で必要な措置を講じてきているということではないかと思います。

他方、こういった臨時・異例の措置は、一方で副作用というのもございます。こういった点を考えながら、それぞれの措置をどのタイミングで平時に戻していくかということにつきましては、基本的には、様々な経済の動向等を考えながら対応するということが基本かと思います。一つには、足もとの状況の丁寧な分析、二つ目は個別の措置ごとの効果の検証、三点目は、場合によりましては、国際的な動向との足並みの確保といったことも考えながら、慎重に判断していくことが必要であると考えております。

問)

FX(外国為替証拠金取引)の規制に関して、一応、強化の方針が出て、今日、8月3日から正式に公布されたと思います。これに関して、パブリックコメントの意見の大部分が、レバレッジ規制などへの強化には反対するというものが多かったと思うのですが、なぜ規制が必要なのかと、反対意見もある程度顕在化する中で、なぜ規制に踏み切ったのかというのを改めて教えてください。

答)

外国為替証拠金取引につきましては、最近、内外の金利差が縮小してきているといったことなどから、店頭取引・取引所取引ともに、高レバレッジ化が進展してきているところであります。高レバレッジのFX取引につきましては、わずかな為替変動でありましても、顧客が不測の損害を被るおそれがあること、という問題があると考えているところでございます。

この件につきまして、取引所取引・店頭取引共通に、想定元本の4%以上の証拠金の預託を受けずに取引を行うことを禁止するものでありますが、パブリックコメントにおいて寄せられた意見につきましては二つ、どちらかというと、反対する意見、賛成する意見、両方ございます。反対する立場としては、例えば、これは一部のFX業者や個人投資家が中心でありますが、投資家の自己責任の問題であり、規制は不要ではないか、それから、レバレッジの上限が25倍では低すぎるのではないか、それから、規制をしても、海外に逃げるだけ、といった意見がございました。一方、日弁連等、賛成する立場といたしましては、高レバレッジ取引は、投機性が高く、また、顧客に不測の損失を被らせるおそれ、業者の破綻(はたん)の可能性を高めるという弊害があり、少なくとも25倍を超えるレバレッジによる取引は認められないと考えるべき、といった、あるいは、より強い規制を求める意見も寄せられたところであります。

この問題につきましては、様々なご意見をいただいたわけでありますが、繰り返しになりますが、高レバレッジのFX取引につきましては、わずかな為替変動でありましても、顧客が不測の損害を被るおそれがあるなど、リスクの高い取引でありますことから、顧客保護等の観点から、想定元本の4%以上の証拠金の預託を受けずに取引を行うことを禁止する証拠金規制を導入することが適切であると判断したものでございます。

なお、「海外に取引が逃げる」といった御意見もいただいたわけでありますが、日本の居住者のために又は日本の居住者を相手方としてFX取引を行います場合には、金融商品取引業の登録が必要であります。登録を受けずに行うことは、金融商品取引法において無登録営業として禁止されております。この点に関しまして、本日、金融庁及び関係団体のホームページにおきまして、投資家向けに、無登録の海外所在業者による勧誘に係る注意喚起を行ったところであります。また、海外の関係当局への協力の要請も行っているところでありまして、今後、仮に問題が認められた場合には、適切に対応してまいりたいと考えております。

金融庁といたしましては、今般の内閣府令の内容を適切に運用していくことを通じまして、引き続き、利用者保護の充実を図ってまいりたいと考えております。

失礼しました。海外の注意喚起は、本日ではなくて、7月31日に既に行っております。失礼いたしました。

問)

今の、顧客保護の観点からということで、感覚的には分かるのですが、投資が自己責任であるということと、顧客保護の観点からやはり規制が必要だ、というところをもう少しだけ噛み砕いてご説明いただくことはできますでしょうか。

答)

FX取引というのは、非常にレバレッジが現在高い状態で、高いものが多いという具合に承知をしているところでございます。例えば、この中で顧客保護という観点で、ロスカットを適切に行えば、この規制は不要ではないかといったもの、あるいは、自己責任だからいいのではないか、といったようなご指摘もございますけれども、一方で、やはりこの取引も、相当幅広い方が参加しているわけでございまして、その運用の適正化を図るということが必要かと思っております。それから、ロスカットルールにつきましても、相場急変時等に必ずしも適切に機能せず、結果として、証拠金を上回る不測の損害が生じるおそれもございます。それから、高レバレッジ取引が過当投機につながること自体も一つの問題と考えられますことから、これらの点を踏まえまして、今回の規制を導入することとしたものでございます。

問)

今日、中央三井の優先株が転換されまして、政府が筆頭株主になったのですけれども、新生銀行に次いで2番目ということで、それについてのご所見と、あと、これまで優先株が転換された銀行でも余り政府は経営に関与してこないという姿勢だったと思うのですが、新生銀行も、このあいだ業務改善命令を受けたりとありまして、いろいろ判断はあったかと思うのですけれども、そういう結論に至ったということで、果たして何も言わないということがいいのかどうかということについて伺えたらと思いますが。

答)

ご指摘のとおり、8月1日ですが、中央三井トラスト・ホールディングスの優先株式が、予め優先株式の約款で定められました期日が到来したことによりまして、普通株式に転換されたものでございます。

この議決権の行使のあり方でございますが、これにつきましては、預金保険機構及び整理回収機構(RCC)において、「議決権行使の基本的な考え方」というものを、平成20年12月に公表しております。議決権については、以下の点に留意しつつ、株主としての利益確保の観点から、適切に行使するとありまして、1つは、銀行経営の健全性の維持に資するものかどうか、2点目は、公的資金の返済財源の確保に資するものかどうか、3点目、その他、金融の円滑化等公的資本増強の根拠となった法律の趣旨に沿ったものかどうか、といった観点から、議決権は適切に行使されるものと考えております。

金融庁といたしましては、これまでと同様に、いわゆる3割ルールを含めました、公的資本増強行に対するフォローアップルール等に沿いまして、金融機関の経営の健全化を促していく観点から対応していくことになると考えております。

また、公的資金の回収ということにつきましても、今後とも、各社が収益力強化、あるいは企業価値の増大にしっかりと取り組んでいただくことが重要であると考えているところでございます。

問)

先週始まった金融審の基本問題の懇談会についてなのですけれども、長官が新しくなられて、肝いりというと変ですけれども、そういった思いの強い会だと思うのですけれども、何かちょっと、先週のレクを聞いていると、今後非公開でやります、ということなのですが、金融の基本的な、大きな部分を決める会合だからこそ、公開のところで議論して、その経過が国民に見えていくということも大事なのではないかなと思うのですが、これについては、例えば、何回かは非公開でやるにしても、いずれは公開の場の議論にするというような、ある意味、非公開でやっているのだったら、別にこういう組織を作らなくてもそこら辺で集めてやっていただければいいのですけれども、そういう金融行政の大事なところを決めるものが、もうちょっと見えやすい形にするという考えはないのでしょうか。

答)

これまでも、金融審で部会等と、最初は非公開のものも多かったのですが、だんだん公開してきておりますが、一方で、少人数で忌憚のない意見を交わすということにつきまして、それを公開しないでやっているものもあったと承知しております。それぞれ、この場でどういった議論をいただくか、あるいはそれをどのような人数でやっていくかということとも関連するわけでございますけれども、私どもといたしましては、それぞれの会議の状況につきましてはブリーフィングをいたしまして、そのときそのときどのような議論を行っているのかということにつきましては、またその都度できるだけお示しするようにしたいと思っております。

なお、この金融審が、今、基本問題懇談会でやっておりますけれども、その検討のいかんによりましては、今度は、別な金融審の舞台で議論されるということもあり得ると考えております。例えば、それが部会であれば、一般的に公開されながらやるということでございます。今、こういった形で始まりましたけれども、できるだけその状況はブリーフィング等でお伝えするようにいたしますけれども、忌憚のない意見を述べようということで、今、こういった形で始めさせていただいているということでご了解いただければと思います。

問)

アリコジャパンの情報流出の原因がなかなか判明せず、顧客の不安が解消されていない状況が続いていると思いますけれども、現状どのように長官はご認識でしょうか。

答)

この問題、本件につきまして、現在、アリコジャパンにおいて引き続き流出した疑いのある情報の特定に向けた調査を進めていると承知しておりますが、まだその原因の解明というところに至っていないという状態であると思っております。

いずれにいたしましても、一般的に、保険会社で顧客情報の漏えいが発生した場合には、まずは影響のあった顧客に対しまして、迅速かつ的確な対応を行うということ、それから二次被害の発生防止に向けて、実効性のある対策を講じること、それから、その上で、情報が漏えいした原因を明らかにし、再発防止に向けた取組みを行い、信頼回復に努めていく、ということが重要であると考えております。

現在、その原因につきまして、アリコジャパンの方においてもいろいろ一生懸命取り組んでいる状態だと承知しておりますが、まだ、コンピュータデータ上の話でもございますので、その原因の特定ということには至っていないという段階だと承知しております。

(以上)

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