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三國谷金融庁長官記者会見の概要

(平成21年8月17日(月)17時00分~17時17分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

私からは特にありません。

【質疑応答】

問)

今日、4-6(月期)のQE(四半期GDP速報)が発表されました。プラス転換する一方で、市場の予測を下回ったとして株価が下がる局面もあったと思います。景気の先行きとか、現在の金融市場の動向をどう評価されているのか、いわゆる出口戦略も含めて教えていただけたらと思います。

答)

平成21年4月から6月期の四半期別GDPの実質成長率は、前期比でプラス0.9%、年率でプラスの3.7%となったと承知しております。

あと、ご指摘のように、本日の日経平均株価は、終値10,268.61円と、前日比328円72銭安になりまして、今月5日以来の10,200円台となったところであります。

市場の動向につきましては、様々な市場参加主体がそれぞれの判断に基づき投資行動を行った結果として決定されるものでありますことから、その水準や要因・背景について、当局として断定的なコメントを申し上げることは差し控えたいと思いますけれども、市場関係者の見方につきましては、例えば、朝方、前週末の米国の株安の関係、あるいは為替の円高傾向の関係、あるいは、それに伴います利益確定売りといった現象、あるいは今回のGDPの速報値は、プラスではありましたが、予想の範囲内ではなかったという見方、あるいはアジアの株式市場の動向等、様々なことが言われているようでございます。ただ、当局として、断定的なことを申し上げることは差し控えたいと思いますが、今後の株式市場の動向については、引き続き注視をしてまいりたいと考えております。

その上で、我が国の今後の経済見通しでございますが、先行きにつきましては、「当面、雇用情勢が悪化する中で、厳しい状況が続くと見られるものの、在庫調整の一巡や経済対策の効果に加え、対外経済環境の改善により、景気は持ち直しに向かうことが期待される。一方、生産活動が極めて低い水準にあることなどから、雇用情勢の一層の悪化が懸念される。加えて、世界的な金融危機の影響や世界景気の下振れ懸念など、景気を下押しするリスクが存在することに留意する必要がある。」とされていると承知をしております。

我が国の金融市場の状況について申し上げますと、例えば、社債市場は、残高等を含めまして拡大するなどの現象が見られており、なお厳しい状態にありますものの、今のように一部改善の動きも続いていると認識しております。他方、先ほど申し上げましたようなリスク要因から来る影響も懸念されるところでありまして、引き続き高い緊張感を持って注視していく必要があると考えているところでございます。

また、世界の経済・金融情勢を見ますと、ユーロ圏の2009年第2四半期の実質GDPは前期比マイナス0.1%となっており、アメリカにおきましては、FRBが先般、経済活動は底入れしつつあり、金融市場の状況はここ数週間で更に改善していると認識している旨の声明を発表したものと承知しております。

様々なこういった見解、指標等が出ておりますが、金融庁といたしましては、今後とも国内外の経済・金融情勢を注意深くフォローしながら対処してまいりたいと考えております。

お尋ねの出口戦略について次に申し上げますと、昨年秋以降実施している様々な臨時・異例の措置を平時に戻していくタイミングや具体的な方法などにつきましては、一つには、足もとの状況の丁寧な分析が必要でございますし、また個別措置ごとの効果の検証、また国際的な動向との足並みの確保、こういったことも考慮する必要があると思っております。いずれにしても、経済情勢等を慎重に判断していく必要があることに変わりはないと考えているところでございます。

問)

検査の基本方針の関係でお尋ねします。大手行の海外向け非日系の与信のターゲット検査とか、中小企業向けの貸し渋り、貸しはがしの防止態勢などの、今後重点的に見ていく方針とか基本計画が示されたと思います。検査の今事務年度の狙いとか特徴、今後の取組み方針があれば教えてください。

答)

今事務年度の検査運営に当たりましては、これは21検査事務年度基本方針で明らかにしているところでございますけれども、我が国の経済は、厳しい状況の中でも持ち直しの動きが見られますが、今後の1年を展望いたしますと、世界的な金融危機の影響や世界経済の下振れ懸念などから、経済活動の基盤を支える金融機関において、金融仲介機能を十全に発揮することが一層求められる一方で、金融機関が直面するリスクが拡大する可能性があることも念頭に置く必要があるという考え方でございます。

したがいまして、金融検査に当たりましては、大きく3点、1点目は、金融仲介機能の十全なる発揮、2点目は、より強固で包括的なリスク管理の徹底、3点目は、利用者目線に対応した適切な顧客対応、これを促すことが重要と考えているところでございます。

こういった認識の下で、この基本方針におきましては、検査重点事項として4つを掲げております。一つは、経営管理態勢の整備、次に、リスク管理態勢の整備、次に、円滑な金融仲介機能の発揮、次に、顧客保護・利用者利便の向上でございます。

お尋ねがございました大手行の海外向け融資につきましては、今の4つの重点事項のうち、リスク管理態勢の整備の中に「信用リスク管理」というところがございまして、そこで触れているものでございますが、大手行の海外向け融資につきましては、国内のみならず海外においても厳しい経済情勢が続く中で、国内企業向け与信や海外日系企業向け与信と比べまして、非日系企業向け与信につきましては債務者の実態把握が困難であることから、特に重要なリスクであるとの考え方の下、検査の重点事項に盛り込んでいるところでございます。

次に、お尋ねの中小企業向け融資につきましては、これは円滑な金融仲介機能の発揮というところで考え方を示しているものでございますが、健全な事業を営む中小企業等の融資先に対する円滑な資金供給は金融機関の最も重要な役割の一つであるとの認識の下、現下の厳しい経済情勢等を踏まえまして、一つは、中小企業・個人、これは住宅ローンを含みますが、こういったものに対する円滑な金融仲介への対応、2点目は、中小企業に相応しい金融手法の提供、3点目は、中小企業等の債務者に対するきめ細かい実態把握と適切なリスク管理、これを検査重点事項としているところでございます。

金融庁といたしましては、本検査基本方針に基づきまして、金融機関の利用者や国民の視点に立った適切かつ実効性ある検査を実施してまいりたいと考えております。

問)

銀行決算について、この前、大手行についてはお尋ねしましたが、4-6月の四半期の銀行決算で、地方銀行について、業績は回復傾向にはあるのですが、赤字の地方銀行も残っています。地方銀行の経営改善状況の見通し、それに加えて、改正金融機能強化法を活用した公的資金の活用がまだ余り広がっていないという見方もできるかと思いますが、今後の見通しも含めて教えてください。

答)

先週12日までに、地方銀行の21年6月期決算が出揃いましたが、3月の通期決算での段階では、全体109行のうち55行が赤字でございました。今期は、それに比べますと数は少なくなりましたものの、8行ほどが赤字でございます。その他のところは、多くは、黒字を確保したものと承知をしているところでございます。

翻ってみますと、昨年の通期では、有価証券の評価損、減損等の影響もございましたが、今期の第1四半期はそういった要因は減少している一方で、赤字となった地域銀行の場合には、その多くは不良債権処理費用が前年同期に比べて増加しているといった要因などによって、このような結果が出てきていると思っております。

今後でございますが、これは先ほどのお答えと繰り返しになるところもあるかと思いますが、我が国の景気は、このところ持ち直しの動きが見られますものの、依然として厳しい状況にあると考えております。今後につきましても、実体経済の下振れ等のリスク要因が存在しておりますことから、地域金融機関の財務状況やリスク管理の状況等につきましては、引き続き高い警戒水準を維持しながらフォローしてまいりたいと考えております。

その次に、公的資金の活用についてのお尋ねでございますけれども、これにつきましては、これまで資本参加したところが3行、またこの検討を表明しているところが7行というところでございます。今後の見通しということにつきまして、現段階で私どもの方で具体的な見通しをお示しすることは、困難でございますけれども、この改正金融機能強化法、これは国の資本参加を通じて、金融機関の金融仲介機能の強化を目指すというものでございます。金融機関におきましては、中小企業を始めとする借手企業が期待する金融仲介機能を適切かつ十分に果たしていくために、「先を読む経営」の中で資本増強という経営判断をする際には、金融機能強化法の活用につきましても積極的に検討していただくことを期待しておりますし、この同法の活用の検討につきましては、引き続き、私どもも呼びかけてまいりたいと考えているところでございます。

問)

地域金融の金融仲介機能の円滑化というところでちょっとご見解を伺いたいのですが、政権交代を目指している、ある野党が、これは民主党ですけれども、円滑な地域金融促進ということを掲げて、新しい法律を作ると、法案は実際にもう公開されていますけれども、金融機関、銀行等の金融機関に情報開示等を通じて、ある種の圧力をかけて、地域の企業等への融資を働きかけてくるというような法律の趣旨だと思うのですけれども、一般論で結構なのですが、こういう、金融庁の検査や監督だけではなくて、新しい法律によって、金融円滑化を更に図っていくというアイディアについて、どのように受止めていらっしゃるか、ご意見を伺えればと思います。

答)

ご指摘の点も含めまして、各党のマニフェストにおきまして、様々な金融円滑化策が盛り込まれていることは承知しておりますが、これは現在、選挙に関連いたしました公党のご議論でありますので、コメントは控えさせていただきたいと思っているところでございます。

なお、金融機能の円滑化一般でございますが、私どもは従来から、これは大変重要な課題と認識しておりまして、これまでも金融機能強化法の改正、あるいは自己資本比率規制の一部弾力化などの様々な対応を図ってきているところでございまして、今後とも、金融の円滑化のために取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

問)

つい先日、金融庁の方で、不良債権の残高についての発表があったかと思うのですけれども、残高全体は7年ぶりに増加に転じていて、一方で、中を見ると地銀だったり大手行以外の金融機関は、不良債権の残高だったり比率が減っていたかと思うのですけれども、これは貸出条件緩和債権の絡みで不良債権の基準が緩和された効果だと思うのですけれども、これは将来、不良債権が増えるリスクというか、懸念もあるかと思うのですけれども、ここら辺の見方についてお願いします。

答)

まずご指摘の21年3月期の金融機関の不良債権比率でございますが、ご指摘のとおり、主要行につきましては1.6%、これは20年3月期が1.4でありますので、7年ぶりに前年度比で上昇した一方、地域銀行につきましては3.4%と、これは前年度が3.7%でありますので、前年度に比べて低下しているところでございます。

この背景には、世界的な金融・資本市場の混乱等に伴う我が国景気の急速な悪化によりまして、債務者の信用状態が悪化した一方、中小企業を中心とする債務者の再建計画の策定や見直しが広がりを見せたことがあったものと考えられるところでございます。

今後の動向につきましては、これはまさしく今後の経済全体の動きとも関連するものでございます。足もとの景気は、このところ持ち直しの動きが見られるところでございますが、私どもとしては、これまでも様々な施策を講じながら、この警戒水準を保ちながら、この水準を見てきたところでございますが、引き続き、金融機関の財務状況やリスク管理態勢などにつきましては、きめ細かくフォローしてまいりたいと考えているところでございます。

(以上)

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