三國谷金融庁長官記者会見の概要

(平成21年9月10日(木)17時00分~17時22分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

私からは特にありません。

【質疑応答】

問)

まず、先日、主要27カ国中央銀行と金融当局者が銀行の自己資本規制を強化することで合意しました。自己資本の中核的な部分は、普通株と内部留保で構成されなければならないなどといった内容になっていますが、会議では日本としてどのような主張を展開されたのかという点と、合意が邦銀の経営に及ぼす影響などをどう見ているかという点、あと、また今後詰めるべき点は多い合意だとは思いますが、今後日本として主張していく点を教えてください。

答)

9月6日に公表されましたバーゼル委員会の上位機関であります主要27カ国の中央銀行総裁・銀行監督当局長官グループ会合のプレスリリースでありますが、これは直前のG20の財務大臣・中央銀行総裁会議の共同声明におきまして、ロンドンサミットの合意に基づき危機の再発防止の観点から、景気回復が確実になれば銀行の自己資本の質・量を強化していくことが再確認されたことを受けまして、今後バーゼル委員会が取り組むべき事項を整理したものであります。

このプレスリリースにおきましては、バーゼル委員会は、例えば4点ほどですが、自己資本の質の向上、レバレッジ比率の導入、流動性規制の導入、景気連動性を抑制するような資本バッファーの導入などにつきまして、本年末までに具体的な提案をまとめるとしておりますが、その実施に向けては実体経済の回復を阻害しないよう進めていくことが明確化されているところであります。

同会合でありますが、これはグローバルな金融システム全体として、銀行の自己資本の質・量の強化をどうするかという観点から行われているものでございますが、国際会議でございますので詳細はなかなか申し述べることは困難でございますが、私から申し述べたことを申し上げますと、一つは、規制強化の実施及び手順につきましては、実体経済に悪影響を与えないよう十分配慮すべきであること、それからTier1資本の中核的部分につきましては、真に損失吸収力のあるものが実情に応じて認められるべきであることなどを主張しますとともに、補完的指標の導入に当たりましては、主要な会計基準及びその執行の違いに留意すべきであるといった主張をいたしたところであります。

今後、年末に向けましてバーゼル委員会での今回の合意内容の具体化の技術的な議論におきまして、こうした主張がさらに反映されますよう引き続き積極的に参加してまいりたいと考えております。

なお、今回のプレスリリースにおきましては、様々な論点がある中で、また既にこれまでバーゼルの自己資本比率の分母部分といいますか、例えばトレーディング勘定等のいろいろな計測等も含めまして様々な論点が盛り込まれているところでございます。私どもの主張もすべてではありませんが、相当程度反映されているものと認識しているところでございます。

次に、邦銀への影響についてのお尋ねにつきましては、今回のプレスリリースにもあるとおり、この様々な合意事項についてバーゼル委員会において今後内容を具体化し、来年予定されております影響度調査を経た上で、実体経済の回復を阻害しないよう段階的に実施するための議論が行われていくと承知しているところでございます。したがいまして、現時点で邦銀への影響につきまして具体的なことを申し上げることはまだ難しい状態でございます。

問)

2点目なのですが、銀・証連携の先駆けとして注目された三井住友フィナンシャルグループと大和証券グループ本社の合弁証券である大和証券SMBCの合弁解消が決まりました。多分、今ごろプレス説明もされている頃だと思うのですが、一方、世界的に見ても総合金融の代表格だったシティが総合路線を転換するとか見直しの動きも出ています。金融コングロマリットがもてはやされた時代が続いてきたのですが、これは曲がり角を迎えたということなのか、その辺長官のご所見をお伺いしたいと思います。

答)

まず、三井住友フィナンシャルグループと大和証券グループ本社が、両グループの相互の友好関係及び信頼関係の継続を確認しながら、大和証券SMBCの合弁事業を解消することについて公表したこと、また、シティグループが事業再編を行っているといったことは承知しているわけでございます。

個別についての言及ということではなくて一般論として申し上げますと、グローバルな金融市場の混乱を受けまして、世界的に主要機関の統合再編の動きが見られております。こういった中で、各金融グループにおきましては、経営陣による適切なリーダーシップの下で将来を見据えて経営課題を認識し、適切かつ責任ある経営判断を行うことが重要であると考えておりますが、その上で申し上げますと、こういったある意味では経済全体の非常に大変な激動期でございますので、一方では合弁事業を再編することもあれば、逆に統合することもございますでしょうし、例えばアメリカにおきましても持株会社とか様々な動きが見られているところかと思います。そういった中で、どういったビジネスモデルを選んでいくかということは基本的には経営者の判断であるにしても、やはり顧客に対するサービスというものをきちんと提供できるような態勢とリスク管理をしっかりしていただくということが大事かと思っております。

まず、顧客に対するサービスということにつきましては、組織の問題にかかわりませず、販売勧誘ルールというものは横断化しております。それは販売チャネルが多様化していくことの見返りでございます。また、もう一つは、商品自体がハイブリッド化してくるということでありますので、したがって、そういったものに共通するようなきちっとした行為ルール、あるいは、これはベター・レギュレーションの下での自らの信頼関係を築くような対応をしていただくと、あるいはきちんとした情報提供をしていただくということが基本でございまして、この方向に沿いまして、私どももこれまで相当程度金融商品取引法でありますとか、横断化の取組みを行ってきているところであります。

その上で、さらに個社のリスク管理ということにつきましては、文字どおり過度なレバレッジにおいて将来に禍根を残すといったことのないよう、自らのリスク管理を統合的リスク管理あるいは総合的リスク管理、双方踏まえながらきちんとしていただくということが大事なことではないかと思っております。

問)

バーゼルの関係なのですが、日本が主張されていた部分で、さっき言われた「反映された部分」というものはどのようなものが具体的にあるのでしょうか。

答)

恐らくご質問の趣旨は、一つには例の普通株等の範囲とか、そういうことの絡みでおっしゃっているのかと思いますが、恐らく中核的な自己資本を普通株式と内部留保で構成されるということをおっしゃっているのかと思いますが、これにつきましては一つには1998年に発表されましたプレスリリース、これは通常シドニー合意といわれるものがございまして、ここでは議決権付普通株式及び内部留保が銀行Tier1の資本の中心的な形態であるべきとされておりまして、今回の合意は、この98年の合意内容の明確化を図ったものともされているところでございます。

ただ、一方で申し上げますと、こういったものにつきましてはもちろん日本の法人にも影響を与える一方で、それは各国におきましても様々な金融機関に様々な形で影響を与えるわけでございます。したがいまして、その影響というものを一概に論ずるということはなかなか難しいところがあるわけでございますが、これと同じように例えば分母と申しますか、リスク把握の点につきましては既にこれまでに合意されている部分がございまして、例えばトレーディング勘定に関するリスクの見方、それからオフバランスのリスクの把握の仕方、セキュリタイゼーションに対する把握の仕方、ここがある意味では非常に今回のリスクの根幹みたいなところで、そこはきちんと今回適正に把握するようなことが行われているわけでございます。

ただ、これももちろん他国の金融機関だけに影響を与えるということではありませんで、日本の金融機関にも少なからず影響を与えるわけでございますが、そういったもの全体を総合して考えるような話かと思っております。

その上で大事なことは、今回、全体の中で例えば実施時期につきましても、経済に与える影響と、実体経済の回復を阻害しないものにする、あるいは手順を踏んで行う、フェーズ・インという言葉が使われておりますが、そういった点、あるいはこれから様々な影響度の調査を考えながら行うと、こういったことにつきましては私の方でもいろいろ申し上げたところでございます。

そういったものも反映されているわけでございまして、これから細部につきまして様々な議論が引き続き行われてまいりますので、こういった制度はある意味では議論は細部に宿るところもございますので、粘り強く折衝を続けてまいりたいと考えております。

問)

4月のロンドンサミット以降、繰り返し言われています、今回のG20でも言われていますけれども、金融規制を強化する、再構築していくタイミングをいかに計るかということで、景気回復が確実になってからというところがあって、これがいつなのかというのは一つの焦点になると思うのですけれども、アメリカは2010年中に合意して2012年に実施してはどうかという提案もされたようですが、長官のご見解としていつというのは今時点では言えないとしても、例えば財政当局等のいわゆる出口戦略と平仄と合わせるといったお考えはお持ちなのでしょうか。

答)

アメリカの方でそういった意見があったことは承知をしておりますが、それはここまでそういう形でこの会議に反映しているものではございません。ここはあくまでも実体経済の回復を阻害しないようという形で表現されているわけでございます。

では、いつごろ実体経済というものが回復する状態になるかというのは、なかなか現段階でこの時点だろうというのは見通すことは難しいかと思っております。ひとつひとつの経済事象というものは様々なことが絡み合っておりますし、それは国内の問題のみならず、世界全体の動向とその影響というのも考えながらいかなくてはいけないと。また、現実のそれぞれの施策というものが、これはいつも申し上げておりますが、どういった効果を及ぼしているか、更には本当に経済の現象というものは時々の指標プラス先々の見込みと申しますか、そういった数値だけでははかり知れない要素もある。そういったものも勘案していくのだと思っております。

これからも様々なご意見等はいろいろなところから上がってくるかと思いますけれどもひとつひとつその辺は慎重に考えていく必要があるのではないかと思っております。

問)

先ほどの点に絡めて確認なのですが、日本としてコアTier1の議論の中で、真に損失吸収力のあるものが実情に応じて認められるべきという主張をされたということですが、これは今回のバーゼルの合意文書の中で盛り込まれたところというのはどういうところと理解してよろしいのでしょうか。

答)

そこは、形の上では普通株式と内部留保ということで規定されております。ただ、そこの問題とは別に、例えばこれが実施時期の問題でございますとか、実体経済の回復を阻害しないようにという点でございますとか、あるいは様々な影響度の調査といったものも含めながら、このところは全体にかぶる話でございますが、考えていくということでありまして、それぞれ問題多岐にわたる中で、そのすべてが反映しているということではございませんけれども、相当程度は反映しているのではないかと考えているところでございます。

問)

今の質問に関連して、優先株、優先出資証券、劣後債の関係なのですけれども、その前に開かれたG20では、コンティンジェント・キャピタルについての可能性の検討というような文言が盛り込まれましたけれども、これはどういうふうに理解していけばよろしいのでしょうか。

答)

現段階ではまだ結論が出ていないんだと思います。これから、またいろいろな勉強とか検討されるかもしれませんが、まずその概念自体、それからどの段階で認識するのかということも含めて、一つのアイデアとしてはこれまでの議論はあるわけでしょうけれども、現段階においてそこについて明確なものはないということかと思います。

問)

年末に向けて質の議論が具体化するとは思うのですけれども、年明けに市中協議とかインパクトスタディーをするとすると、その前にコアTier1の最低自己資本比率の数字の話をしないと、市中協議もインパクトスタディーもあまり意味がないのではないかと思うのですけれども、その数字の議論というのはいつごろから具体化してくるのか、その辺の見通しを教えてください。

答)

数字については、たしかにこれは、可能性としては、来年の3月ぐらいがひとつの目途たり得るのかもしれませんが、ただ、その前にいろいろな影響度調査の問題もございますし、この作業自体が非常にかなり急ピッチで行われているということがございますので、手順自体が今明確にそこまで完全に、ある程度予定調和的にセットされているというよりは、今、一生懸命各人が議論に参画しながら対応しているところかと思っております。

問)

会議の全体のことについてなのですが、日本の主張もある程度反映されたとおっしゃっていたのですが、手応えといったのはどのように感じられているのかというのと、会議全体の印象について教えていただければと思います。

答)

手応えとか印象というのは、若干個人的な感情のところに入るかと思いますので、なかなか明確にはお答えすることは困難なところがございますが、こういった大変多くの国が参加する中でございますので、それなりに一生懸命努力したということでお許しいただければと思います。

問)

話が変わるのですけれども、今日は先ほど課徴金の審判手続が初めて期日が開催されまして、初めて開かれたことの意義というものと、今後どのような審判、審理の手続きで進められていくのが望ましいかというのを改めてご見解をお願いできませんでしょうか。

答)

これは今般、某社の内部取引に係る第1回の審判期日が開催されたということでございます。ご指摘のとおり、17年4月の課徴金制度導入以降、審判期日が開催されるのは今回が初めてであります。私、今、何気なく「審判期日の開催」という言葉を使いまして、審判期日が開催という言葉というのはどういう意味かと考えるのですが、これは法律にこう書いてあります。

それで、現時点では審判手続の運営等について特段の問題があるとは認識しておりませんし、今回は被審人から課徴金納付命令の原因とされた違反事実を否認する旨の答弁がなされましたことから、第2回審判期日を10月8日に開催することになったと聞いております。

いずれにいたしましても、審判手続は金商法の規定に基づきまして独立公正な審判官の下で、迅速かつ適正に行われるものと承知しておりますので、この課徴金制度において審判手続が設けられた趣旨を踏まえまして、今後とも適切な運営が図られるものと考えているところでございます。

問)

三井住友銀行の元行員が現職時代に融資に絡んで逮捕されるという問題が起きていますが、これについての金融庁としてのご見解を教えてください。

答)

これは不動産会社の社長などが、三井住友銀行から融資を引き出した事件に同行の元行員が関与したとして逮捕されたということでございまして、これはまことに遺憾でございます。

本件につきましては、個別事案の捜査に関する事柄でございますので、個別のコメントということは差し控えさせていただきたいと思いますが、一般論として申し上げますと、金融機関においてはリスク管理の観点などから適切な与信審査態勢を構築することはもちろんのこと、公共性を有する立場を踏まえまして、社会的批判を招かないよう適切な内部管理態勢を構築することが重要であると考えております。

金融庁といたしましては、法令遵守態勢あるいは内部管理態勢等に問題が認められる場合には、一般論といたしまして法令にのっとり適切な対応を行っていくことになるものでございます。

(以上)

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