自見金融担当大臣挨拶「全国証券大会」(平成22年9月16日(木))

金融担当大臣、また郵政改革大臣を、亀井静香前大臣から6月11日に替わらせていただいた、全国区の参議院議員の自見庄三郎でございます。今日は、日本証券業協会、また全国証券取引所協議会、投資信託協会の共催によりまして平成22年度全国証券大会が盛大に開催されたことを、心から、前(日本証券業協会)会長をはじめ皆様方に、お慶びを申し上げる次第でございます。

皆様方におかれましては、健全な証券市場ひいては日本経済の発展のため、ご尽力いただいておりまして、本当に心から敬意を表させていただく次第でございます。

証券市場を巡っては、まさに問題が、前(日本証券業協会)会長のお話にもいろいろございましたが、山積しておりますが、今後とも、しっかりご意見を聞かせていただきながら、諸問題に取り組んでいきたいと思っております。

まず、国際的な金融規制改革の動向について申し上げます。

現在、先般、2年前の、リーマンブラザーズのショック、破綻に引続くいわゆる金融危機を乗り越えて、危機の再発防止と強固な金融システムの構築に向けた議論が進んでおります。

本年6月末のG20トロント・サミットにおきまして、金融規制改革に関しまして、それまでの議論の進捗を評価して、過去のサミットでの金融規制改革のコミットメント達成に向けてお互いに働くことを、確認したわけでございます。

また、お話があったかとは思いますけれども、本年7月に、アメリカでいわゆる金融規制改革法、ドッド・フランク法が成立をいたしまして、各国で、危機の再発防止に向けた取組みが進んでおります。

我が国におきましても、本年5月に金融商品取引法を改正し、証券会社グループに対する連結規制・監督や店頭デリバティブの取引等に係る清算機関の利用の義務付け等を、行わせていただいたわけでございます。

私も、6月11日に金融大臣を拝命させていただいて、この機会に、私自身アメリカと中国を訪問させていただいたわけでございます。8月に、私自身ワシントンとニューヨークに行きまして、FRBのバーナンキ議長、また1970年代のときのFRBの議長でございますが、ボルカーさん、大変、身長2メートル位の大きな人でございますが、ある意味で古きよき時代のアメリカのFRBの議長でございましたボルカーさんにも、ニューヨークでお会いしました。また、ニューヨーク連銀の総裁にもお会いしまして、色々なですねアメリカの市場の要人、あるいはニューヨーク証券取引所にも行かせてもらいまして、色々な意見を交換させていただいたわけでございます。

私が今回アメリカに行って大変印象的だったのは、オバマ大統領が作られた法律が、この中には、いわゆるボルカー・ルールというものが含まれていますが、今度の法律がこの7月に、成立をしたわけでございますが、これが約2,000ページということでございました。しかしながら細則、日本で言えば省令・政令の部分がですね、約250項残っているということでございまして、今からまさに、金融規制当局と、あるいは議会とあるいは業界とですね、色々な綱引きがあるんだという話を聞かせていただいたわけでございます。本当にこの30年間、本当に世界の経済はグローバル化しました。特に皆様方ご専門の方が多く、私のようなものが言うのも大変恐縮ではございますけれども、経済のグローバル化、金融のグローバル化、そして規制緩和という本当に大きな波が特にアメリカのウォール街を中心に、本当に巨大な力となって、経済のグローバル化、特に1989年のベルリンの壁の崩壊、そして1991年のソ連の崩壊とあいまって、非常に大きな勢いとなってきたわけでございます。そういった中で、ご存知のようにまさにその経済的な原動力であったアメリカの投資銀行が中心となってハイリスク・ハイリターン、コンピューターを駆使した、すさまじい精緻な金融工学によって、人間ですらなかなか制御しにくいような、大変精緻な金融商品を作ってきたわけでございます。確かに、富はふくらんだ、あるいは、確かに金融、マネー経済が実体経済の数倍も大きくなった、あるいは、経済的にも、政治的にも軍事的にもアメリカが強いということで、大変世界中のカネ余り、あるいは余ったカネがですね、アメリカに一極集中するという現象が起きたということは、皆さんご存知の通りでございます。それが、今はご存知のように、リーマン・ショックにみられたように、金融の方が大変リスクをひとつの企業の中では取ることができず、アメリカ一国でもリスクがとれなくなり、財政支出をせざるを得なくなりました。そしてそれが実体経済、例えば、私のところは工業県でございますから、トヨタ自動車がございますけれども、あのときちょうどトヨタの生産は4割落ちまして、それくらいこの日本ですら実体経済にひどい影響があったわけでございます。そういったことの本当の震源地と申しますか、アメリカのウォール街に参りまして、また、バーナンキさんがちょうど”unusually uncertainly”ということを言った後にバーナンキさんに会いました。バーナンキさんからは、2回ほどアメリカから事前に連絡がありましてね、「自見さん、バーナンキが何を言ったか絶対言わないでくれ」と、まあそういう話でございました。今白川総裁笑っておられますけれどもね、私は、東京から1000キロ離れた北九州の小倉高等学校で白川総裁より4年先輩でございますから、偉い総裁よりもちょっと私は高等学校では上でございます。バーナンキさんが「言わないでくれ」とおっしゃっていたことは、菅総理にだけは、帰ってきてご報告さしあげました。その後、バーナンキさんは、アメリカの中西部に行って色々と講演されまして、白川総裁もご出席になったということで、色々と皆さんも情報としてご存知だとは思います。そういった非常に緊迫した雰囲気、あるいは、ボルカーさん、背の高い人でございますけれども、私は勝手にあの人は、ウォール街のジョン・ウェインだと、二丁拳銃持って、なんと言うか西部の、ウォール街の1970年代の、ある意味アメリカの、古きよき時代のアメリカの正義を体現するような人だなという感じもしたわけでございます。私もしばらくアメリカで先生をしておりましたが、アメリカはやはり多様な国である、非常に広い国だと、そして復元力があると、まあそういったこともしみじみ感じたわけではありますが、少し余分な話になりましたけれども、まあそういったことでした。

また8月末から9月初頭に掛けまして、日中ハイレベルの閣僚会議、日本から6人行きまして、中国の温家宝総理ともお会いいたしました。私のほうからですね、約26,000のですね、日本企業が中国へ進出しているわけではありますが、日本企業に融資する日本の金融機関に対して、非常に制約要因があるんじゃないかと、色々心配でございますが、温家宝総理大臣から日本企業の資金需要に関しては、必ず中国として保証するというようなお言葉もいただけたわけでございます。周小川人民銀行総裁にもお会いし、その後香港、アジアで2番目、世界でも6番目の市場に、たまたま私は日本・香港友好議員連盟の会長代理であり20年以上のお付き合いですが、行ってまいったわけでございます。今日はもう金融庁長官もきておりますが、事務方の力も借りて、色々世界の情勢、まさに生きた経済を見させていただきました。

皆様方も、そういった中で、大変なご努力いただいていることを、本当に感謝申し上げると同時に、的確に業務運営に取り組んでいただけるようお願いをしたいと思うわけでございます。

最後でございますけれども、新成長戦略についてです。

私もう今まで25年国会議員をさせてもらっているわけですが、金融そのものが成長戦略に入ったのは、多分今回が初めてだと、こう思うわけでございます。経済社会が抱える課題の解決を新たな需要や雇用創出のきっかけとして、それを成長につなげることが重要でございまして、6月に閣議決定されました「新成長戦略」では、「金融戦略」が戦略分野の一つとして取り上げられました。「成長分野を支える金融」、金融の仲介機能でございますから非常に大事でございますけれども、それと同時に「成長を支える金融自らが成長する金融」ということを、私の記憶するところでは初めてでございますけれども、金融業界もたくさんの人を雇用していただいているわけでございまして、また新たに、まさにこの資本主義の、まさに中枢でもございますから、金融自身が成長する産業だと、そういった認識をしっかり持って、働かせていただきたいと思うわけでございます。

今後、「新金融立国」に向けて、実はこれは今までも何回も繰り返された言葉でございますけれども、性根を決めて、やらねばならないというふうに大臣として思わしていただいております。しっかりプロ向けの社債発行・流通市場を整備し、総合的な取引所の創設に向けて取り組んでまいります。東京証券取引所に行かせていただきまして、1000分の2秒で取引が出来るということやニューヨークでは、実は、ニューヨーク証券取引所の取引以外の取引、ダークプールと申しますか、それが非常に増えているんだという実態も、勉強させていただいたわけでございます。そういった時代の変化に対応しつつ、なおかつ、きちっと、最新のIT技術と申しますか、金融工学、あるいはそういった技術に対応しつつ、なんといいましても主人公はやはり人間でございますから、私は、人間の叡智とこういう金融工学とのバランス、あるいは、民主的に如何にきちんとバランスを取るかということを、21世紀の人類にとって大事な使命だと、こういうふうに思うわけでございます。

そういったことを、しっかり踏まえながら、前(日本証券業協会)会長をはじめとして、本日お集まりの皆様におかれましても、我が国市場に対する投資者の信認、安心して信用できる市場というのは大変大事でございます。そして我が国市場の発展、更には我が国の経済の発展につながるわけでございますから、市場仲介機能を適切に、本当に信頼を持って発展できるように、皆様方に思い切ってプレイしていただく、基本的なグラウンドとでも申しますか、骨組みを用意させていただくのが、我々行政のしっかりした役割だと、こう思うわけでございます。そういったことをしっかり踏まえながらですね、今後とも、白川総裁から、本当にプロの立派なお話が今からあるというふうに思うわけでございますし、また、中村経団連の副会長もおいででございますが、前証券業協会会長をはじめ皆様の日頃からの金融庁をご指導いただきたいと思います。特に金融大臣の目安箱作ったので皆さんどうぞ入れてください。長官もここにおりますけれども、どこかの会社の人がこんなこと言っているということは、絶対に公表なんてさせません。目安箱を置いておりますので、皆さんが実際生きた経済をご存知でございますから、金融大臣目安箱に、是非、「こういうアイデアだ」、「こういうのを準備したらいいよ」、「こんなんがいい」、ということを入れていただきたいと思います。そういうことを言いますと、「おたくの部長にも社長にも黙って、金融庁の担当課長の顔をつぶした」ということになるのが昔の日本でございますけれども、そういう時代じゃやっていけません。まさに生きた経験と、長い間のすばらしいご意見をお持ちの皆さん一人一人が、金融大臣目安箱も作らせていただきましたので、是非ですね、そちらに自由にアイデアをお教えいただければと、こういうことをですね、最後に申し上げる次第でございます。

改めまして、本当に関係団体の方々に心から、日頃のご指導に対しまして御礼を申し上げます。少し駄弁を弄しましたけれども、祝辞と、そして日頃のご指導の御礼に代えさせていただきます。

(以上)

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