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衆議院財務金融委員会における麻生財務大臣兼金融担当大臣の所信表明

(平成25年3月13日)

(はじめに)

このたび、財務大臣、金融担当大臣を拝命いたしました麻生太郎でございます。

今後の財政政策等につきましては、先般の財政演説において所信を申し述べたところでありますが、本委員会において重ねて所信の一端として、財政政策及び金融行政等の基本的な考え方について申し述べます。

(日本経済の現状と財政政策等の基本的な考え方)

一九九〇年代以降、グローバル競争が激化するなど、内外の経済環境が構造的に大きく変化する中、日本経済は、長きにわたりデフレが継続しております。

賃金の下落が続き、消費や設備投資が伸び悩む中で、成長期待の低下やデフレ予想の固定化が見られ、将来不安などから国民の間に生じた閉塞感を払拭できない状況が続いてまいりました。戦後、こうしたデフレ不況を経験しているのは世界中で日本のみであります。

デフレは、未来への投資を阻害するという意味で日本を劣化させるものであり、日本経済を衰弱させてきた根深い問題であります。こうした状況を打破し、デフレ不況から脱却するためには、従来の延長線上にある対応では不十分です。第二次安倍政権では、これまでとは次元の違う大胆な政策パッケージとして、「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」の「三本の矢」を一体的かつ強力に実行して経済再生を推し進めてまいります。

第二次安倍政権は、発足後一ヶ月余りの短い期間で、「日本経済再生に向けた緊急経済対策」の策定、平成二十四年度補正予算の編成、日本銀行との「共同声明」のとりまとめ等、果断かつ的確な政策対応を矢継ぎ早に重ねてまいりました。

こうした第二次安倍政権の経済政策に対しては、去る二月十五・十六日、モスクワで開催されたG20においても、諸外国から強い関心が寄せられました。私からは、新政権が日本経済の再生に着実に取り組んでおり、日本が再び活気を取り戻すことで世界経済にも良い影響を与えることをしっかりと説明してきたところです。

昨年後半には、世界経済の減速等も背景に、日本の景気は弱い動きとなり、景気の底割れが懸念されておりましたが、最近では、株価も回復し始めるなど、明るい兆しも見え始めています。今後とも為替市場の動向について引き続き注視するとともに、こうした動きを、民間投資の喚起や雇用・所得の拡大を通じて、確かな経済の再生につなげていかなければなりません。

そのためには、先に成立した平成二十四年度補正予算の速やかな執行を期すとともに、「十五カ月予算」として同補正予算と一体的に編成した平成二十五年度予算、平成二十五年度税制改正を着実に実行に移していく必要があると考えております。さらには、本年半ばを目途に、日本経済の競争力と成長力の強化に向け、経済構造の変革を図る観点から、大胆な規制・制度改革を含む野心的な成長戦略をとりまとめることとしており、引き続き、切れ目のない政策対応に全力で取り組んでまいります。

一方で、いつまでも財政出動を続けるわけにはいきません。依然として非常に厳しい日本の財政の現状も踏まえ、日本の財政に対する信認を確保していくことも重要です。社会保障・税一体改革を継続するとともに、二〇一五年度までに国・地方のプライマリーバランスの赤字の対GDP比を二〇一〇年度の水準から半減し、二〇二〇年度までに黒字化するとの財政健全化目標の実現を目指し、財政健全化と日本経済再生の双方を実現する道筋について検討を進めてまいります。

(平成二十五年度予算及び税制改正の大要)

続いて、平成二十五年度予算及び税制改正の大要を御説明申し上げます。

平成二十五年度予算につきましては、緊急経済対策に基づく平成二十四年度補正予算と同様に、「復興・防災対策」、「成長による富の創出」、「暮らしの安心・地域活性化」を重視しております。また、老朽化対策など国民の命と暮らしを守る公共事業予算や国民の安心のための防衛予算を充実させる一方で、生活保護や地方公務員給与等について適正化・見直しを行うなど、予算の効率化を図っております。こうした取組を通じて、四年振りに税収が公債金を上回る状態を回復させるとともに、プライマリーバランスを着実に改善させ、財政健全化目標の達成に向けた第一歩となる予算としております。

基礎的財政収支対象経費は、七十兆三千七百億円であり、これに国債費二十二兆二千四百十五億円を合わせた一般会計総額は、九十二兆六千百十五億円となっております。

一方、歳入につきましては、租税等の収入は、四十三兆九百六十億円、その他収入は、四兆五百三十五億円を見込んでおります。また、公債金は四十二兆八千五百十億円、年金特例公債金は二兆六千百十億円となっております。

平成二十五年度税制改正におきましては、現下の経済情勢等を踏まえ、成長による富の創出に向けた税制上の対応、社会保障・税一体改革の着実な実施、震災からの復興支援のための税制上の対応、円滑・適正な納税のための環境整備等、所要の措置を講ずることとしております。

具体的には、生産等設備投資促進税制及び所得拡大促進税制の創設、研究開発税制の拡充、事業承継税制の見直し、所得税の最高税率の見直し、相続税の基礎控除及び税率構造の見直し等を行うこととしております。

(金融行政の基本的考え方)

続いて、現下の金融行政について申し述べます。

日本の金融システムは、総体として健全であり、安定しておりますが、内外の経済・市場の動向や、それが日本の金融システムに与える影響につきましては、引き続き、高い関心を持って注視してまいります。

デフレ不況から脱却し、経済再生を図っていくうえで、金融機関が、金融仲介機能の一層の発揮を通じ、企業の再生、成長と地域経済の活性化に取り組んでいくことが重要です。

本年三月末の中小企業金融円滑化法の期限到来後も、貸付条件の変更等や円滑な資金供給が確保されるよう、金融機関の取組を促すとともに、地域経済活性化支援機構の立上げ等を通じ、様々な状況に置かれた借り手の経営改善を支援してまいります。併せて、こうした方針の周知にも力を入れてまいります。

また、先般の金融危機に関わる諸問題を踏まえ、金融資本市場・金融業の安定性確保・信頼性回復・機能強化を図るため、市場型金融危機への対応、公募増資に関連したインサイダー取引事案を踏まえた対応、銀行等の議決権保有規制の緩和等について、所要の制度整備を行うこととしております。

(提出法律案の概要)

今後、御審議をお願いすることを予定している財務省関係の法律案は、平成二十五年度予算に関連するもの二件、そのほか一件であります。

第一に、平成二十五年度税制改正に関連して、所得税の最高税率の見直し等を内容とする「所得税法等の一部を改正する法律案」でございます。

第二に、暫定税率等の適用期限の延長等を内容とする「関税定率法等の一部を改正する法律案」でございます。

第三に、「独立行政法人日本万国博覧会記念機構法を廃止する法律案」でございます。

また、金融庁関係の法律案は、金融行政における取組に関して制度整備を図るための「金融商品取引法等の一部を改正する法律案」でございます。

法律案の詳しい内容につきましては、今後、改めてご説明いたしますので、よろしくお願い申し上げます。

(むすび)

以上、財政政策及び金融行政等に関する、私の考えの一端を申し述べました。

今後とも、皆様のお力添えを得て、政策運営に最善を尽くしてまいる所存であります。

金田委員長をはじめ、委員各位におかれましては、御理解と御協力をお願い申し上げます。

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