参議院財政金融委員会における麻生財務大臣兼金融担当大臣の所信表明

(平成29年3月7日)

(はじめに)

 財務大臣兼金融担当大臣の麻生太郎でございます。本委員会の開催に当たり、財政政策及び金融行政等の基本的な考え方について申し述べます。
 

(日本経済の現状と財政政策等の基本的な考え方)

 日本経済につきましては、安倍内閣のこれまでの取組によって、雇用・所得環境が着実に改善するなど、経済の好循環が生まれてきております。この好循環を確かなものとするため、今後とも、金融政策、財政政策、構造改革を総動員してアベノミクスを一層加速してまいります。

 一億総活躍社会の実現に向けては、未来への投資の拡大に向けた成長戦略を推進するとともに、子育て・介護の環境整備等の取組を進め、少子高齢化社会を乗り越えるための潜在成長率を向上させてまいります。

 また、厳しい状況にある財政についても、その持続可能性を維持するため、二〇二〇年度の基礎的財政収支の黒字化目標の達成に向け、「経済・財政再生計画」及び「改革工程表」に沿って、これまでの歳出・歳入改革の取組を強化してまいります。

(平成二十九年度予算及び税制改正の大要)

 次に、平成二十九年度予算及び税制改正の大要を御説明申し上げます。
 
 平成二十九年度予算は、「経済・財政再生計画」の二年目に当たる予算であり、現下の重要な課題に的確に対応しつつ、「経済再生」と「財政健全化」の両立を実現するものとしています。

 具体的には、一億総活躍社会の実現に向け、保育士及び介護人材等の処遇改善や給付型奨学金の創設などの主要な取組を確実に行ってまいります。科学技術振興費を伸ばすとともに、公共事業関係費の成長分野への重点化など経済再生に直結する取組を推進しています。また、国民生活の安全・安心を確保する観点から、海上保安体制の強化やテロに備えた情報収集・対処能力の強化などを行ってまいります。
 
 平成二十九年度税制改正におきましては、日本経済の成長力の底上げのため、就業調整を意識しなくて済むよう配偶者控除等の見直しを行うとともに、経済の好循環を促す観点から研究開発税制や所得拡大促進税制の見直し等を行うこととしております。

 あわせて、酒類間の税負担の公平性を回復する等の観点から酒税改革を行います。また、日本企業の海外展開を阻害することなく、国際的な租税回避に効果的に対応するため、外国子会社合算税制を見直すこととしております。

 このほか、災害に関する特例の整備等を行うこととしております。

(今後の金融行政の在り方)

 続いて、現下の金融行政について申し述べます。

 経済の好循環を確かなものとするため、金融面でも取組を進めてまいります。

 金融仲介機能を更に強化するとの観点から、金融機関に対する検査・監督のあり方を見直すなど、いわゆる金融処分庁の印象から金融育成庁への転換を一層進めてまいります。

 また、金融仲介の質の向上に向けて、企業の生産性向上や地域経済の発展に資する取組について、金融機関と深度ある対話を行ってまいります。
 
 さらに、国民の安定的な資産形成を実現するため、少額からの長期・積立・分散投資を政策的に後押しするとともに、金融機関等における顧客本位の業務運営の確立・定着に向けた取組を行ってまいります。

 加えて、情報通信技術の進展等に対応し、市場の信頼確保や利用者保護、日本の金融サービスの国際競争力の確保を図るため、金融関連制度の整備を行ってまいります。

 このほか、国際的な金融規制改革の議論が、経済の持続的成長と金融システムの安定の両立といった考え方を踏まえたものとなるよう、努めてまいります。

 現在、日本の金融システムは、総体として健全であり、安定しておりますが、内外の経済・市場動向や、それが日本の金融システムに与える影響につきましては、引き続き、高い関心を持って注視してまいります。
 

(提出法律案の概要)

 今後、御審議をお願いすることを予定している財務省関係の法律案は、「所得税法等の一部を改正する等の法律案」、「関税定率法等の一部を改正する法律案」及び「国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案」でございます。

 また、金融庁関係の法律案は、「金融商品取引法の一部を改正する法律案」及び「銀行法等の一部を改正する法律案」でございます。

 法律案の詳しい内容につきましては、今後改めて御説明をいたしますので、よろしくお願い申し上げます。

(むすび)

 以上、財政政策及び金融行政等の基本的な考え方について申し述べました。今後とも、皆様のお力添えを得て、政策運営に最善を尽くしてまいる所存であります。

 藤川委員長をはじめ、委員各位の御理解と御協力を切にお願い申し上げます。

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